※この作品はR-18です。

【ゲームのデータ】引き継ぎ! C級テイマーに転生!   作:BIBI

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第19話 死の恐怖に怯える

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 ヒナタは生まれつき魂が弱かった。それ故にアビリティを使用するだけで、身を裂かれる様な痛みが全身に走る。

 

 

 何もせずとも体は衰弱し続け、もう数年で死ぬらしい。

 

 

 だからヒナタは、幼い頃からの友人を助ける為に死のうと思っていた。

 

 

 しかし――。

 

 

「ごはッ……」

 

 

 彼女の命一つでは、状況が変わる事はないらしい。心臓が潰れる様な痛みが走り、彼女は吐血する。

 

 

 一瞬でも使用すれば負担が大きいアビリティを、数分維持させ続けるなんて、体が耐えられる訳もない。

 

 

 

 仮にこの窮地を切り抜けたとしても、もう彼女は一ヵ月の命すら残されていない。

 

 

「ヒナタ……」

 

 

 リンネは血溜まりを作り、もう死を覚悟している。魔力で回復させようとしても、血が止まらない。回復薬もなく、あった所で傷が深すぎて意味をなさないだろう。

 

 

 

 庇った所でリンネは助からないと、ヒナタは考えつつも体が動かなかった。

 

 

 

「この程度か……、鳴上ヒナタ」

 

 

 イライジャは三人の天才に、失望している。類稀な才能だと思ったのに、殺し合いに全く慣れていない。

 

 

 戦場ではテイマーを狙った攻撃も有りというか、寧ろテイマーを狙う事が推奨される。

 

 

 

 故にテイマー自身が狙われない様に、ある程度対抗策を考えるのは普通。そう思い生きていたが、今の時代では古いのかもしれない。

 

 

 

 三人の少女は、あまりにも死闘に不慣れ。どうしても動きがぎこちない。あくまで〈モンスター対戦〉という競技が得意なだけでなのだろう。何より拮抗する力を持つ相手の動きを想定できていない。

 

 

 

〈アビリティ〉

 呪いの王。モンスターの基礎能力を20%上昇させる。モンスターの攻撃が状態異常効果を持つ。25%で猛毒。25%で超麻痺。25%で大火傷。25%で大混乱。

 

 

 

 ヒナタのアビリティ、呪いの王は非常に強力だ。攻撃を当てるだけで、相手を状態異常にする事が可能。

 

 

 

 時間稼ぎさえできれば、毒や火傷のダメージで相手を倒せる。その勝ち筋を信じるしかなかったが、現実は上手くいかなかった。

 

 

 

 イライジャの使役するゲルガルというモンスターは、状態異常を無効化する。事前にヒナタの勝ち筋程度、潰されていたのだ。

 

 

 

「グルル……」

 

 

 

 痩せ細った犬系モンスターのゲルガルは、腐った様な匂いを放ち、見た目も恐ろしい。目が体中にあり、所々毛が抜けて、ボロボロの姿。体長は2メートルくらい。別に怪我をしている訳ではないが、病気で死に掛けの犬みたいで、何とも不気味な印象だった。

 

 

 

 

「メラドラ……!」

 

 

 アイリが細い声を荒げ、全力で命令式を編み込む。

 

 

「グオオオオ‼」

 

 

 先程と同様にメラドラは一時的にレベルを引き上げていた。しかし、この状態は今日だけで二度目という事もあり、長く持たない。

 

 

 

 一瞬で蹴散らそうと、メラドラが相手モンスターに突っ込む。

 

 

「ゴオオオ!」

 

 

 黒い毛に赤い模様のあるギラグマというモンスターが、雄叫びを上げながら腕に炎を纏わせた。

 

 

 

「――――ッ」

 

 

 

 寸前でメラドラが躱し、二撃目はカウンターを発動させ無効化する。そしてガラ空きになったギラグマの腹に、メラドラが技を当てようとした瞬間――。

 

 

「グオオオオ!」

 

 

 土色のドラゴン――ドロドラゴが、攻撃を繰り出した。二体のモンスターを相手に、上手く立ち回れないメラドラは、頭に攻撃が直撃してしまう。

 

 

 

〈会心の一撃〉

 防御の隙を突く攻撃。威力を70%上昇させる。追加効果として、防御力上昇系のアビリティを無視できる。そして弱点属性を貫通する。

 

 

 

 ドロドラゴの攻撃が直撃した瞬間、一瞬の発光と共に青白い魔力が迸る。これは会心の一撃が起きた場合に発生するエフェクトだ。

 

 

 

 

 メラドラは闘技場を囲む壁に突っ込み、血だらけの状態に陥る。あまりにもダメージが大きかったらしい。

 

 

 フラフラと倒れ、力尽きた。体が魔力に変化して、その場から消え失せる。

 

 

「そんな……」

 

 

 ジガルゴを圧倒したメラドラですら簡単に倒されてしまい、アイリは両膝が崩れ、戦意喪失する。

 

 

「ガルル……」

 

 

 母親から受け継いだ灰色の狼――グレイガルは唸り声を上げ、ドロドラゴやギラグマを警戒しながらアイリを守ろうとしている。

 

 

 テイマーが死んで収納リングを砕かれたら、モンスターも死ぬ。だからどうしても生き残りたい。しかしアイリは勝機を見出せない。

 

 

 もう戦えるのはグレイガルのみ。状況を打開する力なんて、彼女には残されていなかった。

 

 

「――詰みだな。しかし呆気ない、この程度とは。天才とは言っても、モンスター対戦という競技の中だけ。所詮はただのガキだったか……」

 

 

 

 イライジャが眼下に転がるヒナタを蹴り上げた。「ごふッ……」と血を吹き出し、彼女の視界が回る。

 

 

「ヒナタ……」

 

 

 目の前で地に伏す友人の体を見て、ボロボロと大粒の涙を流すリンネ。しかし彼女は強いが故に最優先に狙われ、モンスターを全て始末されている。

 

 

 

 もう何も出来る事はない。

 

 

 

 血が流れ過ぎており、意識は朦朧としている。どうにか気力を振り絞って意識を繋ぎ留めているだけ精一杯。体は限界に近い。

 

 

 

 観客も震えながら、闘技場の方を見ている。天才だと謳われた三人が手も足も出ない様子に、声を押し殺し泣き出す者も多い。

 

 

 

 カーネリアンが噂に違わぬ強大な力を持つ事に、彼等は恐怖していた。次の矛先はコチラに向くのではないかと、不安で心臓の鼓動は早まる。

 

 

 

「隊長。優勝賞品を回収しました」

 

 

 下っ端の隊員が小さな箱を持っている。恐らくその箱の中に優勝賞品の〈月光花〉が入っているのだろう。

 

 

 

「では……、殺すか」

 

 

 

 目的は果たしたと、イライジャが止めの指示をモンスターに出そうと一歩踏み込む。

 

 

 

「…………ッ」

 

 

 

 アイリは死を覚悟して、もう敵に視線を向ける事すらなく地面を見ていた。体に力が入らず、もう抗う気力もない。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 リンネは薄れゆく意識の中で、ヒナタに罪悪感を抱いていた。自分を庇ったせいでヒナタが死ぬと思うと、申し訳なくて何より情けなかった。

 

 

 

 もっと自分は強いと思っていた。今まで天才だと自惚れていた。

 

 

 

 でも所詮はまだ鍛錬不足で世界には通用しなかった。自分の身を守る所か、友人を巻き込んで足を引っ張ってしまうなんて、どう後悔して良いのかも分からない。

 

 

 

 ただただリンネは涙を流し、今にも死にそうなヒナタを見ていた。

 

 

「…………」

 

 

 ヒナタは体が弱く、長く生きるのは難しいと幼い頃から言われていた。

 

 

 だから、友人や家族に尽くすのが人生の意味、そう言い聞かせ彼女は残り短い人生を受け入れようとしていた。

 

 

 

 本当は長く生きていたいけど、無理だというなら、せめて意味のある人生だったと思いたい。

 

 

 そう願って、父の為に尽くし生きてきて、友人を庇って戦った。だけど力及ばず、大して父親の役にも立てないまま。

 

 

 命を()しても友人一人救えなかった。

 

 

 何の意味もない人生だったと、彼女は後悔し、涙を流しながら目を閉じた。

 

 

 

「ゲルガル、奴に――」

 

 

 イライジャが命令しようとした時――。

 

 

「――――ッ!」

 

 

 凄まじい速度で急接近する気配。空から何かが迫って来る。

 

 

「グオオオオ!」

 

 

 白竜が叫び大きな翼でイライジャを守ると、20メートル先で小さな爆発が起きる。

 

 

 爆発は空から降ってきた何かが、落ちた事で発生したものだ。バキバキバキと音を立てながら地面に亀裂が入り、観客席まで地震が伝わる。

 

 

 

 会場の半分を包む様な大きな砂煙。騒然とした様子で、観客は砂煙を見つめて息を呑んでいた。

 

 

 数秒後に大きな風が巻き起こり、煙が晴れると一人の少年がクレーターの中心に立っていた。

 

 

「……何者だ?」

 

 

 希薄な気配。意味の分からない身体能力。人間かどうかも疑わしい。そして単独で此処に来る理由。何もかも理解し難い存在だった。

 

 

 

 イライジャは険しい表情で、白髪の少年から目を逸らさない。

 

 

「僕はジャスパーの第二部隊、副隊長。天衣ショウ」

 

 

 

 白髪の少年――ショウは、クラマルを抱きながら丁寧に挨拶する。「カーネリアンが暴れていると聞いて、殺しに来た」と、面倒くさそうに冷たい視線を向けていた。

 

 

 

 






〈あとがき〉

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