赤ちゃんのミルク作りに励む泰だが…。
「えーっとミルクはこのくらいで……」
「貸して。私がやる。今横にさせたから赤ちゃん見てて」
適温やら容量やら良く分からずミルク作りに苦戦する泰から美銀は粉状のミルクと哺乳瓶を取り上げた。
「へいへい」
思わずお前は新妻かと心の中で突っ込みたくなるが美銀はもう育児スイッチが入ってしまったようだ。
―――俺がその気になれば一気に二人共殺れるってのにこいつ何考えてんだ……?。
自分の命より
まさか俺を信頼してるなんて事はなさそうだが。
だけどこいつの目、真剣だ。
………いいな熱中出来る事があるのって。
「目安の容量も温度も容器に書いてあるじゃない」
「慣れてねぇのにんな簡単に出来るかっての」
「クスッ、それもそうね」
「……なんだよ。その笑いと勝ち誇ったような目は」
「別にぃ〜」
「うぜぇ……」
美銀が何故こんなに赤ん坊を扱い慣れてるか……実を言えば彼女自身も生身の赤ん坊をあやしたりミルクを与えたりするのは今回が初めてだ。
だが彼女は幼少期よりばあやから自分や母の育児の仕方を聞いてきたのだ。
年齢的にばあやが子守が難しくなった時に備えて。
その時子供を見るのは母である自分である。
「よし出来た」
美銀はそのまま赤ちゃんに哺乳瓶に入ったミルクを与えると「ゴクゴクッ」と元気良く飲み干した。
「ケプッ」と可愛らしいゲップをしてまんまるなお目々で美銀を見つめる。
「まぁ。可愛い」
そのままあやしながらばあやに教わった子守唄を歌ったら赤ちゃんは寝てしまった。
「すぅ………すぅ………」
「今はいっぱい寝なさいね。小さな天使さん」
撫でてあげると赤ちゃんは気持ち良さそうに笑った。
「つうかお前そのガキどうすんだよ?」
「見殺しにはしておけないわ。連れてく」
「はぁ!?。馬鹿かお前!」
思わず間抜けな声を上げる。
否、実際彼女が言ってる事は間抜けだ。
女一人だけでも危険なのに赤ちゃんまで一緒に行動だなんて。
それでは殺人者側のうってつけの標的ではないか。
平和ボケここに極まれりだ。
「それでね泰。ものは提案なんだけど……私とこの子と一緒に行動しない?」
「ぁははははははは!」と泰は美銀の言葉を嘲笑った。
「ここまで間抜けでバカな奴っているんだな。一回肉体関係を持ったからって守ってほしいってか!」
「そんな気薄な事言ってるんじゃない。私は貴方を孤独の暗闇から救いたいだけ……。今まで誰も信用出来なかったんでしょう……?。私を信用してみない?」
「お前………本当馬鹿過ぎるよ。人間なんてな信じるに値しねぇクソみたいな生物なんだよ!。俺は親父や周りりの奴等に嫌って程見せつけられた!」
「そうかもしれない。だけど……」
美銀は優しく泰を抱きしめた。
暖かな感触だ。
「私は貴方を信用したい。そして元の世界に戻りたい」
―――なんなんだこの女は……。
自分だって傷付いてるだろうに、俺の心配何かして……。
でもこの女の言葉は何処か暖かいな……。
裏表も邪気もない、本音で俺に話し掛けてるんだろうな。
「……ふん。面白そうだし騙されたと思って乗ってやるよ。ただし対価は貰う。お前の身体は俺の好きにさせて貰うからな」
「かまわないわ好きにして。ただ貴方も過去の傷を自分のタイミングでいいから私に話してね」
「ふん……」
幾分か彼の表情から曇りが消えた気がした。