善良魔導士の【ハーレム孤児院】運営計画 ~行き場のない命を救うために作った孤児院が、気付いたら訳あり美少女ばかりの俺専用オナホ養護施設になっていた件~ 作:ダザリアン
「やはり魔力経路の一部が損傷しているようです。日常生活に影響はありませんが、高難易度の魔法を使うのは難しいでしょうね」
「じゃあ、討伐はもう……」
「諦めてください。細かい魔力制御が効かなければ、些細なことでも命取りになります……この街で暮らす人間として、私も非常に残念ですが」
医師の表情からもやるせなさが伝わる。
検査を終え療院を後にした青年はガックリ肩を落としたまま、暫し途方に暮れていた。
そこへやって来た一人の女性。腰元の長剣とポニーテールの黒髪を揺らすその人物は、あまりの憔悴ぶりに声を掛けるのも躊躇ったほど。
「ど、どうだった? 怪我は治るんだよな!?」
「ソフィ……冒険者は諦めろって、ハッキリ言われちゃったよ。ドグとフランツにも伝えてくれ」
「そんなっ!? クソッ……私のせいで!」
泣き崩れる女性が再び立ち上がるまで、それはそれは長い時間を要した。青年は彼女を慰めながら、その足でギルドを目指す。
「気にするな、と言っても難しいだろうけどさ。でも俺は誇りに思うよ。この腕と引き換えにソフィの命を守れたんだから」
「ありがとう、本当にありがとうカリオン……! 申し訳ない、それ以上の言葉が見つからないんだ。私にできることがあれば何でもする!」
「じゃあ、パーティーを抜けても友達でいて欲しいな。あとデッカい魔物を倒したら、祝勝会の幹事をやらせてくれ。それで十分さ」
「分゛か゛った゛! 幹事やって゛!」
「あはははっ。そっちは冗談だって」
真っ暗だった世界に光が差し込むよう。
もう戦えないのは残念だが、ソフィがこうして生きているだけで十分。これこそ冒険者の使命であり誉れだ。青年は晴れやかな気分だった。
「あぁ、あと手続きとか色々しなくちゃだから、少し手伝って欲しいな。俺そういう書類とか読むの苦手なんだ。知ってるだろ?」
「任せろ。君は何もしなくて良いぞっ!」
「う、うん。あのソフィ、そろそろ左腕を……胸とか当たってるし、こっちまで壊死したら生活がままならな、痛い痛い痛いッ゛!?」
「これからは私が守るからな、カリオン……!」
ようやく笑顔と日常を取り戻した二人。
ひとまず
(とは言え、まさかこの歳で冒険者を辞めることになるなんてなぁ……貯金はあるっちゃあるけど、早く新しい仕事を探さないと)
カリオン・サンチェスはまだ二十代中盤の
飲んだくれな上にダブル不倫で忙しい両親との折り合いは悪く、幼くして顕現した風属性魔法の優れた才もまったく認めて貰えなかった。
なので憧れの魔術学院を諦め、齢十二にして独り立ち。血の滲むような努力を重ねた彼は、放浪の魔導士として各国のギルドを転々。
そして三年前、ゼルフォン王国のノイヴァルト辺境領へ定住。偶々知り合ったソフィにパーティーへ勧誘されたのがキッカケだ。
心から信頼できる仲間を見つけ、街の人々の温かさに癒されたカリオンは、ここノイヴァルトで生きていくことを決めた。
抜きん出た魔法の才と判断力はギルド内でも唯一無二。幾度となく街と仲間の危機を救った。
先日は災害級モンスターの討伐で領主から表彰を受けるなど、まさに冒険者としての全盛期を迎えていた……そんな矢先の出来事。
『し、しまった……!?』
『危ないソフィ!』
近隣の森に現れたB級モンスターの討伐。
パーティー本来の実力であれば相手にもならないが、災害級との戦いから日も浅く、剣士・ソフィは疲労のせいか精彩を欠いていた。
一隙を突かれ絶体絶命の危機に陥ったソフィ。それをカリオンが庇うと、鋭い爪が右腕を抉ったのだ。
結果的に討伐こそ成功はしたが……。
「……ん、紙を落としたぞカリオン」
「おっと。手に力が入らなくてさ……握力はすぐ戻るってお医者様は言ってたけど、こりゃ暫くペンも握らない方が良いかもなぁ」
「なら書類は私が書こう。しかし、右腕だけでなく左にも影響があるとは。労災は降りるんだよな?」
「だと良いんだけどね」
ギルドに到着。
受付待ちの行列に並びながら、カリオンは右手と左手を交互に握ったり開いたり。
あまりのか弱さに苦笑いも零れる。
神経に深く傷が入ったことで、杖腕の右だけでなく左手にも影響が出ているのだ。これではもう、魔導士として最前線には立てない。
でも、それでも。
(冒険者としての俺は死んだ。でも、心まで死んだわけじゃない。守れた命がある……だったら次にできることを考えないとな)
そう、カリオンは諦めない。
過去や不条理な現実に囚われず、未来へ向かって進み続ける。今までもそうやって生きて来た。例え杖を失っても変わらないポリシーがある。
「逆にワクワクして来たよ。ずっと冒険者をやって来たし、他の仕事は目もくれなかったからさ。いや、暫くは無職でいようかな? 羽を伸ばす良い機会だ」
「まったく、恐ろしいくらい前向きだな君って奴は。でもそういうところが私は……うむ」
「ははっ。なんだよ~ソフィ」
「良いから!? ほら順番が来たぞっ!」
思わせぶりなソフィの真意こそ気付かないが、そこも含めて彼らしい一幕であった。受付票を弱弱しくも握り直し、カリオンは前へ進む。
新しい人生へと向かう、大事な一歩だ。
諸々の手続きをソフィに手伝って貰い、今日のところはひと段落。労災もたっぷり降りるようだし、そうでなくともカリオンは倹約家なので、貯金は使い切れないほど残っている。生活に困ることは無さそうだ。
「では次に……もうお仕事とか探されますか?」
「急いではないけど、ずっとこのままってワケにもいかないですからね。願わくば……うん、やっぱり人を助ける仕事がしたいです」
「はぁ~。あんな重傷を負ったばかりだって言うのに……でもカリオンさんらしいですね。分かりました、ならこんなのはどうですか?」
ブースの一角で膝を突き合わせるのは、ギルドの事務員として働くクロエ・ストランドだ。黒髪ショートに緑のメッシュが入ったお洒落な美人さん。
隣に座るソフィは『わざわざ尻を揺らして歩いて……』とやや不満顔。サイズに関して彼女に文句を垂れる権利は無いが、それはともかく。
「領営の孤児院を新たに作る計画があるんです。ノイヴァルトには養護施設が一つも無かったので……カリオンさん、その運営者になりませんか?」
「ほ、ほう?」
持ち寄せた書類をテーブルに広げクロエは語り出す。身を寄り出して胸元をアピールするので、ちょっと気が散ってしまうカリオン。
「郊外にかつてノイヴァルトの貴族が使っていた別荘があるんですが、五十年前の大戦で血筋ごと吹っ飛んでしまいまして、ずっと空き家なんです。ならば公共事業に使わせていただこうと」
「なるほど……っ」
「子どもたちの未来を守るお仕事、カリオンさんにピッタリだと思います。力仕事も屋敷の掃除くらいですし、すぐにでも始められますよ」
「……よしっ。じゃあ、やります!」
クロエのゴリ押しもあり、話はトントン拍子で進む。ノイヴァルトにやって来て以来ずっと宿暮らしだったので、住み込みなら実質もう持ち家みたいなものだ。なのでカリオンとしても都合は良かった。
こうして翌日には正式にギルドからの依頼として認証され、カリオンは領営孤児院『ノイヴァルトのゆりかご』の運営・管理者に。
なんせギルドでも有数の実力者であり、街での評判も天井まで届いているカリオン。
人柄にも問題は一切無いということで、予定されていた責任者との面談や適性審査などはすべて免除。早々に生活拠点を屋敷へ移すこととなった。
「はぇ~……デッカいお屋敷だなぁ」
「まさに一国一城の主というわけだ。こんな大きな家、クエスト報酬だけでは手も届くまい。今まで頑張って来たご褒美かもしれないな?」
「いやぁ、でも職場でもあるわけだし……こりゃ管理も大変だ。クロエさんに相談して、早めにお手伝いさんを募集した方が良いかもね」
移り住む日がやって来た。
市街地からかなり離れた小高い丘の上。
東を向けば大陸の海峡、反対側には帝国との国境でもある山脈が悠然と広がっている。
赤茶けた屋根と外壁が陽光を浴びて輝く、堂々たる出で立ち。手入れこそ長らく放置されていたが、広々とした庭には柔らかな芝生。
割れた窓ガラスや蔦に覆われた外壁など綻びは否めずとも、屋敷全体から放たれる重厚な気配までは揺らがない。贅沢に興味が無い貧乏性のカリオンでも、この光景には胸の高鳴りを抑え切れずにいた。
「私も手伝うぞ。掃除くらいすぐに終わらせてやる。あぁ、カリオンは何もしなくて良いからな。まだ怪我が癒えていないんだから!」
「いや、もう割と元気だけど……ソフィ~?」
ひとまず居住スペースを整えようと、ソフィはその日のうちに屋敷の一室とエントランスホール、更にキッチン周りの掃除を終わらせてしまう。
家事の苦手なカリオンが手を貸す暇も無かった。
「あんなに埃まみれだったのに……ソフィも剣士辞めても、家事手伝いで食っていけそうだな」
「よしっ。じゃあこのままベッドを新調しに行こう。お金も私が出すぞ。新居祝いってやつだ!」
「いやいや、それは流石にっ!?」
しょっちゅう顔を出すソフィの献身的な働きもあり、屋敷は数日足らずで本来の姿を徐々に取り戻して行った。残すは孤児を迎え入れるだけ。
だがカリオンはこの時、想像もしていなかった。
いや、覚悟が足りなかったとも言える。
ソフィをはじめ多くの協力があるとは言え、孤児院を運営がどれだけの苦労を伴うか。