※この作品はR-18です。

深見さん家の ふたりごと   作:霧里

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一番の気持ち(Hシーン差分

 

 

キス、しちゃった。

 

ただちょっと、気分を変えるために奏汰をゲームに誘った。気づけば夢中になっていた私は、初めての一等賞に浮かれて、舞い上がる。目論見通り、さっきまでの事なんて忘れていた。けれど、もう少しだけ、意識はしていた方が良かったのかも。

 

奏汰の部屋。ベッドの上で、二人きり。目の前には、少し赤く染まった彼の顔。

また、気恥ずかしさが込み上げてくる。あんまりに嬉しくて、つい抱きついてしまっていた。必死に忘れようとしていた奏汰の裸が脳裏をよぎり、体の奥に熱が灯るのを感じてしまう。

 

「美優…ごめん。ちょっと離れて…」

 

奏汰に肩を押された。それに気づいた私は、恥ずかしいと思うよりも強く、寂しさが込み上げてくる。指先が、彼の襟元を掴んだまま離れない。

だって、今日一日会えなかったから。学校がお休みの日は、いつもそうなのに。変なの。会えるのを楽しみにしていた分だけ、こんなに離れがたくなる。

 

「ねぇ、奏汰?」

 

くっついてるのはダメ? 離れたくないの。心配だったんだよ、ずっと。

急に、体調崩すから。迷惑かもしれないって、思ったけど、それでも顔見たくって。

 

伝えたい言葉はいくつもあるのに、一つだって形にならない。

 

ドキドキする。胸が張り裂けそう。乱れた呼吸に熱が絡んで、息が苦しい。

一緒だね、奏汰。ドキドキしてるの、私と一緒。彼の胸に置いた手から、早くなった鼓動が伝わってくる。

 

この気持ちも、同じだと良いな。

 

祈るように瞳を閉じた。少しだけ、奏汰の方へと顔を近づける。

こんなことして、押し倒されたって知らないよ、美優? 

分かってるよ。いくら奏汰が優しいからって、今の私はあんまりに無防備だ。

 

ぎゅっと、私の肩を掴んでいた手に力が入る。

 

瞼の向う側にある、奏汰の顔は分からない。

ごくりと、息を呑む気配がした。手のひらから伝わる鼓動の音が、また一つ強くなる。

 

ちゅっ…。

 

ただ重ねただけの、優しいキス。正しいやり方なんて分からない。

恐る恐る、手探りだったのは奏汰も一緒だ。温かくて、柔らかい。しっとりとした唇は、お互いを押し合うような弾力がある。

 

不思議。

 

ただのキスだ。唇を重ねるだけの拙い愛情表現でしかないのに。

彼のことが分かる。戸惑いも、動揺も、そして、私に向けられる好きの気持ちさえ。

 

「はっ、ぁっ、はぁ…はぁっ…」

 

まるで、時間が止まっていたみたい。時計の針が動いたのは、息苦しさに耐えきれなかったから。唇が離れて、奏汰も私も、慌てるように呼吸の仕方を思い出す。

 

なんでだろう? 頭がくらくらするのは。

 

呼吸が荒いのは、きっと息苦しさのせいだけじゃないはずだ。

体の奥に灯った熱は、奏汰を想いながら自分を慰めていた時と良く似ていた。

 

「…奏汰」

「…美優」

 

もっとって、求めるように。もっとって、強請るようにも。

名前を呼び合って、見つめ合う。ごくりと、喉がなった。二人一緒、また瞳を閉じて唇を寄せ合う。

 

とくんっと、胸が温かくなった。

 

触れ合った唇が甘く痺れる。

 

息が苦しくなって、唇が離れる。乱れた呼吸を整えようと、大げさに息を吸い込んだ途端、また奏汰に唇を塞がれた。

 

「んっ、そう、たっ。あ、まっ…はっ、ちょっ、はぁはぁっ…んんぅ…」

 

息が苦しい。頭がくらくらする。

 

唇から力が抜けていくみたい。奏汰に体を預けた私は、そのまま彼と一緒にベッドに倒れ込んだ。ふわり、ベッドが弾む。奏汰の上に重なった私は、そのまま彼に抱きしめられた。

 

背中に手を回されて、ぎゅっと強く。

 

その間も、唇は求められ続けていた。何度も、何度も、唇が重なる度に甘く痺れる。息が苦しくなって、ちゅっと、途切れた水音はまたすぐに、ちゅっと、奏汰の唇に塞がれる。

 

あ、ダメだこれ。

 

逃げられない。

 

最初はただ、キスをしてみたくなっただけ。

奏汰に気持ちを伝えたくて、奏汰の気持ちを知りたくて。言葉にならない代わりに、もっと分かりやすい繋がりを求めてしまった。

 

後悔してる訳じゃない。

 

ただ、ちょっと。思ったより男の子をしてくる奏汰を、どう受け止めたら良いか分からなくって、戸惑ってしまう。奏汰に抱き寄せられる。私の薄い胸の膨らみが、形を変えるほどに強く。

 

学校帰りで、制服姿のままの私。部屋着の彼はTシャツ一枚きりだ。

隙間なく重なった肌は、服越しでさえ、お互いの興奮を伝え合う。

 

「ぁっ…」

 

感じた熱に、声が漏れた。

 

太ももの内側。お股の所に違和感があった。自己主張を始めたそれは、膨らんで、大きくなると、私の肌をさっと撫でる。その事に気付いた奏汰は、気まずそうに目を逸らし、逃げるように腰を引いてしまった。

 

いいよ。

 

口にはしない。

 

恥ずかしかったのはあるけれど。それを口にしてしまったら、夢みたいな今の時間が、覚めるような気がしていた。だって、私達はキスをしているだけだから。

ちょっと夢中になっているだけ。抱き合っていたら、体の何処かが擦れても仕方がない。

 

彼の頬に両手を添えた私は、今度は自分から唇を重ねて見せる。

 

ぴくっと、震える感じ。もぞりと、動いた奏汰は、躊躇いがちに腰を寄せてくる。太ももの内側を撫でられる感触に、ゾクッとした、ゾクゾクとした。後ろめたさかな? エッチなことをしてるって自覚はある。私の内側を這うように、奥へと近づいてくる彼の気配は、私に良くない興奮を促していく。

 

ズボン越しにとはいえ、彼のはもう、それと分かるくらいに膨らんでいた。

キスを繰り返しながら、抱き合った私達は、もぞもぞと腰を揺らし合う。

次第に、制服のスカートが捲れていくのにも気づいていた。それでも、私は動きを止めない。捲れたスカートを元に戻すどころか、曝け出そうとする彼の動きに合わせてしまう。

 

くちゅりと、水音が聞こえた気がした。薄い下着の上を、固い何かが撫でていく感じ。ズボンの合わせ目、固いファスナーの凸凹とした感触が押し付けられて、腰が震え上がる。自分で太ももを寄せ合うだけの、曖昧な刺激なんかとはぜんぜん違うんだ。体の奥から、熱が溢れてくるの。彼のが擦り付けられる度に、下着の染みが広がっていく。

 

甘い痺れ。

 

心地の良い感覚。

 

私も、きっと奏汰も、夢中になっていた。荒い息を繰り返しながら、キスをすることさえも忘れて、腰を震わせる快感に身悶える。

思い出したようにキスをするけど、もう、最初ほど長く繋がってはいられなかった。

 

すぐに苦しくなって離れてしまう。もっと、繋がってもいたいのに、できない。

その寂しさを埋めるように、私は彼の身体に抱きついた。淡い快感が、胸の内で ふわふわと膨らんでいく。肌着の裏地に乳首が擦れて、ぴりっとした刺激に息を吐く。

 

期待していた。

 

自分を慰めていた時よりも、強い興奮に。また、あの時の、ふわっとした心地よさに包まれたい。一人じゃイヤ。今度は奏汰と一緒にそうなれたら。

真っ白い綿に、全身を ぎゅっとされながら、彼にもぎゅってされて。そんなの、絶対気持ちが良いって思う。

 

自分が自分じゃないみたい。身体は勝手に動いて、奏汰を求めてしまう。

ぬるっと、ぬるぬると、私の下着はもうすっかりと濡れていて、奏汰のズボンにまで、私が染み付いていく。

 

これから、どうなるんだろう?

 

期待のドキドキと、興奮のドキドキと、それに重なる不安の音は、とても良く似ていた。まだ、キスをしているだけ。ちょっと大胆に抱き合っているだけだから。

これ以上は、まだダメって思うのに。それ以上を求める様に、胸の鼓動は強くなるばかり。私か、奏汰か、何かのきっかけがあれば、たぶんもう。

 

スカートが完全に捲り上がる頃には、奏汰の動きにも遠慮が無くなっていた。

まるで、何かを探すように。探されているのは、きっと私自身。

 

ぬるりと、下着がずらされる感覚に鼓動が跳ねた。

 

膨らんだズボンの先が、隙間から入り込もうと動きを変える。

 

もう、いっそ、このままズレちゃえっても思う。ギリギリ私の理性を保っていたのは、この薄い布地だけだった。もぞり、もぞりと。奏汰の腰が動く。

ズラされた下着は、だけど ぬるっと滑って、私達を遮った。

それが腹立たしいの? 奏汰は腰を強く突き出すと、凸凹としたズボンの膨らみが、私を甘く苛んだ。

 

苦しそう。

 

荒い息を繰り返す奏汰を見ていると、はやく楽にして上げたいと思う。

薄い下着の一枚が、私の理性をギリギリ保っているのなら。奏汰を押さえつけているのはきっと、閉ざされたままのズボンのファスナーだ。

 

ぼんやりと、彼の裸を思い出していた。

 

きっともう、さっきみたいにぶら下がってはいないはず。

どんなに大きくなっているのか、私には分からない。ズボン越しに膨らんで、固くして、その熱が僅かに伝ってくるだけ。ただ、その先が自分に向けられるのを想像して、身体は勝手に熱くなる。

 

恐る恐る。

 

私は自分の体の下に手を忍ばせて、弄るようにズボンの上から奏汰を撫で上げた。ファスナーに指がかかり、引き下ろそうとするその瞬間。

 

「はっ! あっ、美優っ…それっ、はっ。あっ、くっ!!」

 

強く、名前を呼ばれて心臓がドキッと跳ねた。

逃さないように。彼は、私を胸の内に抱き竦める。

 

ドクンっ、ドクンっ…。

 

じわり、滲んでくる熱は、私から流れたものじゃない。彼のが大きく震える度に、下着が押し上げられて、湿った熱気が私にも伝ってくる。下着越し、ズボン越しなのが、もどかしい。もっと直接届けてほしいと、何処かで思う。

 

それでも、初めて感じた彼の熱は特別だった。

 

まだ、不慣れな私は、それだけで満たされる。

 

ふわっとした。

 

体中、頭の中まで、真っ白い綿に包まれる。

私が、私でなくなる感じ。例えるならそう、心地の良い不安感。全身が甘く痺れて、身体に力が入らないのに、指は彼から離れない。「はぁっ…はぁっ…」と、大きく息を吐きだしながら、安心を求めた私は、彼に縋り付く。

 

夢のような時間だった。

 

本当に、時間が止まったみたい。

 

ふわふわとした心地よさに包まれたまま、奏汰は私を抱きしめていて、私は奏汰に抱きしめられている。このままずっと、こうしていたかった。

 

でも、時計の針は動き出す。

 

私達を夢から覚ましたのは、鳴り響くスマホのコール音。

ベッドの隅で、それはピカピカ光って、行為の余韻を散らしてくみたいだ。

 

時間切れ。

 

分かっていたことだけど、でも、やっぱり名残り惜しい。

 

奏汰は一度、スマホに視線を向けるけど、それを取ろうとはしなかった。

気持ちは分かる。私だって、いつまでもこうしていたい。でも…戻って来るまでって言われているから。特別な時間はきっと、限りがあるから特別なんだ。そう、思うことにする。

 

「奏汰…。出たほうが良いと思う」

「え、なんで?」

「その…。良いから、ね?」

 

渋々。離れがたいのは一緒。促されてスマホの画面を見た奏汰は、ぴくっと固まった後、私に声を掛けてきた。

 

「美優、離れて? ちょっと、片付けよう。母さん、もう帰ってくるって」

「あはは…。だよね、やっぱり」

 

急に現実を思い出した私達は、いそいそと身なりを整えていた。

 




抱き合ってキスしてるだけだから。
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