※この作品はR-18です。

【ゲームのデータ】引き継ぎ! C級テイマーに転生!   作:BIBI

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第33話 格の違い

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 何故クラリスは逃げないのか、誰にも(かくま)われないのか。それには理由があった。

 

 

 彼女は幼い頃に魂を錬金術で弄られている。これは代々続く巫女の宿命だとされ、生まれた時に周囲から(ほどこ)された悪意の結晶。

 

 

 

 逃げない様に。必ず捕まえられる様に。この地から離れたら魂を壊れるように細工しているのだ。

 

 

 まるで品種改良された牛や豚の様に、巫女は人間扱いなんて到底望めない。

 

 

 当然の様に、一定の年齢を迎えれば、望まない相手の子を産めと強制されるなど、まともな恋愛すらクラリスは禁じられている。

 

 

 

 第一子は親の才能を多く遺伝する。故に子種は厳選され、クラリスは男から遠ざけられて育つ。挙げ句、婚約者候補は醜く性格もゲスな者ばかり。

 

 

 

 どうせ醜い男に体を弄ばれるのだと、幼い頃から彼女は自由恋愛を諦めていた。

 

 

 故に白髪美少年のショウに救われた事に、クラリスは強烈な運命を感じてしまった。

 

 

 群を抜いたイケメン。史上最強のテイマー。頭も悪くなく、話していて丁度いい。気弱な性格もクラリスにとっては好ましい。

 

 

 

 こんな男と出会い、運命を感じるなという方が酷かも知れない。クラリスは出会って数時間経つ頃には、ショウにドハマりしていた。

 

 

 

 というか、男に免疫がなさ過ぎる彼女に、ショウは刺激が強すぎたらしい。完全に目がキマっていて発情している様子から、侍女のエリカにドン引きされていた。

 

 

 それくらいクラリスはショウに惚れ込み、隙を見ては口説き落とそうと努力している。

 

 

 だから六日間、何気ない平穏な生活だったが、クラリスは今まで感じた事がないくらい幸せだった。モンスターに料理を作ったり、ショウと一緒に将棋やチェスをしたり、のんびりとした生活だったが、楽しくて仕方が無い。

 

 

 

 まるで勇者に助けて貰うお姫様の様な気分だったのかも知れない。きっと彼なら何とかしてくれると思い、クラリスは大して深く少し先の未来を想像していなかった。

 

 

 

「…………ッ」

 

 

 七日目の夕方。空は橙色に染まり、怪しい雰囲気を漂わせていた。血の気が引き、急に夢から現実に引き戻された感覚。空から伝わる大きな魔力に、クラリスは恐怖し体を震わせていた。

 

 

 

「クラリス様……」

 

 

 和風城の上階。窓を開け、クラリスの髪が風に揺られている様子を後ろからエリカは見ていた。表情を見なくても、エリカにはクラリスの不安が理解できる。

 

 

 

 強大な力を持つモンスターの軍勢が、凄まじい速度でこちらに向かっているのだ。

 

 

「…………ッ」

 

 

 和風城を囲む様に、今はあまり使われていない木造の建造物が立ち並び、土塀(どべい)築地塀(ついじべい)で入り組んだ道も趣がある。

 

 

 

「マジかよ……」

 

 

 

「ここまでなのか……」

 

 

 

 既に腕に覚えのある2000人以上のテイマー達が、ショウの居る和風城を囲んでいたが、カーネリアンの強大な気配に畏怖していた。

 

 

 

 数十秒後、カーネリアンの団員がここに到着しようとしていた。その数は300人。かなり少ない様に感じるかも知れないが、足手纏いにならないと判断された数がそれだけいるという事。

 

 

 

 しかも強力なモンスターを、彼らは六百体以上率いている。恐らく平均レベルは60。更にメカルテまで加わっている事を考えれば、絶対に勝てる相手ではないと確信していた。

 

 

 

 加えて反対の方角から、同数の軍勢。そしてメカルテとは違う別の特例指定モンスターが接近しており、和風城を囲むテイマー達は絶望する。

 

 

 

 特例指定モンスターが二体。これがカーネリアンが堂々とショウに挑む理由。

 

 

 

 たった一体であれば何とか対処できる可能性が僅かにあったかも知れない。だけどあの軍勢と二体の特例指定モンスターが相手では、どれだけショウが強くても勝ち目はない。

 

 

 

 そう判断し、一気に大多数のテイマーは逃げ出した。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 モンスターズZは、ゲーム会社の社長曰く子供向けではない。

 

 

 大人の中でもマイノリティに向けに作ったらしい。あくまで意図せず、世界的に子供から大人にも大人気になってしまっただけ。

 

 

 

 故にゴリゴリに鬱ゲー。もはやリョナゲーに近いストーリー。

 

 

 このゲームは当然の様にモンスターがぐちゃぐちゃに磨り潰され、人の脳みそを飛び散らせる様な描写が含まれている。

 

 

 

 特に第一部のカーネリアンは全シリーズでも、屈指の悪としてユーザーから酷く嫌われていた。

 

 

 幼女だろうと平気で犯し、不起訴処分で何の罰も受けず、人を殺しまくるなどやりたい放題。逆らったテイマーの娘を犯す映像をテレビで流す事すら、面白半分でやる連中。

 

 

 

 プロになる様な強いテイマーですら、カーネリアンに目を付けられ、家族を(なぶ)り殺しにされれる事も珍しくない。

 

 

 

 彼等から理不尽な暴力を振るわれ、恨みを持つ者が世界中に多くいる。

 

 

 しかしカーネリアンは強制銃や特殊なタトゥーの開発など、研究者としても優れている団員が多く、非常に強大な戦力を備えていた。

 

 

 

 だから世界中のリーグが協力しても、カーネリアンに太刀打ちは難しい。そもそも野生モンスターが強すぎて、世界の大部分が未開拓地であり、闇ギルドの拠点を炙り出すのは現実的ではない。

 

 

 

 故に警察や軍、リーグを含め、全力を尽くしても後手に回らざるを得ない訳で、一人になった瞬間に集団から各個撃破されてしまう事例ばかり。

 

 

 

 どれだけ多くの人が恨み、強者が協力し合った所で、カーネリアンの悪事を止める事は現実的ではない。

 

 

 そもそも優秀、凶悪、拠点も分からない集団。こんな連中が相手では世界中の政府が協力した所で、大した抵抗はできないのが実情。

 

 

 

 だからこそジャスパーに期待する者は少なくない。というか彼らだけが希望とすら思われている。

 

 

 天衣ショウ。彼という最強の存在なら、もしかしたらカーネリアンを滅ぼせるかもしれないと、世界中で大勢が期待していた。

 

 

 というより彼に(すが)るしかないのだろう。

 

 

 

「まさか……、強制銃の大量生産が完了していたなんて……」

 

 

 和風城を取り囲むテイマーで、ルシオは逃げなかった。もはや、ここが正念場。勝てる見込みはないが、それでも国を背負う者として、これ以上逃げる訳にはいかなかった。

 

 

 現在、周辺で高層の建造物を見つけ、屋根に上り彼は周囲を観察している。

 

 

「こういう天敵が現れた時の為、事前に警戒し隠していたのでしょうね……。何て抜け目のない連中よ……」

 

 

 

 ロレンサも同様の気持ちだろう。今まで好き放題され、反撃の機会を伺っていたが、もはや思いつく限りの方法で、カーネリアンは倒せない。だったらショウという未知の可能性と協力し、巨悪を討つのが合理的だとこの場に残った。

 

 

 

「この一ヵ月間。一方的にやられまともな反撃をしなかったのは、ジャスパーの油断を誘う為か……? これだけの戦力を備えて置きながら、ここまで徹底的にショウを倒そうとするなんて、用心深いにも程があるだろ……」

 

 

 

 強い上に搦め手ばかりで隙も見せない狡猾な相手。そんな連中にどう勝てば良いというんだと、ルシオは拳を固め怒りに震えた。

 

 

 

「誘い出されたのは、寧ろ天衣ショウの方って事ね。もう逃げられないわ。二体の特例指定モンスターがすぐそこにいる上、挟み撃ち……。確実に殺すつもりね。仮に背を向けても殺されるだけよ」

 

 

 ロレンサは確信する、この戦いは天衣ショウの敗北だと。だから自然と「すぐにでもクラリスを殺し、せめてメカルテの支配を解くべきじゃないの……?」彼女は疑問に思う。

 

 

 

「意味はないさ。曰く、特例指定モンスターは周辺の魂を食らい尽くす。殺害した時点で魂を遠距離からでも吸い込めるんだろうさ。恐らくこの言い伝えは事実なんだろう。じゃないとカーネリアンが不用意に近づく訳がない」

 

 

 

 ルシオは煙草を咥え、マッチで火を付けた。これが最後の一本かもなと、どこか諦めた様な表情で橙色の空を見上げた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 ゲーム知識を持つショウは、依然としてレベル上げに苦労していた。レベル50辺りから著しくモンスターのレベルは上がりにくい。

 

 

 

 使役している中で最高レベルのクラマルでさえ、未だにレベル53。つまり特例指定モンスターの二体に比べ、遥か格下という話。

 

 

 

 基礎能力は二倍違えば、戦いが成立しない。それがこの世界の常識。実際、ショウも基礎能力が劣るというのは、重く受け止めており、圧倒的に不利であるのは間違いないと思っている。

 

 

 

「…………」

 

 

 和風城の頂上。瓦の上でショウは立っている。そして――二体の特例指定モンスターがふわりと舞い降りた。

 

 

 

 まだ攻撃はしない。ただ見ているだけ。「…………ッ」流石に伝説として扱われるだけあると、ショウに転生してから最大の緊張が走った。

 

 

 

「クオオオン……」

 

 

 ショウの正面で漂うメカルテは、ゴツゴツした鋼を体に纏った様な鳥だ。体長は2メートルを超えて翼が広く大きいのが特徴。体毛はなく、分厚い皮膚や鱗を持つ。

 

 

 

 背後で漂うラギルドは、メカルテによく似た見た目。しかし灰色のメカルテに比べて、皮膚が蒼く少し禍々しい印象だ。

 

 

 

「にゃ……」

 

 

 ぺちぺちとショウに抱かれたクラマルは胸を叩いている。ショウと違って、あまり特例指定モンスターには興味を持ってなさそうな様子だ。

 

 

 

「無理だ……。勝てる訳ねぇ……」

 

 

 

「ははは……。あんなの……、反則だろ……」

 

 

 

 遠くから見つめる多くの者が、強大な気配を浴びて畏怖している。

 

 

 ショウは勝てない。もうカーネリアンの力にひれ伏すしかない。そう確信しつつも、もはや希望は天衣ショウしか残っていないと心のどこかで(すが)っていた。

 

 

 

 これは確実に歴史書に記される世紀の一戦。

 

 

 辛勝、せめて相討ちを願って祈る者ばかり。

 

 

 周囲を旋回(せんかい)する体長1メートルの巨体な鳥――ミドルドリは首に撮影用カメラを取り付けていた。

 

 

 

 映像はテレビで放送され、世界各地で十億人以上の人達がショウのあっけない敗北を心配し、激しい攻防を期待していた。

 

 

 

「何だ? 案外弱そうだな?」

 

 

「アイツ震えてね? マジで気が弱いんだな」

 

 

「だっせーな、おい。こんなもんかよ」

 

 

「何が最強のテイマーだよ。震えて動けねぇ最強とかダサすぎだろ」

 

 

 カーネリアンの団員達は、特例指定モンスターの攻撃に巻き込まれない様に、あえて近づかない。

 

 

 

 というか、平気でモンスターの接近を許すショウの方が異常なのだ。通常なら有り得ない暴挙。せめて近づかれない様に足掻くのが一般的。

 

 

 

 故に、カーネリアンは勝利を確信していた。彼らにとってモンスターに接近され逃げようとしないのは敗北を受け入れる所作に他ならない。

 

 

 

 もう最強のテイマーと噂のショウは恐怖に震え敗北を認めたのだと、フリッツは大型のドラゴンに乗り、上空から見下ろしていた。

 

 

 

『天衣ショウ。勘違いするな。決して侮っている訳じゃない。貴様の力、シノンの頭脳。どんな策で対抗してくるか、想像もできない。恐ろしくて仕方がない。手加減なしで勝てる相手とは思わない。だからこそ、出し惜しみなしだ。最初から切り札を出す。貴様らが幾ら頭を捻り、小細工をしても関係ない。こちらは特例指定モンスターが二体だ。純粋な力で――貴様を叩き潰してやる……!』

 

 

 

 口元に付けたピアスは高性能な拡声器。響き渡る声フリッツの声。テレビを観ている人達はその宣言に恐怖し、多くの人は不安が込み上げ映像に釘付けだった。

 

 

 

「「オオオオオオオオオオオオオ……!」」

 

 

 フリッツの言葉には命令式が編み込まれており、支持を受けたメカルテとラギルドは不気味で力強い咆哮を上げた。

 

 

 

「…………ッ」

 

 

 強まる特例指定モンスターの気配が周囲に放たれ、ルシオとロレンサは歯噛みして、死を覚悟していた。

 

 

 ――その瞬間。

 

 

 

 

 メカルテの顎に「――――ッ‼」神死斬りが炸裂し、数十メートル上空まで打ち上げられた。

 

 

 

 眩い発光と共に青白い魔力が迸ったこれは、会心の一撃。メカルテとて、決して無視できない大ダメージが入る。

 

 

「――――ッ」

 

 

 自分の前を通り過ぎて吹っ飛んだメカルテを見て、フリッツが呆気に取られた時。

 

 

 

 彼の顔は爆散した、一瞬で接近したクラマルにぶん殴られて。脳が飛び散り、焼け焦げた首から血が薄らと滲む。

 

 

 

 それに恐怖し周囲は身をこわばらせてしまう。大きな隙だ。クラマルが見逃してくれるはずもない。

 

 

「――――ッ」

 

 

 ドーリスだけではない、周囲の幹部は五人全員ほぼ同時に頭部が爆散した。ついでに乗っていたドラゴンの頭部も消えており、静かに落下していく。

 

 

 

「にゃ……」

 

 

 空中で狼狽し、体勢を立て直しているメカルテを見て、クラマルは空を駆けながら一瞬で近づく。

 

 

「ラギルド……!」

 

 

 幹部の一人が叫び、ショウを狙う命令式を声に編み込んだ。

 

 

「は……?」

 

 

 だが、次の瞬間には呆ける事となる。

 

 

 何せ特例指定モンスターのラギルドが、和風城を囲む竹藪まで吹っ飛ばされてしまったからだ。

 

 

 眩い発光と迸る青白い魔力。

 

 

 ショウはスライムの技を使用し、ラギルドに会心の一撃を叩き込んだのだ。

 

 

 

 彼の一撃はラギルドにとって予想外のもの。

 

 

 

 何せカーネリアンの者と違って、モンスターであるラギルドはショウの身体能力を知らないのだ。

 

 

 加えて、イライジャも感じていた違和感。身体能力に釣り合わない程の希薄な気配。その正体はオーラによる基礎能力の隠蔽である。

 

 

 

 そう、ショウは知っていたのだ、オーラにはモンスターの気配を隠す効果がある事を。

 

 

 だからこそ彼は難なく技を繰り出し、ラギルド相手に会心の一撃を与えられた。これは特例指定モンスターだからこその立ち回りだ。

 

 

 

 メカルテが低ランクのクラマルを侮っていたが故に、反応すら満足にできず会心の一撃を食らったのと同じ。

 

 

 

 ラギルドもまた希薄な気配のショウを侮った。だから易々と会心の一撃を叩き込まれたのだ。

 

 

 当たり前だが、カーネリアンがショウやクラマルに抱くほどの警戒心を、モンスターが持っているはずもない。

 

 

 ランクや気配に頼って強さを見極める。この悪癖を治さないのは、ショウに言わせてみれば怠慢。時代遅れの育成法に他ならない。

 

 

 

〈神死斬り〉

 闇属性の近距離攻撃。威力40。命中80。会心の一撃は威力を300%上昇させる。

〈捨て身加速〉

 素早さを80%上昇する。防御が50%低下する。

〈二重バリア〉

 最大体力の半分を消費する。二回相手の攻撃を防ぐ。状態異常は無効化する。会心の一撃が当たると一撃で効果を失う。最大体力が半分以下の状態では使用不可。

〈自然治癒〉

 一定時間、体力を回復し続ける。

 

 

 

 本当は少し害悪系の立ち回りをしてやろうと思ったが、もはや手の内を明かすまでもないだろう。

 

 

「クラマル! 敵を軽く殲滅してくれ!」

 

 

 ショウは命令式でクラマルの技を制限した。

 

 

「こんな事って……」

 

 

「何が起こっているんだ……」

 

 

「全員、逃げ――」

 

 

 恐れをなして逃げようとする者、抵抗する者、委縮して動けない者、それぞれ反応は違うが見逃して貰える訳もない。

 

 

 

「…………」

 

 

 まるでモンスターのレベル上げ作業の様に、クラマルはカーネリアンの団員達を淡々と速やかに殺していく。

 

 

 

 結局、カーネリアンを含め世界中のテイマーは、ショウを侮り過ぎていたのだ。

 

 

 そもそも誰もショウと、同じ土俵にすら立てていない。

 

 

 ゲームで既に彼は、〈黄金ノ林檎〉を五つ食べ、魂の潜在能力を全て引き出している。それに加え、C級以下のモンスターしか使役できない事を対価に、テイマー補正を底上げしているのだ。

 

 

 

〈テイマー補正〉

 基礎能力99%上昇。体感時間強化99%上昇。種族スキル強化99%上昇。レベルアップ時の魔力値99%上昇。

 

 

 ゲームのデータを引き継ぎ。彼は紛れもなく最強のテイマーだ。

 

 

 基礎能力は魔力の強さで決まる。つまり現在クラマルのレベル53でもレベルアップ時の魔力値99%上昇により、基礎能力が大幅に強化されている。

 

 

 

 それに加えて、更に基礎能力99%上昇。

 

 

 今のクラマルは単純な基礎能力だけでも、メカルテと同格である。手加減しているというだけで、ただの力押しで勝とうと思えば勝ててしまう。

 

 

 あくまでショウが緊張していたのは、手加減をした状態で階下にいるクラリス達を守ろうとしていたからだ。

 

 

 

「巫女ちゃん。一緒に来てください」

 

 

 だが、もう心配は要らない。後はクラマルだけでも対処可能。ショウは屋根から降り、空気を足場に窓を見た。

 

 

「……え?」

 

 

 目の前で手を差し伸べてくる彼に、クラリスは首を傾げて戸惑う。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「…………ッ」

 

 

 凄まじい速さで敵を追い、首や心臓を削り取るクラマルの姿を遠目に、ルシオとロレンサは呆気に取られていた。

 

 

 

「は、はは……。何だ……、これは……? 私は、夢でも見ているのか……?」

 

 

 彼は声を震わせ、拳を固める。目の前に映る光景は戦いとすら呼べないような、一方的な殺戮(さつりく)

 

 

「なんて荒々しく強大なオーラ……。彼は本当に神の使いなの……? スライムを纏っているとはいえ……、人間が特例指定モンスターに勝つ……? そんなことが……。(じか)に触れていれば、言葉を(もち)いず命令式を伝達できるとはいえ……、これは……」

 

 

 

 ロレンサは未だに目を疑い、先程見た光景を信じられずにいる。まるで夢でも見ている様な感覚だった。

 

 

 

「言葉という過程を省略した以心伝心(いしんでんしん)、か……。これにより理論上は、数手先の行動が可能にはできるだろうが……。だが普通……、それを本気で実行するか……?」

 

 

 ルシオはできるできない以前に、実行した事を何より畏怖していた。

 

 

 人間はモンスターと違って、魔力で負傷を肩代わりできない。一瞬の判断ミスで死ぬ可能性もあるだろう。

 

 

 だからこそルシオは確信していた、ショウにとってこれが気にする程度のリスク足り得ない事を。

 

 

「……恐怖し、逃げ惑う団員程度なら、周辺のテイマー達でも対処可能か。わざわざ人を集めたのは、逃げる敵の足止めに利用する為……。何もかも全て奴の手のひら……。格が……、違い過ぎる……」

 

 

 

「強制銃で従わせたモンスターは、繊細な制御が難しい。それが恐怖と混乱で統率すら取れなくなった今の状態なら、団員の殲滅は容易い……、か。強制銃の弱点をよく理解しているというか……。何もかも、見透かした様な立ち回りね……」

 

 

 

 ルシオとロレンサはそれぞれ見解を口にし、もはや呆れた様子で戦況を見ていた。

 

 

 涙を流し必死に逃げる団員達。今までの恨みを晴らす機会だと、全力の殺意を剥き出しなテイマー達。

 

 

「――は? 何だ……? ここでクラリスを連れて何を……?」

 

 

 ルシオはショウの妙な動きが気になり、目で追っていた。

 

 

 (おもむき)ある木造の建造物が立ち並ぶ場で、メカルテが暗がりに隠れていた。上空で駆け回るクラマルを恐れ、ガタガタと震えながらメカルテは縮こまっている。

 

 

 

「隠れて動かなくなるとか、普通の野生動物みたい……。何か可愛いかも……」

 

 

 クラリスを抱き抱えたショウが、メカルテの隣にふわりと着地した。

 

 

「「――――ッ」」

 

 

 特殊な魔力の波動が伝わり、ルシオとロレンサは目を見開く。

 

 

「クオオオン……!」

 

 

 クラリスの魔力を受け入れ、メカルテはテイムされた。これによりテイマー補正で基礎能力が上昇する。その大き過ぎる気配は、一帯に広く伝わった。

 

 

 

 戦いの最中、多くのテイマー達は理解する、メカルテの気配が変化した意味を。

 

 

「…………は?」

 

 

 本来、レベル50以上のモンスターはテイムできないとされている。というか出来るのなら皆している。

 

 

 

 だが今、実際にルシオ達は目撃してしまった、レベル50を超えるモンスターがテイムされる瞬間を。

 

 

 理解し難い光景だろう。

 

 

 しかしゲーム知識を持つショウは知っている、潜在能力を引き出した者は高レベルのモンスターのテイムが可能だと。

 

 

 

「テイムした事だし、ちょっと力を試してみませんか?」

 

 

 ショウはクラリスを戦力に加え、速やかに敵の排除し始める。

 

 

 たった二分弱。

 

 

 この一帯に集まったカーネリアンの団員は無事、一人残らず殺された。

 

 

 

 

 

 

 






〈あとがき〉

 面白ければ【高評価】してくれると嬉しいです!

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