サムライガールの幼馴染みは王様を目指す(裏) 作:ボルメテウスさん
翌日。
舞の術式が体内で渦巻く闇を鎮静化させる。翡翠色の霊気が血管を浄化するごとにエンペラ星人の血が大人しく沈殿していく。灼熱の熔岩流が静謐な湖へと還るような変容――それは暴走直前まで己を蝕んでいた恐怖そのものを消し去るものだった。
「……ふぅ」
舞の吐息が耳朶を撫でる。彼女の指先が俺の額から離れる瞬間、体温が微かに伝わってきた。冷たさと温もりが同居する奇妙な感覚だ。
「魔力は安定しているわ。でも根治には至っていない」
白衣の袖を整えながら舞が宣告する。その声音には医学的診断の厳しさと、どこか畏怖の念が滲んでいた。
「エンペラ星人の血……文献に該当する症例がないの」
舞は机上の古文書をパラパラと捲る。陰陽術の基礎理論から退魔の実践記録まで広範な資料が広げられていた。
「魔力や瘴気とも異なる未知の波動……」
舞の視線が古ぼけた図版に固定される。
「それにしても、宇宙人って、実際にいるとはね」
「アスカの言葉も分かるけどね……私も聞いたことないわ」
「そんなに有名じゃないのかな」
「裏社会でも噂程度しか出てきてないし……」
「どうしよう」
「太郎も気にしない方が良いんじゃない」
アスカは言う。
「暴走もなくなったし」
アスカが安心している。
俺が気になる事は別の所にある。
エンペラ星人は別宇宙からの侵略者だった筈だ。
それが何故俺に受け継がれているのか。
その経緯を未だに知らない。
何よりも、エンペラ星人の力を抑えてくれる存在は一体。
エンペラ星人の血が静まったとはいえ、俺の体内には異物が潜んでいる。時折夢の中で聞こえる嘲笑――あれは幻聴なのか、それとも……
「太郎……何か来る!」
アスカの警戒した声に顔を上げた。彼女の第六感が研ぎ澄まされる。教会で培った退魔の知識が告げる異常事態。空間が軋む不協和音が耳障りだった。現実世界を歪ませる力場の発生源を探るべく、俺たちは急行した。
市街地から離れた廃工場の一角に異変はあった。まるで紙を爪で引き裂いたような空間の亀裂。その向こう側から滲み出る靄は既知のどの魔力とも違っていた。まるで宇宙そのものが漏洩しているような光景。
「裂け目……こんなの、見た事ない」
アスカが呟く。
小さな影だった。小柄な少女だ。年齢は10歳そこそこか。あどけない童顔にウサミミの頭飾りが不釣り合いなほど派手だ。服装は奇妙――モコモコの巨大ジャケットとバニースーツの組み合わせが異界の出自を主張している。
「助け……」
少女の涙声が空気を震わせた。何が起きているのか理解できない。ただ純粋な怯えだけが伝わる。その刹那。
亀裂が拡大し、巨大な手が空間を掻き毟るように現れたその手が少女を掴む。
「待て!」
考えるより先に身体が動いていた。
「太郎!」「ちょっ」
俺が向かった先。
そこは、明らかに日本ではない。まるでゲームかアニメに出てくるような街並み。
その景色は、俺の知っている現代文明とは程遠い。むしろ幻想的という表現が似合う光景だった。
しかし、それを認識する余裕はない。
俺の視界に入ったのは――巨大な兎を思わせる怪獣だ。
その全長は推定50メートルを超える。全身を覆う毛皮は金属のような光沢を放ち、赤い複眼が爛々と輝いている。口吻から滴る涎が路面を焦がす。
「なんじゃこりゃあ」
呆気に取られている暇はない。怪獣の剛腕が少女を鷲掴みにしているのだ。
迷わず腰の鞘から剣を抜く。アーマード・ダークネスの特殊合金製だ。
「離れろ」
一閃。切断面から噴き出す粘性の高い紫血。少女を手放した怪獣の咆哮が街全体を震撼させる。
俺は落下する少女を抱き留め――地上数十メートルの高さからダイブ。
「くっ!」
アーマード・ダークネスの機能で緩衝材代わりにした剣戟が地面を抉る。砂埃が晴れた頃には怪獣の巨躯が再び迫っている。俺は少女を背負い物陰へと飛び込んだ。
「おい!しっかりしろ」
背中の少女に呼びかける。震える声が返ってくる。
「……ありがと……ございましゅ」
舌足らずな言葉に少しイラつく。だが今はそれどころではない。
「とにかく、今は隠れよう」
女王は誰にする?
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アルファ
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ララ·サタリン·デビルーク
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エミリア