「……ん、朝か」
スマホを見るとまだ5時だ。
あの後、毛布一枚だけ包んで共有して寝た二人は互いに心地良く眠っていたようである。
……可愛い寝息を立ててぐっすり眠る美銀がその証左だろう。
「本当に可愛いな。美銀は」
頭を撫でると、気持ち良さそうに彼女は笑った。
―――いけね。
寝て回復したせいか、また自分の昂りが大きくなりそうになる。
朝からこれじゃいかんと泰は自分に言い聞かせると服を着て美銀の身体を優しく揺らして起こそうとした。
「美銀。朝だぞ、起きて」
「……ん、朝ぁ……?」
寝ぼけ眼の彼女の目が宙を少し見渡した後、泰の顔を捉える。
彼の顔を見た瞬間、彼女は笑顔になった。
「おはよ……泰」
「あぁ。おはよう美銀」
徐々に記憶が戻って来たのか彼女は頬を赤くすると、ベッドの上に座りモジモジと身体を動かした。
それを見て泰は少し意地悪したくなる。
「どうしたんだ?トイレ我慢してるのか?」
「……確かにちょっとトイレには行きたいけどそれが最大要因ではないわ」
「ふーん……じゃあ何で恥ずかしがってる?」
―――本当……意地悪な人。
分かってるクセに。
美銀は少し苦笑しながら口を開いた。
「昨日シた時が凄かったからに決まってるでしょ……泰のおバカ」
目を逸らし恥ずかしそうに言うと泰は屈託のない笑みを浮かべている。
「俺も昨日はめちゃくちゃ幸せだったな」
「ふふふ私もよ」
すると笑っていた泰の顔が真剣になった。
「……これからまだまだきっと美銀に迷惑掛けると思うが俺頑張る。だからずっと一緒にいてくれ」
「泰……。私こそ足を引っ張ったりすると思うけど貴方や皆と一緒に居たい。こちらこそ宜しくね」
二人は互いに笑い合うと一度キスをした。
「じゃあ朝飯の準備するか。先行ってるぜ」
「分かったわ」
着替え終わった後美銀も合流し二人は準備に取り掛かる。
一時間程でご飯を作り上げると、猛と光も起こし一同は食事にありついた。
一同はまだ気付かない。
病院への侵入者の存在に……。
―――――
「あはっ……ふふふ………!」
狂ったように笑いながら、綾坂苺は自分の行きつけの病院内にある薬局に侵入していた。
目的の品は自分の毎日服用する薬である。
「凄い……こんなに抗うつ薬がある」
軽い気持ちで苺は自分の指定数量を超す錠剤を口に含み……あろうことかボリボリと噛んで飲み込んだ。
「あぁ。幸せぇ」
無論こんなに早く効果が出るわけがないのでただの偽薬効果に過ぎないのだろうが……無数のヒビが入り溢れゆく彼女の心を一瞬だけでも満足させる効果は充分過ぎる程あった。
―――頭がすっきりする。なんだろうこの万能感……虚勢に過ぎないんだろうけど、凄く気持ちいい……。
笑いながら彼女は薬局のガラスを叩き壊し、散った破片で腕に傷を付ける。
「最高………もう死んじゃいたいくらい」
気づけば左腕は血だらけになっていた。
「温かい。私の血ぃ………生を実感出来るよぉ……」
涙を流しながらさらなる傷を刻もうとした時、足音と賑やかな話し声が聞こえて来た。
「ふふふ!。それにしてもお姉ちゃんと泰先輩!昨日はお盛んでしたね〜!」
「聞こえていたのね……」
「はい!。凄く幸せそうな声でしたよ〜♡」
「……言うな光」
―――楽しそうな会話だなぁ。
素敵な音がこっちに近づいて来る……。
声を聞く感じ、三人かな?。
まぁいいや……私はその素敵な音をこれから破壊出来そうだし。
歪んだ笑みを浮かべながら苺は身を潜めた。