※この作品はR-18です。

【完結】転生者が権力とかでFF8とFF10のヒロインを食い散らかした挙句、最終的にスピラを救う話。   作:速射弾

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FF10編 16話 シーモアという男の在り方

 

 

初めはただ『シン』になるという目的の為に近づいた。

ザナルカンド遺跡へと辿り着けるであろう程に優秀な才を持つ召喚士、巷でそう太鼓判を押されている召喚士デリングJr.は、私にとって都合の良い贄であり計画を達成するための駒として適任な人材だ。

 

 

そのような事など露知らず、グアドサラムで待ち伏せていた私を快く受け入れた彼は、復讐者という裏の顔をひた隠しにて族長補佐として過ごしていた己にとって、ただの扱いやすそうな男でしかなかった。

その言葉を聞くまでは。

 

「実は一度ロンゾ族の女を抱いてみたいと思っておりまして……」

 

彼の要求は、私にとって蔑みの感情よりも驚嘆の方が大きかった。

 

「ほう、ロンゾの女をですか……。それは確かに普通では難しいでしょうね……」

 

ロンゾ族は種族の肉体的強さを誇りとする古風な種族だ。

そんな彼等が易々と他人種に身体を許すとは思えないが……。

しかし……それよりも、あの獣とも魔物とも見まごう容姿の者達を抱きたい、などと(のたま)うヒト族が居るとは……。

 

「ですがお任せください。私が友のために多少の無理でも通して見せましょう。シーモア=グアドに名に誓って」

「友……?」

「ええ、私は既にデリング殿を友だと思っております。とはいえこれは私の勝手な気持ちの押し付けにすぎません。お嫌でしたら即座に訂正致します」

「……いやいや、そんな事は無いですよ。友ね、友。良い響きです。今日から我々は友達ですね」

「フフ……私はただの友達とは思ってません。もしかすると、私達はいずれ親友になれるかもしれません。その日は来る事を切に願って居ますよ……」

 

そう、もしかすると……彼は本当に巷で謳われている通りの傑物なのかもしれない。

これからそれを確かめなければならない。

このスピラに現れた超新星。

エボンの民には無い革新的な視点を持ち、異国情緒を漂わせる不思議な人間。

まるで噂通り、異なる世界から来たかのようだった。

 

「グアドの長老候補殿にお願いするのは気が引けるのですが……その、夜のお仕事してる人でいいからグアド族の女の子ともやってみたいな〜なんて」

 

その上ロンゾだけに飽き足らず、ヒト族から容姿に忌避感を抱かれやすいグアドまで……。

やはり……彼は私が心の中で蔑むスピラの人間達とは何かが違う。

 

「失礼、一つお聞きしたいのですが……デリング殿はもしや、異種族や異人種に対する忌避感がないのでしょうか?」

 

「あ、あー……その、忌避感とまでは言わないんですが,違和感が無い訳じゃないのですよ。でもその違和感というのは他の種族には無い個性とも言えますからね。多様性があった方が飽きづらくて良いなと思う次第でして……」

 

間違いない。

目の前の男はこのスピラで当たり前では無い、種族を超えた愛を容易く許容できる人物。

同時に併せ持った召喚士という役目に従事しようとするその経緯は、まるで先代の大召喚士ブラスカを彷彿とさせる。

 

「なるほど……そのようなお考えがあるとは思いもよりませんでした……。不躾な質問をした己を恥じるばかりです。私もまだまだですね」

 

「いやいや、むしろ僕の方が性欲を恥なければならない立場ですよ、はっはっは」

 

「いえいえ、性欲の強さがそのお考えを生み出したとしたならば、デリング殿の性欲には感謝の気持ちしかありませんよ。なればこそ、異なる種族との逢瀬は喜んで準備させて頂きたい」

 

そして、私は、己の境遇と重なり合うような彼の過去を知った──────。

 

 

 

やはり間違いない。

彼は差別の蔓延るエボンの世で、種族間の問題を明確に理解しつつも、その垣根などさほど重要な問題だと考えていない。

無論それは……悪意では無く善意という意味で、だ。

その上、己を捨てた者に対する憎しみをも超越している。

あらゆる他人を愛せる心を持ち合わせた、ある種の聖人とも呼べるほどの異常者……!

 

 

ベベルでもさまざまな接待を用意して、さらに彼を試してみた。

興味があるからという理由で種族の壁を悠々と超えて愛を育むその姿は、私の意識に衝撃を与えた。

享受する快楽以上に相手を思いやった手解きの技術は、決して手先の器用さだけでできるものではない。

心が篭ったそれは、ゆるりと異種族の心を解きほぐし、壁を取り払って行く。

あの意志の固い事で有名なロンゾにすらも満更ではないと言わせしめた、その真に心と心が繋がる行為。

 

人とは思えない容姿の者から、体格の違う少数民族まで当てがった彼の性交渉を、陰ながら観察し続けた。

そして私はビンザー=デリングJr.という人間に本物の『光』と『可能性』を見た。

 

 

 

愛する母を失った失意は既に通り越し、私はこのスピラの全てに憎しみと諦めを抱いていた。

私と母を迫害しておきながら、究極召喚を得た途端に手の平を返したグアドの民。

己が都合で異なる人種を差別しておきながら、救いは求める愚かなエボンの民。

改善意欲の無い社会構造を作り出して、維持し続ける事に全てを注力するエボン教の上層部。

それらが幅を利かせて、召喚士を贄にしてまで現実逃避に明け暮れ、生に齧り付かんとする往生際の悪さ。

 

……端的に言ってこのスピラという現世(うつしよ)には虫唾が走るのだ。

 

とはいえ、私も全ての人間がそういう考えだ、などと盲信するほど馬鹿では無い。

被差別民や、真に心根の良い人間だって存在している。

だが……『シン』が存在する限り、そんなごく僅かな人々の美しき心さえ無意味だ。

故に私が『シン』となって、このスピラを這う者達を擦り潰して回り、死を与える事で全てから解放して諦めさせてやろう。

 

そう思っていたのだ。

我が友の歩む未来の可能性に光を見出してしまうまでは……。

 

 

この男の友になりたい。

偽りだった友情は真実に姿を変えて、私の中に明確な希望として確立してく。

そして……彼をこの世の差別根絶への象徴として君臨させるのだという一つの宗教画が、心の中に完成していた。

 

これこそが私が描くスピラへの復讐であり祝福。

 

 

我が友はその気高き精神性故に、召喚士として死ぬ未来が決まっていると言っても過言ではない。

 

しかし、今まで死は祝福だと思っていた私は、それを好ましくは思えなかった。

この対差別への逸材が『シン』を倒すという“だけ”の行為で無為に死んで行く事を、許容する気になどなれないのだ。

 

死を回避する方法が見つからなければその時は……私が友の死を利用して、差別という物への強い(くさび)にすれば良い。

 

差別の根絶。召喚士の生存。

どちらを目指すにせよ険しい道になる。

だが、己の持て余している召喚士としての才と、我が友の正しき在り方を持ってすれば、いずれどちらかには手が届く筈だ。

いや、断言しよう。

届かせる。

届かせてみせる。

未だ私の中ではそそがれていない、亡き母の汚名に誓って……!

 

(ふっ……私もまだまだ若かったという事か……)

 

本当は……まだ母親に対する悲しみの感情を通り越してなど居なかった。

いつまでも恨みつらみを抱えた自分が、曲解して大嫌いなこの世界全てに責任転嫁していただけだ。

 

そうして目を逸らしながら、たかだか20を過ぎたばかりの若造が、全てを悟った気になっていた。

希望が無いなどとその気になって、全ての破滅を祝福だと望んでいた私の姿は………さぞかし滑稽だっただろう。

 

 

この身に再び宿った復讐の炎と希望の光は、どんな差別やエボンの教えでも消せはしない。

異なる種族の血肉を持つこの身と、ヒト族だった母を苦しめた世界に蔓延る差別と偏見……まずはその概念そのものを消し去ってやろう。

 

 

デリング殿が私の考える通りに、この世に何かを起こす者に成り得るかは分からない。

しかし、確証が無いからと言って、自らの心に嘘を吐いてやりたい事とは違う何かに従事するのは、もうウンザリだ。

母が死んでから────いや、母に言われてあの(かあさま)を死へと追いやった時から“その感覚”に浸かってきた……。

そんな他ならぬ自分自身が、心に従う大切さを一番理解していたから……。

 

 

 

父ジスカルを安直に殺さなかったのは、(わだかま)りの感情が無くなったからでは無い。

その命に利用価値があると踏んだからだ。

 

あの愚かな父は、滑稽にも私に情と贖罪の気持ちを抱いている。

ならばその感情、究極召喚に利用しない手は無いだろう。

『シン』になるという目的が変わった今、今後立ちはだかるであろう者達を押し除ける為の保有戦力は、幾つあっても多すぎるという事はない。

 

喜べ、ジスカル。

私はお前という父親の愛情に守られてやるのだ。

 

 

早速、この老いぼれを連れてザナルカンドへと向かう事にしよう。

その前に親子の語らいをせねばなるまい。

心優しい御父上ならきっと理解を示してくださる。

 

もしも拒絶されるので有れば、その時は当初の予定通り殺して異界に送るだけだ。

利用価値すら無いまま生きるならば、いっその事死んだ方が幸せという物だろう。

息子である私の恨みを受け止めるというのも親として責務。

想いが強ければ私の異界送りを退けて、死人として現世に残れる道もあろう。

 

「……そうか。我が息子シーモア=グアドよ。私は其方の心の内に秘める闇に気づいておった。いや、私がその闇を作り出した原因と言っても過言ではない」

 

「流石はグアドの族長。上手く偽装していたつもりでしたが、既にバレていましたか」

 

例え私の隠してきた本性が露呈したとしても問題は無い。

何故なら、私はまだ何も目立った悪と呼ばれる事を成していないからだ。

罪に問われる事もなければ、糾弾される(いわ)れもない。

 

「しかし、底が見えぬと思っていた其方の宵闇(よいやみ)を照らす曙光(しょこう)が現れたか……。お前への罪滅ぼし出来るならば……この命、究極召喚に捧げる事に否は無い……。シーモアよ、これが親としてお前にしてやれる最後の償いだ」

 

(ふん、結局の所この男の言い分は、自分の心を守るための言い訳にすぎない……)

 

そうして私は、父ジスカルと共にザナルカンド遺跡へと旅立った。

究極召喚であるアニマを従えての旅は、幼き日の険しかった旅の道のりと比べて、驚くほどに苛烈さを感じずにあっさりと目的地に辿り着く。

何故だかそれが────酷く癇に障った。

 

 

 

幾年が振りに再び目にする、永きに渡る時を蓄積した瓦礫の世界。

懐かしき母の姿と幼い頃の自分。

その記憶とも記録とも呼べる幻影が幻光虫によって映し出されては、ザナルカンド跡地に漂う幾多の想いの中に消えていった。

 

それを見ていた父が口を開く。

 

「最後になる、だから、全部話しておきたいのだ……」

 

滅びた都市の建物を前にして、口を開いた父は私に語った。

 

人間である母と私をグアド族の差別と迫害から庇いきれず、島流しにしてしまった過去を心から後悔している事。

異なる人種の母を愛していたのは嘘では無い事。

その血を受け継ぐ私を愛している事。

 

──その答えを聞いたとて、母子を捨てた事に対する赦しの気持ちは湧いては来ない。

 

「この期に及んで許せとは言えぬ……。許して欲しいとも思わぬ……。ただ、最後にもう一度だけ心から謝りたかった……」

 

「そうですか……。しかし……罪も悲しみも全ては過ぎ去った過去。今はただ、我が友が紡ぐこれから先の未来の為に命を捧げてもらいますよ、お父上殿」

 

「分かっておる……。ここまで来て逃げようなどと、そのような恥を晒すならば元よりこのような贖罪はしておらぬよ……」

 

「それを聞いて安心しました。それでは参りましょうか……父上」

 

瓦礫を登るために、ジスカルの年老いて皺に塗れたその手を取った。

所々木のような質感を伴った手に触れる。

ヒト族の血が色濃く出た私にとってそれは……薄気味の悪い感触。

揶揄では無く、この肌を抱く気になれた母と友を尊敬する。

やはり、まだ私は幼少の折にグアドの民から言われて来た通り、ヒトにもグアドにもなりきれない半端者らしい……。

 

 

 

そして私は再び過去の悲劇と相対する。

伝説の召喚士ユウナレスカ。

死人として1000年この世に留まり続け、究極召喚を伝授する役目に従事する……バケモノ。

母を私の元から消し去った要因のひとつ。

 

(今の私ならば……いや、この女がどれだけの力を持っているのかは未知数……。アニマを使っても殺す事が難しいと仮定した方が良いだろう)

 

「シーモア=グアド。貴方は既に究極召喚の力をその身に宿した筈。今更この場所に用も無いでしょう」

 

「御久しゅうございます……ユウナレスカ様。あの日、究極召喚を授けて頂いた事……感謝の念が絶えません。しかし『シン』と相対する機会を窺う日々の中。その機会に恵まれないまま随分と月日は経ちました……。既に究極召喚と私の絆は遠のき始め、その力を徐々に減退させております」

 

この女は私が生きている事を不思議に思っているかもしれない。

究極召喚を手にした召喚士が、『シン』と戦わずに居る事は不自然だ。

ザナルカンド遺跡は禁足地に指定されている上に、ガガゼト山の険しい山脈の先にあるために、ここまでわざわざ私の生存を報告しようなどという危篤な者は居ない。

 

そこまでは今後関わらなければ問題無かったのだが、新たに力を授かるとなると、何かしら納得の行く理由をでっちあげなければなるまい。

 

 

「今更ながら祈り子となった母は、息子である私の命が失われる事を恐れたみたいでして……。元々私と母の旅の目的は、その身に宿る種族の違いによる軋轢からの解放と、名誉の回復でした。

あれから時が過ぎ、ユウナレスカ様から御力を授かったお陰で、我が名誉は回復して何不自由無く生活させて頂いております」

 

事実、この女のおかげで母の望みは叶った。それは嘘では無い。

 

「しかしながら一時でもナギ節を起こすのは、エボンの……引いてはスピラの願いでありましょう。

私は長い時の中で、召喚士として役目を自覚して全うする決心を決めてしまったのです。

それが母の想いと相反し、究極召喚の力に陰りを齎しました。──これでは『シン』に対抗出来るかどうか怪しい……。

故に再び力を得る為、此処へ参った次第にございます。どうかお力添えの程を宜しくお願いしたく存じます」

 

だが、スピラのために『シン』を討伐する気など更々無かった。

私は友のために、彼をこの世界の頂点に据えるために、彼と旅をして彼の功績となるように『シン』を倒すのを手伝うだけだ。

嘘も方便、間接的とはいえ結果的に『シン』が斃されるならば、多少の嘘はただの言い間違いだ。問題無いだろう。

 

「……究極召喚を二度手にした者は前例が無いので、どれほどの純度で成功するかは分かりません。ですがそれが貴方の望みなら、授けましょう。再び愛する者の命と引き換えに……」

 

そして……私は母に続き、父親さえも究極召喚に捧げた。

 

後悔は無い。

ただ、これで後戻りは出来なくなった。

 

「ふっ……今更だな、初めから戻るつもりなど毛頭無い」

 

だが、父を捧げた私は、果たして友の瞳を直視する事が出来るだろうか……。

彼は私を知って拒絶するだろうか。

例え拒絶されても関係無いか……。私は私のやりたいようにやるだけだ。

 

我が友……。

ああ、そうだ。

もう一つ、ここでするべき事があるのかもしれない。

 

 

いけ好かない女だが、清濁併せ呑む事すらできないようでは、スピラから差別を無くす事など夢のまた夢。

この大召喚士を引き入れる事が出来るなら、これ程頼りになる戦力も居ないだろう。

間違いなく、私が思い描く画を完成させるための絶大な切り札になる。

 

とはいえ素直に連れて行けるとは限らない。

期待は薄いが、粉をかけてみるぐらいはしてみようか。

 

「時にユウナレスカ様。ビンザー=デリングJr.という名の召喚士に心当たりはお有りですか? このスピラの真なる希望となるかもしれない……彼の事を」

 

「この地まで辿りつける召喚士は多くはありません。その一人である貴方がそこまで讃える程の召喚士が、今代にも産まれているのですね」

 

私の良い返事を期待していない誘いは、思いの外、好意的に受け止められた。

この千載一遇の機会を逃すのはあまりに惜しい。

なればこそ、多少のリスクを負ってでも、これほどの戦力を誘わないという手は無い。

 

「私は彼を希代の傑物だと認識しております。それこそ究極召喚の真実を知ったとて、彼は間違いなく旅をやめない精神性を保持していると、私は見ています」

 

この予測にまず間違いは無いだろう。

私は彼女の興味を惹くため更に話を続けた。

 

「どの道、私が『シン』を倒してナギ節を呼ぶので、その間ここに来る召喚士は居ないでしょう。一時の休息として、召喚士デリングJr.にお会いになられては見ませんか?

貴女が真実を知った彼の出す答えに何を思うのか……。是非ともこの身が『シン』と戦って朽ち果てる前に知ってみたい」

 

「……………良いでしょう。貴方程の召喚士の死への慰めとなるのであるならば、私が手伝う事もやぶさかではありません」

 

なんともはや、『シン』と戦う気で居るなどとは……。

よくもまぁ思っても見ない事を口から出任せで言うものだと、我が事ながら笑ってしまいそうになる。

 

しかし、お陰でユウナレスカを同志にできるかもしれない“可能性”を得た。

この女に一杯食わせたと思うと、胸の空くような気分だ。

 

 

私は信じている。

彼ならきっと、真実を知っても打ちのめされず、ユウナレスカを説き伏せるだけの答えを出してくれる。

この私をここまで魅了させてくれたのだ。

ならばユウナレスカ程度を乗り越えられない筈もない。

もしも逃げ出したり、くだらぬ答えを出して、デリング殿が私の考えに反発するならばそれはそれで構わない。

 

その程度すら乗り越えられないならば、見込み違いの男だっただけの事。

私も彼も差別を撲滅するなど到底不可能だろう。

端から無かった幻想の夢が消えると言うだけの話だ。何の問題にもなりはしない。

 

なればこそ、これは私の荒唐無稽な夢が叶うかどうか確証を得るための賭けみたいな物だ。

 

覚悟を決めろ。

今こそ己の信じたままに世界を動かす時だ。

友がその気高き精神の清らかさで、1000年の呪いを背負った英雄を説き伏せて、新たなる世界を切り拓くか。

それとも、出した答えがユウナレスカに認められずに、我が親友の命と私の夢が潰えるか。

 

 

二つに一つ。

友の命を担保にした身勝手な賭け事の賽は、今この時をもってして天高く投げられた。

 

 

 

 

 

ビサイドで再びデリング殿と邂逅して、想いは益々大きくなっていった。

旅の道中でその演説を拝聴するたびに、益々強固になっていった。

彼を守るガードから話を聞くたびに、益々心酔していった。

 

 

そして……ユウナ殿とデリング殿。その気高い二人が結ばれるという話を知った。

 

方や、親から捨てられた過去を持つにも関わらず親と人を愛し続けて、スピラの為に召喚士となった男。

方や、ヒト族とアルベド族という異なる種族の血を引き、蔓延する差別を物ともせずにスピラを愛して召喚士を目指そうとする女。

 

私はそこに圧倒的な敗北感と爽快感を得た。

この二人の精神性には敵わない。

まるで今までの自分が、ただイジけて卑屈になっているだけの、無様で情けない人間だと言われている気さえした。

 

そして、彼等が結ばれる未来予想図は圧倒的な輝きで私を照らし、さながら心地良く屈服させられるかのように。私を深く心酔させる。

 

 

似た境遇の私が獲得し得なかった、強き意識と気高き想いが彼等二人にはあった。

羨ましいと思った。欲しいと思った。

デリングという友も、ユウナという女性も。

その様な存在がどちらか1人だけならば、私は強引にでも己の物にしようとしていただろう。

しかし私が欲しくなった二人が結ばれて、一つになる未来があると知った時……不覚にもその未来を見てみたいと強く想ってしまった。

 

この二人の出会いは奇跡だ。

人種問題に対する歴史を動かす。その流れが今の私達の背を後押しているとしか思えない程の運命的な繋がり。

 

デリング殿が世界から差別を取り除き『シン』を倒した後、ユウナ殿はどのような子供と世界を産み、どのように他者を癒し崇められながらスピラを変えて行くのか……。

そこに強い興味と羨望と、慈しみがある。

 

 

ナギ節が実現した暁には、その英雄が死んでいようが生きていようが、英雄を人々が取り囲むのは間違いない。

その時、彼という象徴を核とした一つの個となる団体を作る。

そうして確変期に入るであろうスピラを数と究極召喚の暴力で蹂躙し、私は世界の在り方に影響を与える。

それはさながら幻光虫が集合して出来た『シン』の如く。

 

もしも更なる奇跡でも起きて彼が生き残ったとなれば、私はその時、幻光虫を束ねて出来た『デリング殿』のコケラか……。

 

いずれにせよ、それも悪くない。

 

「クハハッ……」

 

思わず己に似合わぬ笑い声が漏れた。

 

まさに絵空事……。

このような未来を考えている者が、現状維持を貫く今世にどれだけの数居るのか。

我ながら馬鹿馬鹿しくて笑えてくる。

 

 

だが──結局のところ、無理かどうかは……やってみなければわからない。

 

私は既に親友の命すらも勝手に天秤へと乗せている。

スピラの人間達が遠の昔に捨て去ってしまった、未来への可能性とやらを信じる事に今更躊躇などしていられないのだ……。

 

それを成す為に有用であろう、2体目の究極召喚とエボンの老師という地位も手に入れた。

あとは究極召喚の真実を話し、振り終えた賽の出目を確認するだけだ。

 

さて、デリング殿。

誠に勝手ながら、私の用事にお付き合い願いたい。

とはいえ、この身を親友と言ってくれた彼ならば、きっと笑顔で許してくれるだろう。

何せこれから会いに行く相手は、貴方のお好きなとびっきりの美女なのだから……。

 

 





シーモアの思考書いてる時、途中からくどすぎて何がなんだかわからなくなって来て、頭おかしくなりそうでした。
感想とは評価とか貰えると喜んだりモチベが上がったりします。
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