【ゲームのデータ】引き継ぎ! C級テイマーに転生! 作:BIBI
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ヒナタは生まれつき魂が弱かった。それ故にアビリティを使用するだけで、身を裂かれる様な痛みが全身に走る。
何もせずとも体は衰弱し続け、もう数年で死ぬらしい。
だからヒナタは、幼い頃からの友人を助ける為に死のうと思っていた。
しかし――。
「ごはッ……」
彼女の命一つでは、状況が変わる事はないらしい。心臓が潰れる様な痛みが走り、彼女は吐血する。
一瞬でも使用すれば負担が大きいアビリティを、数分維持させ続けるなんて、体が耐えられる訳もない。
仮にこの窮地を切り抜けたとしても、もう彼女は一ヵ月の命すら残されていない。
「ヒナタ……」
リンネは血溜まりを作り、もう死を覚悟している。魔力で回復させようとしても、血が止まらない。回復薬もなく、あった所で傷が深すぎて意味をなさないだろう。
庇った所でリンネは助からないと、ヒナタは考えつつも体が動かなかった。
「この程度か……、鳴上ヒナタ」
イライジャは三人の天才に、失望している。類稀な才能だと思ったのに、殺し合いに全く慣れていない。
戦場ではテイマーを狙った攻撃も有りというか、寧ろテイマーを狙う事が推奨される。
故にテイマー自身が狙われない様に、ある程度対抗策を考えるのは普通。そう思い生きていたが、今の時代では古いのかもしれない。
三人の少女は、あまりにも死闘に不慣れ。どうしても動きがぎこちない。あくまで〈モンスター対戦〉という競技が得意なだけでなのだろう。何より拮抗する力を持つ相手の動きを想定できていない。
〈アビリティ〉
呪いの王。モンスターの基礎能力を20%上昇させる。モンスターの攻撃が状態異常効果を持つ。25%で猛毒。25%で超麻痺。25%で大火傷。25%で大混乱。
ヒナタのアビリティ、呪いの王は非常に強力だ。攻撃を当てるだけで、相手を状態異常にする事が可能。
時間稼ぎさえできれば、毒や火傷のダメージで相手を倒せる。その勝ち筋を信じるしかなかったが、現実は上手くいかなかった。
イライジャの使役するゲルガルというモンスターは、状態異常を無効化する。事前にヒナタの勝ち筋程度、潰されていたのだ。
「グルル……」
痩せ細った犬系モンスターのゲルガルは、腐った様な匂いを放ち、見た目も恐ろしい。目が体中にあり、所々毛が抜けて、ボロボロの姿。体長は2メートルくらい。別に怪我をしている訳ではないが、病気で死に掛けの犬みたいで、何とも不気味な印象だった。
「メラドラ……!」
アイリが細い声を荒げ、全力で命令式を編み込む。
「グオオオオ‼」
先程と同様にメラドラは一時的にレベルを引き上げていた。しかし、この状態は今日だけで二度目という事もあり、長く持たない。
一瞬で蹴散らそうと、メラドラが相手モンスターに突っ込む。
「ゴオオオ!」
黒い毛に赤い模様のあるギラグマというモンスターが、雄叫びを上げながら腕に炎を纏わせた。
「――――ッ」
寸前でメラドラが躱し、二撃目はカウンターを発動させ無効化する。そしてガラ空きになったギラグマの腹に、メラドラが技を当てようとした瞬間――。
「グオオオオ!」
土色のドラゴン――ドロドラゴが、攻撃を繰り出した。二体のモンスターを相手に、上手く立ち回れないメラドラは、頭に攻撃が直撃してしまう。
〈会心の一撃〉
防御の隙を突く攻撃。威力を70%上昇させる。追加効果として、防御力上昇系のアビリティを無視できる。そして弱点属性を貫通する。
ドロドラゴの攻撃が直撃した瞬間、一瞬の発光と共に青白い魔力が迸る。これは会心の一撃が起きた場合に発生するエフェクトだ。
メラドラは闘技場を囲む壁に突っ込み、血だらけの状態に陥る。あまりにもダメージが大きかったらしい。
フラフラと倒れ、力尽きた。体が魔力に変化して、その場から消え失せる。
「そんな……」
ジガルゴを圧倒したメラドラですら簡単に倒されてしまい、アイリは両膝が崩れ、戦意喪失する。
「ガルル……」
母親から受け継いだ灰色の狼――グレイガルは唸り声を上げ、ドロドラゴやギラグマを警戒しながらアイリを守ろうとしている。
テイマーが死んで収納リングを砕かれたら、モンスターも死ぬ。だからどうしても生き残りたい。しかしアイリは勝機を見出せない。
もう戦えるのはグレイガルのみ。状況を打開する力なんて、彼女には残されていなかった。
「――詰みだな。しかし呆気ない、この程度とは。天才とは言っても、モンスター対戦という競技の中だけ。所詮はただのガキだったか……」
イライジャが眼下に転がるヒナタを蹴り上げた。「ごふッ……」と血を吹き出し、彼女の視界が回る。
「ヒナタ……」
目の前で地に伏す友人の体を見て、ボロボロと大粒の涙を流すリンネ。しかし彼女は強いが故に最優先に狙われ、モンスターを全て始末されている。
もう何も出来る事はない。
血が流れ過ぎており、意識は朦朧としている。どうにか気力を振り絞って意識を繋ぎ留めているだけ精一杯。体は限界に近い。
観客も震えながら、闘技場の方を見ている。天才だと謳われた三人が手も足も出ない様子に、声を押し殺し泣き出す者も多い。
カーネリアンが噂に違わぬ強大な力を持つ事に、彼等は恐怖していた。次の矛先はコチラに向くのではないかと、不安で心臓の鼓動は早まる。
「隊長。優勝賞品を回収しました」
下っ端の隊員が小さな箱を持っている。恐らくその箱の中に優勝賞品の〈月光花〉が入っているのだろう。
「では……、殺すか」
目的は果たしたと、イライジャが止めの指示をモンスターに出そうと一歩踏み込む。
「…………ッ」
アイリは死を覚悟して、もう敵に視線を向ける事すらなく地面を見ていた。体に力が入らず、もう抗う気力もない。
「…………」
リンネは薄れゆく意識の中で、ヒナタに罪悪感を抱いていた。自分を庇ったせいでヒナタが死ぬと思うと、申し訳なくて何より情けなかった。
もっと自分は強いと思っていた。今まで天才だと自惚れていた。
でも所詮はまだ鍛錬不足で世界には通用しなかった。自分の身を守る所か、友人を巻き込んで足を引っ張ってしまうなんて、どう後悔して良いのかも分からない。
ただただリンネは涙を流し、今にも死にそうなヒナタを見ていた。
「…………」
ヒナタは体が弱く、長く生きるのは難しいと幼い頃から言われていた。
だから、友人や家族に尽くすのが人生の意味、そう言い聞かせ彼女は残り短い人生を受け入れようとしていた。
本当は長く生きていたいけど、無理だというなら、せめて意味のある人生だったと思いたい。
そう願って、父の為に尽くし生きてきて、友人を庇って戦った。だけど力及ばず、大して父親の役にも立てないまま。
命を
何の意味もない人生だったと、彼女は後悔し、涙を流しながら目を閉じた。
「ゲルガル、奴に――」
イライジャが命令しようとした時――。
「――――ッ!」
凄まじい速度で急接近する気配。空から何かが迫って来る。
「グオオオオ!」
白竜が叫び大きな翼でイライジャを守ると、20メートル先で小さな爆発が起きる。
爆発は空から降ってきた何かが、落ちた事で発生したものだ。バキバキバキと音を立てながら地面に亀裂が入り、観客席まで地震が伝わる。
会場の半分を包む様な大きな砂煙。騒然とした様子で、観客は砂煙を見つめて息を呑んでいた。
数秒後に大きな風が巻き起こり、煙が晴れると一人の少年がクレーターの中心に立っていた。
「……何者だ?」
希薄な気配。意味の分からない身体能力。人間かどうかも疑わしい。そして単独で此処に来る理由。何もかも理解し難い存在だった。
イライジャは険しい表情で、白髪の少年から目を逸らさない。
「僕はジャスパーの第二部隊、副隊長。天衣ショウ」
白髪の少年――ショウは、クラマルを抱きながら丁寧に挨拶する。「カーネリアンが暴れていると聞いて、殺しに来た」と、面倒くさそうに冷たい視線を向けていた。
〈あとがき〉
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