ようこそクズカスのヤリチン至上主義の教室へ 作:ホメロス
櫛田桔梗はクラスのアイドル的な存在だ。
勉強も運動もできるがそれよりも特筆するべき点はその求心力にある。
個人というレベルにおいて、彼女以上にDクラスでクラスカーストが高い存在は居ない。
平田や軽井沢など他にも上位の存在はいるが、男女垣根なく信頼度を得ている櫛田相手には一歩劣る。
というかDクラスで彼女を苦手としているのは堀北などの一部の生徒のみで、その他からは満遍なく好かれているというのが彼女の恐ろしいところだ。
しかも、同じクラスだけじゃなく他クラスにまで顔も利くという始末。
これでただの純粋無垢なアイドルのようなキャラならまだしも、実は腹黒で敵と認定した相手には手段を選ばずに排除しようとするから攻略対象としては厄介なことこの上ない。
下手な失敗をすれば自身の影響力を活かして潰しにかかってくるし、根本的に自分が一番注目されてないと気が済まない偶像願望持ちだ。
真っ当な恋愛的な攻略でもかなりの手間がかかる。
なにせ彼女がなりたいのは誰からも好かれる偶像、偶像は個人的な恋愛関係なんて結ばないものだからルートに入るのもかなり難易度が高い。
そして、何より櫛田には秘密がある。
中学の時に学級崩壊を起こしてしまったという誰にも知られたくない秘密が。
だからこそ、表面上はともかく誰にも決して心を開かない。
秘密があるからこそ暴かれたくなくて攻撃的になる。
まあ、ともかくひたすらに面倒なキャラということだ。
そんな櫛田桔梗の攻略法。
まずは彼女にとって特別な存在――偶像として持ち上げてくれるその他大勢とは違う存在であることをアピールしないと始まらない。
「今日はよろしく頼むよ、櫛田」
「う、うん……そうだね、九頭くん」
それを今日、俺は達成する気だった。
中間テスト明けの休日。
俺と櫛田は約束通りにデートをすることになった。
まあ、神室とのデートのために適した場所探すことと他にもプレゼント探しに協力して貰う――というものだが。
「ごめんな、変なこと頼んで」
「いいんだよ。前からの約束だったし」
「無理はしなくて良いんだぜ? なんか顔色も悪そうだし」
「だ、大丈夫。大丈夫……だから」
どこか顔色の悪い櫛田に俺は白々しく言った。
彼女の様子がおかしいのは実のところ今日だけの話じゃない、中間テストが始まる前からのことだった。
取り繕うことが得意な櫛田だからこそ、一見するとわかりづらいが注意深く観察すればときどき元気がないことがよくわかる。
過去問の件でクラス中から賞賛され、彼女にとって至福な時間であったはずなのに気を抜くと浮かない顔をしていた。
それも当然だろう。
なにせ、彼女は何者かから脅迫を受けているのだから。
(いや、まあ……俺なんだが)
脅迫の内容は中学生時代の事件について。
櫛田はメールを送られた。
当然のようにその事実を知っているであろう堀北を犯人だと思い込み、こっそりと恐ろしい形相で睨んでいたが話はもうそんな段階ではなかった。
櫛田にとって自分の過去が何者かに知られている――その事実だけで致命なことなのだ。
櫛田封じに一番使いやすい手段は脅迫だ。
プレイヤーの設定で同じ中学や地区にしないとその情報を手に入れることも難しいし、迂闊に直接脅迫すると反撃を受けてしまうがこうやって相手が誰かわからない状態で脅迫されると彼女には打てる手段がなくなってしまう。
(櫛田は脅迫されている事実を誰にも相談することができない。櫛田にとって絶対に知られたくない過去、弱みの部分だからな……)
同じクラスの友人はもちろん、学校側に相談することもできない。
だからこそ、櫛田は脅迫された状態のまま隙を伺うことぐらいしかできないのだ。
どうにかして脅迫者を見つけ出して亡き者にしようと考えているのだろうが無駄なことだ。
脅迫文を送りつけているアドレスは「エローズ」のサービスを利用したもので、そこから探ることはできない。
迂闊に他人の手を借りることもできないから自分だけで処理しなくてはならないが、それは人気者の櫛田桔梗という自分で作り上げた立場が邪魔をする。
単純に色々と櫛田はやることが多いのだ。
中間テストの一件でクラスから人望を更に集めたのもあって、やることが増えている。
自分の時間を作ることが難しく、だからこそ有効な対策を立てる暇も無い。
その間にも脅迫の内容はエスカレートしていく。
(こっちの言葉を無視するなら前のように張り紙を貼り付けている光景を撮影して送れば一発だ)
櫛田の過去を告発する告発文。
それをカメラのない場所に貼り付けて、それを撮影してこちらを無視した櫛田に送りつけてやったら早朝であるにもかかわらず彼女は焦って学校に登校してきたものだ。
そして、貼り付けてあった告発文を処分しへたり込んだ。
その様子を撮影してまた送りつけてやったら、櫛田は表面上は大人しくなった。
内心では殺したいほど憎んでいるのだろうが、彼女から決して辿れないように慎重を期している。
問題は無い。
(櫛田は危ない女だ。ちょっとの油断が命取りになる)
最悪、自滅覚悟で相打ちに持ち込んでくるので決して油断はできない。
だからこそ、まずは精神を削る必要があった。
脅迫者としての俺は櫛田に対し性的な脅迫を行っている。
下着姿を撮影して送ってくるように命令したり、自慰行為の動画を送らせたりだ。
当然、櫛田は嫌がったが出来なければバラすぞと脅しをかければ観念したのかデータを送ってきた。
これらの行為は俺の欲を満たす行為というよりも、櫛田の心を疲弊させるためのもの、あとは脅迫者が性欲の強い男であることを示すためのものだ。
これをやらずに脅迫していると堀北だと勘違いして、櫛田が勝手に彼女と相打ち覚悟で自滅したりする。(三敗)
なのでキチンとわかりやすいぐらいに性的な脅迫を行うことが肝心だ。
「こんなのはどうかな?」
「うーん、もうちょっと可愛いのが良いんじゃないかな?」
あと注意する点は櫛田が現状、大人しく従っているからといって直接的な関係を迫る――要するにこちらの正体をバラすのはNGということ。
彼女が大人しいのは脅迫者が誰かわからないからだ。
誰かわからない以上、対策のしようが無いから大人しいだけで反撃の余地が出てくれば裏で強かに反撃の準備に移るのが櫛田桔梗という女。
一見、どれだけ心が折れているように見えてもだ。
たぶん、大丈夫だろうと進めた結果何度、あっさりと反撃を受けたことか……。
だからこそ、脅迫者として櫛田と関係を持つのはとても不味い。
ならばどうするか――
(そろそろ、だな……)
櫛田とのデートはうまくいっている。
彼女は裏表こそ確かに強いがクラスのアイドルをやれる辺り、やはり屈指のコミュ強だ。
なんというか聞き上手というか話し上手というか、とにかく雰囲気を作るのがうまい。
俺自身も紳士的に振る舞って櫛田のことを楽しませることを第一にしているのもあるのだろう、別に彼氏彼女というわけでもないのに良い雰囲気で時間を過ごせたと思う。
櫛田も同じ気持ちなのだろう。
このところ、曇っている顔が多かったがそれも改善されて俺のプレゼント選びに付き合っていた。
だが、そんな時間もここまでだ。
予定していたとおりの時間帯、櫛田の端末から着信の音がなった。
その音に彼女の顔色が変わった。
「ちょ、ちょっと離れるね?」
そう言ってその場を後にした櫛田は数分後、思い詰めた顔で俺の前に現れた。
「九頭くん、ちょっと頼みがあるの……お願い」
―――
「お、おい。櫛田、誰かに見られたら……」
「いいから」
俺が櫛田に連れ込まれたのは高育の敷地内にある公園の多目的トイレだ。
人気の無い場所とはいえ、男女が一緒にはいっている様子を見られればまず間違いなく面倒なことになる。
だというのに外面を気にする櫛田が俺をそこに連れ込んだ理由は――
「その……私の身体を触って欲しいの」
「櫛田?!」
「お願い、それを撮影して送らないと……私」
「撮影して送るって……もしかして誰かに脅されているのか? 櫛田がそんなこと……」
「何も聞かないで」
当然、脅迫されてのことだった。
神室に頼んで送って貰ったメールの内容には「男に身体を触らせている姿を撮影して送ること。指定の時間内にできなければ例の件をバラす」というものだ。
細かな点としてデートをしている櫛田のことを見かけて、こんな命令を送ってきたことをアピールした内容だ。
要するに俺に櫛田の身体を触らせろという指示だ。
具体的すぎると関係を疑われてしまうのでオブラートな内容にするように神室には頼んでいたが、どうやらうまくいったようだ。
ある意味、櫛田は絶望しているかも知れない。
自分に性的な興味を抱いている相手ならいつかは耐えきれずに自分から手を出してくるはずと考えていたのに、他人に触らせて興奮できる変態だったなんて。
「す、好きなように触っていいから……だから、お願い!」
「櫛田」
まあ、それはさておいて。
ここからが重要だ。
脅迫者として櫛田と関係を持つのではなく、あくまで巻き込まれた第三者の形として俺は立場を確保しつつ彼女との関係を持っていきたい。
据え膳ではあるが、ここは一端拒否しよう。
「待て、櫛田。そんな真似をするな。俺も力を貸すから……な? 落ち着いて話をしてみろ」
「九頭くん……」
迫る櫛田を一度説得し、俺は性欲に突き動かされる男じゃないですよアピールを行う。
紳士アピールというやつだ。
雰囲気からしてヤリチンのチャラ男だからこそ、こういったここぞという時の真面目さを演出すると効果が高いことを俺は知っている。
どことなく破れかぶれな様子の櫛田を落ち着かせると、彼女はポツリポツリと脅迫の件を話してくれた。
脅迫される原因となっている秘密に関してはもちろん櫛田は話さなかったが、俺はあえてそこをスルーした。
深い事情は聞かない、だが脅されている櫛田を捨て置けないという立場を手に入れる。
これで俺と櫛田は秘密を共有する仲となった。
誰に対してもアイドルとしての顔を振りまく櫛田相手に、俺は特別な関係性を築くことに成功したのだ。
「九頭くん……ありがとう」
「いいんだ、櫛田。櫛田には色々と世話になったしな。問題はこの犯人をどうするかだけど――」
「っ、九頭くん。また連絡が……さっさと送ってこいって。相手に困っているならこっちで見繕ってやっていいぞ。うちのクラスの池くんや山内くんの名前が挙げられてて……」
「せっかちなやつだな。俺と櫛田が歩いている姿を見たようなニュアンスだったし、もしかしたらここに入ったところも見られていたのかも」
真剣な顔をして櫛田にそう返しながら俺は思った。
(真澄のやつ……池や山内のことは指示してないだろ。まあ、効果は抜群っぽいけどさ)
池や山内はDクラスの女子の中で悪名高い存在だ。
小野寺も言っていたがプールでの一件がとても尾を引いているらしい。
端的に言ってしまえば性欲猿、準性犯罪者じみた扱いを女子の間ではされているとか何とか。
そんな相手に身体を許すなど櫛田としても想像もしたくないことだろう。
というか許してしまったらそれをネタに性欲のまま揺すってきそうな相手だ、脅迫者が二人に増えるとか考えたくもない。
池と山内という最低を比較対象として出すことで、櫛田のことを気遣って紳士的に振る舞う俺の評価を上げるというアシスト。
事実は普通に俺の方が最悪なのだが、今の彼女にそれがわかる術はない。
「九頭くん……もう、今回は」
「櫛田……すまない」
「いいよ、変なことに巻き込んじゃってごめんね」
脅迫者の苛立っている様子から俺達はこの場では従うことになった。
つまりは櫛田の身体を俺が触り、その様子を撮影して送ることだ。
あくまで秘密を暴露すると脅迫されている櫛田のために、彼女の許可を得て俺は身体を触る展開へと持ち込むことが出来たのだ。
(あとはやりたい放題だな)
脅迫者にライブで動画を送るために携帯を置くと、俺は櫛田へ向き直った。
彼女の身体は震えている。
それは身体を触れられることへの怯えや嫌悪感だろうか、あるいは脅迫者への怒りや憎しみだろうか。
判別するのは難しい。
「その……できるだけ優しくするから」
「うん」
あくまで脅迫者の指示に仕方なく従っているというスタンスを崩さず、性欲を見せずに俺は櫛田を労るように囁いた。
脅迫者が映像にどれだけ満足するかは未知数、軽く触っておしまいでは逆鱗に触れてしまうかも知れない。
最低でも十分は触らせろというオーダー通りに俺は彼女の身体に触れた。
「ふっ、ん……」
「ごめん、櫛田」
「謝らないで……九頭くん」
「できるだけ、その……気持ちよくさせるから」
「そんなこと……あっ♡」
気遣うような言葉を囁き、櫛田の身体の緊張を緩めながら俺は彼女のたわわに育った胸を揉んだ。
服の上から触っているにもかかわらず、とても柔らかな感触。
(Dクラスの男子の連中が知ったら血の涙を流しそうだな)
いつまでも揉んでいたくなるようなフワフワとした感触、並の男子なら理性の箍が外れて暴走してしまうだろうが俺は経験豊富な「ヤリチン」だ、その程度で流されたりはしない。
気が進まないという雰囲気を作りながら、俺は熟練のテクニックを使って櫛田の胸を揉んでいく。
「んっ、あっ……は、ぁっ……」
静かなら多目的トイレの中、櫛田の声が響く。
俺がとても丁寧に彼女の身体を触っている様子に、緊張で緩んできたのだろう徐々に櫛田は胸から伝わってくる快感を感じてきたようだった。
俺が手を動かす度にじわじわと感じるたしかな快感、櫛田はそれを身をよじって逃がそうとするがそうはさせないと囁いた。
「櫛田、すまない。もう少し我慢してくれ、時間まではまだある。指示に従わなかったら犯人が何をするか……気持ち悪いかも知れないが耐えてくれ」
「ぅ、んっ……ごめっ」
がっついた様子をみせず、俺がそういうと櫛田は身体をよじろうとするのを何とかこらえた。
チラリっと携帯の時間を確認し、制限時間大人しくきっちりと耐える覚悟を決めたようだ。
(それでいい。十分か……腕が鳴るな)
大人しくただ無抵抗に胸を揉ませる体勢となった櫛田、その様子を観察しながら俺は慎重に指を動かした。
欲望を発散させるための動きではない、慎重に女の身体の性感を引き出すための動き。
二人の女を堕とし、磨きのかかったテクニックをもってすれば性感を開発するのはわけもない。
櫛田は胸で感じた経験は無かったようだが、身体の感度自体は高いようだ。
「ヤリチン」である俺からすれば十分もあれば感じるようにするのはたやすい行為。
その証拠に徐々に彼女が出す声の質が変わってきていることに気づいていた。
「んっ、あっ……ふっ、あっ♡ んぅ、ぁ……はっ、あっ♡ っ、あっ……あぁ、っ♡」
それは明らかに喘ぎ声だった。
櫛田自身も自覚しているだろう、なにせ俺が無言で揉んでいるせいでトイレの中では彼女の声が良く響く。
反響して櫛田の耳に聞こえる彼女の声は、とても艶を帯びていた。
性感のせいか、あるいは羞恥のせいか、櫛田の顔が薄らと上気している。
「……大丈夫か? もう少し耐えてくれ」
「ぅ、んっ♡」
俺はそんな彼女が感じている様子にまるで気づいていない、という体裁を取り繕いながら声をかける。
櫛田はなんとか声を上げながら耐えている。
ジワジワと広がっていく快感に悶えている姿を気づかれないようにと必死な様子だ。
どれだけAIが優秀な女キャラであろうとも、性関係に関しては「ヤリチン」に勝てる存在はない。
バレバレなのに必死で感じていることを隠そうとしている櫛田はとても可愛く、このままずっと眺めていたいがそうもいかない。
(今日は初回だからな。焦りは禁物……)
警戒心を抱かせないようにただ快楽を――気持ちよさだけを与える。
(まずは軽イキだけで終わらせるか)
時間を確認しながらゆっくりと丹念に櫛田の性感を高めていく。
動きとしてはただ掌で胸を揉むという単調な動作だが、揉むときの感覚や強さの強弱をコントロールすることでもどかしい快感を蓄積させていく。
軽い絶頂に導くほどでもない快感を蓄積させ、そして――
「もう少し耐えてくれ。指示された十分まであと少し……」
「あっ、ああっ♡ はっ、ぁあっ♡ んっ、ふぅっ♡ ぁ、あ……♡」
制限時間の十分を迎え、携帯からアラームが鳴った。
指示された時間が終わったことを示すアラーム。
そのアラームを聞き、櫛田の身体全体に弛緩が走ったその瞬間――トドメを刺すようにあえて刺激を弱めていた服の下……ブラの下で尖って硬くなっていたであろう彼女の乳首を、押しつぶすように一揉み。
「っ、あっ♡ ああ、っ……!♡」
瞬間、櫛田の身体が震えた。
こぼれそうになった声を押し殺せたのはさすがの精神力だったが、俺の目は誤魔化せない。
彼女は胸だけで軽い絶頂に至ったのだ。
俺はそんな櫛田の様子に気づいた様子もなく、撮影していた携帯を止めるために離れた。
そして、ライブを止めると彼女へと向き直る。
「これで何とか要求は達成できたと思うが……。その……すまない、櫛田。胸とか触って」
「んっ、あっ……♡ ……はっ♡ い、いいんだよ。わ、私が巻き込んじゃったわけだし私こそごめんね」
「悪いのは犯人だ。櫛田は悪くない。犯人に関しては俺がなんとかする。だから、耐えてくれ。俺も協力するから」
「九頭くん」
脅迫しておきながらこんなことを言っている間違いないクズがそこには居た。