【ゲームのデータ】引き継ぎ! C級テイマーに転生! 作:BIBI
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案内された広い座敷。僕とヒイラギは低座椅子に着き将棋を指しながら、
あっという間に二時間経ち、一局が丁度終わった頃――。
「失礼します。クラリス様が感謝を伝えたいと、天衣様に」
襖を開けてエリカが軽く説明し、後ろに控えるクラリスに道を譲った。
「…………天衣ショウさん。この度は貴重な回復薬を頂き、大変感謝しております。貴方にはどう感謝を伝えれば良いのか判然としませんが、私にできる事なら何でも仰って頂ければと思います」
巫女服姿の金髪美少女――クラリスが畳の上で正座し、頭を下げる。非常に整った容姿と態度。大人っぽさを感じる振る舞いだが、ショウより一つ下の歳。
「無事に体が治ったみたいで安心しました。別に無茶な要求をする気はありませんよ。強いて言えば、これから僕の隣で過ごして欲しいくらいですかね。でも、それ以外は何も――――」
僕は話しながら、エリカとクラリスの表情の変化に気づき言葉を止める。
「…………ッ」
顔を真っ赤にして、クラリスの目が泳いている。エリカは色々と察しているのか、小馬鹿にしたような笑みで彼女を見ていた。
「「………」」
アタルとヒイラギも溜息を吐き、やれやれと言った様子。
「……護衛するという意味です。風呂やトイレを見張る気はありません。同衾する気もありません。あの……、誤解させる言い方で申し訳ない……」
周囲の反応から大体状況を把握し、僕は弁解した。耳が熱くなるのを感じる。今僕は顔を真っ赤にしているに違いないが、表情だけは取り繕うと必死になっていた。
「……あ、はい……。そうですよね……。申し訳ありません、こちらこそ……」
口元に手を当て、目を逸らすクラリス。勘違いとはいえ、お互い少し気不味い空気が数秒流れてしまった。
「……驚いたよ。巫女ちゃんの体目当てなのかと思った……」
茶化す様に、場を和ませようとヒイラギは笑う。
「それも有りと言えば有りなんですけど、今後を考えると巫女ちゃんには嫌われたくないので……」
咳払いし、気を取り直して僕は自然と会話を繋げた。
「有りなのかよ」
呆れた様子でアタルは笑い、出されていたお茶をすする。
「それはまぁ、そうですよ。とても綺麗な方なんで……」
僕はクラリスの顔を見て、一部のユーザーから人気があった事に納得していた。確かに顔が良い。何より上品な雰囲気と、高潔な印象を感じる。
故に彼女を綺麗だと評するのに、僕は何ら躊躇いはなかった。
「…………ッ」
褒められ慣れているはずのクラリスが、何故か恥ずかしがっている。もしかすると巫女という立場から男性を遠ざけられていた故に、男性から褒められる機会が少なかったのかも知れない。
だとしたら変に口説いてしまったようで、迷惑だったかも知れない。僕としても少し申し訳なかった。
「エリカちゃんは?」
何でも軽く受け答えする僕に遠慮なくなったのか、ヒイラギが質問を追随してくる。別にこういう話は嫌いじゃない。
前世でもクラスメイトと好きなキャラを語り合う程度に、僕はオタク話が好きなのだ。寧ろ懐かしさを覚え、楽しいくらいだった。
「巫女ちゃんより好みですね」
僕としても最推しのキャラだ。というか第二部が個人的に一番ストーリーが好きだっただけに、エリカには思い入れが深い。
何度もストーリーを見返し、何度も彼女が死ぬシーンで泣いた。どうにか救いはないのかと、運営に泣きながら問い合わせた事もある。
正直、表情に出さない様にしているだけで、感激のあまり気を抜くと頬が緩むほど。僕はエリカの事が好きで仕方がなかった。
「…………!?」
先程までクラリスを横から小馬鹿にした様子だったエリカが、驚いた様子で顔を赤く染めていた。よく考えたらクラリスに付き添っている彼女もまた、男性とは殆ど関わる機会がないのかも知れない。
クラリスに口説いていると思われない様に、エリカに方向を逸らしたが、これは普通に失敗かも知れない。
どっちも口説かれ慣れていない所為で、また変な空気になってしまった。
「…………ッ」
自分が劣ると解釈したのか、クラリスはショックを受けた様な表情になっていた。その意外な反応に僕は悔しくなる、女慣れしていない弊害がこんな時にと。
女心なんて僕には全く分からない。シノンのおかげで童貞は卒業できてはいるのだが、恋愛経験は未経験と言って差し
何を言えば失礼になるのか。何を言えば女が喜ぶのか。そんなことを瞬時に判断する力は僕にあるはずもなかった。
「お前ら……、あんまり男慣れしてねぇ嬢ちゃん達を揶揄うんじゃねぇよ」
テーブルに置いてある煎餅を齧りながら、アタルが目を細め注意してくる。
「「――――ッ⁉」」
自分達が男慣れしていない処女だと暗に指摘され、ブワッと顔を赤く染め恥ずかしがるクラリスとエリカ。
別に僕は揶揄ったつもりはないが、彼女達はアタルの言葉を鵜呑みにして揶揄れていたと判断したらしい。
どんどん僕の印象が悪くなるのは、少し悲しかった。最推しから年下に偉そうな態度のイキリ野郎だと思われていないか、凄く心配だ。
「……そうだね。冗談はほどほどにしようか」
ヒイラギは苦笑して立ち上がり、アタルの隣に座る。
「まぁ二人共美人なのは本音だよ。ただ顔を赤くするとは思わなかっただけで……」
肩を竦め、僕は片付けながら言い訳する。因みに僕の圧勝だった。前世ではボードゲームはかなりやり込んでいたので、知識量が段違いなのだ。
基本的にボードゲームは頭の良さより、知識や経験がものが重視される。長い歴史で蓄積された優良な知識を一通り学習しているので、僕はそれなりに強い。
この世界では将棋は流行り始めた程度の段階で、僕に勝てる人は中々いないだろう。
「それを揶揄うって言うんだよ。全く……」
更に呆れた様子で、溜息を吐くアタル。ヒイラギは気にした様子もなく、携帯を弄り始めていた。
「「…………」」
クラリスとエリカは恥ずかしそうに俯く。どうやら僕が二人を揶揄っているという誤解は継続中らしい。
「はぁ……」
誤解を解くのを諦め、僕は「巫女ちゃん。暇だったら、僕と一局どう?」将棋をしようと話を変えた。
〈あとがき〉
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