【完結】転生者が権力とかでFF8とFF10のヒロインを食い散らかした挙句、最終的にスピラを救う話。 作:速射弾
僕はスピラに来てここまで、意外にも『シン』と出会う事がほぼ無かった。
今代の『シン』は水中球技のブリッツボール選手のジェクトだからか、基本的に海に居るらしく、
多分彼は出来るだけ被害を出さないようにと心がけ、定期的に大好きなエボン教の聖歌が聴ける場所に行ったりしているのだ。
原作であそこまで行く先々で出会うのは、やはり核となっているジェクトがティーダをストーキングしていたからだろう。
まあ本体に出会う事が無いだけで、時たま空を飛んで通った後らしき場所では、破壊の跡や『シン』から剥がれ落ちモンスターとなったコケラと出会う事がある。
しかし『シン』の災害に直接巻き込まれて死ぬよりは、コケラの相手をしている方が遥かにマシだった。
おそらくジェクトの意識が消えて無くなったその時、『シン』の破壊行為は本当に過激になるのだろう。
ブラスカのナギ節は終わったが、その名残りは確かに今でもスピラを守ってくれていた……。
そんな『シン』の被害を自分達の力で出来るだけ減らそうという寺院の下部組織、討伐隊。
彼等の働きは些細なモンスター退治も多いが、中には囮になって『シン』の進路を誘導するという大変の一言では片付けられない事をする時もある。
当然、隊員達は良く死ぬ。
出来る限り討伐隊自身の被害を減らすため、ある程度少数で固まった部隊に分けて役目を持ち回りこなして行くがそれでも犠牲は避けられない。
ここで言う役目とは『シン』に攻撃して気を引く事を言う。
『シン』は自分に攻撃してくる存在に対し、即座に認識してヘイトを向けてそちら側に移動する習性があるので、そういう点では一応コントロールが可能なのである。
そしてここ、ミヘン街道ではまさにたった今、たまたま陸地に上がってきた『シン』を人の居ない地域へと誘導するために、討伐隊が出動したばかりであった……。
『シン』の怒りに触れ、その圧倒的な質量と雑に放たれる重力魔法に巻き込まれて犠牲者がでる。
僕はその光景を離れた所から見る事しかできない。
どれだけ才に恵まれて異例の速度で召喚士になろうが、異なる世界からやってきてG.F.が使えようが、スケールの違う暴力の前には何も出来ない。
ただ拳を握りしめて彼等の奮闘を見守る。
召喚士の役目は、ここで激情に駆られて『シン』に無謀な戦いを挑む事では無い。
しかし、死にゆく隊員達を前にして胸が張り裂けそうな気持ちになる。
ああ……、貴重なまんこが……。
討伐隊に志願する者の中には当然、可愛い女も幾人か存在していた。
今回の誘導作戦に参加している中にも、何人かマシなビジュアルの女がいたのだ。
このアジア系ブサイクがデフォなスピラの世界で、僕がマシな方と表現するのは中々無い事な訳で……。
そんな雌穴が無惨な姿で押しつぶされる光景は見るに堪えない。
せめて死ぬ前に一発やらせて欲しかった。
最低な理由だったが悲しみには変わりない。
他者の命など割とどうでも良いと思っているこんな自分でもそう感じるぐらいだ、原作のユウナはどれだけの悲しみを憶えただろう。
強く握りしめていた僕の手を、ルールーの両手が慰めるように包み込む。
しかし、そのその彼女の手も震えている。
僕達の震えは恐怖か怒りか……。
血染めの夕焼けが全ての残骸を悲しげに照らしていた……。
「それでも『シン』に挑むのは今じゃ無い」
「ええ……。私達の旅は長く続くでしょう、この様な光景だって何度も見ることになるのでしょうね……。ですがそれでも────」
「ああ、それでも彼等の犠牲を承知の上で……安易に究極召喚を使ったりはしない」
僕らは既に話し合ってその道筋を決めていた。
究極召喚を使う選択は元より取る気は無い。しかしながらルールーは僕とは違うのだ……。
「見殺しにしている様な物だとしても、それがユウナの為になるのなら私は厭いません……」
「そうだな。ある意味で僕は彼等に対する裏切り行為を働いているのかもしれない」
「これは私達の罪です……。デリング様、貴方だけの物ではありません。そう……私達の」
もしもユウナを助ける方法が見つからないとすれば、喜んでその命を捧げるという彼女は、既に助かる未来が確定しているような物だとは知らずに無駄な決意を固めている。
しかし、誰が彼女の意気込みを馬鹿にできるだろうか。
僕もこの女の子の穴にお世話になっている身だ。その気持ちに出来るだけ寄り添いたいと思うのは当然の流れかもしれない。
「何時も慰めてくれてありがとう……。年下に庇われるなんて僕は情けないな」
「そんな事ありません。それに、貴方が情けないのなら私が支えるだけです」
「なら僕は情けないままでいても良いかな?」
「勿論です、私がお側にいる時は幾らでも情けなくなって構いませんよ」
「ありがとう……」
そうして『シン』が過ぎ去ったその場で、葬儀と異界送りがすぐさま行われる。
エボン教の聖歌である祈りの歌が鎮魂歌として合唱隊や祈り子様によって奏でられ、その中で僕は僧侶達と一緒に異界送りの舞を踊って死者を弔った。
旅をしていると各地の寺院に立ち寄ったその時、お世話係として従召喚士を付けられるという話は、以前説明したと思う。
まあお世話と言っても下の話ではない。
身の回りの雑用とか、現地での食事処のブッキングとかそんな芸能人の付き人みたいな感じだ。
その点僕はビサイド寺院所属でラッキーだったかもしれない。
あの村は都会じゃないので案内する所も多くないし、現地人との交流案内も町内を回るだけと言った感じで、必要な雑用もそんなに無かった。
そして、その見返りと言ってはなんだが、召喚士は従召喚士の修行を見てやったりする。
立ち寄ったこのジョゼ=エボン寺院で、修行に励んでいるギンネムという女の子が今回僕に付いてくれるらしい。
ルールーと同い年ぐらいで二人は中々気が合うみたいで、短期間の間に凄く仲良くなっていた。
とはいえ……この女の子も召喚士になるという事は、かなりの確率で死ぬのだ。
それが『シン』に相対して死ぬか、旅の途中で魔物に殺されるか、それとも究極召喚の秘技会得を拒絶し、情報統制の一環として寺院側に消されるかは定かでは無い。
だが、何も知らないまま旅に出るならば、その時点で十中八九無念に死ぬのは間違いない。
何せ召喚士はこの1000年の間でたったの5人ぐらいしか、『シン』を倒す所まで行けてないのである。
召喚士業界の恐ろしい厳しさと、スピラが死の螺旋と言われる所以が伺えるだろう。
僕も慎重にゆっくりと戦闘能力を向上しつつ旅している自覚はあるのだが、いざという時のG.F.をジャンクションするという保険がなければ、雑魚敵相手で死んでしまっていたかもしれない。
そのような厳しい世界を旅するならば、当然ガードの数が多いに越したことは無い。
しかし、背中を預ける事のできる相手を、そう簡単に増やせるなら苦労しないのだ……。
おまけに男は入れたくない主義なので、可愛くてやりたい女オンリーで周りを固めようとしている僕は、中々無謀なチャレンジをしている。
さて、ルールーと一緒にギンネムの異界送りや白魔法の指導を行なっていると、見えてくる物がある。
ギンネムは術師としての才能が特段高い訳ではない……という事だ。
大召喚士の娘であるユウナや、なんかイレギュラー的に謎の才能があった僕と比べるのは酷な話だけども。
術者としても才能が普通でも、祈り子と交信さえできればいいのでそんなに問題は無いし、サポートするガードの強さ次第で、旅の終着点であるザナルカンド遺跡まで行ける可能性はゼロでは無いのだが……。
「ここ暫くの間見ていて思ったんだけど……厳しい事を言うようだが、僕から言わせると君には向いていない。『シン』を倒せる召喚士になれるとも思えない」
「……デリング様!」
声を上げたルールーを手で制す。
一緒に魔法の訓練を手伝ってくれていたルーだって、僕の言っている意味はわかる筈だ。
何故ならルールーも彼女と比べて遥かに術師として優秀なのだから……。
仲良くなって情が湧いてしまったのだろう。不躾に事実を突きつけた事に、難色を示していた。
ギンネムも納得出来ないと言った風に反発してくる。
「た、確かに……私は、デリング様程召喚士の修行を早く終える事ができる訳でも、ルールー程魔法が上手く扱えるわけでもありません……。ですが、このスピラを想う気持ちはお二人に負けない自信がありますっ!」
「うん、ギンネムだってきっと、この程度の事を言われて折れるなら召喚士になろうなんて思ってない筈だ。だけど僕が言いたい事は少し違うんだ。ルーは僕の言ってる意味がわかるね?」
「そ、それは……はい……」
「え?ルールーさんまで……」
ルーの事を先程まで自分を擁護してくれる仲間だと思っていたギンネムは、突如味方を一人失って少しだけ自信を失いかけている。
そう、ルールーはなんとなくだが、僕の言いたい事が分かって来たようだ。
なにせエボンの真実を知ったから……。
「僕が言いたいのは召喚士としての資質とか魔法の上手さとは別の部分だよ。
君はね……良い人過ぎるんだ。勿論覚悟が決まってない甘ちゃんだと言いたい訳じゃない。端的に言うと君には持って生まれた人徳がある」
「は、はぁ。それが召喚士に向いていない理由……でしょうか?」
「そうだね、召喚士として君は優秀なガードを獲得できる。ルーも直ぐに仲良くなって心を開いているから僕はびっくりしたよ」
実際これにはびっくりした。
というか僕が別にそこまで見た目が大した事無い彼女に対して、親しみを感じている事実に驚いたんだよね。
「……なら、私は召喚士に向いているのでは……?」
「所がそうでも無い。君が良い人だからこそ……ガードは君を死なせたく無いと切に思うだろう。故に君は究極召喚を習得することはできないよ。信頼するガード達に阻まれてね」
「でも、ガードの人達だってそれは分かって付いてきてくれる筈です!」
「勿論そうだ。ガードであると決めた人達の覚悟を軽んじるのは良くない。そこで君の性格が良いという話だ」
「はい……」
「君が死んで悲しみに暮れるガードの未来を許容する事は、ギンネムには無理だ」
「……!」
なんかギンネムは図星を指されて驚いた! みたいな表情をしているが、これは別に僕が他人の心を読めるサイコメトラーだという訳じゃなく、基本的にスピラで召喚士になろうなんて人間は性根が心底優しいのだ。(シーモアという特例は除く)
言葉を飾らないで言えば、他人の為に命を投げ出せるなんて……正直ちょっとキチガイ入ってると思う。
それはドナやイサールといった原作のライバルだって同じだ。
差別を受けまくって迫害されているアルベド族達にすら、一族を挙げて助けたいと思わせる程の光の気狂いが召喚士という人種なのである。
まあその分、召喚士になった人が使命から逃げだすと凄い白い目で見られるらしいが……。
それもそうだ。
聖人だと思ってた人がただの俗物だった訳だから、その反動はネット炎上レベルでは済まない。
しかも、何がやばいってこのスピラの人間達の純朴さだ。
文明が退化して居るとは散々言ってきたが、直情的な所もそれの影響を受けている。
思慮の深さとは時に足踏みを誘うが、思慮の浅さは時に蛮勇をもたらす。
スピラが後者なのは言うまでも無いだろう。
その考えなしの行動力が、エボンの教えを蔑ろにしたという憎しみに向いた時、どうなってしまうのか。
召喚士という立場の注目度は、テレビしか無い時代の芸能人みたいな物。
いや、時にそれ以上にもなり得るだろう。
世間の目から逃れる術は果たしてあるのか……。
なんか色々考察してて、僕も召喚士になるのやめといた方が良かったんじゃないかと思えてきた程だ。
それに旅の資金は寺院からの給付で成り立っている。
召喚士の旅を途中で辞めた本人の性格が、相変わらず一般人より遥かに良かったとしても、逃げた時点で寄付金を横領していた泥棒野郎だ。
だからこそギンネムを召喚士になる前止めるのが、理に適った選択だと判断した。
……が。
「わ、私だってそれぐらい覚悟の上ですっ……」
珍しく僕が親しみを込めて忠言したにもかかわらず、ギンネムは納得できないようだ……。
大先輩の忠告を否定するか、よかろう……。
ならばプランB、強引に彼女の決心を捻じ曲げる……発動だ。
「ルーも僕もギンネムが死ぬと悲しいよ……。だから、君は召喚士の道を諦めて────僕のガードになるべきだ」
「……はぇ?」
「……また始まった」
ルールーが額を手で押さえてウンザリするような表情をしている。
そう、こういう事をするのは一度や二度では無い。
討伐隊に気に入った女の子が居たら声をかけて回っていたのである。
雑魚死しない為、僕には沢山のガードが必要なんだい!
戦う気のある良さそうな女の子を見かけたら粉をかけに行く。
それが僕の正義だ!
粉かけついでにザーメンもかけれれば良いなと思っているが、今のところルーがいるのでそこまで願うのは高望みというやつだろう。
因みに、お察しの通りガードが増えてない事から、今のところ勧誘は上手く行っていなかった。
討伐隊も厳しい職場だが、ガードも相当厳しい修行僧みたいな立ち位置なので、誘っても「自分に務まるとは思えない」と申し訳無さそうに言われて断られまくっていた。
ガードって色々情報を見聞きする限り、マジで厳しいのよね……。
特にザナルカンド遺跡まで辿り着ける召喚士はマジで少ない為、盾役のガードは召喚士以上にその命を魔物に散らされているんじゃないかな〜……。
多分バイクで空とか飛ばさせられるガルバディア軍の兵士の方がマシなレベル……。
そりゃついてきてくれねーわな。
僕が悪いんじゃない。労働環境が悪いだけだ。
さて、そんな現場に就職させる為、僕は彼女をどうやって誘い込むのか。
それは……。
「ギンネム、君が召喚士になって死ぬ必要は無い。君の代わりに僕が死のう。何も召喚士になるだけが『シン』を倒す道じゃないさ。召喚士になるのは僕がナギ節を打ち立てた後でも間に合う筈だ。
それに……僕達と仲良くなってくれた君に死んで欲しくないというの紛れも無い本心なんだ」
「そうね、デリング様のナンパ癖には参るけど私も賛成。決めるのはギンネム次第だけど受けてくれるなら嬉しいわ」
耳触りの良い事を言っているという自覚はある。
この世界に小説とかの娯楽が少ないから、結構パンピーは騙されちゃうけど、
紛れも無い本心ですとか表立って発言して相手に条件押しつけちゃう奴って、絶対嘘つきだよね……。
その時の発言が嘘じゃ無いにしても、普段から他では嘘八百の碌でなし確定である。
まあ今回の僕の発言もそんなに嘘を言っている訳じゃない。
本心では女とやりたいだけです。と言いたい所だがギンネムは先程言った通り割とフツメンだ。
(なんつーか……ザ、スピラ顔?)
そんなに無理してエッチに持ち込む必要も良いかなーって感じの、よくあるモブ女グラフィックなので……。
こんなモブ顔が、ガガゼト山の向こうでぶち当たる究極召喚の真実を乗り越えられる訳無い。
まず確実にその前に居る聖地のガーディアンに殺される。
何時もなら見捨ててる。
ただ本当にルールーと仲良さそうだし、僕も良い娘だと思うから、戦力補強ついでに火に飛び込もうとしてる虫ちゃん助けたろっかと思った次第である。
「ああああ、あにょ! 少し考えさせて頂いてもよろしいでしょうか!」
うわ、めっちゃ意識してるの丸出しの緊張したお返事が返ってきちゃった……。
そうだよね、ガードってそういう事するかもしれない確率高いもんね。
この世界の女性のこういうウブな所は可愛いと思う。
純朴さも良し悪しだねほんと。
「そんなに緊張しなくても……プロポーズしてる訳じゃないんだから」
「彼の夜伽は私が担当しているから、そっちの心配はしなくて良いわよ」
「…………!」
やだっ! 私ったら! はしたない女の子だと思われちゃった!
みたいな感じで顔を真っ赤にして両手で隠しながら、逃げるように走り去ってしまうギンネム。
「確実に意識してました。罪つくりなお方ですわね、デリング様」
そう言いながらルーがわざとらしくしなだれかかって胸を当ててくる。
お前は悪の女幹部か何かか?
本当に罪作りなら討伐隊の女共に断られてないんだが?
そんな僕が女をナンパする事に賛成なのか反対なのか、立場がいまいちわからないルールーだが、ギンネムの事を心配する気持ちは当然あるらしい。
究極召喚の真実を知っているので、それは尚更だった。
優し過ぎるから無理だと言ったのは、ガードを捧げる選択ができないだろうという意味も込めての事だ。
それをルーも理解していた。
結局土壇場で究極召喚を拒否して、「悲しい闇に生きるより、希望の光に満ちた死を」とか言われて口封じでユウナレスカに殺されるだけだろうなぁ……。
エボン教から反逆者扱いされるので、そんな真実も教える訳にはいかない。
言えないもどかしさはルールーも味わっている筈だ。
教えた事で無駄な心労をかけてしまったお詫びに、ストレス解消として今夜は特に気持ちよくしてあげよっと。
今なら原作で先輩召喚士のドナがユウナに、お前召喚士辞めろと嫌がらせしてきていた理由が身に染みてわかる。
美しい心を持った人間。
それを失う事を嫌うのはアルベド族だけじゃ無く召喚士も同じ。
己の命という、他の人間から見たら同じぐらい尊い物を蔑ろにしていながら、他人のそれには拒絶するというのも召喚士らしい滑稽なあるあるだ……。
──尚、ギンネムにはこの後普通に断られた。
召喚士になりたい奴は良い人なだけじゃなくて意思も無駄に強い。
この程度のお話で自分を曲げないし、ありがとうと言いつつも断れる強かさを持っている……という事だろう。
しかし……善意の押し売りが良くないのは理解しているが、なんかブスに振られたみたいで普通に腹が立つ。
やはりこのイライラは僕の隣を歩くデカパイにぶつけるとしよう。
実質間話
感想とか評価とか貰うと喜んだりモチベが上がったりします。