1日目
彼と久しぶりに会った日は激しく求め合うように身体を重ねた。やはり性行為は好き合った者同士で行うからこそ快楽を感じるのであって、あの男のように自分さえ気持ち良ければ良いというのはやはり間違っていると思えた。
休暇が明けて久しぶりに事務所に顔を出した。以前のような重たい空気もない事に安心出来た。どうやら鳥羽が何か仕掛けてきたという事はなさそうだった。
安堵したのも束の間、鳥羽から呼び出された。今回は秋穂さんにも同行してもらった。
「要件は何ですか?」
『あの映像の編集が終わり、発売日も決定した事の報告だよ。予約者は順調に増えているそうだ』
「私としては嬉しくないわ」
『まあ、そう言うな。それでだな、完成祝いとして君を別荘に招待しようと思う』
「貴方の別荘?行くと思ってるの?」
『来るさ、これは取引の話なんだからね』
「取引?何の話よ?」
『そこで1週間、私の相手をするというのであれば映像の元データを全て君に渡そうと思う。それと、それを最後に事務所や仕事に接触するのも辞めにしようじゃかいか』
「どうして急にそんな話を?」
『頑張ってくれた君へのご褒美だよ』
「上手い事言って結局は身体が目当てなんでしょう?」
『タダで手放すには惜しいからな』
「はあ、分かったわ。それで手を打つわ。ただし当日に隠し撮りしていたなんてのは無しよ」
『約束しよう。ただし、他にも幾つか条件は付けさせてもらう』
「条件?何よ?」
どうせろくでもない事だろうと思いながら返答を待つ。
『一つ目は避妊具無しだ。当日までにピルを飲んでおいた方がいいかもしれないな』
「…二つ目は?」
『木原くん、君にも同行してもらおう。当然君にも避妊具を使う気はないが、それに同意するならオーストラリアでの君との動画を全て渡そう。どうだ?1週間ほど相手を務めてくれれば、今後一切の関わりを持たないと約束しようじゃないか』
「分かりました。その代わり絶対に守ってくださいね」
『君は肝が据わっているな。木原くんはどうする?」
『…やちよがすると言うのなら私も応じます』
『ならば話は決まりだ。車はこちらで用意するから、当日にエントランスに来たまえ』
彼やいろは達には急なオファーが来て1週間ほど家を空けると伝えた。あまりにも急な話だったので以前のように他の家にお世話になるというのも難しいだろうとの話し合いから、みたまや十七夜が泊まりで様子を見てくれる事になった。彼女たちがいればそうそう悪い事にはならないだろうと思う。
本当は彼と日帰り旅行に行くはずだったのだが、好きでもない男に抱かれる為に予定を変更した事に罪悪感を抱いた。
翌朝、皆に見送られて鳥羽のいるマンションへと向かうがその足取りは重い。別荘がどこにあるかは聞かされていないが、1週間も宿泊を強制されているのだ。何が狙いかぐらいは容易に想像が出来た。
マンション内のエントランスには既に参加者が揃っていた。
秋穂さんに鳥羽、秘書の鷹野、それに阿見さん。
「阿見さんも来るとは知らなかったわ」
『私からお願いしたの。ねえ、鳥羽さん?』
『ああ。人数が多い方が楽しめるからな。鷹野もそう思うだろう?』
『はい、七海さんたちとご一緒出来るなんて光栄です』
2人とも鳥羽に心酔しているのか、楽しげに話をしている。
『それではそろそろ行こうじゃないか』
マンション前にはワゴン車が着けられていた。内部は想像よりも広く、シートも上質なものが使われていることが座り心地から分かる。
席に身を沈めてこれから1週間の事を考えると気が重くなった。
4時間ほどかけて車は目的地に着いた。鳥羽の別荘は広い高原に一棟だけ建てられていて他には人工物は見当たらなかった。あるいは登山の番組に出てくるような山小屋と言ったほうが正しいのかもしれない。
『ここは山全体が私の所有地でね。他の人間の事など気にせず楽しめるという訳だ。少し歩けば温泉が湧き出ているところがあるから、後で入りに行こうじゃないか』
『こんな別荘もお持ちだったんですね』
『ああ、阿見くんを連れて行ったのは別のところだったね。今の時期はこっちの方が涼しくていいだろう?』
『ええ、長袖でいても丁度いいぐらい』
話している間にドライバーが荷物を運び終わると一礼して去って行った。
帰る手段がなくなった事に改めて覚悟を決めなければいけない事を実感する。
『さあ、まずは中に入ろうじゃないか。使う部屋は好きに決めてくれて構わない』
内部は清掃が行き届いていて埃一つ無い。彼やみかづき荘のみんなと旅行で来れたならどれほど心が弾んだだろうか。
一階にはダイニングキッチンとリビング、浴室があった。浴室には力を入れたのか今いる5人が一斉に入っても尚、余裕のある広さの浴槽だ。
2階にある個室のうち、鳥羽の専用ルームから最も離れた部屋を使う事にした。一つ屋根の下とはいえ、少しだけでも離れたかったからだ。
「さて、部屋割りも決まったところで七海くんのDVD完成披露といこうじゃないか」
リビングの大型テレビには既にBDプレイヤーが接続されている。
自分の裸を見られるのは嫌だったが、自分がどのように映っているのかには興味があった。
見終わるのに90分ほど時間が経っていた。モデルとしての観点から言えばポーズ自体に不満はなく、あとのシーンになるほど笑顔が多くなり、それは屋外で裸になり衆人環視されているのを悦んでいるように見えた。
(嘘、そんな訳ないわ)
しかしテレビの中の自分を見ていると秘所が潤んできた気がした。
『ふむ、中々に良い出来じゃかいか。これなら売り上げも期待出来そうだ。木原くんはどう思う?』
『…やちよは頑張ったと思います』
『良い感想とは言えないな。男の性的欲求は満たせそうか?』
『…十分だと思いますが。あとは購入者の好みの問題ではないでしょうか』
『まあ、そうだな。七海くんは胸のサイズはいくつだ?』
きっと答えないと機嫌を損ねる事になるのだろう。初日からそれは悪手だと思った。
「78のBカップです」
『木原くんは?』
『…87のEです』
『木原くんは着痩せして見えるんだな。君もイメージビデオ撮ってみたらどうだ?すぐに人気が出ると思うが』
『結構です。私はやちよのマネージャーで満足しています』
『ねえ、鳥羽さん。また私で撮ってくれませんか?』
『ああ、阿見くんも既に一作撮ったのだったな。今度はAVに挑戦してみるか?』
『ぜひお願いします!』
「貴女まだ高校生でしょ。法律上禁止されているんじゃないの?」
『やちよさんが知らないだけでしょ。中学生でAVを出した子も私の事務所にはたくさんいるのよ』
『表には出回っていないだけさ。私の一存でどうにでもなる』
「本当に最低な人ね」
『何とでも言いたまえ。さあ、一息ついたところで温泉に入りに行こうじゃないか。鷹野、夕食は遅れても構わない。君も付き合え』
『はい。ご一緒させていただきます』
鷹野は調理を中断するとタオルやバスローブを用意して鳥羽の脱衣を手伝いバスローブを着せていく。
性的興奮をしていないはずの鳥羽の男性器は最大まで大きくなった彼のものよりも大きかった。
『鷹野さん。私たちはどうすればいいですか?』
『阿見さんたちもお脱ぎください。裸のまま温泉まで向かっていただきます』
『分かりました』
阿見さんは躊躇なく服を脱いでいく。出るところは出ているが腰回りはくびれている。天を向く豊かな胸が羨ましく思えた。
だが見惚れている場合ではなかったと思い服を脱ぐことにした。
別荘内にはバスローブを纏った男と全裸の女性が4人いるという淫靡な空気が満ちていた。
『さあ、では向かうとしよう』
道が分からないので先頭を行く鳥羽に付いて行く。身体を隠せるものは何もないが私有地であるという安心感と、肌を撫でるような心地良い風にオーストラリアでの撮影の時には得られなかった解放感を感じていた。
『やちよさん』
阿見さんが隣に来て話しかけてきた。
「何かしら?」
『オーストラリアでの撮影はどんな感じなのかしら?まだ外国行ったことがないのよね』
「私が行った時は夏だったわね。暑さや日差しは日本よりも強かったわ」
全裸で野外を歩いているという状況を除けばそれは微笑ましい会話だったのかもしれない。
『日焼け対策はどうしていたの?』
「屋外で裸でいる事が長かったから、全身に日焼け止めを塗り込むしかなかったわ」
会話を続けているうちに気になった。どうして阿見さんが鳥羽と関係を持つようになったのか。私と同じようなことがあったのだろうか?
『さあ、着いたぞ』
先頭を行く鳥羽が声をかけてきた。確かに温泉に特有の匂いが漂っている。辺りを見回すと岩に囲まれたところから湯気が上っていた。
温泉に浸かっていると移動の疲れが取れていく気がした。まだ日が昇っている時間から湯船に浸かれるのは贅沢をしている気になる。
それとなく周りを見ると秋穂さんも気が緩んできたのか、胸や性器を隠す事もなく、整えられたアンダーヘアが水中に広がっていた。
それを見て聞いておきたかった事があるのを思い出した。
「あの、鳥羽さん。聞きたかった事があるのですがよろしいですか?」
『うん?何だね?』
「オーストラリアでの撮影の時からアンダーヘアの処理をほとんどしていないのですが、まだ伸ばしておいた方が良いのでしょうか?その…行為をする時に見苦しいかなと思いまして…」
こんなのは建前だ。ただ蒸れたりするのが不快だからそろそろ整えたいだけだ。
『ふむ、そうだな。ならば今剃ってしまおうか。鷹野、アメニティの用意はあるか?』
『はい。もちろんです』
鷹野が持ってきたバッグの中には様々な道具が入っていた。
『七海くんは岩に腰掛けるんだ。鷹野、整えてやれ』
『畏まりました。七海さん、そちらへ』
「え、ええ」
処理する許可さえもらえれば今夜にも自分でするつもりだったのだが、これは予想外の流れだった。だが従うしかない。岩に腰掛けて脚を開いた。
「これで大丈夫ですか?」
秋穂さんは見ないようにしてくれていたが、3人の目は私の性器を凝視している。それにも関わらず恥ずかしさは少なく、見られる事に快感を覚え始めていた。
(何で?オーストラリアでの撮影のせい?)
『はい、大丈夫です。お好みはありますか?』
「…全部剃ってください」
『畏まりました』
肌に張り付いた毛を指先に取り、鋏で次々と短くされていく。
元々生えている範囲は狭いほうなのでそれはすぐに終わった。
『ではこれから剃刀で剃っていきます。危ないので動かないでください』
「はい」
シェービングクリームが塗られて恥丘が白くなっていく。時間をおいて馴染んだところで剃刀で剃られて地肌が露わになってくる。
こんなことは人に見せることではないし、性行為でもない筈なのに、何故か濡れてきてしまっていた。
『前は終わりました。次はお尻をこちらに向けてください』
「…はい」
湯当たりでもしたかのようにボヤけ始めた頭で指示に従う。
視界には入っていないが、きっと肛門も見られてしまっているのだろう。
だけど、肛門そのものよりも処理されていないアンダーヘアを見られる方が恥ずかしかった。
先ほどと同じように鋏で短くされ、その後にクリームを塗られて剃刀で剃られていく。僅か10分ほどで全て剃られてしまったが、悩まされてきた不快感が無くなり心地良さすらある。
『保湿クリームをお渡しします。今夜もう一度塗っておいてください』
剃られた場所にそれを塗ってくれたが、細い指先に撫でられるのは気持ちが良かった。
「ありがとうございました」
『綺麗になって良かったじゃないか。木原くんはどうする?鷹野に剃ってもらうか?』
『いえ、私は自分で整えているので大丈夫です』
『そうか。では確認させてもらえるかな?』
『…分かりました』
秋穂さんも剃られはしなかったがVIOラインを隈なく観察されていた。恥ずかしさから目を瞑って顔を背けていたが、脚を自分で閉じてしまう事はしなかった。
『さて、湯当たりする前に戻るとするか。湯冷めしないように気をつけるように』
人数分用意されたタオルで身体を拭いていく。タオルを身体に巻く許可も出たが、何故か私はそうする気にはならず、別荘まで肌を晒したまま歩いていた。
その後は鷹野さんが作った夕飯を食べて改めて入浴を済ませたが、鳥羽から身体を求められる事はなかった。
或いは今夜は秋穂さんを抱いているのかもしれない。
私はモヤモヤしたものを感じながら自慰に耽ってしまっていた。