桜は慎二の部屋を訪れていた。
兄はベッドの上でうずくまっていた。
ズボンの下から、はっきりと存在を主張する大きな根っこ。
桜は、ゆっくりとベルトに手をかける。
慎二の腰が小さく震えた。
下着を下ろした瞬間、空気が熱を孕んだ。
張り詰めた暴力的なまでの硬さ。
血管が怒張し、先端からは滲む樹液がじわりと滴っている。
桜は掌を添えた。
熱い。まるで心臓がそこにあるみたいだった。
吐き出した自分の吐息を合図に、桜は手を動かした。
痙攣する脈動。
「桜、桜っ……もう、ダメだ……っ!」
次の瞬間、桜の手の中に、熱い奔流が放たれた。
早く済ませてくれるのは救いか。掌に溢れる粘りと白い証明。
桜は目を伏せたまま、静かに兄の命が、自分の手で繋がれたことを感じていた。
「……これで、死なずに済みますね。兄さん……」
桜は理解した。これから毎日、この命を繋ぎ続ける日々が始まるのだと。それが、妹としての仕事になると。
慎二の呪いは、朝に出したばかりだというのに、昼過ぎにはもう苦悶に囚われていた。
その日は昼休みに入って間もなくだった。桜の背中に、ひたひたと這い寄る気配。
振り向けば、顔色の悪い兄がドア際に立っていた。
額にはうっすらと汗が滲み、声にならない震えを唇に浮かべていた。
保健室へ連れて行くと、彼は何も言わずベッドに倒れ込み、
呻くように、桜の名前を呼んだ。
「……桜、頼む……もう、限界なんだ」
その言葉を桜は拒めなかった。
兄の命が自分の掌にある。
たったそれだけのことが、背徳を正当化する理由になってしまう。
保健室のカーテンを引ききり、ドアの鍵をかけた。
ベッド脇に膝をつき、静かに兄のベルトへ指をかける。
この流れはもう、桜の中で介護と呼べるくらいには習慣になりつつあった。
布の奥から取り出した大きな根っこは、すでに膨張しきっていた。
呼吸に合わせて震える先端。
熱を持ちすぎて、まるで何かの生き物のようだった。
もう手では足りない。
慎二の呪いは、そんな次元に入っている。
ベッドの端に身を乗り出す。
慎二の熱に顔を近づけると、すぐに鼻腔を甘い匂いが満たした。
くちゅ、と唇を這わせた瞬間。兄の腰がびくりと跳ねた。
先端を咥え込み、舌をゆっくりと這わせていく。
根元から舐め上げ、亀の頭のような所を包むように転がし、吸いつくように口腔内を動かす。
喉の奥に大きな根っこが入っていく。
慎二は呻きながら、桜の髪を握りしめた。
桜は誰にも見せたことのない顔をしている。
口内にすぐに膨らむ感触。
桜は強く吸い込み、喉の奥を震わせて迎える準備をする。
「うぅ……桜っ、出る……っ!」
口いっぱいに、熱い精が弾けた。
濃く、重く、苦くて甘いそれを、桜は吐き出すことなく受け止めた。
慎二が震えながら、桜の頭を抑えた。
私は唇を離し少しだけ苦笑を浮かべた。
「……兄さん、元気になった?」
「……サンキュー、桜」
軽口を叩き去っていく慎二。
後悔はなかった。桜は、兄の命の容れ物として、生きていくと決めたから。
チャイムが鳴る。
休み時間。
「桜」
その声を聞くだけで胸の奥に火が灯る。
炎じゃない。けれど、確かにあたたかい。
「……姉さん?」
目を上げると、戸口に立つ赤いトップスに黒いリボン。遠坂稟がいた。
凛々しくて、気高くて、でもときどき優しい人。
「休み時間、ちゃんと立って歩いてる? 昼前だと眠くなるわよ」
その言葉は咎めでも叱責でもなかった。
ただ、心配してるだけ。それが、分かってしまうから、桜は少しだけ背筋を伸ばした。
「ごめんなさい。考え事をしてたわけじゃ、ないんですけど……つい、ぼんやりしてしまって」
「別に謝らなくていいの。わたしが勝手に心配してるだけ」
稟はそう言って、教室に上がることはせず、廊下に寄りかかったまま話しかけてきた。
その距離感が心地よい。近すぎず、遠すぎずけれど必要なときには届く場所。
「でも、たまには外の空気も吸いなさい。日が出てるだけで気持ちが違うわよ」
それだけを言い残して、稟は手をひらひらと振って去っていった。
さよならとも、またねとも言わずに。
けれどその背中は、教室の窓から差し込む光のようにまっすぐで、桜は、しばらくその余韻に目を細めていた。
桜は小さく笑った。
余韻を消すようにワカメが現れた。
桜は立ち上がり、リラックマのポーチを抱えて歩き出す。
兄に離れてついて行くのは廊下の先の女子トイレ。
一番奥を軽くノックして、そっと扉を開ける。
慎二がいた。
目を伏せたまま、桜は内鍵をかけ囁く。
「……兄さん、もう……苦しいの?」
「ああ。ヤバい。……早くしろ」
桜はいつもの様に膝をついた。
ズボンのジッパーを下ろすと、すでに怒張しきった大きな根っこが、熱を帯びて立ち上がる。
喉の奥が鳴った。
もう、慣れてしまった。
兄の匂い、形、脈動。それに舌が自然に反応してしまう。
「じゃあ、舐めるね……兄さん」
その一言と同時に、舌先で先端を弾いた。
ぴくん、と跳ねる肉茎。
すぐに口腔を開き、亀頭を包むように咥える。
ぬるり、ぬちゅっ……湿った音が、誰もいない個室に響いた。
桜は顎を深く動かしながら、鼻で慎二の匂いを吸い込む。口内に充満する味と熱。
慎二は両手で頭を支え、喉奥まで押し込んでいく。
桜が涙を滲ましても、手を止めない。
喉が締まり、慎二の腰がびくびくと震え出すのが分かる。
「もう、出る……出すぞ、桜……っ!」
いつもの決まり文句。桜は目を閉じ、喉を開いた。
次の瞬間、口内に迸る奔流。
熱く、どろりと濃い精が舌を満たし、咽せそうになりながらも飲み下す。
喉が鳴る。それでもまだ終わらない。
兄は、桜の喉に向かって吐き出し続けた。
ようやく終わったとき、桜は口を離し、肩で息をしていた。
「サンキュー、ありがとうナス」
そう言って慎二はスキップしながら出ていく。
それがどんな場所であっても。桜は兄の命の器だ。
トイレットペーパーで唇を拭きながら、桜はそっと微笑んだ。
この甘い依存に、きっと私も囚われていくのだと、もう分かっていた。
教室の席に戻った桜の後ろで、誰かがふざけ合っている。
笑い声。無邪気な声。
その喧騒の中で、彼女の耳にはまだ、慎二の息遣いがこびりついていた。
「お前は俺のモンだろ? 声出せよ」
膝を揃えた。脚を閉じた。
誰から見ても、いつも通りの間桐桜。だけど、その奥がまだ疼いていた。
それは痛みではなく記憶の熱だった。
冬木市、駅前の地下街の雑踏。人混みの中を歩く桜の腕に、兄の体温が伝わっていた。
だけど、その歩調が次第に重くなっていくのを私は感じていた。
「兄さん……?」
小さな声で呼びかけると、兄は無言で額の汗を拭った。
すでに視線は虚ろで、足元がふらついている。
来た。こんな街中で、またそれが。
「ここに入れ!」
慎二は桜の手を引いて、近くの階段を下った。
そこは地下駐車場。その一角には人影もなかった。
ズボンの前が膨らんでいる。
呼吸は荒く、喉が詰まりかけていた。
「桜、もう……無理だ……出さねえと……っ」
「待って、今、するから……」
桜は膝をつき乱れる息を整えながら、慎二の前にしゃがんだ。
下着を引き下ろすと、既に張り詰めた肉が跳ね上がった。
誰かが来るかもしれない。音が響く。
迷っている時間はない。
「駄目だ……桜、立て……」
その言葉に、桜の目が見開かれる。
「まさか、入れるの……? こんなところで……?」
慎二の手が、桜のスカートをたくし上げ、下着をずらした。
桜は大きな根っこを手で導きながら、自分の脚を開いた。
壁に手をつく。
慎二の腰が、震えながら押し当てられてくる。
熱く硬い脈打つ大きな根っこが、桜の中へ。
「……んっ、くぅ……!」
挿入された瞬間、声が漏れそうになるのを必死で噛み殺した。
慎二が桜の腰を掴み、奥へ深く求める。
コンクリートの壁に手をつきながら、
桜は兄の生きる音を身体で受け止めていた。
「く……っ、桜、中、熱……っ、すげぇ……ッ」
びくんと跳ねた肉が奥で暴れた。
その瞬間、桜の内側に熱い奔流が叩きつけられた。
立ったまま抱き合い、交わった兄妹。生かすための背徳。
慎二は何も言わず、そのまま静かに身なりを整え無言でその場を離れた。
だけど残された桜の脚の間を、兄の残滓がとろりと垂れてくる感覚だけは、最後まで身体の奥に刻まれていた。
門がそこにあった。
鋳鉄の格子。錆びかけた蝶番。
花の咲かない庭。影を吐く家。
もう何度も見た景色なのに、今日は知らない場所のように感じた。
異邦。けれど確かに帰るべき場所。
足が止まる。
風が吹く。
制服の裾が揺れる。
そのひとつひとつが音もなく心を削いでいく。
──帰りたくない、と思った。
そう思ってしまった自分が、何よりも恐ろしかった。
だって、自分にはここしかないから。
ここで生きて、ここで沈んで、ここで壊れていくと決めたから。
昨日の痛みは、もう記憶の底に沈んでいた。
だけど、沈んだものは消えたりしない。
むしろ濁流のように、心の奥で音を立て続けていた。
「……ただいま」
誰も聞いていない、独り芝居。
台詞を吐くことでしか生き延びられない。
それでも扉は開く。開いてしまう。
自分の意思とは関係なく。
桜は門を押した。
小さく軋んだ音が、まるで「おかえり」とでも言っているようで嫌だった。
優しさに似せた地獄が、一番たちが悪い。
買い物袋を抱えて帰宅した桜は、玄関の扉を開けた瞬間に気配を感じた。
「あ……兄さん……?」
声をかけたその時、腕が伸びてきて肩を抱かれた。
首筋に熱い吐息がかかり、耳元で囁かれる。
「早く帰って来いよグズが。待ってたんだ。そろそろ、限界なんだよ」
玄関の土間でまだ靴も脱いでいないのに、慎二の大きな根っこがぼろんとこんにちはしていて、桜の背中に押しつけられる。
硬くなったものが、制服の腰布越しに押し当てられていた。
「ここ……外に……音、響いちゃいます……」
桜は囁くような声で制止しようとするが、兄の手が腰を押さえつけ、もう片方がスカートの中に滑り込む。
しまむらで買ったばかりのショーツをずらされた。
濡れた感触が指先に伝わると、慎二が笑う。
「……やっぱり、桜はすぐ準備できてるな」
そのまま玄関ホールの床に押し倒される。
扉は閉められていたが、声を出せば近所に響く。けれど──桜は逆らわなかった。
慎二は無言で、すでに硬くなったものを彼女の唇に押し当てた。
口を開き舌を差し出す。指を使わず、喉の奥まで届かせるように慎重に咥える。
わずかに動くだけで、口内に熱がぶつかってくる。
慎二の手が桜の頭を抑え込む。 奥までねじ込まれ、涙が滲んでも、桜は拒まない。
「……ん、んっ……ふ、んぅ……」
熱い奔流が喉奥へ迸ったとき、膝が震えた。それでも彼女は呑み込んだ。零さず全部を受け止めた。
けれど、それでも慎二には足りなかった。
そして次は洗面台だった。処理を終えたあと、口をすすごうとした桜の頭を、慎二が後ろから掴んだ。
慎二が小さく呻きながら呟く。
「中……じゃないと、駄目だ……桜……っ」
そのまま腰を引き寄せ、顔を鏡に向けさせたまま、背後から押し当ててくる。
「……兄さん、まだ……っ」
舌を這わせ唇を吸い、胸を撫でながら慎二は桜を屈ませて挿れた。
鏡の中で見える自分の顔が赤く染まり、口元には先ほどの名残が滲んでいた。
腰を突かれるかれるたびに、洗面台がカタカタと揺れた。
桜は声を抑える代わりに、鏡の中の自分を見つめ続けた。
「……私、兄さんの犬みたい……っ」
呟いたその言葉に、兄が満足そうに吐息を漏らし、さらに深くまで突き上げた。
夜、最後の処理はトイレで行われた。
桜が夜用ナプキンを替えに立ったところで、兄が後を追ってくる。
閉めかけたドアを押し返され、便座の上に押し座らされる。
脚を開かされ既に濡れた部分に指を這わせながら、慎二が言った。
「桜がいれば助かる」
桜は頷くしかなかった。自分の中が熱で疼いていた。
兄のものがまた挿し込まれ、今度は座ったまま、ゆっくりと深く突き上げられる。
押し込まれた瞬間、膣の中が押し広げられ、経血と愛液が混ざったぬるりとした感触が伝わる。
「っ……ん、く、ふあ……っ」
膣の奥を叩くたびに、水音が室内に響いた。
何度も何度も、肉の感触を確かめるように──家の中の、どこでだって。
そして何度目か分からない射精。粘る熱が子宮の入口を打ちつけ、流れ込むのを感じながら、桜は便座に背中を預け、涙を流した。
「……兄さんが、望むなら……私は……」
犬にでもなる。
桜はその羞恥に、自らの奥が蠢くのを感じていた。怖い。でも、快感だった。
まるで罰を受けるようで、なのにそれがうれしくて仕方なかった。