【完結】転生者が権力とかでFF8とFF10のヒロインを食い散らかした挙句、最終的にスピラを救う話。 作:速射弾
結婚式が行われる。
……誰のって?
勿論、私と……デリングJr.の。
日付けだってもう決まった。
「貴女、大丈夫? 最近ぐっすりと寝られて居ますか?」
心配してくれたのは……なんと魔女イデアさん。
私は正式に結婚が決まったと知らされてから頭の中がその事で一杯になって疲弊していた。
そんな私を見た彼女は、こうして声をかけてくれた。
魔女という事で恐れられている彼女とはこの館で会う機会が少なく、乱交の時以外に接点は薄い。
数日前に部屋の前で見かけた事はあったけど、その時はもっと冷たい凍てつく様な雰囲気だった気がする。
珍しく部屋の扉を開けていたから勇気を出して声をかけてみたら、
彼女は横目で私を一瞥して、一言も喋らず直ぐにドアを閉めて中に戻って行ったのを覚えている。
その直後、私の後ろから用を足し終わったデリングJr.が、ハンカチで手を拭きながら歩いてきて、イデアさんの部屋に入って行った。
その後の事はわざわざ見なくても分かる。
あの時冷たい雰囲気だったのは多分……彼とするからだったんじゃないかなって思ってる。
まともな人なら誰だって、あんな人間とえっちぃ事したいだなんて思わない。
イデアさんの機嫌が悪そうだったのも当然だ。
彼女の性格が悪いわけじゃなかったという証拠に、私の事を心配してくれている今の顔付きは、あの時見たのと比べて、まるで別人とも思えるほどに暖かみを感じる。
そんなイデアさんからの心配に見栄を張る余裕が無かったのは、今の自分にとって不本意だった。
「寝られてるか……ですよね……。はい……正直……その……」
「辛そうにしている貴女の姿を見るのは私も辛いのです。よければ愚痴の一つでも話してみませんか?」
その優しさに甘えて、今の心労の原因を漏らす。
「私、そろそろ結婚……するんです。あの人と政略結婚されられる……。イデアさんが心配してくれたのって多分目の隈が酷く見えたから、ですよね……。
私を孕ませるんだーって毎日夜遅くまで抱かれてるので。お陰で目の隈が取れなくって……あはは。結婚式の時、お化粧で何とか誤魔化せるかな……」
結婚式の時……。
結婚……式。
もう直ぐ、私、結婚かぁ……。
「あ、あれ……? あはは、すいませんイデアさん……。何これ……止まらない……うぅぅ……」
私はイデアさんに抱きしめられながら泣いてた。
結婚という辛い現実以上に、誰かに優しくしてもらったのが久しぶりな気がして。
本当はそんな事ない。
セルフィやキスティスだって私の事を気遣ってくれるし、メイドの人達からも目立った嫌がらせを受けた事は無く、思いのほか親身になってくれる。
でも、イデアさんと二人きりになったこの空間は、私にとって……とても安らぎを感じた。
今までどれだけ意識を張り詰めていたのかを自覚する。
鎖をつけられた魔女はまるで籠の中の鳥。
そう、私と似た境遇。
普段から監禁状態にある彼女は、こうして誰かと会う事ぐらいは許されているが、館に中でも厳しくその行動範囲を制限されている。
しかしそんな状態であっても彼女は朗らかだ。
私よりも厳しい環境に置かれているのに何故そんなに笑顔でいられるのか。
何故私を心配してくれるほどの余裕があるのか。
余裕の無かった自分は泣き喚き、辛いと白状する事しかできない。
自分よりも辛いであろう相手にだ。
「情けないよね……」
私らしくもない独白。
この館に来てからすっかりネガティブ意識が身についてしまった。
でもイデアさんはそんな私の言葉を否定した。
「まだ貴女は子供です。情けなくても良いのよ……」
これが私がイデアさんと仲良くなった切っ掛けだった。
彼女が言うには、私の事をずっと気にかけてくれていたという。
「私は一眼見た時から貴女に宿る才能を見抜いていました。貴女には魔女の力を継承出来る資質がある」
だから、私の事を意識していたのだ。
自分にそのような才能があったとは驚きだったが、しかしそれが何だというのだろう。
「もしかすると貴女は魔女の力を継承する事によって、デリングJr.の呪縛から逃れる事が出来るかもしれません」
思わず飛び付かざるを得ない話。
あまりにも優しい人なので忘れかけていたが、彼女は魔女だ。
これが魔女の誘惑だとしたら、抗えないだろう。
しかしそれでもいい。
あの男に囚われてから、初めて人生に希望が見えた気がした。
「なります! 私、アイツから逃げれるなら魔女にでもなんでも……!」
手首に嵌めた腕輪を摩りながら彼女は説明してくれる。
「私の身につけているこのバングルは魔女の力を封じ込める物です。しかし……力の継承は滞りなく行えるという確信が私にはあります。真なる魔女の力には、この程度では封じきれない神秘的な何かがあるのでしょう」
本当にそうなら、今の私には有難い話だ。
「まず私が力の使い方を教えます。力を継承した貴女はその首のチョーカーを破壊して、空間転移魔法で屋敷を抜け出すのです。それから先どこまで逃げられるかは、きっと貴女次第」
私次第……。
「でも……どうしてここまで良くしてくれるんですか……?」
瞼を閉じたイデアさんは胸に手を当てて、静かに語りだした。
「それはね……同じ女として……貴女に恋の尊さを知ってほしいの……。
私には愛する素晴らしい夫が居ました。今は離れ離れになってしまいましたが……何時か会える事をずっと信じています」
素敵な話だった。
私だって子供の頃はこういう愛の形を夢見ていた頃があった。
「おばさんのお節介だと笑ってくれて良いのよ? でもね、それだけ旦那と過ごした日々は素晴らしい物だった。それを知らないままこんな所で苦しみながら一生を終えるなんて……私なら耐えられないと思ってしまったの。
好きな人との思い出があれば、きっと辛くても耐えられるから……」
だからこれは私のわがまま。
そう言って目を閉じたイデアさんは、とてもおばさんなんて自称する年齢には見えない程、素敵な女性だった。
「また、会えると良いですね……ってそうだ!外に出た私が旦那さんにイデアさんがここに居るって教えてあげれば!」
「またあの人に会う事ができる……そうなればどれほど良い事でしょうね……。ですが、まずは貴女自身の事を最優先した方が良いわ」
……魔女が泣きそうな声で語ってくれた願いに、私は彼女の心にある悲しみを想い……絶対にここから出てやると決意した。
そして自由になった暁には彼女の旦那さんを探し出して……きっと2人も再会できるようにする。
「貴女はこの国を出て行く所が無いのなら、エスタに向かいなさい。ガルバディアに敵対するその国ならきっと貴女の助けになってくれる筈……」
披露宴の予定日は近い。
あの男が式の段取り調整で忙しくしている今が魔法のお勉強のチャンス……!
「はぁっ……はぁっ……!」
永遠に夜の街。
煌びやかなネオンや街灯を避けながら走る。
出来るだけ人の少ない所へ。
私はつくづく運が悪い。
この国に産まれ落ちた事。
あの男に見初められた事。
そして、魔女の力を継承する最中に、あの男に見つかってしまった事……。
結婚式の前日。
私は迫るタイムリミットに背中を押されて、脱走を決意した。
イデアさんから力を継承して、自分の首に付けさせられている逃亡防止様のチョーカーを慣れない魔法で梃子摺りながらも破壊できた所までは良かった。
だけど……そのタイミングで部屋のドアがノックされて、デリングJr.が入って来ようとしてきたのは誤算だった。
まさか婚約者との結婚式の前日なのに、館を巡って女全員とまぐわう愛人食べ比べツアーなんて物を急遽開催するだなんて……。
予測できた事だ。
あの性欲男に倫理観が無いのは分かりきっていた筈なのに。
想定していなかったのは此方のミス。
そのアクシデントに心を掻き乱され焦った私は、ゆっくりと開く扉の向こうに居るデリングJr.から逃げたいと強く願ってしまい……そして……。
偶然発動した魔法は、私をすぐ側の屋敷の外へと転移させていた。
「はぁっ……はぁっ……!」
物陰に隠れながらデリングシティ内を転々とする。
警備員達の目を掻い潜り、この街を脱出する為に身を潜めた。
私とデリングJr.の仲睦まじい写真が大きく映し出された結婚披露宴のポスターが街中に貼られ、行く先々で否が応にも視界に飛び込んでくる。
無理矢理笑顔を作らされた自分が、早歩きで逃げる私に向けて微笑む。
やめて。
婚約者と名乗る男のニヤついた目が、ポスターの中から逃げる私を追う。
やめて。
『リノアちゃん、何をされたいのか自分の口で言ってみて?』
「やめてよっ!!」
突然大声を出した私は群衆の注目を浴びた。
此方を見るその目は非難の眼差しより、興味深そうに見る人の数が多い気がした。
子供から「ポスターのおねぇちゃんだ!」と指を刺された時にようやく気がつく。
「はぁ、はぁ、……ふぅ、ふぅ」
(このままでは捕まるのも時間の問題……)
人目を避けるため路地裏に身を隠す。
落ちていた缶の蓋を刃物代りにして、建物の影で髪を切り落とす。
所々錆の浮かんだ蓋の切れ味は悪く、ノコギリのように左右に動かさなければならない為、髪の毛が引っ張られて痛い。
時間がかかりつつも、長く伸ばしていた自慢の髪を肩までのショートカットに整えて、かつての自分の面影を出来るだけ減らした。
「なん……でっ……出来ないのっ!」
また転移魔法を使って逃げれば良い。
私のその浅はかな考えは即座に失敗した。
幾ら遠くへ瞬間移動して逃げたいと念じても、再び魔法が発動する事は叶わなかったからだ。
魔女の力を継承したと言っても、私にはどうやって魔法を使えば良いのかまだその感覚を理解しきれてない。
僅かな知識は教えて貰った、でもたまたま使えたからって自由自在の使いこなせるのとは別……。
当たりまえの話だった。
私はレジスタンスに居た頃、プロの傭兵であるスコール達から素人扱いされていた。
それがどういう事だったのか……こんな時に理解させられるなんて……。
とにかく今は反省していても仕方がない。
お金が無い、つまり街の外に繋がる公共交通機関は使えない。
どうにかして他の国への交通手段を確保しなきゃダメだった。
歩く人間全てが私を捉える為の刺客なんじゃ無いかという不安に駆られながら、急ぎ足で屋敷から離れた所にあるバス停に辿り着いた。
無料で提供されている交通網の有り難みを感じながらバスに乗り込む。
出来るだけ壁側に座り、乗客から顔を見られにくい角度に身を縮こませて
各駅停車をするたびに、あの男が放つであろう追ってが乗り込んでこないかという心配で心臓の鼓動が激しく脈打った。
(あの時もこんな感じだったっけ……)
14の私にだって逃げ切る事ができたのだ。今の自分に出来ない筈が無い。そう言い聞かせた。
外の世界に一番近いバス停を降りて徒歩で歩く。
あの時はお金を持ち出すチャンスがあった。
今は……1ギルも持ってない。
状況はあの頃に比べて絶望的。
でも、多分じっとしているよりは何か動いた方がマシだ。
モンスターから市民を守るために作られた都市の外壁と狭められた出入り口は、私にとって自分の身を守ってくれる安全なインフラではなく、私を逃すまいとする檻そのものだ。
徒歩で街を出るのはモンスターに食べられたいと言っているのと同じ。
レンタカーでも電車でも何でもいいから、とにかく外に出るにはお金が必要だった。
誰かにお願いしてギルを貸して貰うか恵んで貰うしか無い……。
でもそんな都合の良い人が居るはずも無い。
(誰かから盗む?)
無理だ、そんな技術持ってないし、警備員に捕まってそのままあいつに引き渡されるだけ。
G.F.をジャンクションしているならいざ知らず、スコール達と一緒に居ない私はただの無力な女。
誰かから車や金品を強奪できるとは思えいし、代わりに戦ってくれそうな愛犬のアンジェロは、あいつに捕まって鎖をつけられてしまっている。
結局このまま徒歩で街の外に出るしか無い。
モンスターに食われるか、あの男に食われるか。それなら前者の方が幾分かマシな気さえした。
「はは……アイツに抱かれすぎて、センスの無い駄洒落まで移っちゃったかな……」
「センスが無いなんて酷いなぁ」
「っ……!?」
聞こえた男の声。
その声色に皮膚の下がゾワゾワと悪寒が走り、心臓が跳ねる。
「あれ? 髪切った? 素材が良いとショートカットも似合うね」
「あっ……い、嫌……」
今の私が最も会いたく無い人間。
逃げ出した私を追ってきた婚約者は兵士達を周りに侍らせて、自身満々の笑みを浮かべていた。
何も知らない人がその顔を見たら、誠実で優しくて頼りになりそうとでも評するのかもしれない。
しかし私は知っている。
『何で言う事が聞けないんだい?』
『難しい事は言ってない筈だけど……理解できなかったかなぁ」
『僕は優しいから、完璧に出来る様になるまで何度でも付き合ってあげる』
『ほら、犬になりきって鳴いてみようか』
『喉乾いたの? 丁度よかった、僕も用を足そうと思ってたんだ』
『すぐ逃げる子供は碌な大人になれないぞぉ〜』
『愛してるよ』
『大好きだよ』
『結婚しようね』
『孕めっ……』
『孕めっ……!』
『孕めっ……!!』
『お前の人生……一生、僕の“物”だから』
彼によって躾けられていた14歳のあの頃がフラッシュバックする。
カチカチと奥歯が震えて、鳥肌が止まらなくなり、呼吸が苦しくなった。
「リノア、良い子だから戻ってきなさい。君が逃げると愛しのパパとママが悲しむよ?」
「あ、あの人達は私をアンタに差し出したわ! そんなの親のする事とは思えないし……私は愛してないからどうなったって……! っ……良いわよ……」
「僕にはそうは思えないけどね。リノアは優しい子だ、ご両親の事だって本当は心の底から嫌ってなんて居ない筈さ。それに彼等が善かれと思って僕との婚約を進めた事だって分かってる。だってこの国に僕以上の好物件は存在しない……でしょ?」
「っ……そんな事っ。あの人達の事なんてもうなんとも思って……ない。それに、何を食べて育ったらそこまでナルシストになれるの……理解できない」
開き直ってこの男を、大したことの無い小物だと思えたらどれだけ良かっただろう。
我が身の震えは、きっと走って疲れたというだけじゃない。
捕まった先に待ち受ける「罰」を想像してしまったから……。
「何を食べて育ったかって? 沢山の女の子……かなぁ。例えば君の母親とか、ね」
「あんた本当に最低よっ! あんたみたいな反吐の出る男となんて誰が結婚してやるもんですか!」
「そこで怒っちゃう時点で、お義母さんとお義父さんの事嫌いになりきれて無いのは分かったよ……。さぁ、そろそろ帰ろうか僕達の愛の巣へ」
近づいてくる足音。
差し伸べられた手。
まるで全てを救うヒーローだと自認しているみたいな、自信溢れる表情。
この男は一欠片も己の悪行に後ろめたさを感じて無いんだ……。
私の未来はこんな男の為に消費されて、死ぬまで使われる。
わかっているのに動けない。
極度の緊張で筋肉に力が入り、足が固まって動かない。
どうしよう。
逃げられない……?
差し出された手の平。
ここであれを取らないと、私はきっと罰を受ける。
あぁ、そうだ……ご主人様にお手、しなきゃ……。
言い付け、守らないと……。
手と手が触れる。
「あ……」
その時、正気に戻った。
はは……何やってるんだろ、私。
自分から手をとって……もう逃げられない。
今まで逃げてた意味は?
イデアさんを旦那さんと会わせるんじゃなかったの?
何で結婚式をするからって急いだんだろう?
馬鹿だ。
もっと入念に準備してから逃げてればよかった……。
絶望感と後悔に打ちひしがれそうになったその時、私の中に入ってくる何かが居た。
心に途方も無い程の、怒りと憎しみの感情が渦巻く。
そして、呆気なく私の意識は途切れた……。
目の前がブラックアウトする前に聞いた言葉は……頭の中で響く知らない女の人の冷たい声。
【私の言う通りによく出来ました。貴女を苛むその苦しみから解放して差し上げましょう……。代わりに貴女の身体は貰うわね?ふふっ……】
テレポートは近場の方が成功しやすい(FFT並感
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