サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
「…それで、あなたが最後の三人目という事だな」
その問いかけで、目の前にいる人物、八神はやてに言う。
なのは、フェイト。
二人に続き、魔法使いの協会から来た最後の三人目。
「まぁ、そんなに緊張しなくてもえぇよ」
そのリーダー格と聞いていた茶髪の女性は、まるで旧知の仲のように声をかけてくる。
「魔法使いとの契約……確かにうちの協会では重要な問題やけど、だからってそんな堅苦しくならんでええやん?」
関西弁特有のフレンドリーな口調。それが妙に落ち着かない。なのはやフェイトと違い、こちらの態度を読んでいるように思える。
「でもなぁ……」
はやては腕を組みながら笑みを浮かべる。
「せっかくやし、お互いの目的についてちゃんと話し合わへん?」
目的? 俺は眉をひそめる。
「俺の目的は家臣を集めて力を蓄える事だ。それが王となる為に必要な事だからな」
はやては小さく頷く。
「うん、それは聞いてる。じゃあうちの方の目的も言っとくわ」
彼女は一旦言葉を切り、まっすぐに俺を見る。
「今のままだと魔法使いが行ってきた研究が悪用される可能性があるんや」
悪用? 魔法使いたちが研究している魔法の力か?
「特に悪魔との契約に関しても、一部の勢力が危険な方向に進んでる。もしそうなったら」
彼女の表情が少し硬くなる。
「世界にどんな影響が出るかわからん」
なるほど。そういう危惧があるのか。
「だからこそ、三大勢力とより強い繋がりを持ちたいんや。特にあなたの様な強大な力を持つ悪魔との」
はやてはそこで一旦言葉を切り、再び俺を見据える。
「だからうちはここに来た。あなたの家臣になって、その目的を達成するために」
彼女の真剣な眼差しを見て思う。これが彼女の本当の目的か?
それとも他に何かあるのか?
「理解した」
俺は頷く。確かに世界のバランスを考えれば、無視できない問題かもしれない。
しかし……
「ところで」
俺ははやてに問いかける。
「なぜ親友であるなのはやフェイトを巻き込んだ?」
はやての動きが止まる。
「なぜ自分の目的の為に親友を利用した?」
俺は、そのまま睨んだ。
二人と契約したから分かるが、少なくとも俺との契約は二人にとってリスクが高い。
彼女たちの様子を見ていても分かる。
はやては、そんな二人を利用してまで行う必要があるのか?
「それに……」
俺はさらに言葉を重ねる。
「俺を味方につければ何か良いことがあるのか?」
はやては黙って俺を見つめている。しばらくの沈黙の後、彼女は小さく笑みを浮かべた。
「いやぁ〜実はね〜」
その笑顔はどこか悪戯っぽい。
「婚期がヤバいと思ったんや」
彼女の口から出たその言葉に、俺は一瞬思考が停止した。
「……は?」
「せやからな、婚期がヤバいと思ってな〜」
はやては楽しそうに続けた。
「うちもそろそろ焦ってきてな〜でも適当に結婚するのも嫌やし〜」
「待て……」
俺は何とか口を開く。なんだこの急展開は? 彼女は今まで世界のバランスについて語っていたはずだ。
「お前さっきまで世界の話をしていただろう?」
「もちろん世界の安定も大事やで〜でもな」
はやてはクスクス笑いながら続ける。
「うちら魔法使い協会としては、強力な悪魔と繋がりを作っておくことも重要なんよ〜それに太郎さんが言う通りやわ。せっかくやし皆幸せにならんとな〜」
「何を言ってるのかまったく理解できん」
俺は思わず頭を抱える。はやての真意がまったく分からない。
本当に彼女は世界平和を望んでいるのか?
それともただ結婚相手が欲しいだけなのか?
そしてこの軽い雰囲気の裏には、どんな本音が隠されているのだろう。
俺は彼女の真意を探るように見つめた。
「…というよりも、婚期と言うけど、かなりの役職だろ、それだったら」
「あぁ、それがなぁ、うちらって結構エリートだけど、そのせいで近づいてくる奴らは全員が権力を狙っている奴らばかり。まぁ、今、私がやっている事も権力を手に入れる為って言われたら終わりなんだけどな」
はやての口調が不意に変わった。軽い笑みの裏に潜む真剣な光が垣間見える。
「だからこそな、私は『本当の』理解者を求めているんよ」
彼女は静かに続けた。
「今は協会の仕事をしているけど、いずれ引退した後に残るものはない。せやけどそんな将来を考えると少し不安なんよね」
言葉の端々に彼女の孤独が滲んでいる。確かに魔法協会での地位は高いかもしれないが、それに伴うプレッシャーや孤独もあるのだろう。
「だから婚期……というのは半分冗談やけどな」
はやてが再び笑みを浮かべる。
「もう半分は本気やで。でもそれだけやないんよ」
彼女が真剣な眼差しで俺を見る。
「この世界にはいろんな『規則』がある。魔法使いも悪魔も天使もみんなそれぞれの『秩序』の中で生きとる。せやけどそれが時に歪むこともある」
はやての声は低いが、その言葉には確かな重みがある。
「最近の悪魔召喚の件もそうやけど、本来の『秩序』を乱す者が出てきとる。もし何もせんかったら取り返しのつかんことになるかもしれん」
「……俺との契約がその解決策になると考えているのか?」
「そう簡単ではないと思うわ。でも可能性はあると信じている」
はやてが再び俺を見つめる。その目には迷いはなかった。
「太郎さんの力があれば、その秩序を正すこともできる。うちはそう思ってるんよ」
なるほど。彼女の目的はただの結婚や出世ではなく、世界の均衡を保つための行動だったのか。
確かに彼女の言葉には説得力がある。悪魔の中にも問題のある者がいるのは事実だし、それを放置すれば取り返しのつかないことになる可能性も十分にある。
だが……
「……一つ聞きたいことがある」
俺ははやてを見据えた。
「それだったら、俺以外にもいるはずだ。それこそ「君やからだ」んっ?」
「人間は、これまでは多くが強力な力を誇示していた。神器や悪魔を含めて。けれど、それらはその力の強さによるカリスマだ。けれど、君は違う」
そのままはやてはゆっくりと俺の元へと近づいて来る。
「太郎さんは違うんや。君は力はない。けれど、種族を関係なく引っ張る力がある。そんな君が王様になれば、世界の平和に一歩近づくと思ってな」
彼女は真剣な表情で言った。
「そしてそんな君の側にいれば、きっと新しい道が開ける気がするんや」
俺は彼女の言葉を反芻する。
確かに俺には特別な力はない。だがそれを補うために他の種族たちと繋がりを持ち、彼らの力を借りてきた。それが俺のやり方であり、生き残るための唯一の手段だった。
そして今、はやては俺に新たな選択肢を与えてくれようとしている。
「なるほど……」
俺はゆっくりと頷いた。彼女の考えは理解できるし、その目的にも共感できる部分がある。
「…実際に俺もそれを目指していたからな。まぁ、まだ高校生の餓鬼が何を言っているんだと思っているが」
「それは心配はあらへん。それを支えるのが家臣の役目や。せやけど……」
はやては一旦言葉を切った。その顔には少し不安そうな影が浮かんでいる。
「ただひとつ……ちょっと気になることがあってな」
「気になること?」
俺は思わず聞き返す。はやてが不安を口にするのは珍しい。
「うちら魔法使いの世界でも悪魔との契約は禁忌扱いされとるんよ。特に強力な悪魔となればな」
「……なるほど」
俺は眉をひそめる。確かに俺との契約は通常の契約とは異なるものだろう。普通の悪魔であれば簡単な条件で力を貸すことができるが、俺の場合は家臣になることを要求する。そして家臣となった者は特殊な能力を得ることができるという特典付きだ。
「せやから、もし契約するとしたらリスクもある」
はやては真剣な表情で続ける。
「特に私の場合は魔法協会内の立場もあるし、万が一何かあったら……」
「俺を信じろよ」
俺は微笑みながら言った。確かにリスクはあるが、それを承知で俺に接触してきたのではないか? それならば最後まで貫いてほしい。
「契約するかどうかはお前自身が決めることだ。だが仮に契約したとしても、俺はお前たちを守るために全力を尽くすつもりだ」
俺の言葉にはやては少し驚いたような表情を見せたが、すぐに微笑みを取り戻した。
「……わかった。それなら信じてみるわ」
そう言うとはやてはゆっくりと立ち上がり、俺に向かって右手を差し出してきた。
「太郎さん」
彼女は微笑みながら言う。
「私とも契約してくれるんやね?」
「もちろんだ」
俺は頷くと同時に彼女の手を握り返した。その瞬間、はやての周りに淡い光が広がり始める。
それは彼女自身から発せられている光のようで、温かくて優しい印象を受けた。
「それじゃ、さっそく」
既に我慢の限界を迎えたようにはやては近づく。
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア