四人に魔の手が忍び寄る。
「美銀先輩!美銀おねーちゃんって呼んでもいい?」
「いいわよ。光ちゃん」
「やったー♪」
この転身の速さは見習うべきか……と泰は呆気に取られていた。
ピョンピョンと飛び跳ね上目遣いをしながらすりすりと身体を寄せ光は美銀に甘えている。
非常に分かりやすく。
そしてこれまた非常に分かりやすく泰には敵対心を顕にしていた。
「おい美銀にくっつきすぎだ離れろ」
「あれれ~?。泰先輩嫉妬ですかぁ?」
「そう言うわけではないが……」
「じゃあ私がおねーちゃんに甘えても問題なしですね♪」
「勝手にしろ」
ふん。と前を向き三人は歩く。
あの後光は二人の関係性を聞いて来て美銀が返答に困る中、見兼ねた泰が「こいつは俺の女だ」と答えた。
その際、最初からキツめな対応をした泰に対し彼女は露骨に対抗心を燃やし反対に甘々な美銀に取り入ろうとしているわけである。
言うなれば彼女なりの生存戦略だろう。
だがしかし……、泰の心は何かモヤモヤしていた……。
―――落ち着け。別に美銀との関係は互いに利用し合ってるだけだ。
だから
……だのになんで俺は美銀と光が仲良くしてるのが嫌なんだ……?。
些細な疑問だった。
「たく。こんなうるせぇ女が居たんじゃ殺し合いなんだかただのおままごとなんだか分からなくなっちまうな」
泰のイライラが増していく。
原因は確実に光だ。
「余裕がない男はモテませんよ〜」
「んだとてめぇ!」
「はい!ストップ!」
泰が光に暴力を振るいそうになったところで美銀は割って入り手を出し制止した。
二人を止めるために。
「やだぁ。おねーちゃんあたし怖い!」
「猫被ってんじゃねぇぞクソアマ」
「泰落ち着いて!。光ちゃんも必要以上に煽っちゃ駄目!」
片や煽るように笑い、片や怒り心頭で目が充血している。
これを落ち着かせるのは中々時間が掛かりそうだ。
加えて……。
「うぇ~ん!うぇ~ん!」
「あぁ……よしよし。いい子だから泣かないでね猛〜」
猛が泣き出してしまった。
お尻を触ったが湿っていない単純に二人のやり取りに怖くて泣いたのだろう。
もう我慢ならない。
「貴方達!これから創造主達を倒すまで協力してくんだからこんなところで喧嘩してる場合じゃないでしょ!」
怒る美銀を見るのは泰はこれで二度目だが初めて見た光は本気の怒りに目を見開いて驚いていた。
さっきまで甘えていた美銀と全く違う。
だが彼女の怒りは隠し事もない真っ直ぐな怒りだ。
―――おねーちゃんってこんな感じで怒るんだ………。
でもなんか暖かいな……。
美銀の本気の怒りが伝わったのか、光は「ごめんなさい。おねーちゃん。泰先輩。調子に乗り過ぎました」と頭を下げた。
泰は面倒臭げに舌打ちすると「分かりゃいいんだ」と返答する。
「良かった……。仲良くしてよね」
「前向きに善処するわ」
「あたしも気をつけます」
フッと美銀の頬が綻ぶ。
「美銀!後ろだ!」
「え!?」
何かを見つけた泰は声を出し美銀を突き飛ばす。
「きゃあ!」
「びぇーん!」
アスファルトに倒れ込みそうになるが猛を危ない目に合わせまいとの精神でなんとか倒れず数歩移動しただけとなった。
「泰!何を―――」
言い掛ける前に彼女の顔先をナイフが通過しアスファルトを跳ねカランカランと地べたに落ちた。
「何だよつまんねぇな………もうちょいでそのうるせぇガキと女が死んだのに」
黒いパーカーと青いGパンを履いた少年が四人の前に立ちはだかった。
「いやぁ。ついてるな一気に四人も殺せるなんて―――」
『てめぇらの命日は今日だ』
張り詰めた空気の中、少年の声は響いた。