体育館裏の古い倉庫。
バレーの練習中。先生に頼まれた美優は奏汰と一緒に、使わなくなった道具を運び込んだまでは良かった。けれど、建て付けの悪くなった扉と遊んでいるうちに、ガタっと音を立てた扉は、さっぱり開かなくなってしまう。
どうしよう?
誰かを呼ぼうにも、スマホは更衣室に置いたまま。
声を出しても返事はない。こんな倉庫の中からじゃ、体育館まで届かないんだろう。誰かが通りかかることにも期待は出来ない。もしかしたら、このままずっと……。夜になって、朝になっても。……ううん。首を振って、胸を覆う不安を追い払う。
「ごめん、美優。俺が無理に動かそうとしたから……」
「いいって、奏汰のせいじゃ」
不安がないと言えば嘘だけど、その内誰かはくると思う。
戻ってこない私達を気にした先生が、様子を見に来てくれたりだとかさ。
一人だったら、心細くて泣いていたかもしれない。けれど奏汰と一緒だから、まだ楽観できていた。
湿気った空気とカビの匂い。
古びたマットに腰を下ろせば、ふわっとホコリが舞い上がる。
窓から出られたら良かったんだけど。
採光用の小さな窓。埃被った跳び箱を積み上げれば手は届くかもしれない。
私なら通れるかな。でも、すぐ外には格子が嵌められていて、抜け出せそうにもなかった。
跳び箱に背中を預けて、奏汰の方へ寄りかかる。
変な感じ。学校で二人きりになる時間なんて殆どないから。
吊り橋効果って言うんだっけ? ちょっとした非日常。不安のドキドキと、好きのドキドキが重なって、どっちが何だか分かんなくなっていく。
「そう言えば美優。怪我は大丈夫なの? ボールがぶつかったって聞いたんだけど」
ちょっとした雑談の合間。途切れた会話は、私を心配する声に変わっていた。
「うん、平気。ちょっと尻もちついちゃったくらいで」
「そっか……」
安心したように息を吐いた奏汰は、それと同時にどこか余所余所しくなってしまう。それは、プールに行ったとき。私の水着姿を見たときと良く似ていた。
私を見たいのに見られない。変な風に思われたくないのか、無理に視線を逸らしているのが逆に変。
なに、考えたんだろうなぁ……。
水着のときなら、まだ分かる。
ちょっとエッチだったよね。私だってそのつもりだったから、そう思って貰えるのは嬉しいくらいで。でも、今の私は特別な格好って訳じゃない。
白い体操服に、赤のショートパンツ。制服姿ほど毎日じゃなくても、体育の時間になれば、いつでも見られるような格好だ。
そういうのも好きなんだ……。
探るように彼の視線を追いかけてみれば、普段よりも大きく開いた太ももに向けられているのが分かる。ショートパンツの隙間を覗き込むまではしなけど、なんとなくお尻を気にしているようだ。
「みて……みる?」
「見るって、なにを?」
「何って。別に……その。アザとかになってたらイヤだし」
何とは言わない。
恥ずかしかったって言うのもあるけど、もう半分は奏汰をからかいたかっただけ。
もしかしたら、ヤキモチもあったのかも。
教室で内緒話をする二人を思い出して、少しもやっとする。ひよりちゃんに何を言われたのか、奏汰は少し頬を染めていたようにも見えた。
分かってる。
奏汰のことは信じているし。ひよりちゃんを疑っているわけじゃない。
ただ、胸が高鳴っていた。溢れ出した好きの感情が止められない。
それは不安の音でも、恋の音でもなかった。もっと熱いリズムを刻んで、私を熱くする。
ダメなのに、でも……。
奏汰のことが欲しい。もっと近くに行きたい。
寂しいんだ。距離を取ろうとした分だけ、今は余計にそう思う。
学校で、体育館裏の倉庫で、体操服のままで。
何一つ正しいことなんかない。許されるのは、せめて体操服の所だけ。
いつもとは違う場所で、いつもとは違う格好で。誰かに見つかるかも。
恥ずかしいだけじゃ済まない。それも凄く怒られて。
私、バカになってる……。
立ち上がって、奏汰に背中を向けた。
古い跳び箱に手をつくと、ぎぃっと軋んだ音がする。
早く止めてほしい。「なにやってるんだよ、バカ」って、叱ってほしい。
自分じゃ正気に戻れないから。何もしないなら、もういっそのこと……。
恐る恐る彼の様子を伺いながらも、私は赤いショートパンツに指を掛けた。
息を飲み込んだ奏汰の気配に、すっごくドキドキする。見てる、見られてる。
止めないんだね。振り返って「奏汰のエッチっ」て、言ってみたい。今ならまだそれができる。
慌てた奏汰は顔を赤くして「ごめん」て言うんだ。
顔を背けながらも、でも何処か残念そうにされるの。
やっぱり男の子なんだな。そういうのも可愛いなって思う。自分に向けられる欲望に、ちょっと酔いそうになりながらも「後でね」って、赤くなる頬を隠しながら小さく呟きたい。
なのに、勇気が出なかった。
冗談半分のつもりが、立ち上がった勢いのままに流される。
好きと不安。恋と背徳感も。色んなドキドキが、私の胸の中で鳴り響く。
引っ張ったパンツのゴムが、お尻の丸みを乗り越える。白い下着まで、もう見えてしまって。晒された肌色が、どんどんと広がっていくのを止められなかった。
***
たまに美優の事が分からなくなる。
水着姿を見せるのも恥ずかしがったかと思えば、一緒にお風呂に入ろうと言ってきたり。「見る?」と言われて見たくないわけがない。
体育館裏の倉庫で二人っきり。今そんな事を言われたら、何も期待しないなんてウソだ。
からかわれているだけ。
そう思うしかない。
慌てる俺を見てみたいだとか。もしかしたら、ひよりに何か唆されていたり、彼女の言動が少し移ってしまったのもあったのかも。
ぴくっと、指が動く。
動かないように押し込めるけれど、知らず知らずのうちに手が伸びた。
美優が悪い。なんては言えない。ちゃんと「ダメ」だって、浮かれる彼女を叱らなかった俺も悪い。
お尻がどうのって、ひよりが変な事を言うからだ。
密室で二人きりの状況なのも、じわじわと効いてくる。
美優のちょっとした仕草に、視線が動く。抱えた膝に、普段はスカートの下に隠れている太ももに。さらにその先、お尻に浮かんだアザまで想像しそうになると、自然とその形にまで目がいってしまった。
……。
俺にお尻を向けたまま、振り返った美優と視線が重なる。
何かを訴えるようだった。止めてほしいのか、続けてほしいのか、正解が分からない。止めるべき、なんだろうけど。止め時を見失った俺達は、流されるままに盛り上がっていく。
「美優?」
呼びかけただけで、彼女は体を震わせた。
「お尻、ぶつけたのって……どこ?」
「えっと……その。右側、かな?」
「右……」
視線が泳ぐ。
ショートパンツがずり落ち、白い下着が顔を覗かせていた。
見ちゃいけないのに、見ないではいられなかった。下着に吸い寄せられた視線が右にそれる。
太ももとお尻の境目って、どこなんだろう?
丸みの終わりにある、僅かなくびれがそうなのかも。
綺麗だった。
薄暗い倉庫の中。差し込み始めた夕陽に浮かぶ美優の影。
体操服の持つイメージがそう魅せるのか。その後姿は、いつもよりずっと健康的に見えた。しなやかに伸びる細い手足。惜しげもなく晒された太ももと、女の子の丸いお尻。夕陽に染まる肌色には、傷の一つもなければ、アザも浮かんでいなかった。
少し、赤くはなっているのかな?
でもそれは、夕陽で赤いのか、羞恥に染まっているのか。
ぶつけたと言われなければ、そうとは気づかなかっただろう。
本当に綺麗だった。
「ひゃっ……」と、可愛らしい悲鳴が飛び出す。
その声に、俺はやっと自分が美優のお尻に触れていることに気づかされる。
「ごめん」だとか「つい」だとか、平謝りして手を離そうにも、指は動かない。
柔らかかった。
胸の膨らみとはまた違う。もう少しハリがある。「重い」なんて言ったら美優は怒るかもしれないけれど。彼女の細やかな膨らみに比べると、やっぱり。
こっちから何もしなくたって、お尻の柔らかさが手のひらに押し付けられてくる。
無意識にでも、俺の方から揉みしだいているんじゃないかって思うくらいだ。
「……あの。あのねっ、奏汰。どう……かな?」
「綺麗だ」
思わず漏れた本音。その瞬間「ひゃっ……」と、可愛らしい悲鳴が弾ける。
震えた体に力が入る。柔らかかったお尻の奥が固くなって、逃げるように腰を引かれてしまった。
「き、綺麗とかは良くって……。だから、その、変な風になってないかなって、そういう話で……」
「変な風って?」
「っ……。そりゃ、アザとかあるでしょ? 腫れてたり……なんかも」
「ないよ、そんなの。すごく綺麗なままだ」
「また、綺麗とか言う……」
「変かな?」
「だって、お尻だよ? 奏汰、そういうの好きなの?」
分からない。
お尻が良いとか、胸が良いとか。派閥は色々あるんだろうけど。
「どうかな。俺は、美優のことが好きなだけだよ」
彼女の指先一つにだって、世界一魅力的に思える自信はあった。
「それは……ずるいよ」
何か、諦めたような吐息だった。お尻の奥から力が抜けて、柔らかさを取り戻す。
嫌味はない。けれど、唇を尖らせたような声音に胸がくすぐられた。
いま美優の顔を覗き込んだら、真っ赤になっているんだろうなって気はする。
しっとりと、汗ばんでくる肌に指が吸い付くようだった。
湿気たカビ臭さの漂う倉庫の中。そこに、ふわりと鼻をくすぐる香りに気づく。
シャンプーだとか、柔軟剤だとか。作られた花畑の中に、彼女を見つけた気がした。いい匂い、とは言わないんだろうな。指摘したら、恥ずかしがった美優は、もうおしまいだとパンツを履き直してしまうかもしれない。
すんと鼻を鳴らして、美優の汗の匂いを吸い込んだ。
頭がくらっとすると同時に、強い鼓動に胸を叩かれる。
彼女のお尻に触れている内に、匂いはどんどん強くなっていく。お尻を揉む手が止まらない。大きく息を吸い込んで、胸いっぱいに彼女の香りが広がった。
もう、限界だ。
じわり、じわじわ……。
美優のお尻に触れている内に、彼女の下着の中心が少しずつ色づき始めていた。
縦の筋に沿うように、染みは広がり続ける。それを目にした途端に、ぷつんっと、俺の中で何かが切れた。
***
奏汰のバカっ、奏汰のバカっ!
見るだけって、見せるだけって言ったのに……。
いつも繋いでいる奏汰の手が、私のお尻に触れていた。
そんなところ、自分でだって見る機会があるかどうか。鏡を使ったって難しい。
胸がドキドキしていた。
お尻を撫でられている内に、下着が横へとズレていく。
このまま脱がされちゃうのかな? でも、奏汰はお尻を撫でるばっかりで、一向に下着を脱がそうとまではしてこない。男の子ってさ……。おっぱいに夢中になって、お尻にも夢中になって。
ちょっと羨ましいな。
私だって、奏汰の体に夢中になったりしてみたいけど、ぱっと思いつくものじゃない。もう少し、奏汰が筋肉質だったら違ったのかな? 一見すれば、彼はまだ中性的だ。女の子の格好をさせれば、きっとそう見える。
そんな彼の何処に、男の子を見つければ良いんだろう?
喉仏とか、胸板だとか、分かりやすいのはそんな所。繋いだ手や、抱きしめられれば、やっぱり異性を感じるけれど、今ひとつ物足りない。
そうなると、やっぱり思いつくのは一つだけ。
太くて、大きくなった、彼自身……。
ぶら下がってるときと見比べれば、その変わり様といったらない。
普段おとなしい子犬が、急に吠え立ててくるような。今だって、きっと……。
ちらりと、後ろを覗き見る。
その股間は影に隠れて見えないけれど、どうなってしまっているのかは、簡単に想像できてしまった。
「どう……かな?」
つい、尋ねてしまう。
さっきから奏汰はずっと、私のお尻を撫でたままだ。なにか、変に思われていたりしないかな? 何も言ってくれない奏汰に、不満と不安が重なって、また胸のドキドキが強くなる。
「綺麗だ」
なに、それ。
お尻が綺麗だって言われても、喜んで良いのかわからない。
触れる彼の手が汗ばんで、深く指が食い込んできた。おっぱいに触れるときよりも、ちょっと乱暴だ。
ジリジリする。ジンジンともしていた。
尻もちを付いて、ぶつけたところ。痛くはないけど、違和感は残ってる。
そのせいか、奏汰に撫でられている自分のお尻を強く意識してしまっていた。
痛いの痛いの飛んでいけ。
子どもの時にしてもらった小さなおまじない。
本当に痛みがなくなるわけじゃない。
ただ、気が紛れただけ。お母さんに抱きしめられて、安心したのも手伝った。
それと同じ。奏汰にお尻を揉まれていると、気が緩んでくる。痛みの名残は溶けていって、だんだんとお尻が熱くなってくる。
気持ちがいい。
たぶん、性的なものじゃなかったはずだ。
でも「はぁ……っ」と、熱くなる自分の吐息に気づいてしまったら、もう子どものままじゃいられない。小さなおまじない一つでも、彼のことを意識してしまう。
奏汰と二人きり。
学校で、体育館裏の倉庫の中で。
閉じ込められたって焦燥感もきっとある。薄暗い倉庫の中、お化け屋敷にも似た緊張感も手伝った。吊り橋効果って、こういうのを言うのかな。
「ぁっ……」
私の後ろで、奏汰が立ち上がったのが分かる。
だんっと、ボールの弾む音がした。ダダっと、その後を駆け足が追いかけていく。
体育館から響く音が、倉庫の静けさを余計に際立たせる。
ガサゴソと、聞こえてくる衣擦れの音。「美優」と、私を呼ぶ奏汰の声に体が緊張を思い出す。優しいけれど、いつもとは違う。熱を宿した彼の声。
うんって、頷き返すことも出来なかった。飛び出しそうになる心臓を抑えるのに必死で、ただ息を飲んだだけ。
奏汰の両手がお尻に触れて、腰が彼の方へと引き寄せられた。
反射的に足を閉じて腰を引こうにも、奏汰は私を逃さない。熱を持った彼が私に触れた途端、歓声を上げたように体が震え上がった。「ぁっ……」と、拙い嬌声を漏らして顔が熱くなってしまう。
まるで、スイッチが切り替わるみたい。
腰から背筋を伝い、興奮が頭を揺らす。視界の端が滲み始めると、くちゅり……。音が聞こえた気がした。もう、下着まで濡れちゃってる。滲んだ染みが、彼と私の境を溶かしていく。
まだ、軽く触れられただけなのに。
ああ、違う。私、お尻触られたときからずっと期待してたんだ。
太ももの隙間を押し開いて、彼が入り込んでくる。
薄い下着の向こうに感じる彼の熱。それが動く度、凸凹とした刺激が私の身持ちを崩していく。ダメだよ、こんなところで。もし、誰かきたら。そう思うのに、自分でも分からなくなる。
ぱんっと、お尻を叩かれるみたいだった。
奏汰の腰が私のお尻にぶつかって、もどかしさを思い出す。
軽い火傷みたいな。痛みには届かない僅かな刺激。気持ちいいんじゃない。
でも、虫刺されを掻いた後の様な開放感は確かにあった。
ぱんっと音がする度、お尻が甘く痺れだす。
膝から崩れそうになるのを、なんとか耐えた。
跳び箱の布張りに指を立てながら「はぁっ……はぁっ……♥」と、荒くなっていく自分の吐息を聞いていた。きゅっと、閉じた足の隙間。太ももの向こうから、彼の先端が顔を覗かせては引っ込んでいく。
上向いた先端が、下着越しに私を撫で上げた。
先端の傘みたいに広がった部分に、太ももの内側を引っ掻かれる。
溢れた愛液と、流した汗。潤んだ隙間に奏汰の熱を挟み込む。
引かれては押し込まれるたび、つぅっ……と、肌の上を伝い落ちていく雫がくすぐったい。たまらなくなって足を閉じると、震えた彼が余計に近く感じてしまう。
お股の内側に抱えた彼が熱を増す。
ぐちゅり、ぐちゅりと、凸凹が私を擦り上げながら、太ももの内側をかき回していく。跳び箱の布張りに立てていた指が滑った。吐息と共によだれが零れて、古いマットに染みを作る。
ぱんっと音がする度、理性が溶けた。
学校でエッチなことをしている。
どうして?
悪いことしてるのに。ダメなことだとおもうのに。
奏汰を受け止めるたび、何も考えられなくなっていった。それどころか、もっとしてほしいとさえ思う。
開かなくなった倉庫の中。体育館には人の気配がして、今にも誰かがくるんじゃないか。それは先生だったり、クラスの誰かだったり。もしかしたら、ひよりちゃんかもしれない。
いつもの明るい調子で扉を開く彼女。
ショートパンツを下ろしたまま、奏汰にお尻を向けている私を見つけて何を思うんだろう。「変態っ」て、嫌われるかな。それとも「ダメ」って、ちゃんと叱ってくれるだろうか。真っ赤になったひよりちゃんの顔までは想像できても、その先は思いつかない。むしろ、見られる自分を思い描いて、余計に体が熱くなった。
少し、怖い……。
今、ドキドキと胸を打つ音の正体はなに?
見られたい訳じゃない。でも、そんな自分の姿を思い浮かべてしまう。
言いようない興奮に息を飲み込んだ。すぐ隣の体育館では、部活に励む生徒たちの声だって聞こえてくるのに、私達は隠れて何をやっているんだろう。
奏汰……。
やっぱり、ダメだよ。
唇が震えて、その一言が言い出せない。
ぱんっと、乾いた音がお尻を打つ。ぐちゅぐちゅと、お股の内側で水音が掻き回されている。自分が乱されていく音だけが、イヤに耳に響いていた。荒くなった彼の吐息に、普段の優しげな様子はない。ちょっとだけ乱暴に。悪く言えば、さかりのついた動物みたいな。
「美優っ、美優っ……!」
呼ばれる度に胸が熱くなる。
動物みたいだって言えば、私だってそう。奏汰にお尻を掴まれて、跳び箱に縋り付くだけ。気づけば自分から腰を揺らしていた。太ももの内側に力を入れて、間に挟まる彼に口付けるように私を押し付ける。
隙間から顔を覗かせた彼の先端が震えて、とっぷりとヨダレように透明な汁をこぼした。そこから、汗とは違うもっと生々しい彼の匂いが漂ってくる。
ぱんっと、腰を打ち付けられて息が乱れた。
肌が熱くなり、お尻が甘く痺れて、自分の奥から熱が溢れ出すのを止められない。
本当に、何をやっているんだろう?
快感の中で、奏汰の輪郭さえもぼやけていく。
すんっと、鼻を啜っていた。埃っぽい倉庫の中、すえた匂いに一瞬正気をとりもどしても、それだけ。もう、自分が分からなくなっていた。きゅっと指に力を入れて、跳び箱の布張りに爪を立てる。それでも、失くした正気はもどらない。指の間からすり抜けていく。
やだ、こわい……。
奏汰、どこ?
せめて、顔を見たかった。
けど、振り返ろうにも私の体は何一つ自由にならない。
快感の絶頂が近づいてくる。ガリッと、立てた爪が布張りを引っ掻いた。
腰がガクガク震えだして、もう立っているのもやっと。
全身が、真っ白い綿に包まれる。
甘く、優しく、だんだんと締め付けられて、息が苦しい。
お股が切ない。お尻がジリジリと痺れて、焦れったい。痛いくらいに跳ねる鼓動が飛び出してしまいそうになって、もうどうにかなってしまいそう。
それは、ピリッとした鋭い刺激だった。
覚えたての性感よりも、もっと慣れ親しんだ感覚に、はっと目が覚める。
私の声は、奏汰の興奮に火を付けただけ。「あ、やだ、まって……っ♥」震える喉で何を言っても、嬌声にしか聞こえてない。
背中を冷たい汗が伝っていく。
お股の違和感が今にもはち切れそう。
身を捩って刺激から遠ざかろうにも、彼は私を離さない。苛立ったみたいに腰を掴む彼の指が、お尻に食い込んだ。
いくら正気を取り戻しても、体を覆う熱がなくなった訳じゃない。膨らみきった快感が全身を巡っていく。真っ白い綿は、いよいよと私を締め付けた。もう少しでも、何かをされたらダメになるのが分かってしまう。
ぱんっと、奏汰の腰が私のお尻を打った。
じんっと、お腹に響いて腰が抜けそうになる。
導火線に火が付いたみたい。ヒリ付くような痺れが背筋を伝い、頭の中が熱に染まったその瞬間。全身を包む真っ白い綿が燃え上がった。絶頂の快感に、お腹の奥が締め付けられる。きゅぅっと切なく疼いて、そこに何もない事を悔しがるような。
「あっ、ぁあぁ……♥ はぁっ、あ、あ……っ。だめ、だめ__っ」
首を振って、少しでもその瞬間を遠ざけたかった。
お股の内側で奏汰が震え上がる。顔を出した先端から大量の熱が吹き上がって、まるで私が射精しちゃったみたい。
よかった……。
気持ちよくなってくれたんだ……。
ほっとする。いつもなら、それでよかった。
絶頂の波が引いていくのと同時に、私の体からも力が抜けていく。
ポタ、ポタポタ……。最初はただ、点々としていた水音も、次第に感覚を短くしていった。
一度漏れ出したら、もう止まらない。
下着の裏が、生暖かい感覚に満たされると同時に、愛液も精液も押し流されていった。止めようにも、止まらない。絶頂の後、気が抜けてしまった私の体は、まだ元に戻らないどころか、きゅぅっと胸が苦しくなるくらいの快感を伝えてくる。
「ごめんっ、奏汰。わたし、んっ、ひっ。やだっ、あぁぁぁ……っ」
太ももの内側を、膝の裏を、ふくらはぎの丸みを伝い、靴下までぐっしょりと。
絶頂の快感、その後に続く二度目の開放感に、体がふわりと震え上がる。
同時に、残っていた雫が追い出され、ポタリと古いマットの上に飛び散った。
据えたカビ臭さ中から、むわっと漂う独特の匂い。
古いマットの上に出来た水たまりが、じわじわと吸い込まれ、消えていく。
私はただ、それを呆然と眺めているしか出来なかった。
視界がぼやけて、涙で滲む。頬を撫でる雫がくすぐったい。恥ずかしさで、死んじゃうんじゃないか。羞恥心が鳴り止まない。
なのに……。
流れでていく、その感覚が気持ちよかった。
いつもよりずっと……。奏汰に愛されて敏感になっていた私は、それを強く感じてしまう。頬が染まっていく。「ぁぁぁ……」と、か細い声で泣きながら、どうしようもない自分の痴態を恍惚と眺めていた。
***
あの後。様子を見に来た先生が扉を開けてくれて、俺達はようやく外に出ることが出来た。何を見咎められることはなかったのを幸いと言っていいのか。
それも、美優の状況に気づいた先生が、慌てて彼女を連れて行ったおかげでしかない。
帰り道。
並んで歩く美優の手が遠い。
いつも繋いでいる彼女の手は、スカート端を固く握ったまま。
さっきのことを思い出して、恥ずかしがっているのか。あるいは、場所も考えないで手を出した俺に怒っているのか。
「美優が悪いんだろ」言いたい気持ちはある。
けれど、そんなのでケンカになるのもイヤだし。結局、手を出したのは俺なのだから、彼女のせいにばかりも出来やしない。……ごめん。話のきっかけに、俺が口を開こうとした時だった。
「あのねっ、奏汰……」
美優に先を越されて、言いかけた言葉が引っ込んでしまう。
「やっぱり……ね? 学校でああいうのは、ちょっとどうかなって……思う。なんていうか、皆にも悪いしさ。イヤだったんじゃないんだよ? ただ、するなら……うん。もうちょっと落ちついた時がいいなって」
「ああ、うん。そうだな……悪かった。ごめん、美優。俺が我慢できなくって」
謝る俺に、けれど彼女は大げさに首を振っていた。
「ちがうのっ……。さっきのは、私が悪くって。あんなのされたら、奏汰だって大変なのに。ちょっと、意地悪したかったのかな。ごめんね? 急に二人っきりで閉じ込められちゃって、私もちょっと変になっちゃってて……だからっ」
まるで、助走でも付けるように。
勢い込んだ美優は、スカートから離した手を奏汰に差し出した。
私は一つ、彼に嘘をついた。皆に悪いと言いながらも、そんなの建前だ。
罪悪感と好奇心。徒に昂り続ける性感。見つかったらどうしようって、焦りもあった。早く終わらせないと。そう思うなら、しなきゃいいだけなのに。
止めるって発想には至らない。また学校でそうなったら、なにかダメになってしまう気がしていた。
「内緒……だからね? 絶対誰にも言っちゃダメだよっ! お母さんたちにもだからっ。言ったら私……奏汰のこと」
嫌いになるから。
言いかけて、言えなかった。
嫌いにはなり切れないかも。だけど、でも……。奏汰のことで、モヤモヤとしたくはない、絶対に。
「言わないよ」そう言って、奏汰は私の手を取ってくれた。
良かった。やっとこれで元通り。ちょっと手を繋いでいなかっただけなのに、取り戻した温かさに凄く安心する。不謹慎かもしれないけれど、二人の秘密が出来たことに、少しだけ嬉しくなった。
スカートの下は奏汰の体操着か、あるいは……。まぁ、どっちでも捗るな。
ここまで御覧頂きありがとうございました。
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