サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
皇帝の後継者
誰もが寝静まる夜の街。
その夜の街で、俺、唯我太郎は、一人だけで走っていた。
「何がっ何が起きているんだっ」
そう思いつつも、逃げ続けた。走り続けるしかなかった。
逃げる先は決まっていない。
ただ闇雲に街を走り続けていた。
そして背後から迫ってくる気配を感じる。
「どこへ行こうというのかな」
低く落ち着いた男性の声が聞こえた。振り向くとそこにいたのは、紳士服姿の中年男性だった。
「お前の正体を知っている。素直に捕まれば苦痛を与えずに済むぞ」
男は淡々と言い放つ。
しかし太郎には何のことかまったく理解できなかった。
「何言ってんだよ……俺は何もしていないのに……」
恐怖で歯を食いしばりながら答える。
すると男は懐から金色の銃を取り出した。
「知らないなら教えてあげよう。お前は特別な血を引き継いでいる」
そう告げると共に引き金を引いた。
バァンッ!!
轟音と共に太郎の足元で爆発が起こる。
「くっ!」
咄嗟に避けたものの余波を受け吹き飛ばされる。
「うわぁあああっ!!」
地面を転がりながら必死に立ち上がる。しかし既に男の姿は無い。
それどころか周りの景色も変わっていく。
建物は崩れ落ち炎が燃え盛っている。まるで終末の世界のような光景であった。
(これが現実なのか! どうしてこんな事になったんだ!)
混乱する頭で考えるものの何も答えは見つからない。ただ一つ確かなことはこのままでは殺されるということだ。
ならば逃げるしかない。そう思い立ち上がった時だった。
前方に人影が見える。それも一人ではない複数人がこちらを見ていた。
全員同じ黒いスーツを着用しており明らかに怪しい集団であることが分かる。
彼らはこちらを見つけるや否や一斉に襲い掛かってきた。
「うおぉおおお!!」
雄叫びを上げ拳を握り締めて立ち向かう。だが相手はプロであろう訓練されている動きをしている。それに対してこちらは何の訓練も受けていない一般人と同じだ。勝てるはずがない。
次々と繰り出されるパンチやキックに対して防御することも出来ずにただ殴られ蹴られていくのみである。やがて抵抗する気力も体力も無くなり意識を失いかける寸前だった。
「未だに力は完全に覚醒していない。皇帝の末裔として、覚醒する前に始末する」
「それが、宇宙の平和につながるのだから」
そうして、俺に止めを刺そうと光の銃を構えたときだ。
「あれは・・・!」
敵の驚愕の声。
しかし驚いているのは俺の方だ。こんなことができるなんて想像もできなかった。
思考する暇もなく体が動く。まるで戦い方を骨の髄まで叩き込まれた戦士のように。
彼らはこちらを見つけるや否や一斉に襲い掛かってきた。
「うおぉおおお!!」
雄叫びを上げ拳を握り締めて立ち向かう。だが相手はプロであろう訓練されている動きをしている。それに対してこちらは何の訓練も受けていない一般人と同じだ。勝てるはずがない。
その瞬間。
胸にズキンとした痛みが走った。
それは心臓ではない。もっと深い……奥底で何かが震えている。
(何だ……これ)
「これはっまさかっ!」
敵の声に焦りが混ざる。
その瞬間、真っ暗だった空間に紫色の光が走った。
最初は小さな稲妻のように。そして――それは急速に広がっていく。
まるで闇自体が意志を持ったように収束し始めた。
「来るなッ!!」
必死に叫ぶも遅い。
ドクンッ!
全身の血管が脈打つような衝撃。
同時に、足元から滲み出るように漆黒の金属質な塊が浮上する。
それらは触手のように伸び、這い上がり――
自分の体に吸い込まれていく。
冷たい感触。なのに熱い。
不快で抗い難い力が骨格を覆う。
関節がミシリと鳴った。
「ぐぅ……ぁぁあっ!!」
悲鳴ともつかない呻きが漏れる。痛みが神経を焼き尽くす。
だが奇妙なことに痛みはすぐに引いた。代わりに来たものは――
信じられないほどの万能感。全能感?
「まさか……アーマードダークネスの起動とは!」
敵が後退る気配。
恐る恐る顔を上げる。目に映ったのは……
自分の姿ではなかった。
全身を包む禍々しい装甲。鏡面のような金属の表面は暗闇の中で微かに妖しく輝いている。
左腕は肘まで肥大化した歪な形状となり、鋭利な爪が並ぶ。右肩からは短槍のような棘が突き出し、腰からは蛇のような尻尾が垂れている。
そして最も異様なのはその頭部だった。
左右非対称の三日月型の双角。口元には牙が覗き、両目には血のような紅い光が灯る。
まさしく――悪魔の仮面。
これが自分だと言うのか? 思わず呆然とする太郎。
「アーマードダークネス」
その言葉が頭の中で何度も繰り返される。
聞いたことがあるような……いや違う。これは知識じゃない。魂が覚えているものだ。
「やはりそうだ!」
敵が叫ぶ。
「情報通りだ。貴様こそは、あのエンペラ星人の血を受け継ぐ者!」
「エンペラ……?」
聞き覚えのない名前に戸惑う太郎。だが疑問より先に脳裏に閃くイメージがあった。
暗黒星雲。玉座に鎮座する巨人。数多の兵士が畏怖を持って彼を見つめる光景。
待て。そんな記憶は自分にはないはずだ。
「貴様のような異端分子は認めん。ここで潰す!」
再び光の刃が迸る。
だが今回は違った。
俺の身体に身に纏っているアーマードダークネスは、その光の刃を片腕で受け止めた。
金属同士が激しく擦れ合う不協和音。火花が散る中でも、漆黒の装甲に傷一つつかない。
それどころか――
ガチリッ。
音とともに刃を握り砕いたのだ。
「馬鹿なッ!」
敵の驚愕の声。
しかし驚いているのは俺の方だ。こんなことができるなんて想像もできなかった。
思考する暇もなく体が動く。まるで戦い方を骨の髄まで叩き込まれた戦士のように。
巨体から放たれる猛攻。光弾。剣戟。全てを捌く。
否。それ以上に速く鋭い。爪で裂き、角で薙ぎ払い――気づけば優位に立っていた。
(これが……エンペラの血? これがアーマードダークネスの力なのか)
理屈はわからない。だが確信だけがある。
この力は本物だ。この肉体は自分を守るためにある。この暗黒の鎧こそが自分の一部なのだ。
敵はすでに疲弊しきっていた。全身から発せられる光は弱々しくなりつつあった。
「なぜだ……なぜおまえみたいな奴に……」
怨嗟の呟きが漏れる。
その瞬間。
『我が子孫よ』
耳ではなく頭蓋骨に直接響く声。
太古の重厚さと威厳を伴う低い声。
『その力は我より授かりし遺産。受け入れよ。そして征け』
「誰だ!?」
叫ぶも答えはない。声は途切れた。
残されたのは圧倒的な孤独感と未知への畏怖。
戦意喪失した敵に向かって一歩踏み出す。だがそのとき――
バシューンッ!
俺は、その爪で殺そうとした奴の腹部を貫く。
その直後だった。静寂を。
俺は。
「あっ」
気付くと、爪先に感じたのは、肉の感触。
「がっがぁぁ」
「あっ」
それは、俺を殺そうとした奴の臓物。
その爪はあまりにも鋭く、血だけではなく、臓物が、周囲に散らばる。
それを見た他の奴らも恐怖で、その場を逃げ出す。
同時に俺もまた感じた。
初めて、殺した。
その罪悪感に、俺は。
膝をつき、嗚咽した。
今回の話から再始動した話。その中心テーマとして、ウルトラマンシリーズでも、大ボスであるエンペラ星人の血を受け継いだ太郎という事で書かせてもらいました。
少し前に、ウルトラマンに変身する太郎を書く際に、選んだジードを元にしたウルトラマンを書きましたが、それ以上にもしも皇帝とするならば誰か?
それを考えた結果、ジードのように自分の血に抗うというテーマとして、ウルトラシリーズの中でも本気を出さない状態でも、圧倒した最強のエンペラ星人の血を受け継いだのは良くないかと思い、書きました。
エンペラ星人の血を受け継ぐ主人公という事で、その設定を元に書く場合は、どうしてもエロと同時にそれ以上にグロシーンが多くなると考えました。
その事もあり、丁度、こちらの(裏)での連載で行き詰った事も含めて書きました。
また、個人的には、アーマード・ダークネスもまた魅力的な要素として付け加えました。
アーマード・ダークネス自体が、何度も蘇る代物であり、太郎が戦う為の鎧であるのと同時に太郎にとっての最大の敵と言える存在になるかもしれません。
それらを含めた設定もあり、雰囲気としては、ウルトラマンというよりも、もしかしたら『牙狼』に近いかもしれません。
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