※この作品はR-18です。

【ゲームのデータ】引き継ぎ! C級テイマーに転生!   作:BIBI

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第22話 月帝花

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ヒナタを背負い僕は試合場を後にした。

 

 

「意外と簡素な部屋ですね」

 

 

 僕が辿り着いたのは、森の中に隠されてた地下室。ここはヒナタが普段暮らしている一室らしい。コンクリート剥き出しの部屋に、ベッドやテーブルなど最低限の家具だけが置かれていた。

 

 

 

「別に何の趣味もないからな……」

 

 

 そういえばゲームの説明でヒナタは、できる限り趣味を持たない様にしていると記載されていた。

 

 

 

 女の子らしい趣味、普通の家族、楽しい青春、そういうものから目を逸らして生きているらしい。

 

 

 理由は単純。彼女は生まれながらに魂が弱くて、短命だと宣告されているからだ。

 

 

 通常より弱い魂と、強力なアビリティ。それによる負担が、体に響いてしまっている。こういう病を持つ者は稀にいるが、その多くが完治できず短命で死に至る。

 

 

 

「この〈月帝花〉、僕が貰っていいですか?」

 

 

 ヒナタをテーブルの席に着かせた後、僕は〈月帝花〉を鞄から取り出した。黄金に輝く一輪の花――月帝花は、何とも強くて異様な気配を漂わせている。

 

 

 

「好きにしたらええよ。アンタが手に入れたんやし、父さんも文句言わんと思う」

 

 

 大きく溜息を吐き、ヒナタはテーブルに突っ伏した。体は回復しても、精神的な疲れが限界に近いのかも知れない。

 

 

 

 疲れた様子で、少しウトウト眠そうに目を細めていた。

 

 

 

「そうですか……」

 

 

 答えを聞いて、僕はリングから蒼く光る魂を取り出し、結晶化させる。それを月帝花と融合させた。

 

 

 

「――――ッ!」

 

 

 

 凄まじい気配に目が冴えたらしく、ゆっくりと顔を上げてヒナタはジッと僕の手元を見ていた。

 

 

「はい。これあげます」

 

 

 月帝花を茶色の種に変えた僕は、それをヒナタに手渡した。

 

 

「えっと……?」

 

 

 とりあえず受け取った様子のヒナタは、かなり戸惑いどうしたらいいのか分からないみたいだ。

 

 

 

「後で腐葉土をあげるんで、育ててください。〈黄金ノ林檎〉が育つんで」

 

 

 もう疲れたから腐葉土を作りに行こうと、僕はドアの方に足を進める。

 

 

〈黄金ノ林檎〉

 食べると魂の潜在能力を一段階引き出す。伝説に登場する希少な林檎であり、存在が殆どの人に信じられていない。これを食べる以外に、潜在能力を引き出す手段はない。ランダムで森に黄金ノ林檎が出現する。しかし一個しか実らない上に、早く収穫しないと腐る。

 

 

 

「多分一週間くらいで実がなると思います」

 

 

 背を向けて雑に説明し、「魂が成長すれば、無制限にアビリティが使用可能でしょ? 体の衰弱も止まるんで、実が十分に育ったら食べてください。色が赤から金色に変化した時が収穫時です」と一瞬振り返ってヒナタを見た後、僕は外に向かった。

 

 

 

 ヒナタは唖然とした様子で、僕を見つめて種を握っていた。当然の反応だろう。先程の戦いで彼女の体は後一ヵ月程度で限界を迎えそうなほど、酷く衰弱していた。

 

 

 

 もう死を受け入れていたに違いない。それが唐突に救われ、これから長く生きていけると言われたのだ。驚かない方がおかしい。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

『シノンさんは声明を出さない方針ですね』

 

 

『天衣家はシノンさんが旅に出たと主張していますが、実際はどうだか――』

 

 

『シノンさんの兄――天衣ショウさんは、いわば犯罪者なわけで――』

 

 

『彼女に非はないという主張も理解できます。しかし現に彼女の研究成果で力を付けたテイマーが闇ギルドに加担しています。彼女の兄、天衣ショウさんもその一人な訳で――』

 

 

『これから起きる事件発生率の上昇予測です。このグラフを見てください、急激な上昇で――』

 

 

『彼女の研究成果によって、これだけの死者数が想定されます』

 

 

『外国では彼女を天才だと崇める人もいますが、研究者の意見に偏っていますね……。実態が見えていないと言うか、一般市民の声を無視している印象はぬぐえないかと……』

 

 

『シノンさんの予想される本や魔道具の売り上げ予測です。これだけの富を得るだなんて驚きですよね。魔道具の特許まで得て、何とも彼女は商売上手というか……。若いのに、こんなにお金があってどうするんでしょうね? 何の為に稼いでいるのか――』

 

 

『ここで争点は、彼女の影響で犯罪が増えることについて、どう扱うべきか。映像でも見て頂けた様に、インタビューでは多くの人が犯罪者として扱うべきという意見を――』

 

 

『番組としては決して彼女を(おとし)める気はありませんが、インタビューではこういう否定的な回答が多いということでした――』

 

 

『天衣ショウさんは妹を嫌っている。かつてはライバル視しており、出来の良すぎる妹に深い恨みを抱いていた疑惑があります。闇ギルド入団の理由には、シノンさんの影響があるのではないか――』

 

 

 この一ヵ月。テレビやネットで噂が飛び交い、シノンの評判は著しく落ちていた。テレビが世間の声を作るというのは、過言ではないのかも知れない。

 

 

 

 連日連夜。彼等が偏向報道による印象操作を行って、段々と世間の見方は変わった。

 

 

 

 ある程度ネットではシノンのファンやまともな人が正しい情報を書き込み、かなり偏見は取り除かれている。

 

 

 

 しかしネットに入り浸りな人間なんて少数派だ。多くの人が情報を手に入れる媒体はテレビであり、その影響力は非常に強い。

 

 

 この偏向報道は警察、リーグ、スポンサーの都合であり、あくまで日ノ国だけ。海外では日ノ国の報道は腐っていると叩かれていた。

 

 

 

 だが、その海外の声を日ノ国の国民で知る者は少ない。何せ、わざわざ海外からの評価をテレビが報道する訳ないからだ。

 

 

 

「何か最近、治安が悪くない?」

 

 

「カーネリアンとジャスパーが抗争しているからなぁ」

 

 

「ジャスパーってシノンの兄がいるとこだろ?」

 

 

「幹部を殺してカーネリアンを怒らせたからな……」

 

 

「兄が力を付けたのって、シノンの研究成果が原因なんでしょ? あーいう研究って表に出していいやつなのかな」

 

 

「俺は駄目なやつだとは、正直思う……。これ以上強いテイマーが増えたら生活できねぇって……」

 

 

「……まぁ、そうだよねぇ。……私も出歩くだけで少し怖い」

 

 

 一般市民も最初だけシノンやショウを持ち上げていたが、今はテレビの情報に鵜呑みにしている人が大多数。

 

 

 手のひら返しも甚だしく、簡単に意見を変えていた。

 

 








〈あとがき〉

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