日常は突然崩れさった。
「美味しいわ凄く」
「光栄です。御嬢様」
ばあやが淹れてくれる紅茶は昔から美味しい。
紅茶は飲む専であまり葉っぱのブレンドに詳しくない美銀でもそれはすぐ分かる。
この味を十数年以上堪能して来た。
いつも同じ味ではないのは飽きが来ないよう楽しませるばあやの工夫だろう。
おかげでいつでも楽しく飲める。
「さてさて」とばあやもソファに腰掛けた。
「ではお話しを聞きましょう。美銀御嬢様」
「うん。実はね―――――」
重い口調を美銀は開く。
自分が本当に両親に愛されているのか?。
自分よりも両親は仕事の方が大事なのではないか?。
など彼女が17年生きた中で気になった事を全て話した。
その間、ばあやは何も言う事なく話しを聞いてくれた。
真剣な眼差しで美銀を見ながら………。
まるで孫を見る祖母のような目だった。
「だから私はいまいち両親に対して疑惑を抱いてしまっているの。ばあや……私がおかしいのかな?」
「御嬢様……」
そっとばあやは飲んでいた紅茶をテーブルに置くと柔和な笑みを浮かべながら美銀に話しかける。
「ご安心ください。お父様もお母様もちゃんとお嬢様を心配しておられますよ」
「本当に……?」
「はい!ばあやが保証します!」
ドンとばあやは胸を叩いた。
「今、お嬢様は多感な時期なのです。私も昔は色々と嫌な事が重なり親に逆らい友達と遊びふけた事があります」
「嘘っ!ばあやが!?」
「はい!」
こんな真面目で半世紀以上も黒後家に勤めてきたばあやが若い頃とは言えそんな一面があったとは驚きだ。
「そこで私は心から実感したのです……私が家出したり遊びほうけても両親はちゃんと気に掛け心配してくれていたんだなって」
「……凄いねばあや」
「ははははは。まぁ時代的背景もありますがね。私個人の思いですが今の時代は色々と豊かになった分、昔に比べ思いやりが減った気が致します」
「それは私も思うな……」
インターネットやスマートフォンは人の暮らしに多大な恩恵を齎した一方で人から何か大切な物を奪った気がした……。
「だからこそお嬢様はこの世の中を照らすような存在を目指さなければなりません。弱き人達に手を差し伸べられるような」
「手を差し伸べる存在ね。なんだか難しそう」
「ふふふ。急ぐ必要はありません。お嬢様はまだ若いからこんな年寄りと違い時間はまだまだあります。慌てずゆっくり見つけてくださいませ。正解を」
「うん……!」
正解はまだ分かりそうにもないが、ばあやの言葉は確実に美銀の心に響いた。
残った紅茶を嗜もうとした時ばあやが「お待ちくださいお嬢様。お父様とお母様が貴女を大切に思ってる証拠を持って参ります」と場を後にした。
―――証拠って何かしら?。
………この時は気づく余地もなかった。
これがばあやとの最後の会話になるなんて。
―――――
「……遅いわね」
ばあやがどこかに行ってからかれこれ三十分が過ぎた。
こんなに彼女が持ち場を放棄したのは美銀が覚えてる限り初めてだ。
………ばあやの身に何かあったのか。
まさかさっきの会話で昔を思い出しどこかに行ってしまったのかとも考えたが半世紀以上仕えてきたばあやがそんな軽はずみな行動をするわけがない。
一体どこに………。
そう言えば先ほどから執事やメイド達の音も聞こえなくなっている。
「何が起きてるの……?」
違和感を感じ取った美銀は家の中を探索する事にした。
探索してすぐ様異変に気づく一階をさらっと歩いたが配属されてる
「まさか二階も!?」
彼女の悪い予想は的中した。
二階ももぬけの殻だ。
「はっ!柊は!?」
窓から外を見たが彼も持ち場から居なくなっていた。
集団ボイコット等考え難い。
途中で帰ろうとした場合、玄関に通じる道は先ほど美銀が居た場所を通らなければならないので絶対にバレるのだ。
また執事やメイドにそのような考えを持つ者が仮に居たとしてもばあやが止めるだろう。
「一体全体何が起きてるの?。家の中で神隠しでも起きたと言うわけ……?」
「ぁはははははははははは!あんたみたいな強気そうなお嬢様でもやっぱり孤独は怖いのね」
今まで会ってきた人間の中で誰にも該当しない初めて聞く少女の声。
声がした方を見ると歳は自分と同じぐらいの肩まで伸ばした美しい金色の髪に赤い双眸の少女が立っていた。
薔薇の花飾りを頭に身に着け赤と黒のドレスが少女を更に彩る。
「……貴女は誰?」
混乱しているが冷静に美銀は少女に聞いた。
「私は創造主の一人ロサ。お兄ちゃんがあんた達癌細胞みたいな人間達に怒っててねぇ、消しちゃったの♪若い人間以外ぜーんぶね♪」
少女はまるで遊んでいるかのような口調だった。