【ゲームのデータ】引き継ぎ! C級テイマーに転生! 作:BIBI
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ヒナタは父親からの愛情に飢えている。殆ど会えず、優しくされた経験は殆どないが、それでも彼女はひた向きに、ジャスパーで貢献しようと考えていた。
アビリティの負担で、このままだとヒナタの命は長くない。後数年程度の時間しか残されていなかった。
だからせめて父親の為に、何かできる事はないかと彼女は考えて行動している。
今回の大会。優勝賞品は希少なアイテムであり、一度リンネの手に渡れば奪う事は難しいだろう。
リンネは名家の生まれであり、親族がテイマーとして一流であり、敵に回すとしたらかなり厄介で、正直割に合わない。
それにリンネは護衛として、高レベルのモンスターを貰っている。大会で使用する事はないだろうが、命懸けの戦いとなれば使用してくるはずだ。
だからアイテムの入手は、大会で優勝する事が手っ取り早い。
優勝して、父親に献上したい。その一心で彼女はこの大会に望んでいた。
「――――面白い」
金色の髪を掻き上げて、イライジャは不敵に笑う。
「ジャスパーの第二部隊隊長。鳴上ヒナタ。お前が立ち塞がるのか」
闘技場に出向いて来たヒナタを見て、彼はケタケタと笑う。
「…………」
ヒナタはもう、自身がジャスパーの団員である事を隠す気は無い。年齢的にも良い頃合いでもあると割り切り、イライジャと対立する道を選んだ。
「…………ヒナタが、ジャスパーの隊長?」
リンネは親友だと思っていた相手が、闇ギルドの団員だと知って狼狽している。声の聞こえない観客を除けば、その場の大勢も驚きを隠せない様子。
「あくまで、お飾りの隊長だ。もう寿命も短く、死に掛けの娘に、ボスが与えたお情けの立場。隊長と言いつつ、無能な部下の躾を担当しているだけだ」
リンネに向かって、イライジャは丁寧に説明した。彼は相手を挑発する趣味はないが、強者故に無駄話で時間を潰す事はよくある。
「…………ひぃ!」
銃口を突き付けられ、怯える観客。イライジャが喋っている間に、観客席にサブマシンガンを片手にカーネリアンの下っ端が駆け付けていた。
『ヒイラギ。動くなよ。お前が動けば、観客が死ぬと思え』
小型拡声器を使用し、実況席にいるであろうヒイラギにイライジャは忠告する。
「…………くッ」
歯噛みし、悔しそうなヒイラギ。彼は表情に出さないだけで内心歓喜している、これで戦わずに済むぞと。
「ヒイラギさん……」
ミカはヒイラギの様子を見て、観客の命を優先させていると勘違いしている。本来、闘技場の者達と協力した方が勝算は高いはずだ。
その勝機をあえて逃すのはきっと、観客の命を重んじている事に他ならない。そう彼女は冷静に判断している。
「良かったな、父親がジャスパーのボスで。貴様の様なアビリティもろくに使用できない出来損ないでも、立場上は偉くなれたんだ。さぞ気分が良かったろう」
胸元の衣嚢から煙草を取り出し、イライジャは火を付けた。ふぅっと煙を吐き出しながら余裕の態度で、ヒナタと視線を合わせる。
「……私は確かにジャスパーですが、リンネ、アイリ、一時的に協力しましょう。私達が手を組む以外に、この男に対抗はできません」
イライジャの言葉を意に介さず、ヒナタは平静な態度で提案した。「色々聞きたい事はあるけど……。仕方ないか」リンネは溜息を漏らし、アイリは「……当然、協力します」と自信なさ気に身構える。
「貴様はつくづく悪党には向いてないな。善にも悪にもなれない、つまらん奴だ。悪党とは社会に適応できない欠陥品であるべきだ。お前の様に親の為、友人の為に、フラフラと歩む道を変える半端者は、平凡でまともな生き方を選ぶべきだった」
本当に落胆した様子で、イライジャはヒナタを蔑む。友人を見捨て、逃げればよかったものを、わざわざ勝算の薄い戦いに身を投じる。道の逸れた生き方をするには、あまりにも軟弱な思考だと純粋に見下しているのだ。
「安心しろ。お前は健康に生まれたとしても、そう長く生きる事はなかったはずだ。人の道を踏み外した癖に、引き返す道を探すお前の様な腰抜けは、どれだけ健康な体を持っていても早死にするものだ」
歴戦の猛者というだけあり、イライジャには妙な貫禄があった。バチバチとオーラが迸り気配は全く抑えられていない。
「「「…………ッ」」」
剥き出しのオーラ。それは明確な敵意として観客席、実況者席にまで伝わった。怯える観客、一瞬悲鳴を上げた者は銃殺され、辺りは再び静まり返る。
声を発する事すら弱者には許されない状況。ガタガタと震え、心臓がギュッと縮まる様な思いを、大勢の人は強いられる。
イライジャの発する大きな気配を機に、更に空から二体の竜が舞い降りた。
「隊長。私がアイリをやります」
「私がリンネを殺すわ」
それぞれプロに匹敵する気配を纏う隊員二人、マテオとエイヴァ。彼等もかなりの実力者であり、連れている竜も高レベルで基礎能力が高い。
「…………ッ」
リンネとアイリだけではなく、ヒナタにも緊張が走る。
イライジャだけでも勝ち目の薄い戦いだ。そこに増援はかなり致命的だと感じ、自然とヒナタは唇を噛む。
「――――来い」
アイリは母親から受け継いだ高レベルの大きな狼型のモンスターを二体、その場に出した。もはや敵対は避けられないのなら、全力を尽くすしかない。
彼女の目には迷いはなく、「とにかく全力で戦いましょう」と、リンネとヒナタに視線を向けていた。
「――出て来い」
「――来て」
リンネとヒナタも迷いを振り払い、それぞれが護衛用に持たされているモンスターを呼び出す。
「掛かってこい」
不敵な笑みを浮かべ、イライジャは余裕の笑みを崩さなかった。他の隊員達も全く恐れる様子はなく、ただ一方的な戦いになると確信していた。
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テイマーの対戦は最も人気な競技であり、リーグ試験ですら視聴率が40%超える事も珍しくない。そして今もリーグ試験の会場は撮影されており、全国に放送され続けている。
昼間だというのに、大勢の国民が注目している。仕事の手を止め、テレビを観ている者も少なくない。
「マジかよ。こんな事が……」
「何が目的なんだ?」
ビルに張り付けられた大型のモニター。それを見上げる人々は騒がしい。面白がる者や心配する者、反応は様々である。
「…………」
黒いコートを脱ぎ、街を歩いていたショウも足を止め、モニターを観ていた。
彼は知っている、イライジャが序盤に出てきていい相手じゃない事を。
ライバルキャラが二人いる状況でも、絶対に倒せない難敵だとショウは溜息を吐き、足に力を入れる。
まるで高レベルのモンスターみたいな速度で跳躍し、ショウはビルの外壁を駆け、屋根や屋上を足場に会場へ向かった。
〈あとがき〉
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