※この作品はR-18です。

深見さん家の ふたりごと   作:霧里

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DLC:告白のあとで(Hシーン

 

 

いつもの交差点。ぴよぴよと小鳥の囀りが、奏汰の背中を押してしまう。

「それじゃあ、また明日」言いかけた美優は、口ごもった。

もう少しだけ一緒にいたい。そう思って、ゆっくりと歩いていたのに、分かれの時間は待ってはくれない。

 

繋いでいた手が離れて、彼の温もりが遠ざかっていく。

寂しいと、言いたくなって、言いかけて、口を開きかけたその時。私の手が、彼の方へと引っ張られた。

 

「え、奏汰? あ、ちょっと……待って、え?」

 

急かすように信号が点滅し始める。

 

私の手を引いた奏汰は、何も言わす、早足に横断歩道を歩いていく。

ちょっとだけ強引に。普段の彼を思えば、少し乱暴なくらいだ。

チラリ、覗き見た奏汰の顔はもう真っ赤。そんな、慣れないことをするから。

 

カッコつけちゃって。

 

そうは思うけど、その不器用さが嬉しかった。

ああ、ダメだ。頬が緩んじゃう。こんなだらしない顔、奏汰に見せたくはないのに。

 

私よりも、少しだけ大きい手を握り返す。

 

振り返った奏汰と視線が重なって、でも、お互いすぐに目を逸らしてしまった。

さっきまであんなに見つめ合って、キスまでしてたのに。変に意識をしたせいか、彼のことを異性として強く想ってしまう。言葉にしなくてもわかる。

もっと近くにいたい。握りあった手から伝わってくる彼の気持ちは、私と同じだった。

 

胸がドキドキしてる。

 

たぶん私は奏汰と……。

 

その先を想像しただけで、体が熱くなる。

 

「ごめん……」

「……なにが?」

「いや、その……。無理やり、家に連れてきたみたいで」

「うん」

 

そう言えばそうだった。「お邪魔します」って、さっき口にしたばかり。

家に付くまでの間、私達は一言も喋らなかった。口を開けば、恥ずかしさを言い訳にしてしまいそう。逃げ出した後で、振り返った私は絶対に後悔していたと思う。

 

だから、何も言わない。

 

繋いだ手が汗ばんでくるのに気づいても、そのまま。

 

彼の部屋。彼のベッド。どれも覚えている。初めてキスをしたあの日は、もっと近くで隣り合っていたのに、今は拳ひとつ分の隙間があった。

 

ゲームをしよう、なんて言える空気じゃない。

でも、何か言わないと、このまま何も出来ないで「さよなら」になってしまうのはイヤ。

 

どうしよう? 私から声を掛けたほうが良いのかな? 

意を決して、私が口を開くより、奏汰の方が早かった。彼が私の手を掴まえる。

上から、ベッドに押さえつけるように。驚いた私は手を引こうとするけれど、その力は思ったより強くて動かせない。

 

「美優?」

 

名前を呼ばれただけで、胸が弾んだ。躊躇いと、興奮と、好きの気持ち。

たった一つの名前の中に、彼の色んな感情が混ざり合っている。

それは私も同じ。不安もあれば、戸惑いもする。それでも、高鳴る胸の音を奏汰に伝えたい。

 

「奏汰……」

 

呟く名前に一段と、鼓動に弾みが付いた。肩に触れた奏汰の手。そのまま押し倒された私の背中が、柔らかいベッドに包まれる。見上げた彼の顔はすぐ近くあった。受け入れるように目を閉じると、そっと唇を塞いでくれる。

 

さっきよりも、熱くなった彼の唇。

 

伝えるためじゃない。求めるためのキスをされて、私の体にも熱が灯る。

あの時の続きがしたいの? 中途半端に終わってしまったから、不満に思う気持ちは分かる。イヤではない、けど、まだ少し怖い。今始めちゃったら、もう止まれないんだろうなって、予感はあった。

 

どうしよう、美優? しらないよ、そんな事。やり方なんて、そんなのは……。

 

私が戸惑っている間にも、奏汰の舌が伸びてくる。

ぺろっと、くすぐるように彼の舌に唇をなぞられた。一つ、一つを、確かめるような仕草。「ぁっ」と、吐息が漏れて、薄く開いた唇に、またキスが重ねられていく。

 

説明書を読みながらのキス。

 

悪く言えば、うん、そんな感じ。でも、私にはそれが良かった。

奏汰と一緒。初めてを共有できてるのが嬉しい。これで、変に手慣れていたら、少しだけ妬いてしまったかも知れない。手探りに求められると、胸がきゅんっとする。彼に応えたくなった私は、自分から唇を開いて、舌先を差し出した。

 

これで、良いの?

 

舌、舐めたいんでしょ?

 

キスを繰り返しながら、彼の舌が私に入り込もうとしていた。

たまたまかな? そうは思ったけれど、やっぱり違う。手順を進めたがっている。

閉じた唇を割り開くようにして。少し隙間ができれば、そこから更に奥へと舌先が潜り込んでくる。

 

奏汰は今、どんな顔してるんだろう? 気になって瞼を持ち上げると、そこには、真っ赤になった彼の顔があった。私に見られてるのに気づいた奏汰は、視線を泳がせて慌てだす。そんな彼の様子が可愛くて、胸を覆っていた不安が晴れていくみたい。

 

仕方がないな。

 

ちょっとだけだよ?

 

軽く伸ばしていた舌先を、もう少しだけ彼の方へと寄せていく。

ザラリと舌を舐める感触。その刺激に、ぴくっと、体が固まった。

 

なんか急に、恥ずかしくなってきた。

 

唇を開いて、自分から舌まで伸ばして。

 

でも今更、ダメって言えない。ここで嫌がるのは、いくらなんでも奏汰に甘えすぎ。もう好きにして欲しい。羞恥心に耐えられなくなった私は、目を閉じるしかできなかった。

 

同時に、彼の手のひらが、私の頬に触れる。ゆっくりと、優しく撫でながら、下顎に降りてきた指先に、喉元をくすぐられた。こそばゆい。なんて思ってる暇は何処にもない。むしろ、彼に触れられた部分が熱くなって、もっと撫でて欲しいとさえ思う。

 

ちょっとだけ、猫の気持ちが分かってしまう。

 

ゴロゴロと、喉はならないけれど、下顎をくすぐられるのが気持ちいい。

くすぐったいのはそうだけど。でも、もっと撫でて欲しくなって、顔が持ち上がってしまう。

 

初めてのキスとは、ぜんぜん違うんだ。

 

ちゅっと、小鳥がするような軽い口づけ。唇を触れ合わせているだけでも、幸せだった。唇から好きの気持ちが伝わってくる。恥ずかしいけど、もっと触れていたくて、呼吸の仕方を忘れるくらいに、奏汰と唇を重ねていた。

 

なのに今は、舌が触れるほど深く繋がっているのに、物足りないとさえ思う。

 

ヌルリと、薄い肌が擦れる感触。お互いの温もりが、じわりと溶けていくような心地よさ。体から力が抜けたせいかな。奏汰を受け入れるように、自然と唇が開いていった。

 

おっかなびっくり。

 

お互いに伸ばした舌先が触れ合った瞬間、尻込みをするように引っ込めてしまう。

最初は、突っ付き合っていただけ。それにもなれてくると、奏汰は次第に欲を出してきた。戸惑いながらも伸ばした舌が、彼に絡めとられる。

 

ジワリ……。

 

伝わってくる感触。熱の籠もった彼の吐息と、体温もそうだけど。

それは、もっと生々しい。彼の舌から、私の舌を伝い、口の中へと流れ込んでくる。

 

私が、興奮してるせい?

 

いつもより、口の中が湿っぽい。彼の唾液と、私の唾液とが混ざり合って、頬の裏に溜まってくる。どうしよう? 戸惑っている間にも、それはどんどんと嵩を増して、喉を塞いでいった。

 

息苦しいのに……。

 

でも、キス、やめてはくれないんだ?

 

上目遣いに彼を見る。一瞬私と視線を合わせた彼は、でも、唇を離すどころか、少しだけ、顎を撫でる指に力が入る。意地悪。まるで、飲んで欲しいと言うみたい。

 

奏汰のえっち……。

 

それは、私もか。奏汰と一緒になれるのが嬉しくて、自制が効かなくなってた。

間接キスくらいで、きゃーきゃー騒いでいた頃が、懐かしく思うほどだ。

胸の中で悪態を付きながらも、私は意を決して、頬に溜まった唾液を飲み込んだ。

 

***

 

ごくり……。

 

細い首筋が、音を立てる様子が見えた。

その瞬間、奏汰の胸の内は高鳴って、得も知れない高揚感に包まれる。

 

少し、やりすぎただろうか。

 

ちょっと強引だったかも。

 

部屋に連れ込んで、美優をベッドに押し倒す。

優しくはしたつもりだけれど、やっぱり不慣れは隠せない。

次は、次は、ページを捲るように手順を変えるので精一杯。美優の様子を伺う余裕なんかなかった。キスを続けている間に、気づけば彼女の口の中に舌を差し込んでいた。

 

唾液まで、流し込んで。

 

気づいた後も、美優の唇を離さない。

 

最初にキスをした時よりも、強い衝動がそれを許さなかった。

 

随分と困らせただろう。恥ずかしい思いもさせてしまったかも知れない。

気持ち悪いと思われたらショックだけど。それは、それで、自業自得だ。

 

ごくり……。

 

喉を鳴らした美優の様子を、恐る恐る覗き見る。

「ほっ」と、熱く吐息を漏らした後、少し拗ねたような顔で、彼女は俺を見上げてきた。

 

「ばか……」

 

責められた筈なのに、胸が高鳴った。

「ごめん……」と、反射的に謝った俺は、だけど美優から視線を離せない。

 

夕陽の差し込む部屋の中。赤く染まった美優の横顔。

学校帰りで、制服姿のまま、一番大好きな女の子が、自分のベッドで横になっている。きゅっと、顔の横で小さく丸まった手が可愛らしい。もぞりと、太ももを擦り合わせて、恥ずかしそうに身を寄せる仕草に、胸を打たれる。

 

制服の隙間から、美優のおへそが覗いて見えた。

 

真っ白いブラウスと、紺色のスカートに境目に覗く美優の肌色。それが、なんだかイヤに魅力的に見えて、つい手が伸びていく。

 

「んっ……」

 

少し、高い声。肌に触れた瞬間に、美優は体を震わせた。

けど、嫌がらない。止めようともしない。ただ、恥ずかしそうに顔を俯けると、漏れてしまった声を恥じるように口元に手を当てただけ。

 

夢でも見たっけ、こういうの。

 

あの時の感触はもう、朧気になってしまってはいたけれど。

もっと確かな火照りが、触れた指先を熱くする。すべすべとした薄い肌。

なのに、決して乾いている訳じゃない。瑞々しく、しっとりともしていた。

 

制服の隙間から、そっと手のひらを滑り込ませる。

 

お腹の上から、脇腹へ、柔らかいのに、確かな肌のハリが俺の手の平を押し返す。気持ちが良い。もっと、触れたことのない場所へ、自然と手が伸びていく。

 

奥へ、奥へ、手が進む。ブラウスと肌着がズレて、夕陽に染まった肌色が、俺の前に広がっていった。次第に熱くなっていく肌は、汗ばみ始めて、湿り気を帯びていく。上下に、小さく動く美優の胸。鼓動の音が、とんとんと、俺の指先を叩いてくる。

 

温かい。

 

最初に感じたのは、月並みな感想だった。

 

指先がブラに触れて、ふわりと沈み込む。

 

ささやかな美優の膨らみは、でも、確かに女の子を形作っていた。

良いのか? 本当に? もう既に、冗談では済まなくなっているけれど、直接胸に触れるのは、少し躊躇ってしまう。

 

あるいは、嫌がった美優が泣き出しはしないかと、気を揉んでは見るけれど。

彼女は、自分の胸元に視線を落としたまま、荒い息を繰り返すだけだった。

 

真っ白いブラウスに、浮かび上がった手の形。

 

もぞもぞと、肌を這い回る指先は、遠目に見れば別の生き物が入り込んでいるようだ。自分の指なのに、ちょっとだけ気味が悪い。俺の葛藤なんか構いもせず、勝手に動き出すと尚更だ。

 

爪の先でブラを押し上げて、広がった隙間に指が入り込む。

美優の膨らみに指先が沈んでいった。その柔らかさを感じながら、更に奥へ進めていく。

 

もう、制服の裏側では、完全にブラが外れてしまっていた。

 

このまま強引に、ブラウスを捲り上げれば、彼女の胸が見える。

 

考えなかった訳じゃない。ただ、そこまで気が回らなかっただけ。

美優の膨らみが、俺の手のひらに吸い付くようだった。その柔らかさから、どうにも離れがたい。黙々と、胸の感触を楽しんでいると、次第に美優の吐息もあがってくる。それが、ますますと俺を興奮させた。今、彼女に触れている実感が、いやでも鼓動を跳ねさせる。

 

「んっ。はぁ……ぁっ。ね、奏汰?」

「え、あ、なに?」

 

すこし、躊躇いがちな声だった。

 

俺が黙ってしまったから、不安になったんだろうか?

 

視線を上げた美優は、俺の顔と自分の胸元を、交互に見比べていた。

 

「おっぱい……。触ってて、楽しい? いや、その、だってね? 私の胸、そんな大きくもないし。良いのかなって……。奏汰が良いなら、良いんだよ? いっぱい触って欲しい。けど、なんか黙っちゃうから、ちょっと気になって」

 

可愛い。

 

これが、いじらしいとでも言うんだろうか?

 

自分の体型に引け目を感じて、遠慮がちに俺の様子を伺ってくる。

ただ、ときめいてばかりもいられない。一人で夢中になってしまったせいで、美優を不安にさせてしまった。

 

軽く頭を振って、冷静さを呼び戻す。

 

なんて、伝えてあげよう?

 

今、俺の思ってる気持ち。美優の安心させてあげられる言葉がいい。

悩んだ末、また黙り込んでしまった。ますます美優の顔は不安げに変わっていく。

観念した俺は結局、なんとも幼稚で、素直な言葉を口にするしか出来なかった。

 

「今の美優、とっても可愛い」

「っぁ、ぅぅ……。それ、は? エッチな、意味……?」

「まぁ、うん」

 

違う。と言ってもしょうがなかったから、ただ頷いた。

すると、ますます顔を赤くした美優は、俯いてしまって、でも安心したかのように体から力を抜いていく。

 

「美優は? なんか、こう……。イヤだったりしないか? 痛いとかさ、気持ち悪いって、ない?」

「ううん、平気。奏汰に触ってもらえるの、嬉しい。いつもより、ずっとドキドキしちゃってる」

「いつもって、なんだよ……」

「いつもは、いつもだよ……。奏汰の事、考えてるとき、とか?」

 

初めて見る顔だった。

 

軽い冗談でも、ちょっとした意地悪でもない。

わざとらしい言い回しに、胸が高鳴る。誘うような視線に、つい引き寄せられて、触れる手に力が入ってしまった。

 

「んっ、はぁ……」高い声と、その後に、切なげな吐息が漏れる。

思わず力んでしまった事に気づいた俺は「ごめん」と、慌てて手を離す。

そんな俺は見上げながら、おかしそうに微笑んだ美優は「ね?」と、くすぐるように声を掛けてきた。

 

「奏汰は、どう?」

「どうって、なにが?」

「だから私のこと……。奏汰は考えたりは、しない?」

「そりゃ……」

 

口ごもりながらも、素直に頷く。始めて美優の夢を見たときからずっと、気持ちが昂ぶると、いつも彼女の事を想っていた。いつか、こう出来たら良いと想いながらも。いざそうなると、上手くは出来なくて、歯がゆい思いをしている最中だ。

 

「そっか……」

「うん……」

 

曖昧に頷くだけの俺に、それでも美優は嬉しそうに微笑んだ。

 

シュッと、衣擦れの音がイヤに耳に響く。

 

もぞりと、身じろぎをした美優は、スカートの中へ手をやると、白い布地を引き抜いていった。太ももから膝の頭へ、足を少し曲げてふくらはぎへ。

もぞもぞと、身動ぎを繰り返しながら、丸まった下着が、美優の細い足をすり抜けていく。

 

「あんまり、見ないで……」

 

それは、どっちだ?

 

言いながら、捲れてしまったスカートを、美優は慌てて引っ張り直していた。

その足元では、彼女が脱いだばかりの下着が放られて。後ろに振り向きかけた俺は、少しむくれた美優の声に呼び止められる。

 

「奏汰のエッチ。私のパンツなんか見て、どうするの?」

「どうって、分かんないけど」

「見るんだったら、奏汰のも見せてよ……」

「俺の? 俺のは……。あ、うん」

 

不公平だとでも言いたげに、美優は目を細める。

その視線の先には、膨れ上がった先端が、テントを張っていた。

 

ガチャリ……。ベルトを緩めて、ズボンを下ろす。

美優に見られてしまっているせいか、指先が上手く動かない。ズボンと一緒に、トランクスまで脱ぎ捨てる。不格好に、あちこちに引っ掛けながら、最後はちょっと自棄っぱちにもなっていた。

 

「あ、うっ、それ、そんな……なるんだ?」

「う、うん……」

「なんか、あははっ……。前に、裸、みっちゃった時はさ? もうちょっと、可愛かったよね?」

「そりゃ、いつもこんなにしてたら、ヤバい奴だって、俺」

「んっ……いつも。いつもって、それ、その。いつもより、大きいの?」

「……うん」

「そっか……」

 

ぐっと、息を飲み込んだ美優は、上向く奏汰のそれから視線を外せない。

 

分かってはいた。

 

始めてみた奏汰の裸と、それが重なる訳がないことを。

キスをした時だって、ただ服の上から擦り合わせているだけだったから。

大きくなっていることには気づいても、実際に目の当たりにすると、迫力? が、まるで違う。

 

忘れていた不安が胸に押し寄せて、息が苦しくなる。

スカートの端を掴んでいた指に力が入り、隠すように引っ張ってしまった。

 

本当に挿るの?

 

あんなの?

 

指ですら、挿れたことは無いのに。

自分で慰める時はいつだって、軽く撫でるか、太ももをこすり合わせるか。

いつかは、と思っても。それを、はっきりイメージした事なんかない。

 

「美優……。良いか?」

「ぁ、うん」

 

頷いちゃった。

 

もう、後には引けなくなる。

 

だって、あんまりに奏汰が切なそうに名前を呼んでくるから。見下ろす視線に求められて、私もつい、甘やかしたくなった。そうだよ、奏汰が悪い。

部屋に連れ込んで、押し倒されたら、私イヤって言えない。それに、あんな大きくして、苦しそうにしてたら、見てられないじゃない。

 

だから、だからせめて……。

 

「優しく、ね? ゆっくりだから……。いきなりしちゃ、あっ!」

「分かってる」

 

言い訳を並べてる内に、奏汰の手が私の足を開かせた。

指先が僅かに震えてる。それは、焦る自分を、無理にお仕留めているようでもあった。太ももの内側を撫でられて、力が抜けていく。近づいてくる手のひらの感触に煽られて、言いようのない火照りが、お股に集まってくるのを感じていた。

 

「美優? 手、離して?」

「ぅ、ぁ……」

 

スカートの端を掴んでいた指先が、優しく解されていく。

一つずつ、外された指が絡め取られ、恋人たちがするように握りあう。

 

窓辺から差し込む夕陽が、彼の身体に遮られた。

 

石焼き芋? どこか、遠くに聞こえてくる宣伝の声も、まるで頭に入ってこない。

 

繋いだ手が枕の横へ。ベッドの上に押し付けられて、私はその手を握り返す。

すっぽりと、彼の影に入ってしまった私の身体。これからの秘め事を、日常から隠してしまうようだった。

 

ゆっくりと、スカートが捲られると、さらに奏汰の体が近づいてくる。

心の片隅に残っていた不安や戸惑いが、足に力をいれるけど、彼の腰に膝が当たって、それ以上には、もう閉じられない。

 

ぬちゅり……。

 

先端が、私を撫でた。

 

濡れているのは、お互い様だ。彼の熱が私の愛液を掬い上げていく。

ゾクッとした。ゾクゾクとした。腰が甘く痺れて、足に力が入らなくなる。

もっと、彼と触れ合いたい。自分から足を開きそうにもなって、でも、私はそれを止めなかった。

 

ゆっくり、ゆっくりと動いてる……。

 

今度は下着越しでも、まして、ズボンの厚さも邪魔をしない。

彼の熱が直接伝わってくる。ビクビクと、生きてるように蠢いて、浮かび上がった凸凹ですら、分かる気がした。生々しい肉の感覚。固く、大きく膨らんで、奥にはしっかりと芯があるのに、滑った表面は柔らかいまま。

 

「はぁっ、はぁっ……。美優、俺っ!」

「うんっ。奏汰……もっとして、いいよ?」

 

気持ちいいんだ? 奏汰が腰を動かす度に、彼の吐息は熱を増す。

何か、大きくなる衝動を抑え込むのに必死みたい。もしかしたら、ただメチャクチャに、私を使うことだって出来たはずなのに。

 

ふと、思い出してしまう。

 

下着越しに感じた彼の熱。

 

ドクンっと、強く震えて、その度に体が熱くなるのを。

今度はそれが、直接自分の中に広がる感覚を想像すると、きゅっと、お腹の奥が縮こまった気がした。

 

ちょっと、怖いな、やっぱり。

 

でも、それは、今より気持ちが良いのかも? 

 

奏汰の熱を直接感じていると、頭の中がふわふわしてくる。

真っ白い綿に、全身を包まれるあの快感が、また近づいてきていた。

理性が溶ける。何も、考えられなくなっていく。奏汰と、気持ちよくなりたい。

もっと、気持ちよくなって欲しい。

 

ううん。

 

私はただ、奏汰に求められるのが嬉しかっただけ。

 

「ね、奏汰? ふぅ、はぁ……っ。んっ、もうちょっと……下、だから」

「え、あ、ごめんっ。ありがと……美優」

 

最初はただ、大切にされているものだとばかり。次はだんだんと、焦らされている気にもなって。いつまでもしてくれない奏汰に、最後はちょっと不満を感じていた。私で気持ちよくなってくれるのは嬉しいけれど、そんな中途半端な所で満足されると困ってしまう。

 

私だって、それなりに覚悟はしてるんだから。今、あおずけにされたら、次に勇気が出るのなんて、いつかは分からない。

 

割れ目に沿うだけだった彼が、動きを変える。

 

角度のついた先端が、中に入り込もうと、入口を探ってきた。

くちゅり……。聞こえる水音。異物感に股間が押されている。それは、奥に進んでくると、圧迫感へと変わっていった。

 

開かれていく。彼が、私の中へ挿ってくる。

 

スカートの布地に阻まれて、自分がどうなっているのかまでは見えなかった。

顔を上げて覗き込もうにも、体がガクガクと震えて仕方がない。

ヌルリと、ヌルリと、見えない圧迫感が、お腹の中に広がって、奥へ、奥へと挿ってくるのだけを感じていた。

 

やっぱり、ちょっと怖いな。

 

注射をする時に、見るのと見ないので、どっちが良いかって話しにも似てる。

勝手にされるのが怖くて、つい、見てしまいそうになるけれど。いざその瞬間には、目を閉じるような。

 

「ぃっ……」

 

チリっとした痛みを感じて、快感に耽っていた頭に正気が戻る。

何、だったんだろう、今の。ささくれを剥いだ時のような、鋭い痛みだった。

「はぁっ、はぁっ……」と、荒い息を繰り返しながら、気づけば奏汰の腰の動きは止まっていた。

 

変な、感じ。

 

全部、挿っちゃったんだ。また、ぼやけ始めた頭の中に、達成感の様なものも感じていた。少しだけ、苦しいかなって思う。まだ、痛いのも少し残っていて、そっか、あの痛いのが、私の初めてだったんだ。

 

お腹の中で感じる彼の熱。時折、ビクッと跳ねて、私の中でやんちゃをしていた。

覆いかぶさってくる彼の体重が、少し私に移って、体がベッドに沈み込む。

ぎゅっと、強く握った手を、握り返してくれる。繋がった私達から感じる快感に、温かく包みこまれていくみたい。

 

「奏汰?」

 

見上げた奏汰は、肩で大きく息を繰り返していた。

気持ちよさそうではあるけれど、それ以上に苦しそう。熱に浮かされたように体を震わせては、何かに耐えるように歯を食いしばっている。

 

「え、あっ!? 美優、ごめんっ。痛いって、今……大丈夫、だったか?」

 

心配になって声を掛けると、奏汰は慌てて顔を上げた。

 

「平気。ちょっとチクって、しただけだから」

「ちょっとって……」

 

一応、笑顔は作ったつもりだったけど。それでも、奏汰は不安そうだった。

怪我、させたとか思っちゃったかな? 本当に平気なのに。奏汰と、愛し合えた確かな痛みが、今は嬉しい。

 

「だから、ちょっとなんだって……。ほら、これくらい?」

「あっ、いっ! まって、美優……いま、はっ! くぅぅっ!!」

「あれ、そんな痛かった? ごめん……。え、あ、そうた? あっ……ぁぁ」

 

少し、軽くつねっただけ。そんなに痛くなかったでしょって、言うつもりで。

けれど、私が指に力を入れた瞬間。奏汰は声を上げて、思ったより大げさに体を震わせた。

 

繋いでいた手に、力がこもる。ちょっと痛いくらいに手を握られて、私も腰を引いてしまったのは悪かった。ヌルリと、中を擦られる。私を満たしていた圧迫感が引き抜かれるのと同時に、お股が痺れるような甘い快感に襲われた。

 

ふわっと……。

 

真っ白い綿に包まれる。

 

ふわふわとして心地が良い。

 

でも、夢見心地に耽りそうになる私を現実に引き戻したのは、お腹に広がる、熱い感覚だった。ポタリ、ポタポタ……。私の身体に降り注ぐ。

 

「くっ……」と、苦しそうなくらいに顔を歪めた奏汰が、体を震わせた。

 

その度に、お腹や、太ももが熱くなる。ビクンッと、一度大きく跳ねると、頬にまで落ちてきた。スカートや、ブラウスにも飛び跳ねて、胸元を飾る赤いリボンですら汚れていく。

 

白くて、どろどろしていて、とっても熱い。

 

だらりと、太ももの内側を舐めるように流れていった。

頬から零れて、首筋を撫でて、浅い胸の谷間から、服の中へと消えていく。

 

彼の欲望の全部が、私を汚してる。

 

それが、嬉しい。

 

気が抜けると同時に、なんだか目の前がぼやけてきた。

 

「美優っ、美優っ。大丈夫か、な?」

「え、なに? 奏汰?」

「何じゃなくって、えっと……ごめん。とりあえず、離れるから」

「やだ……」

「やだって、でも……」

 

気づいたら、奏汰が何だか焦っていた。

「ごめん」って、何も悪くはないのに、私から離れようともする。

温もりが遠ざかっていく。唐突に寂しくなった私は、親に甘える子供みたいに、彼と繋いだ手を引き寄せた。

 

「泣いてるじゃんか。やっぱり、痛かったんだろ? 無理するなよ……」

「え、あれ? 私……ほんとだ」

 

奏汰に言われて頬を撫でると、濡れた跡があった。

今だって、視界は少し滲んでいて、また一つ頬を濡らしていく。

 

「あ、まって。違うの奏汰。これ、は……。痛かったとかじゃなくって……」

 

伝えようとして、口ごもってしまう。

だって、それをどう伝えても「奏汰とエッチできて嬉しかった」と、言うようなものだった。

 

***

 

汚れた制服を洗っている間に、シャワーを浴びた私は、こざっぱりとして奏汰の部屋に戻る。着替えの代わりに借りた彼の服は、私には少し大きかった。

 

「なんか、奏汰の匂いがするね?」

 

なんて、嘘。ちょっとからかいたくなったか。励ますつもりで。

綺麗に洗われたTシャツは、どっちかと言えば石鹸の香りしかしない。彼の匂いというよりも、彼の家の匂いだ。強いて言うなら、行為の後の余韻が、私にそう感じさせていたんだと思う。

 

「なんか、ごめん……」

 

部屋に戻った後も、奏汰はベッドに座ったまま縮こまっていた。

 

「もう、まだ言ってる」

 

上手くは出来なかった。男の子として、負い目を感じるのもわかる。

でもね。あんまり落ち込まれると、後悔されているみたいでイヤ。

 

奏汰の隣に座り、甘えるように肩を預ける。二人分の体重で沈み込んだベッドが、自然と私達を近づけてくれた。

 

「良いの。初めてだったんから、私達。次は、うん、次……」

「次……」

 

次。

 

思わず口にした言葉に、奏汰も、私も、顔を赤くして固まってしまった。

それは、そのうち、そうなんだけど。少し、想像した未来は、冷静になった頭には刺激的に過ぎる。

 

「あ……。奏汰の、えっち」

 

ふと、視界の端で何かが動く。彼の方へ視線を向けると、そこは僅かに膨らんで見えた。

 

「ごめん。これは……その」

「今日は……ダメだから、もう」

「分かってるよ、うん」

「なら、良いけど……」

 

そう言いながらも、少しだけ期待をしてしまう自分もいた。

きっと、今押し倒されたって、小言を言いつつも、抵抗まではしないだろうな。

不意に、彼と指先が重なった。はっとなって、顔を上げるとお互い目があった。

見つめ合って、目を逸らして、でも、やっぱり。引き寄せられるように、顔が近づいていった。胸が高鳴って、雰囲気に流されそうになった、その時。

 

「奏汰。あれ、美優ちゃんきてるのー?」

 

階下から聞こえてきたのは、奏汰のお母さんの声だった。

 

「あ」「あ」

 

返ってきた母親の声に、二人で顔を見合わせる。

 

制服はまだ、洗濯機に入ったままだった。

 

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