【ゲームのデータ】引き継ぎ! C級テイマーに転生! 作:BIBI
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戦いはトーナメント方式で、順調に進んだ。というか、アイリ、リンネ、ヒナタが圧倒的過ぎて、棄権する人ばかり。
あっという間に、準決勝まで進んでいた。本来なら戦いを楽しみにしていた観客は、棄権するテイマーにブーイングしまくるが、今回は例外らしい。
あまりにも強い三人に興奮し、無名の新人テイマー達に同情している様子だった。棄権を選択しても責める人は殆どいない。
『相次ぐ棄権により、予定より早く準決勝に辿り着いてしまった――っ!』
試合の解説者が、プロのテイマーを交えて会場を盛り上げていた。そして闘技場にアイリとリンネが入場し、指定の位置に着く。
『さぁどっちが勝つか見ものですね!』
実況席。解説役のアイドル――ミカは、隣に座っているヒイラギに話し掛けた。
『どっちもセンスのいい戦いを見せてくれたからね。互角の戦いが見れると思うよ』
茶髪のイケメン――ヒイラギは爽やかに答えた。ゲームでは腰抜けで殆ど役に立たないキャラだが、彼の才能は本物である。
臆病で戦いを避ける悪癖があるだけで、彼は薄らとアイリから凄まじい才能を感じ取れる程度には、優れた感性を持っていた。
『そうなんですか? リンネさんはアタル選手にも一目置かれる天才ですよ? アイリさんの才能がリンネさんに匹敵するって言うんですか?』
アタルがリンネに期待しているという話は有名だ。故にこの場の大勢がリンネの勝利を確信している。
ミカもその一人であり、ヒイラギの言葉には当然疑問を抱いていた。
『アタルもきっとアイリを見たら、リンネと同等だと判断するだろうね。凄く強いよ、彼女は』
自信満々な発言。本当に戦いを避ける情けない悪癖があるだけで、ヒイラギが優れた才能を持つテイマーなのは間違いないらしい。
「――メラドラ」
「――ジガルゴ」
アイリとリンネが同時にモンスターを会場に出現させた。ピリピリとした緊張感。互いに同等の天才だと確信していた。
初めて出会う同格の存在に冷や汗を掻くアイリ。
対しリンネは激闘の予感に高揚し、口角を上げている。
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この世界の対戦はゲームほど単純ではない。
タイミングよく相手の攻撃に合わせて防御する事でダメージを無効化する――〈カウンター〉という現象。これ駆使して立ち回り、攻防の中で上手く技を相手に当てる。
これがモンスター対戦の基本だと言われている。格下が相手であれば、技の連打でも勝てるかも知れない。
しかし同格の相手だった場合は、適切な命令式を組んで上手くモンスターを動かさないと勝つは難しいだろう。
そして適切な命令式を組むことが、ゲームと違って難しいのだ。ただ設定を選択するだけでは済まない。
相手の大きさ、基礎能力、動き、残り体力、その他の細かい情報を加味して、適切な動きを考えてモンスターに指示する。
これが上手くできず、テイマーの道を諦める者が大勢いる。
『お――――っと! 激しい攻防! 互角の勝負だ――――っ!』
ミカの実況が会場に響く。観客達も応援の声が大きくなり、かなり盛り上がっていた。
「「――――ッ」」
お互い近距離が得意なモンスター故に、ジガルゴとメラドラが殴り合う。互角の勝負に見えるが、若干メラドラが押していた。
「グオオッ!」
メラドラの強烈な一撃。これにはカウンターを合わせられず、ジガルゴは会場に張られた結界に叩き付けられた。
これには会場も歓声を上げ、アイリの勝利を期待する。
『強烈な一撃だ――ッ!』
ミカは大はしゃぎで、『ヒイラギさんの言う通りアイリさんも凄まじい才能ですね! まさかリンネさん相手に優勢だなんて!』と隣に視線を向けた。
『だが、勝負はここからだろうね』
至極冷静にヒイラギが呟いた瞬間――会場の空気が変わる。
「グオオオオ!」
ジガルゴの基礎能力が急激に上昇していた。
〈アビリティ〉
竜の支配者。体力が減るほどドラゴンの基礎能力が上昇する。最大55%上昇。弱点属性の攻撃を受けると、ダメージを半減できる。ドラゴン以外をテイムできなくなる。
これこそリンネのアビリティ。彼女は体力が減ったモンスターを強化できる。
そして――。
〈三幻衝打〉
光、闇、無の近距離攻撃。威力120。命中100。消費体力10。
「グゴォッ!」
基礎能力が上がり素早くなったジガルゴに、上手く対処できないメラドラが結界に叩き付けられた。
「グオオオオ!」
〈三幻衝打〉を使用し、消費体力が大きく減った事で更にジガルゴは力を増している。
「なんだ、この程度か……! 尾神アイリ……!」
リンネからバチバチと迸るオーラが放たれている。それはつまり、テイマー補正を全開で引き出している証。
「…………ッ」
リンネはオーラの気配を可能な限り抑え、そのビリビリと伝わる力に気づいているのはアイリのみ。
「これが……、リンネのアビリティ……!」
対するアイリもテイマー補正を全開で引き出した。
本来、彼女達の様な天才は、力の底は不用意に見せるべきではないだろう。何故なら将来的な脅威の芽を取り除く為に、闇ギルドに命を狙われる危険があるからだ。
しかし自分に匹敵する才能を目前で、アイリも意地になっていた。ここで呆気なく負けるのは嫌だと、拳に力が入る。
「グオオ……!」
テイマー補正が互角。アビリティの能力上昇がない分、圧倒的にメラドラが不利に思えるかも知れない。
しかし敗色濃厚な予感を抱き、メラドラは魂を奮い立たせてレベルを無理やり引き上げた。
通常、モンスターはモンスターを倒し経験値を得てレベルアップする。しかし特例指定モンスターは最初からレベルがカンストしている。
それなのにメラドラの魔力が低いのは、生まれたばかりで魂が未熟だから。本来のレベルを引き出せていない。
だが一時的なら、レベルを引き上げる事も可能らしい。たったレベル10の上昇。それでも基礎能力は45%近く上昇している。
「……え? えぇ……!?」
アイリが敗北を半ば受け入れていたというのに、メラドラの魔力が急激に上昇した。これはテイマー補正による強化ではない。
彼女はメラドラが普通のB級モンスターだと思っている故に、今何が起きているのか理解できていなかった。
「ギャオオオオオオ!」
舐めるな格下がと、そう思っているのかメラドラが憤り、強者の気配を撒き散らす。
「…………ッ!」
リンネは目を見開き、動揺しつつ口角を上げていた。予想以上の力。メラドラの気配からして明らかにアビリティの影響でもなければ、テイマー補正による強化でもない。
何の力なのか判然としないが、とにかく異質な気配が放たれていた。
『なんという……』
ヒイラギも予想していなかった展開だ。良い勝負にはなると思っていたが、メラドラがジガルゴに勝つ事はないと確信していた。
だが、これはもう天秤は傾いた。もはやジガルゴがメラドラに勝てる見込みはない。そう判断し『素晴らしい才能だ』と、素直に彼はアイリを称賛した。
その後の戦いは一方的だった。圧倒的な力でメラドラが、呆気なくジガルゴを倒す。
「グオオ……」
結界に叩き付けられ、体が血だらけ、穴だらけになったジガルゴが力尽きた。自然と肉体が魔力として散り、会場から消えてしまう。
『ジガルゴ戦闘不能! 尾神アイリの勝利!』
審判が声を上げ、勝敗を告げた。観客は『オオオオオオオオオオオオオオオ!』と声を上げて盛り上がり、アイリの勝利を称えていた。
「え……。えぇ……」
アイリは勝利したものの、困惑が隠し切れない。メラドラが何故いきなり強くなったのか理解できないまま試合が終了し、勝ったという実感が得られなかった様子だ。
「なんて、呆気ない敗北だ。全く……」
悔しさはあるのだろうが、リンネは嬉しそうにケタケタと笑っていた。ここまで圧倒されたのは久しいのだろう。負けた事が楽しくて仕方がないらしい。
「――――いやはや。恐ろしい才能だな」
不敵を笑みを浮かべる渋い中年の男――イライジャ。会場の真上から、彼を乗せた白い竜が舞い降りる。
彼はカーネリアンの象徴である白い軍服姿。会場は静まり返り、ヒイラギは「何故、こんな所に……」と、動揺と恐怖を抱く。
そう彼は、イライジャという男を知っている。
カーネリアン。幹部。イライジャ=テイラー。彼は元世界王者であり、今まで何人もプロのテイマーを嬲り殺しにしてきた凶悪な犯罪者だ。
〈あとがき〉
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