ようこそクズカスのヤリチン至上主義の教室へ 作:ホメロス
「んっ、ああっ! ふっ、んん……っ、あっ!」
紫色の髪をした少女が艶やかな喘ぎ声を上げている。
壁にもたれかかるようにして立ちながら、俺の指先に翻弄されるように微かだがたしかに色を帯びた声を。
「随分と気分の良さそうな声を上げるな?」
「ふっ、ふざけっ……そんな声……私が……ふぅっ」
「そうか気のせいか」
「そう、よ……んんっ、あっ……こんな女を脅して、こんなことをするやつの手で……声なんて……ふぁっ!」
「こんなってのはなんだ? ちゃんと教えてくれよ。お前は俺に何をされてるって?」
「だから、私のあそこ……んっ、うっ!? さ、さわって……んぁっ」
所々甘い声をあげながら睨み付けてくる少女の姿を見て、俺は嬲るように……そして確かめるように指を動かしながら――どうしてこんなことになったのかを思い返した。
―――
ふと気がつくと俺はこの世界に居た。
ここが俺の知っている世界ではないことはすぐにわかった。
見知らぬ家の中にいて、部屋の鏡にうつった俺の姿は見知ったものではなかったからだ。
見知らぬ自分の姿。
だが、どうにも見覚えがあるような気がする。
何だったか……そう考えながら、俺は状況を把握するために家捜しを行った。
その結果、出てきたのは一つの学生証だった。
見覚えはないはずなのに見た瞬間、それは俺のものだとわかった。
拾い上げて読んでみる。
そこに記載されていた名前はやはりというか当然というか俺の名前ではなかった。
「……九頭《くず》春日《かすが》?」
その名前を見て俺は思い出した。
「――って、クズカスか!?」
それは俺がやっていたゲームの主人公につけた名前だった。
「いや、待った。この顔、なんか見覚えがあると思ったらそういうことなのか? 俺は……クズカスになっているということか?」
「ようこそ実力至上主義の教室へ―New World―」――それが俺がやっていたゲームの名前だ。
原作をもとに作られたオープンワールドゲームで原作キャラやオリジナルキャラクターを主人公にして、「ようこそ実力至上主義の教室へ」の世界を生きることができるという作品だ。
単純に遊ぶだけでもかなりのボリュームのゲームだが、有志によって作られたMODをぶっ込むことで様々な世界観を楽しむことができることで有名だった。
俺も随分と色々と試してやり込んだものだ。
九頭春日はその中のキャラの一つだ。
「しかし、クズカスか……他のじゃなくてよかったな。」
他にやり込んでいた世界観――「賭ケ○ルイ」とか「龍○如く」の世界観がインストールとかされているやつとか、決闘者時空よりかはまだマシな世界だ。
上記二つは原作よりも遙かに治安が悪いし、決闘者時空は綾小路がワンターンkillばっかしてくるので最終的には投げたし。
それに比べればクズカスの世界はたいしたことはない。
せいぜい、特徴としてこの世界線は思いっきりR-18要素のあるエロゲー世界線なだけだからだ。
「あー、思い出してきた。たしかユニークスキルの「ヤリチン」だけで攻略できるか試そうと思って始めたんだっけ?」
この世界線では頭脳やら運動能力などのステータスの他に性技――つまりはセックスの能力も存在する。
九頭春日はそのビルドのみを特化させたキャラクターだ。
初期の頭脳や運動能力などのステータスに初期ポイントを一切振らず、性技関係のみにポイントを振るといういっそ清々しいほどの特化型。
故にクズカス。
なにせストーリーの攻略方法、女子を堕とす以外考えていないからな。
というかユニークスキルの「ヤリチン」はそれしかできない。
基本的にゲーム内での行動でステータスというのはあげられるのだが、「ヤリチン」持ちは女の子を堕とすことでしかステータスが上がらないというデメリットを持っているからだ。
「Dクラスなのはそのためか? たしかこのスキルを持っているとCかDしか入れなかった気がするし……。たしか悪印象を与えやすいんだったか?」
記憶を掘り起こしていくと俺はすでに高育に入学したあとだった。
教室で原作で見知った顔ぶれを見ていた記憶も蘇ってきた。
原作主人公でありながらある意味大抵の世界線でラスボス枠の綾小路清隆。
黒髪ロングの正統派美少女の堀北鈴音、腹黒天使な櫛田桔梗にギャル系美少女の軽井沢恵などなど……。
「……本当によう実の世界なんだな」
記憶の中の彼ら、彼女たちは非常に鮮明で俺は改めてその事を実感する。
理屈はわからないがどうやら俺はよう実の世界へ来てしまったらしい。
なぜか俺が使っていたキャラクターとして。
九頭春日として。
「――マズいな」
これがただよう実の世界へ来ただけならよかった。
それなら俺はもう少し面白半分にこの状況を楽しむことができていたのだが――俺がゲームのキャラの九頭春日になっているというのが問題だった。
「俺がクズカスである以上、原作と言うよりもゲームのよう実世界に来てしまったと考える方が妥当だ。そうなると問題が一つある」
もし、俺が退学――つまり、ゲームでいうところのゲームオーバーになったらどうなるのかという問題だ。
ゲームだと退学した時点でゲームオーバーとなってしまう。
そうなると今の俺はどうなる?
そのまま九頭春日として生きるのか。
あるいは現実世界の自分に戻るのか。
そう、そんな保証は何処にもないのだ。
「何としても生き延びる必要がある。退学を避けて卒業を目指す。通常プレイならそこまで難しくはないけど」
通常のプレイなら卒業するだけならそれほど難しくはない。
自分のクラスをAクラスにして卒業するとか、2000万ポイントを貯めて卒業するだとかならともかく――ただ卒業するだけなら別段、難しくはないのだ。
ただ、問題があるとすれば。
「俺……「ヤリチン」なんだよなぁ」
「ヤリチン」は通常のプレイではステータスが向上せず、またスキルのデメリットとして悪印象を与えやすい――一般的な好感度が上がりにくいというものがある。
これがどういうことかといえばクラス内で退学者を決める必要が出てきた場合、俺はまず間違いなく候補として上がってしまうということだ。
印象悪いし、ステータスも向上しないし、ステータスが向上しないということは特別試験での活躍も難しいということ。
「……ダメだ。早めに手を打たないと」
解決策はある。
だが、問題は相手をどうするか。
今後のことを考えるとできるだけ早く仕様は把握しておきたい。
とはいえ、そんなに手頃でかつ強引に関係を迫ることができる相手なんて――
「……いや、居たな」
それが数日前の話だった。
―――
神室真澄という原作キャラが存在する。
紫色の艶やかな髪が特徴のAクラスの女性キャラだ。
彼女は原作において万引きをするところを見られ、坂柳有栖という女性キャラに弱みをつかまれる形で従うことになるのだが――俺はそこに介入することにした。
つまりは俺が弱みを握る立場になったのだ。
イベント自体は起こるとわかっていてもタイミングがわからず、苦労はしたが俺はイベントのインターセプトに成功した。
あとは典型的な「お前の弱みを握ったぞ。学校に知られたくなかったわかってるな? ぐへへ」の展開に持ち込む。
通常のキャラならうまく弱みを掴んでも従うかどうかは乱数次第だ。
とくにステータスも低い今の九頭春日では尚更だ。
これが例えば相手が堀北鈴音のようなキャラならまず通ることはないが――神室真澄ならば話は別だ。
彼女にはとある固有スキルが存在する。
それは「破滅願望」というスキルだ。
読んで字の如く、破滅的な願望を持っており確率で行動を起こしてしまうというスキルだ。
特に盗癖があるというわけでもなく、酒が欲しかったわけでもなく、万引きを行ったことからそんなスキルが設定されたのだろう。
ともかく、神室真澄は破滅的な展開というものに惹かれる性質があるのだ。
だからこそ、最初の脅迫だけは通る。
その自信があった。
そして、その通りになったことでやはりあのゲームの内容に近い世界なのだと確信を強くした。
「くっ、はぁ……はぁ、もっ……いい加減に……っ、んぅ!」
「そっちの願いを聞いてやって手マンで我慢してやってるんだ。俺の気が済むまで付き合ってもらう」
「気が済むまで……って、ぁん……どれくらい、よ……ぅんっ」
「気が済むまでってのは気が済むまでだよ」
ここは俺の部屋だ。
そこに連れ込むことに成功した俺は脅して性交渉をさせることに同意させた。
「ヤリチン」のスキル効果の一つにR-18展開に持ち込みやすいというものがある、それの影響もあるのだろう――ここまでは想定通り。
だが、問題はここからだ。
あくまで「ヤリチン」のスキル効果はイベントを発生させやすいというだけで、その後の保証まではしてくれない。
神室の「破滅願望」もそうだ。
いくら「破滅願望」といえどもここから更にセックスまで持ち込んだ場合、反撃をしてくる可能性は高い。
破滅的な願望があるとはいっても一応限度というものはある。
だからこそ、俺は神室に取引を持ちかけた。
万引きの証拠を公開しない代わりに性交渉を行うこと。
ただし、セックスに関しては同意なく行わないということだ。
神室真澄は優秀だ。
なにせ彼女はAクラスの生徒、今の俺とはステータスが違う。
真面目に反撃されれば恐らく俺は普通に負けてしまう。
だからこそ、彼女の「破滅願望」のスキルの許容限度を超えない範囲での行為を約束した。
これならば問題なく通る。
事実、神室はその約束に同意し俺が命じたとおりにスカートのたくし上げ、黙ってこちらの手マンを受けているのだから。
「くっ、あっ……あっ、あっ……こ、こんなのなに……んぅっ、た……楽しいのよ」
「お前みたいないい女が喘いでいる様子を見るのは楽しいぜ?」
「ふ、ふざけっ……んっ、んんぅっ! くっ、あん……ふぁっ」
言葉上では反抗しているが、反撃してくる様子はない。
これはまだ彼女の「破滅願望」の許容限度の中だからだ。
俺はそれを超えないように細心の注意を払いながら――神室真澄という教材を使って成長しなくてはならない。
この実力至上主義の世界を「ヤリチン」で生き抜くために。