前編
『えっ、写真集の撮影で海外?』
「ええ、そうなの。2週間ほどかけて各地で撮影する予定よ」
表向きの理由は写真集の撮影という事になっていてこちらは実際に発売に向けて動いていると教えられた。だが実際はイメージビデオの撮影の合間に撮ることになっているので、彼に嘘を言っていることに罪悪感を抱いてしまう。
(ごめんなさい。貴方以外の人に裸を晒すことになってしまったわ)
『そっかぁ。じゃあ当分は会えなくなるのかぁ』
「ええ、だから今日はしたい事は何でもしてあげるわ」
償いの気持ちからこの日は何度も身体を重ねたが、撮影まで日はまだある。それまでにはキスマークも消えるだろう。
いろは達にも撮影の為に長く家を空ける事は伝えてあった。小中学生だけを残していくのは心配だったのでその間は他の魔法少女の家に世話になる事で話をつけていた。
いろはとういちゃんは千秋さんの家、フェリシアは万々歳、一般人に姿が見えないさなは静海さん達が快く引き受けてくれたので私が日本にいない間も一安心だった。
「それじゃあ、皆行ってくるわね」
『やちよさん、いってらっしゃい』
『お土産は肉がいいぞ』
見送りに集まってきた皆の顔を見ていると酷い裏切りをしているような気になり胸が痛くなる。
それでも顔に出ないように努めて空港へと向かった。
空港には二度と会いたくない面子が揃っていた。
鳥羽、鷹野、鳩村。3人とも今回の撮影に同行するのだという。
『やあ、七海さん。よく眠れたかな?』
鳩村が軽々しく話しかけてくる。
「そんな訳ないでしょう」
こちらとしては話したくなどないのだ、突き放すような物言いで返す。
『七海君。最初からそんなに気を張っていても撮影期間保たないだろう。リラックスだ、リラックス』
「誰の所為だと思っているの?」
発言の一つ一つが癪に障る。張り手の一つでもかましたくなる。
マネージャーである秋穂が同行してくれる事になっているが、彼女も裸の動画を撮られている為、常に気を張って油断しないように身構えている。
撮影スタッフはカメラマンから照明、ヘアメイク、衣装など多くが集まっている。
衣装合わせとしてスリーサイズを測られたり、水着や下着まで選ばされただけでも屈辱なのに、男性スタッフもいる中で脱ぐと考えると気が遠くなりそうだった。
自分たちが乗る飛行機のチェックインのアナウンスが流れた。これから向かう先はオーストラリアだ。敢えて費用がかかるようにしてキャンセル出来ないように画策しているのだろう、相手の狡猾さがよく分かる。
飛行機での移動中は自分たちはエコノミークラスの座席だったので、その間だけでも鳥羽たちと離れられたのは幸いだった。
スタッフたちが話しかけてくる事もあったが撮影内容を理解しているからか、緊張をほぐそうと軽い冗談を交えながらの会話だったのこちらとしても大いに助かった。
現地に到着した。
日本とは季節が真逆なので暑くなるだろうと思っていたが、この日は心地よい気温だった。
空港からホテルへと移動する。今日は撮影スケジュールの再確認が行われた。2週間の日程の中で移動を繰り返してホテルや農園、牧場、鳥羽のプライベートビーチなどを巡り、明日はこのホテルで写真集の撮影も同時に行われる事になっている。
初日という事もあり、夕食はスタッフも全員参加しており各テーブルに秋穂とともに挨拶をして回るが、やはり男性スタッフからは好奇の目で見られ、女性スタッフから憐憫の感情を感じた。
そして鳥羽と鳩村のいる席が近付いてきた。本当は近寄りたくなどなかったが、目が合ってしまった以上無視をする訳にも行かない。
恐る恐る近付くと既に酔いが回っているのか上機嫌だった。
『七海君。明日から撮影だが体調はどうかね?』
「コンディションは整えてきました。何も問題はありません」
『頼もしいな。作品が完成するのが楽しみだ』
(何が作品よ。性欲を解消する為の手段としか見ていないくせに)
『まあ、今日は早めに休んでくれ』
「よろしいのですか?」
『構わんさ。スタッフ達の視線が気になって食事する気分でもないだろう?』
「そうですね」
『ルームサービスを取るなら鳩村に付けておいてくれ』
「ではお言葉に甘えて失礼します」
『ああ、そうだ。木原さんは少し残ってくれるか?今後の話をしよう』
鳥羽が秋穂だけ呼び止めた事に不安が残り、目配せをするが先に戻るよう促された。
『話とは何でしょうか?』
空いている席に促された秋穂はそこに座り、話に耳を傾けている。
何となく会話に混ざらない方がいいと思い食堂を後にし、早めに寝ることにした。
そして翌日、朝食を控えめに済まして撮影準備が始まった。日本で既に衣装選びも済んでいたので決まった服に着替えるだけだが、衣装として用意された下着を目にすると気が塞いでしまう。
特段派手なデザインのものではないのだが、これを身に付ける事に抵抗を感じる。
しかし、撮影時間を遅らせる訳にもいかない。女性のスタイリストやメイク担当が同席する中、私物の服と下着を脱いで用意された衣装を身に纏っていく。
撮影場所は鳥羽が利用していた最上級の部屋で既にカメラや照明の準備が完了していた。
これから複数人に見られながら裸になるのかと思うと気が遠くなりそうだ。スタッフたちは仕事に対して熱心に動き回っているが、鳥羽や鳩村は性欲にギラついた眼でこちらを見ている。
監督の合図で撮影が始まった。
水色のワンピースを纏いカメラの前でポージングをする。
普段のファッションショーとは勝手が違うから参考にとイメージビデオを幾つか渡されたのでいろは達が寝静まった後に自室で見ていたが、あまりにも露骨な内容でこんな事をさせられるのかと思うと涙が止まらなかった。
それでも仕事として行う以上は完璧に行いたかったので扇情的なポーズや表情の練習を怠らなかった。
服の上から身体を撫でて胸やお尻の形を見せつける。決して大きいとは言えないが形には自信があった。
カメラに背を向けてジッパーを降ろしていく。もしかしたらカメラにはブラのバックベルトが映っているかもしれない。羞恥心から辞めたくなるがここで投げ出すと何が起きるか分からない。ワンピースを脱ぎ去りカメラに向き直った。
身につけているのは白い下着で装飾は少ないが清楚感はある。ソファの上で四つん這いとなり、カメラに向かって谷間を強調してみせる。上目遣い、流し目。カメラの向こうに愛しい彼がいる事を想像して誘うような表情を作る。
カアッと熱くなった頭の中で冷静さを保とうとするが、モデルとして人の視線を一身に浴びる事は悪くは思えなかった。バックホックを外す。乳房を腕で隠しながら交互にストラップから肩を抜いていく。
今は両の掌で乳房を隠した、謂わゆる手ブラという状態になっている。
そろそろと手を降ろしてカメラに桜色の頂を曝け出す。カメラマンが寄ってきて乳房をアップで撮影する。緊張から鳥肌が立っていて白い肌からは血管が透けて見えている。
(こんなに近くで撮るの?)
弾む心音までもが収められてしまいそうな気がした。
表情に表れないように努めながらカメラが下半身に下がっていくのに合わせて手を腰と下着の間に滑らせる。
ヒールを履いたまま片脚ずつ抜いていき脱いだ下着はソファの上に畳んで置く。
今回撮影するにあたり、鳥羽からアンダーヘアを伸ばしておくように指示が出されていた。そんなところまで口を出されるのは癪だったが、生えているのを好む層がいるらしい。永久脱毛していた訳ではないので準備期間の間に狭い範囲ではあったが生えてきてくれて助かった。
カメラマンは秘所の撮影に集中しており、ソファの背凭れに身を任せて撮りやすいように脚を開く。販売する時にはモザイクをかけるそうだが、今はどのように見られているのだろうか?
視界の端に秋穂を捕らえると彼女は目に涙を浮かべていた。
思わず自分も涙腺が緩み一筋だけ涙が頬を伝ったが、監督としては思いがけない展開に喜びながらカットの声を上げた。
それからは写真集用の撮影が始められたが、身に付けている衣装や下着は同じ物を着せられていたので集中して取り組めなかったように思える。
(こんな撮影がまだ4回も残っているのね…)
日本に帰るまで自分の心は平静を保っていられるだろうか。
それからは長距離の移動が続いた。いつ撮影の許可を取ったのかは分からないが2回目の撮影場所はバナナファームだった。
鳥羽が農場主と楽しげに話している様子から付き合いが長いのだろうか。あるいは私と同じようにここで裸を撮られた子もいるのかもしれない。
衣装への着替えはバスの中でするように言われたが、覗きを防止するようなカーテンなどはついておらず、外から丸見えの状態で下着の交換をさせられる羽目になった。
この日の衣装は肌の露出が多かった。白いノースリーブのシャツにデニムのダメージパンツ。裾が大分短くなっていて太ももはほぼ丸出しだった。
気温こそ高いがバナナの葉の影で直射日光は避ける事が出来て汗が止まらないという事もなかったのは助かった。
慣れた訳ではないが心を殺して指示通りに脱いでいく。まさか野外で裸にさせられるとは思わなかったが、知人がいないだけマシだと思うことにした。
服を脱いで露わになったのはライトイエローの下着だが、この時初めてTバックを着用していた。下着を履いているのに臀部が隠されていないというのはどうにも無防備な感じがする。
バナナの幹に手をついてお尻を突き出す。誘惑するようにくねらせると変な気持ちになってくる。
(そういえば彼とこんな感じで繋がった事もあったっけ)
思い出に浸って現実逃避したいところだが、周りがそれを許してはくれなかった。下着もすべて脱ぎ、用意されていたレジャーシートの上に仰向けになる。大きく開いた脚の中心を接写してから顔に向かってカメラが登ってくる。今の私はどんな顔をしているのだろうか?
胸や顔を十分に収めると今度はうつ伏せになり、お尻を高く持ち上げる。肛門を撮りたいのか、自らの手でお尻を開くように言われる。
恥辱に耐えながら従うが、おそらく性器も撮られているのだろう。
どこか他人事のようになりつつあるのを自覚しながら二度目の撮影を終わらせた。