※この作品はR-18です。

静水は青く濁る   作:beatrice

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幕間

帰りの車内で私は鳥羽から映像データを受け取っていた。

『約束どおり、映像は全て返そう。もちろん今後は君に一切関わらないと誓おうじゃないか』

「当然です。そうでなければ、私が身体を差し出した意味がありません。もし、反故にするようなら貴方を訴えます」

『分かっているさ。私が約束を守らなかった事はないだろう?』

「…」

確かに鳥羽は身体を差し出せば、約束はすべて守ってきた。今回もそれを信じるしかない。

「秋穂さんはこれからどうするんですか?」

『こんな事になった以上、私と一緒に仕事なんて出来ないでしょ?鳥羽さんの会社に入る事になったから、近いうちに事務所には辞表を出しに行くわ。あっ、後任への引き継ぎはちゃんとしておくから、その事は気にしないで』

「…そうですか」

確かに秋穂さんと一緒に仕事をする事は無理だと思ったので諦めもついた。

『ああ、そうだ。阿見くん、もう必要も無いから、あの映像も返しておいてくれるか?』

『そうですね。忘れるところでした』

「あの映像って?オーストラリアの他に何かあるんですか?」

『やちよさんのスマートフォンに今送ったわ。確認するのは別れてからにしてもらえるかしら』

「はあ…」

鳥羽の事だから、どこかで隠し撮りでもしていたのかもしれない。この時はそんな事を考えていた。

『それでは七海くん。半年ぐらいの付き合いだったが楽しませてもらったよ。達者でやりなさい』

太陽が西に傾き、空を赤く染めた頃。私は駅で一人、車を降ろされた。

秋穂さんは鳥羽たちと一緒に行ってしまった。

阿見さんから届いた映像が気になり、それを再生した。

(何よ、これ…)

 

私は恋人の家に向かっていた。

直接話をしたくて、既に向かっている事と伝えてある。

玄関のブザーを鳴らすと彼が出迎えてくれた。いつものような笑顔で。

「急に来ちゃったごめんなさい」

『いや、全然良いんだけど。仕事はもう終わったの?』

「ええ、今日の昼には終わったの。さっき帰ってきたところよ」

『そっか、お疲れ様。それで、話って何?』

「これ、どういう事?」

私が彼に見せたのは、阿見さんから届いた映像だった。

その映像の中では彼が阿見さんに跨り、腰を振っている映像だった。その他にも阿見さんがフェラをしているものもあった。

「これ、この部屋で撮られたものよね?それも、私がオーストラリアに行っている間に」

彼は黙ってしまい何も言わない。

「ねえ、何か言ってよ」

『確かにそうだよ。やちよがオーストラリアに行ってる間に抱いたよ』

「何で?どうしてよりによって彼女なの?」

『やちよだって同じことしてるだろ?』

「何の話?」

『じゃあ、これは何だよ!』

そう言って彼がテレビで再生したのは、馬に裸で跨った私の映像だった。「どうして、貴方がそれを持ってるの…」

見られたくなかったものを見られてしまい、頭の中が白くなる。

『モデルの仕事とか言ってたけど、こんな映像撮ってたなんてな。どうせ監督とかに抱かれてたんだろ?だったら俺が誰とやろうが良いじゃないか』

「そんな事してないわ。それにその仕事を受けたのだって、貴方とホテルに入ったところを撮られた所為なのよ」

『だから自分だけが悪いんじゃないって?今回だって急なオファーだって言ってたけど、本当はヤリに行ってただけなんじゃないのか?』

「…その通りよ。1週間相手をしたら映像データを返してくれるって言うから応じたわ」

『ふざけんな!』

彼に無理矢理押し倒される。

「どうするつもり?あの男みたいに私を犯すの?」

憤怒の表情の彼を見上げて言う。

『そうしてやるよ。お前のあんな映像観て溜まってるんだ』

荒々しく服を捲って身体を触ってくるが全く気持ち良くなんてない。

『おい、いつもみたいに喘げよ』

「ふふっ…」

『何、笑ってんだよ?』

「貴方がそんなに下手だとは思わなかったわ。私を犯したあの男の方がずっと気持ち良くしてくれたし、ペニスもあの男と比べたら貴方のなんて全然ね」

『…萎えたわ。お前、もう出てけ』

「そうさせてもらうわ。さようなら」

 

まさかこんな事になるとは思わなかったが、もうどうでも良かった。

恋人や姉のように慕っていた人とも別れてしまったが、私にはまだみかづき荘の皆がいる。

頬を叩いて笑顔を作り、懐かしの我が家に入る。

「みんな、ただいま」

居間には全員揃っていた。やちよと十七夜もいる。

「あら、2人も一緒だったのね。急に頼んじゃってごめんなさいね」

(何か雰囲気がおかしいわね)

そう思っているといろはたちが駆け寄ってきた。

『やちよさん、大変なんです!』

『そうだよ!みかづき荘が大変なんだよ!』

鶴乃ですら慌てていて、フェリシアに至っては私にしがみついている。ういちゃんもいろはに抱きついていた。

「お、落ち着いて。ねえ、何があったの?」

みんなを宥めていると十七夜が口を開いた。

『みかづき荘が区画整理の対象になった』

「えっ?」

十七夜の手に握られていたのは「神浜市の災害復興に伴う再整備事業及びそれに伴う区画整理の住民説明会」の通知だった。

区画整理 ー その対象にみかづき荘も含まれていた。

 

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