ようこそクズカスのヤリチン至上主義の教室へ 作:ホメロス
「いやー、時間作ってもらって悪いね櫛田」
「ううん、いいんだよ。それで相談したいことってなにかな? 中間テストのことって言ってたけど……」
コテンと首をあざとく傾げる姿がとても似合っている目の前の女の名は――櫛田桔梗という。
俺は彼女に「過去問」を渡すことに決めた。
「実はさ――」
立場の強化と縁を深めるという点において、堀北にしろ平田を通じた軽井沢にしろ、それぞれメリットはあったが結局、俺が決めたのは櫛田だった。
理由として一番大きいのはやはり彼女の行動原理がわかりやすいことだろう。
櫛田はたしかにやる気になったら普通に人を貶める策を使う危険な女だ、堀北は不要だと考えたら切り捨てることはあってもわざわざ貶めることまではしないし、平田に関してはそういったことを警戒する必要さえない。
そう言った意味で信頼度を稼いでも普通に敵対しかねないのが櫛田という女だが、この女の基本的な行動ルーチンは極めてシンプルだ。
徹底的な自己利益の追求。
承認欲求の塊であり、誰よりも注目される存在じゃないと気が済まない――即ち、「偶像願望」こそが櫛田の行動原理だ。
ここを抑えておけば思考を読むことは難しくはない。
「ほ、本当に? この「過去問」があれば……」
「念のため、複数の人物から過去問は融通して貰った。二年と三年それぞれな。その結果、一年一学期の中間テストはすべて同じ内容だってわかったんだ」
「つまり、これを使えば――」
「ああ、めでたくうちのクラスは赤点の退学者なしでクリアできるってわけさ」
俺の言葉を聞きながら過去問を見つめる櫛田。
すぐに顔を上げて笑いかけてきた。
「す、凄いよ九頭くん。これがあればみんな助かるんだね!」
「ああ、そうなる。まあ、あくまで1年最初の中間テストの時だけ使える裏道らしいようだけどな」
「それでも凄い助かるよ。勉強会は進めているけど、なかなか……でも、どうやってたどり着いたの?」
「茶柱先生が言っていただろ? 中間テストは必ず突破できると確信している……みたいなニュアンスのことをさ」
「そういえばそんなことを……」
「小テストで赤点ライン以下の生徒が何人もいたのに、あの言葉……なにか意味があるんじゃないかと思ってな。正攻法で今から勉強して赤点ライン以下の生徒が中間テストを突破できるかは……かなり難しい」
「あのテスト、最低限中学レベルの問題が解ければ赤点にはならなかったもんね」
「ああ、それなのにあの言葉。もしかしたら裏道があるんじゃないかと考えてさ」
「す、凄いよ九頭くん! 全然、私……気づかなかったな」
俺を気分よく持ち上げながら、過去問を見つめる櫛田。
その頭の中でどんなことを考えているのか――俺には手に取るようにわかる。
(俺がこのゲームを何周したと思っているんだ。お前の性格的にどう動くのが櫛田桔梗にとって一番いいか……それを考えているんだろう? そして、俺の有用性にも気づいたはず、なら――)
「でも……なんで私に?」
「ああ、実は櫛田の名前でみんなに伝えて欲しいんだ」
「そ、そんなことできないよ。これは九頭くんが見つけてきたものなのに」
「いやー、でもほら……俺ってアレじゃん? あんまりクラス内で顔が広いわけでもないから、急に過去問のことを言ってもみんな信じてくれないと思うのよ」
「そんなことないよ、私もフォローするから!」
「いいんだって。たしかに櫛田がフォローしてくれたら信じてくれるかもしれないけど……そこまでだ。できれば口止めとかもしたいんだよね」
「口止め?」
「ああ、こんなのが手に入ったのならできるだけ有効活用するべきだろ? クラスポイントは0になっちゃったし、他のクラスには漏らさずうちのクラスだけ使って――みたいなことをやりたいわけ。そうすればもしかしたら普通に得るよりもクラスポイントが増えるかもだし、そういうのがなくても他のクラスを出し抜いて一位になったって成功体験はクラスにいい影響を与えると思うんだ」
「なるほど……」
「ただ、やっぱりそこまでクラスのみんなに指示できるほどの信頼がないから。だから櫛田を選んだんだ。男女分け隔てなく信頼されている櫛田なら……いや、櫛田だからこそうまくいかせることができる」
「……平田くんとか」
「もちろん、平田の協力もいるだろうけどやっぱり最初は櫛田かなって」
俺はこれでもかと櫛田を持ち上げた。
別に嘘をついているわけでもないので気は楽だ。
実際、彼女のコミュニケーション能力があればうまく進めることができるのは事実。
あとは櫛田好みに彼女だからこそ頼んでいるというアピールを俺は混ぜ込んだ。
「なるほどねー、でもやっぱり九頭くんの名前を出した方が……」
「いやいや、俺の名前を出すと胡散臭くなっちゃうからな。変なノイズになっちまう。櫛田が見つけてきたことにしてくれ」
「そんな……功績を奪うようなこと」
「その代わりとは言ってはなんだけどさ……頼みがあるんだ」
「頼み……それはどんな?」
そう尋ねられ、俺は櫛田に頭を下げた。
「頼む、俺とデートしてくれ!」
「え、えええっ!?」
びっくりとした顔になる前、ほんの一瞬櫛田の表情が何かを計算するような顔になったのを俺は見逃さなかった。
計算しているのだろう。
櫛田桔梗という偶像に恋人は必要ない。
不要なものだ。
だが、この「過去問」で得られる名声は欲しい。
それに俺のこともそれなりに使える存在とも判断した。
下手に拒否るよりも餌を与えて飼い慣らすべきか、だがデートというのは――そんな感じだろうか。
俺は間髪入れずに言葉を続けた。
「あ、ああ……。これじゃあ、誤解されてしまうな。デートして欲しいとはいったが、デートをして欲しいわけじゃないというか……」
「どういうこと?」
「ごめん、変な言い方になった。正確にいえばデートの練習がしたいからそれに付き合ってくれって話で」
そんな俺の言葉になにかピンとくるものがあったのだろう、櫛田はハッとした表情になった。
「もしかして……Aクラスの神室さん?」
「実はそうなんだ」
小野寺の時にも使った手だ。
Dクラスでは俺はAクラスの女の子にモーションをかけている――ということになっている。
この事実はある程度、女子の警戒度を下げるには便利な設定だった。
実際、櫛田の警戒心が緩んだ雰囲気を感じた。
「もしかしていい雰囲気なの?」
「いやー、どうだろうねー? でも、いざという時になってから焦っても困るだろ? だからさ、お願い! 櫛田、デートしてくれ!」
「なるほどなるほどー」
思案するように考え込んだが、恐らく結論は決まっている。
俺に恩を売れ、櫛田の名前で過去問を使ってクラスを救える。
彼女はなにも支払う必要がない。
デートに関しても俺の秘密ともいえることを櫛田に預ける形になるわけだ。
それは今後、俺に言うことを聞かせるときの強い手札になる――櫛田桔梗はそう考える。
彼女にとってメリットばかりの取引。
だからこそ――
「うん、わかった。それなら……。神室さんとうまく付き合えるように協力するよ。過去問については――任せて♪」
―――
「――と、まあそんな感じでな。うまく付き合うもなにも俺達は突きあってる仲なのになー?」
「ときどき親父臭いわよ、あんた」
「まじ? まじかー」
櫛田との取引が終わった後、俺は神室の部屋に上がっていた。
真実の関係性を隠すなら上がり込むなよって話だが、そこは「エローズ」のサービスがあれば問題ない。
寮内のエレベーターやドアの電子ロックなどを一時的に操作して、俺が廊下を歩く時間だけ無人にして貰った。
そのせいで誰にも見られることなく、神室の部屋へといけるってわけだ。
「っていうかそれって結構ポイント使うんじゃないの?」
「一回一万ほど使うな……。まあ、真澄たちで稼いでるしな?」
「クソやろうっ……って、んぅ♡ キスで誤魔化そうとするなんて……んっ、ちゅっ♡」
「いいだろ。それよりもなんか作ってくれよ。最近はクラスでやることあって大変でさ」
「今までは腰振ってるだけの生活だったもんね。……簡単なものしかないけどいい?」
「ああ、いいぜ? 一人分増やした食器を用意しながら待ってるよ」
「……ばーか♡」
そういって神室はキッチンへ行くと夕食の用意を始めた。
その様子を眺めながら俺は考える。
(とりあえず、櫛田をデートに誘うことはできたか。普通の状態の櫛田ならまず受けなかっただろうが、俺は既に女を堕としている。その成果も出たかな?)
とはいえ、デートの約束をしただけであくまで攻略の第一歩を踏み出せた段階だ。
(相手のAIランクはA。ちょっとでも隙を作ればすぐに反撃してくるはず……。慎重に進める必要があるな。だが、櫛田を堕とせばかなりのアドバンテージになる)
手に入れるには労力がかかるが見合った分の力を発揮するのが櫛田という女だ。
(それに身体はエロいしな。性格は……まあ、多少難はあるけどアレはアレで好きなんだよなー。承認欲求の塊でなんというか生々しくて。全部塗りつぶしたくなる)
実際の性格はかなり酷い地雷女だが、だからこそ躾の甲斐があるともいえる。
「あー、なんかムラムラしてきたな」
「ちょっ……もう! 用意してたのに。……そんなに櫛田を相手にすること考えて興奮したの?」
「バレた?」
「クズのヤリチンが考えることなんてそんなもんだと思って……んっ♡ もう、食べさせろって? まったく……」
神室を膝の上に抱きかかえ、目で指示を送ると彼女はやれやれと言わんばかりに呟きながらも、箸を使って俺に食べさせ始めた。
自分で食べた方が当然効率はいいに決まっているのだが、神室のようないい女に食べさせて貰っているという事実がご飯を何倍もおいしさを向上させる。
それに自身の両手がフリーとなるのも実にいい。
俺は彼女の身体を悪戯をするように触れていく。
「んぅっ、ふっ……♡ もう、これじゃあ上手くできないじゃない」
「頑張れ頑張れー。次は玉子焼きで頼む」
「ほんとにっ!」
怒ったようなアピールをしながらも、神室の動きはとても献身的で丁寧だ。
(こういったところが気に入っているんだよなー)
モグモグとまるで王様気分でイチャつきながら夕食を食べていると話題は中間テストの話へと移った。
「それにしても過去問だなんてね。そんな裏道があるなんて……」
「坂柳も見つけたか?」
「そこまでわかるんだ。ええ、坂柳のやつも過去問を手に入れて配ってたわ。坂柳の派閥だけにね」
「葛城の派閥にまで流してないなら問題はないな。変なことは言うなよ?」
「ぁっ、んっ♡ 言わないわよ面倒くさい。そういうのに口出しをするつもりはないわよ、誰かさんが口出しをしろって命じてこない限り……」
「そうか。まあ、それならいい」
櫛田には過去問を渡すタイミングとかの擦り合わせなどを言い含めておいた。
原作だと時間的な余裕の問題もあったが、今回は時間にかなり余裕のある状態で渡している。
その後に平田とも話を通して下手に過去問の存在を知って意欲を下げられても困るので勉強会はそのまま継続、ただし教える側には事前に話を通しておきタイミングを見計らって過去問を暗記させること。
須藤あたりのことを考えると多少余裕を確保して教えた方がいい、注意を払って対応すること……みたいな感じだ。
これで原作よりもいい結果を中間テストでは出せるだろう。
そして、その称賛は櫛田に行くことになる。
平田にも話を通すことになるが彼は手柄を独り占めにするような男ではない、むしろ退学者を出さずに突破できる手段を持ってきた彼女を素晴らしいと率先して褒めたたえるだろう。
クラス中の称賛を櫛田は受けることになるわけだ。
そして、それは櫛田にとって最高の展開であり、その切っ掛けを持ち込んでくれた俺の評価も上がるはずだ。
使える駒ぐらいには考えるはずだ。
(ただ、ここから評価を上げるのは面倒なんだよな。一応、正攻法でやれないことはないけど櫛田は面倒なキャラ過ぎる。となると少し細工は必要だな)
「ヤリチン」の力を発揮するためにはどうにかして強引でもいいからそういった展開に持ち込む必要がある。
別に恋愛シミュレーションゲームのように真っ当に堕とす必要はないのだ。
その展開にさえ持ち込んでしまえばあとは手管で押し切れる自信もある。
(まあ、その展開に持ち込むのが難しいんだけど……。下手な手段を使ってもAIランクの高いキャラは反撃してくるからな。となると――)
何通りか攻略方法を思いつき、俺はその中の一つに決めた。
(デートの日が楽しみだな)
そんなことを考えながら俺は腕の中の神室を弄んだ。
「んっ♡ ちゅっ♡ んんっ♡ なによ、ちょっとキスばっかり……♡」
「だめか?」
「だ、ダメってわけじゃないけど……♡ んっ、ふぅっ♡」
啄むようなキスを神室の唇に降らせたあと、俺は彼女の唇を塞ぐとぬるっと瑞々しい唇に舌を這わせた。
形だけの抵抗をする唇をこじ開け、舌を押し込むと甘えるように神室は舌を絡めてくる。
「そういえば坂柳はなんか言ってなかったか?」
「んっ、はぁ♡ はぁはぁ♡ な、なにを……?」
「いや、俺はお前にアプローチをかけているって話になってるだろ? そのことについてどんな反応を示しているのかと思ってな」
「ああ、そのこと? それはその……坂柳の耳にも届いているみたいなんだけど」
「それで?」
「その……籠絡してこいって」
「ふーん、なるほど? 好意を寄せてくる他クラスの男を都合のいい手駒にしろって命令か」
「ほんと、ふざけた話よ」
俺に体重を預けるようにしな垂れかかりながら神室は苛立たしそうに呟いた。
ふざけた命令だからそうなるも仕方ない。
「そう怒るな」
「でも……」
「所詮は処女の言葉だ。籠絡してこいなんて……されているのは真澄の方なのに気づきもしないんだからな」
「別にそんなこと――んっ♡」
「ガキの言葉にいちいち怒るな。だが、そうだな……いいことを思いついた。籠絡をしてこいなんて命令を出したんだ。その過程の報告を受ける義務が坂柳にはあるよな?」
「報告?」
いまいち、ピンと来ないのか首を傾げる神室に答えず俺は携帯端末を録画モードにすると少し離れた場所に設置した。
ちょうど俺達二人の様子が映るように。
「ほら、今度は真澄の方からキスをしてくれ。俺を籠絡するようにさ」
「えっ、これ撮るの? それで坂柳に?」
「過程の報告だってことで見せつけてやろうぜ。俺達の熱々っぷりをさ。そうだな、シチュエーション的には自室に俺を誘い込んだ真澄が誘惑する感じで」
「ちょっ、正気?」
「いいじゃねーか。ほら、やれよ」
「いや、でも……」
「いつもとは逆で、真澄の方が俺を攻める感じでさ。イメージプレイの一種だ。さすがに会話まで演技するのは難しいだろうから画だけだけどさ。想像してみろ、お前が俺を誘惑して虜にするように……」
恥ずかしそうに目を逸らしていた神室だが、俺がそう囁くと段々と気分が乗ってきたのか目の色が危険な色を帯びた。
サディスティックな色というべきか、妖しげな瞳の色になる。
録画モードに入っている端末の位置を意識しながら、俺の隣に座ると少しだけ胸元を緩め見せつけるように身を寄せてきた。
「へえ、真澄は誘うときはそういうことをするのか」
「黙って」
そう言って神室は俺の身体や首筋に指を這わせた。
シチュエーション的に俺から手を出すことはできないので、大人しくしているのだがそれが彼女的にツボに入っているようだ。
「んっ♡ ふっ♡ ちゅっ♡」
不意に神室が唇を奪ってきた。
先ほどとは逆に彼女の方から仕掛けてくる。
俺の反応を引き出すように、唇を舐めて、口をこじ開けて舌を絡めてくる。
一方的に搾取するように。
支配するように。
「ちゅっ、れろっ♡ んんっ、ふうっ♡ ちゅっ、んっ♡」
ただただ、受け止める俺に対して段々と彼女の瞳や吐息が熱を帯びてきたことに気づく。
濃厚な貪るようなキス。
接吻、唾液の交換。
神室は際限なく熱中していき、そして――
「んんっ、ふぅんんっ!!♡♡♡」
気分が盛り上がってしまったのか続けた結果、彼女は身体を小刻みに揺らして絶頂した。
キスだけでイッてしまったのだ。
「はあ、はあ、はあ……♡」
「おいおい、イクのはダメだろ? ここら辺はカットだな。盛り上がりすぎだ」
「だって……♡」
「処女には刺激が強すぎるからな。もう一度、撮影してみるか。もう少し大人しめでできるか?」
「が、頑張ってみる♡」
荒い息を整えながら神室はそう答えた。
受け身になるのも悪くないな、と思いながら俺は彼女とのキスの動画を撮影し続けた。
最終的には我慢ができなくなり、致すことになったがそれはわかりきった結末だった。
キスでとろとろになった神室のマンコに射精しながら、俺は櫛田をどう攻略するかを考えるのだった。