「んぅ………」
美銀は廊下に射し込む朝日の光で目を覚ました。
何故私がこんなところで寝ているのだろう……と頭を張り巡らせると昨日の出来事が身体に与えられたダメージと共に思い返される。
『あまり調子に乗るなよ人間風情が』
『ぁは♪。でも初めてかも身の程知らずにも私にこんな大口叩いた人間は。今すぐ殺してやってもいいけど弱いあんたを殺っても何の面白みもないしなぁ。やっぱり殺るなら後かな』
『もしかしたらだけどレベリングも極め属性もMAXまで強化すればぁ、ワンチャン私達と対峙出来るかもね〜ワンチャンだけどぉ』
深く思い返すと鍋にこびり付いた焦げあとのように創造主を自認する少女ロサの言葉も次々と浮かんできた。
―――そもそも人を殺せば強くなるとは一体どういう事なの……?。
属性やレベリングがどうこう言っていたけどやってる事は人殺し。
やはり創造主云々言われてもまだ飲み込めないわ。
深くため息をつく美銀。
本当に0歳から18歳までの人間が消えてしまったのか確かめるため試しにテレビを付けた。
「嘘……」
全てのチャンネルが映し出したのは画面が暗転した状態であった。
どこも放映していないと言う事だ。
……何より身近で言えば朝の4時から起きているばあやの姿がない。
受け入れるしかなかった……創造主が世界を狂わせた事を。
「グスッ……ばあや、柊、皆……!」
美銀は自身でも普段他者に涙を見せない方だと言う自覚はあった。
しかし今は家族に近い者達を失い涙が止まらない。
励ましてくれるばあやはもういないのだ……。
この真実を受け入れなければ。
―――泣き続けても何も変わらないか……、こうなれば逆にこの家に留まるのは危険ね。
物取りや不良達の溜まり場になる。
2、3人ならまだしも大量に来られたら私は殺される。
美銀は急いで実家から出る準備にこぎつけた。
急いでシャワーを浴びトランクケースに出来うるだけの着替えを詰める。
武器になりうる包丁やカッターナイフも何本か携帯した。
―――そう言えばばあやが両親が私を思ってくれている証拠を見せようとしていたっけ?。
家に別れを告げる前にちょっと探してみようかしら。
真っ先に思い浮かぶのはやはり両親の部屋だ。
「何があるのかな……」
ドキドキしながら美銀は両親の部屋の前まで行くとゆっくりとドアを開けた。
そこにはばあやがしまっていたであろう何百通ものエアメールがスリーブに大切に補完されていたのだ。
スリーブは開いた状態のまま床に落ちていた……本棚から取り出して持って来ようとした時に消されたのだ……。
「うぅ……ばあや」
ばあやが最期の仕事として持ち出そうとしたスリーブを抱き締める。
涙が落ちついてから中を見ると両親の美銀に向けられた暖かい言葉が羅列されていた。
その中でも特に母親の手紙が印象的だった……。
『美銀へ。この手紙を貴女が見てる時恐らく貴女がばあやに私達に愛されてるか不安に思い相談したのでしょうね。まず美銀。高校入学おめでとう。それとお父さんもお母さんも家に帰れなくてごめんなさい。今私達二人はビッグプロジェクトに関わっていて帰国が出来ないの1、2年で終わると思ったんだけどこんなに長引いてしまって本当にごめんなさい。あと私達の手紙を貴女になるべく見せないようにしてたのには理由があります』
「え、理由……?」
『学業に励む貴女に変な心配を掛けたく無かったのよ。だからばあやに言ったの。あの子が私達の愚痴でも言ったらこの手紙を見せてってね』
―――何よそれ……こっちがどういう思いで過ごして来たか!。
怒りで手が震えるが美銀は最後まで母の手紙を読んだ。
『美銀……。多分貴女は今凄く怒ってるでしょうね。それでいいの貴女は多分反抗期も思春期もぶつける相手が誰もいなかったに違いないわ。
「お母さんとお父さんの大馬鹿!遅いんだよ!。なんでこんなまどろっこしい真似を……!」
今日は泣いてばかりだ。
ばあやの事や両親の事、皆自分を泣かせたいのだろうか?。
―――これでまた私には殺し合いを勝ち抜く理由ができたわね……。
ばあや、お母さん、お父さんと絶対にまた話すんだ。
決意し美銀は家を出た。
一冊のスリーブをトランクケースに入れて。