【完結】転生者が権力とかでFF8とFF10のヒロインを食い散らかした挙句、最終的にスピラを救う話。 作:速射弾
「『シン』とはエボンの成れの果て、そして究極召喚になった者の行き着く先なのです」
シーモアの長い語りはようやく終わった。
宿に居る僕達は、既に知っている内容にどうリアクションしていいのかわからないまま、神妙にその話を聴いていたのだった……が。
(え、良いの? それ話して……。しかも今、ルールーとパインもいるんだけど……)
そんな事したら君、僕を騙して『シン』になれなくなるけど良いの……?
「私がグアドの歴史とエボンの老師という立場に就任して得た数々の情報。それらは全てまごう事なき真実です」
真実です。と言われましてもですねぇ……。
既にこちらとしては知っている情報な訳でして。
わざわざお前に真実かどうか念押しされなくても、別ルートで情報仕入れてるんでその話は端から疑ってません。
……と言いたくても、それをバラせば何がどうなるのか予測ができなくて言えない。
ただ確定しているのは、今後ストーリーの障害として立ちはだかる可能性が高いこの男に、色々僕達の現状をバラしてもメリットは無いという事だけだ。
とりあえず「それ知っているよ」と、話して良いのかわからなくて困っている我がお付きの二人には、首を振って言うなという合図を送った。
重大な事実を教えてくれたとはいえ、まだシーモアに対する疑念は十二分に存在するからである。
何を考えているのかわからない悪役相手に、この警戒は当然だった。
そんな警戒心を知ってか知らずが、老師殿はまだまだ語りかけてくる。
「この話をお伝えするかは迷いました……。しかし、友と呼ぶ相手に隠し立てはしたくない。
少し前までの私は、私と母を捨てた父や、受け入れる事のなかったスピラへの憤りがありました。
ですが……同じような境遇に晒されているデリング殿は、何一つ不平不満を持つ事無く、全ての民を愛していた……。
種族に隔たりなど取るに足らないと言わんばかりに……。それが、どうにも私の目には眩しすぎたらしい。
貴方を見ていると、そんな“可能性”の光をも垣間見てしまったのです。
そのように私を変えてくれた恩人が、何も知らないまま消えゆくと考えた時、私には行動を起こさないという選択肢はありませんでした」
スピラに対する復讐の心があったけど、僕のお陰で踏みとどまる事ができた?
そ、そう……そんな内面の話までしてくれるんだ。
ああ……よかったね……うん。
なんで感極まって喉を少し震わせながら打ち明けてくるんだよ、そんな事。
演技にしか見えないから何も信用できないんですけど……。
「は、はぁ……。そこまで評価して頂き光栄ですが……」
あと、まだ僕ちん何もしてないんですけど、なんでそんなに評価高いんでしょうか。
「このままデリング殿のような傑物が何も知らず、何も成せずに死を享受するなど、私には惜しいと思ってしまった……」
それさっき聞いたよ……。
言い回し変えて同じ事繰り返さなくて良いから……。
原作でコイツに迫られている時のユウナって、こんな風に何をどう喜んで良いか分からない気持ちだったんだろうか。
そしてルールーよ、「流石ですデリング様」じゃない。
シーモアが勝手に改心しただけで僕は何もしていない……。(謙虚な姿勢)
まぁ、大体分かってきたけど……。
総括すると、なんとこの男……旅の途中からマジで僕に友情を感じてやがったのだ。
このまま『シン』を倒すのは一旦後回しにして、まずはスピラから差別を無くすために一緒に頑張らないか? とかキラキラしたお目目で言ってきた。
そんで、その間になんか僕らと一緒に、召喚士が死なずに『シン』を倒すための方法を見つけるんだってさ。
…………それが出来たらエボンの民は苦労してねぇんだよバーカ!
なんで若くも無いテメェが無限の可能性感じてんだよ!
シーモア君、いま自分が幾つだと思ってんだ?
良い年こいて出来もしない事に夢見る年齢じゃないでしょ。
えーと……話変わるけど、きみ今何歳だっけ?
あ、もうすぐ誕生日だからギリ24ですか、そうですか。
…………24歳って言えば、もう夢なんか見る年齢じゃ……。夢見る年齢じゃ……。
────24歳、か。
ふぅ……。
やばいな。
前世と合わせて体感時間で50歳分はゆうに超えている自分の感覚から見たら、24は夢真っ盛りのガキも良い所だった。
僕自身はあまり真剣に生きていなかったから、その歳の頃はもっとちゃらんぽらんだった気がするが、これが真面目に人生設計をしながら生きている類の人間ならば……。
ある程度の社会経験を伴い、夢に向かって現実的に動き出す第一歩を踏み出してる時期かもしれん。
しかも僕と出会った時期を考えると23とかそこらだった訳かぁ。
────この男、まだ青臭さが十二分に残ってやがる……。
なんで青臭い奴が清濁併せ持つのを許容して、性接待を持ちかけてきたり出来るんだよ……。
普通、そういう時期は社会の裏の面知ったら「許せねぇ」って憤るのが青臭さなんじゃねぇのかよ……!
おまけにこの歳で、世界を牛耳る宗教の頂点に位置する所から、一個下の役職を賜りましただと?
どう考えても傑物は僕よりもテメェの方だろ馬鹿が!
ダメだ。考えれば考える程、この男が怖くなってきた。
たまたま上流階級家庭に産まれただけの、前世一般ピープルな自分とは役者が違いすぎる。
さっきまで言ってた事も、やっぱりなんで話してきたのか納得できん。
先入観があるからか、どうしても本当に改心してるとは思えないのだ。
いや、多分色々話してくれたから改心してるのは間違いないんだろうが、その
人はそう簡単にガラリと根本を入れ替えたりは出来ない筈だ。
他者を平気で害せる類の男だ。
何かの拍子に心変わりして「貴方は用済みになったので異界へ送って差し上げましょう」とか言い出してきても何ら不思議ではない。
差別を無くそうだと?
本気で言ってるのか?
無理に決まってんだろ馬鹿じゃねぇの?
なんて────思ってる事を口に出したら多分……いや、絶対に殺される。
本当の自分の思考回路を晒してはならない。
今、己に幻想を見ているこの男から失望されたら、全てが終わるだろう。
権力でも武力でも敵いっこない。
そんな奴がこれから僕達の旅について行きたいと言って来ている……。
友だの親友だのと軽々しく口にしてきた己は、断る理由を自ら塞いでしまっていた事に気づいた。
そう。
僕はシーモアの口から出てくる夢見がちな妄言を全て、
否定した瞬間に我が命運は尽きる。
既に詰まされていたというあの時の感覚は、思い違いでは無かったのだ……。
さらに最近、彼の父ジスカルが大病に
「我が父ジスカル=グアドは新たな究極召喚の祈り子となりました。父は最近、深刻な病を患い死期が迫っていたのです。それを期に私は父と話し合う事ができまして……それもこれも全てデリング殿のお陰です。結果として、父は自らこのまま病で死ぬならば少しでもデリング殿の旅に役立つ為、究極召喚の礎に……と」
ベベルへ向かうまでの僕との旅のお陰で、父親と話す気になれたと染み染み語っているシーモア。
いや、どう考えてもお前の親父の末路に僕は関係ないんだが?
何がデリング殿のお陰です。だよ責任の擦り付けも甚だしい。
(ぜってぇ嘘ついてるだろ、お前がただ恨んでるから殺したかっただけだろ?)
そう思った僕は、召喚獣を授かりたいという名目でその祈り子となったジスカル様の元へと行き、祈り子の幻影と対話を試みてみる事にした。
というかシーモアというご主人様が、まずは祈り子となった父に会いに行きましょうと誘ってきたので、断れる筈も無く……飼い主に首輪を引っ張られて渋々ついて行っただけだ。
多分、原作通りに異界からジスカルが未練たらたらで這い出て来て「スピラに災いを齎す息子の凶行を止めてくれ」とかお願いしてくるんだろう。
原作知識で全て知ってんだよこっちは。
この目で見るまで心からは信じられなかったが、原作では影も形も無いジスカル様の祈り子像はマジで存在していた。
シーモアの究極召喚と言うのもアニマと混同されてしまうので、便宜上ジスカルの究極召喚とでも言おうか……。
そして……祈り子様の幻影は「息子を止めてくれ」など一言も言う気配が無かった……。
自らの意思で究極召喚の祈り子になったと語ってくるジスカル様。
シーモアのエピソードトーク通りの内容を話す、スケルトンカラーなジスカル様。
「デリング殿のおかげで最後に息子と話ができて感謝」と言った感じの御礼と共に、深々エボン式お辞儀をするジスカル様。
「息子をよろしくお願い致します」と、僕にも己の究極召喚獣を授けて下さるジスカル様。
おいおいおいおい、なんだこりゃ。
こんなに簡単に究極召喚貰えちゃって良いのかよ……。原作何処行ったんだよ……。
何がどうなって親子関係が修復してるのか、さっぱりピーマンである。
幸か不幸か、僕とシーモアの親父の絆がそこまで深く無いので、ジスカルの究極召喚は普通の召喚獣に毛が生えた程度の強さだ……。
召喚獣(強)といったところか。
それでも原作のアニマぐらいの強さがあるので、平時の戦闘では召喚するだけでまさに無双状態となってしまった。
しかもシーモアは老師権限や族長権限を使って、今までグアド族や寺院が溜め込んでいたスフィアの一部を僕達の強化に使用してくれるらしい。
はっきり言ってありがた迷惑だ。
戦力の上がり幅が急激すぎて戦闘勘がおかしくなる。
今まで長い時間かけてコツコツやってきた自己強化は何だったんだ。
これじゃ何年も地道な旅をしてきた、今までの自分達が馬鹿みたいに思えるだろ……。
ちなみになる話だが、シーモアの使うジスカルの究極召喚は、親子の絆パワーで『シン』を倒せるモノホンのブッ壊れパワーを発揮できる模様(白目)
実際にその力の一端を拝見したが……。
木彫りの巨大な千手観音が、常に雷雲に覆われている筈の雷平原を一日だけ晴れにした、とだけ言っておこう。
おそらくスフィアドーピングで限界まで強化された今の僕達でも、シーモア1人に勝つ事はできないのだ……。
『シン』を倒す話の都合上ブラスカの究極召喚とも戦う事になる筈だが、人間は本当にこれと同系統の召喚獣に勝てるようになるのだろうか?と冷や汗物である……。
そんな目障りなのに取り除けない、目の上のたんこぶと化したシーモア曰く、会って欲しい人物が居るという。
そういえば元々そんな事を言っていたなと思い出す。
まぁぶっちゃけ、もうここまで来たら何が出てきても驚かない。
その人物をグアドサラムのホテルで待たせてるというので、シーモアに連れられて早速逢いに行く手筈となった。
一体誰がこのパーティのリーダーなのか分かった物ではない。
誰もシーモア老師には逆らえないのだ……。
この男がユウナ以外の僕の女に一切興味無いであろう事が、唯一の救いである。
というかコイツって友達居ないけど、他人に合わせたくなるほど誰かと繋がりあるのか……?
また女の子をアテンドしようとしてる可能性が濃厚である。
まあ、そこまで熱心に用意してくれるなら……無下に断る訳にもいくまいよ……。
ユウナ。パパはお仕事の関係で風俗接待させられてるだけだから、断るわけにもいかんのだよ。
(これからもこういう事があるかもしれないけど、大事な仕事の一環だから許してね)
ホテルの部屋で待ち受けていた人影を、僕は瞳に映し出す。
美しく長い髪、際どいブラジャー、ケツの割れ目にしっかりと食い込んだ紐パン。
一見ただの性接待要因と勘違いしかねない下着同然のファッションに身を包んだその女は……。
1000年もの間、スピラで究極召喚を授けて来た、ガード&召喚士キリングウーマン。
エボンの歴史に謳われた大召喚士ユウナレスカ様。
その人が、ベッドの脇に腰掛けて高濃度の幻光虫を侍らせながら存在していた。
「大変遅くなり申し訳ありません、ユウナレスカ様」
「構いませんシーモア。この千年間で待つ事には慣れています」
「これはこれは……御冗談を……」
なっ……! なんでぇっ!?
なんでユウナレスカがこんな所に居るんだ!
なんで原作の厄介ボスキャラ二人に挟まれてんだよ! どうしてこんな……。
僕はこんな状況に陥れられるような事をまだ何もしてない筈だ!
シーモアには勿論、エボンの教えにだって従順だったし、反骨心など微塵も表に出した事は無い!
女か? 女を接待で抱きまくったのがあかんかったんか!?
「それで、彼が貴方の言う“友人”ですか?」
「ええ、この者こそ私が最も信頼を寄せる召喚士、ビンザー=デリングJr.その人です」
仲良さそうに会話していた二人が同じタイミングで此方を向く。
ユウナレスカとシーモアの視界が同時に僕を捕らえた。
(ひぃっ……! だめだ……僕はシーモアに嵌められたんだぁ……。
クソクソクソがっ! やっぱりこんな奴、利用しようなんて思うんじゃなかった!
このままだと確実に死ぬ……。足掻け……どうにかして演技して口八丁で切り抜けろ! 何時もやってた事じゃないか!
震えを見せるな、己の一挙手一投足に全てが掛かっていると思え。硬くなるな……自然体を演じるんだ……)
その時、僕の背後に居たルールーが、ふらーっと前に出てきて驚きの声を上げる。
「ま、まさか! ユウナレスカ様ですか!? 本物にお会いできるとは……」
クソっ、ルールーはこの事態の危険さに気づいてない!
過去の偉人に会えて喜んどる場合かぁっ! この牝犬っ!!
その女は死が救済だとか大真面目に考えていて、それを理由に平気で人を殺す悪霊だぞ!
危ないから近寄るな! おっきな乳揺らしながら戻って来い! ハウスッ!!
「ルー、どうやらユウナレスカ様は僕に用事があるみたいだ。まずはその要件を聞いてからにしよう」
「!? 申し訳ありません! 私ったら……ユウナレスカ様にお会いできてつい……」
「ルー、君の気持ちも良くわかるよ。彼女はこのスピラの希望の象徴であり憧れ……。僕も正直驚きと興奮が隠しきれないからね……」
なんとか上辺だけは取り繕えたか……。
ユウナレスカは、このスピラで憧れた事のない女など居ない。と言われる程度には人気の英霊だ。
彼女の行なっている事は反感を買いそうな真実を含んでいるとはいえ、スピラを存続させるために必要不可欠だったこともまた間違い無い。
故にルールーは真実を知ってもあまりユウナレスカに対して悪感情を抱いてないっぽいのだ。
まあ、まだユウナの命がかかってないという部分が大きいのだろうと思うが、彼女にとってユウナレスカは依然としてスピラを守ってくれていた英雄なのである。
そんな相手に出会えたのだ、興奮するのも仕方がないのかもしれない。
……しかし、そのおかげで僕は比例するように、冷静さを取り戻すことができた。
「はじめまして、私はユウナレスカ。本来ならば今もザナルカンドにて召喚士を待ち続け、究極召喚を授ける使命を全うしている筈だった者です」
「こ、これはどうも、既にご存知の様ですが……友人からご紹介に預かりました、ビンザー=デリングJr.です。趣味は……女をイカせる事です」
まるでお見合いの様な挨拶をしてしまう。
おまけに緊張しすぎて本当の趣味を付け加えてしまった。それも、馬鹿正直な内容を……。
何が冷静さを取り戻す事ができた。だよ……。
油断した油断した油断した油断した油断した!
(終わった、死が確定した……もうどうでもいいや。ユウナレスカ様の食い込みハイレグ紐パンえっろ)
「女を……イカせる……事?」
ユウナレスカ様が疑問符と共に余計な所に引っかかる。
頼むからそんな所に引っかからないでくれ。早く本題に行こうよ。
女を早く本題に行かせるのが趣味って意味だよ、変な受け取り方しないでよね。
全く、僕がエボン教の最上位存在にセクハラするわけないじゃないか。
我、清く正しい召喚士ぞ?
「もうっ、デリング様ったら……緊張してそんなご冗談を言うなんてっ……!」
「いや、失礼致しました。冗談でこの場の緊張を解きほぐしたかったのですが……僕自身が緊張で不適切な発言をしてしまいましたね」
ルールーありがとう……。お前のフォローは本当に頼りになるな……。泣きそうだよ僕は。
「ククク……どうです? 面白い人でしょう我が友は」
何がおかしい、笑うなシーモア。
お前なんか友達じゃない! 絶交っ……もう絶交だ! 消えろ青ゴキブリ!
無論そんな事が言える筈もなく……。
僕は困った様な澄まし顔で肩をすくめ、教科書通りのガルバディアンコメディ仕草で、見事にその場を切り抜けた。
ユウナレスカが口を開く。
「本題へと入りましょう、召喚士デリング。貴方はシーモアから真実を聞いたと伺いました。それを知っても尚、旅を続ける意思がお有りのようですね」
ミ゛ッ……!
ガチで消される流れやん……。
それか、「究極召喚を授けましょう、貴方の最も愛する仲間を一人選びなさい」って押し売りされる奴じゃん……。
そんで断るなら、このまま生きてても希望が無いから、せめて私が殺して救いの死をあげましょうってパターンだ。
FF10ゼミで習った所なので知っているのだ。
どうしよう……知っててもどう対応すればいいのかわからない。
とりあえず我が大親友のシーモアを究極召喚の生贄に捧げる準備だけしておくか……。
(あっ、でもシーモアってもう『シン』になりたいとか思って無いんだっけ……)
僕に友情を感じてるのが本当かどうかすらも、まだわからない。
スピラに対する恨みが無くなった的な事言ってたのは、ここに誘き出す為の嘘かもしれない。
そこまでして僕を嵌めたい理由はわからないが、とにかく何を仕出かすかわからない人間を、常識という枠組みに当てはめて考えても無駄な事だけは分かる。
どちらにせよ……もしここでシーモアに人柱役を断られたら、強すぎるこの男をどうにかする事は実質不可能になる。
そんな絶望を予感していた時、ユウナレスカの口から出てきた言葉は僕にとって唯一縋るしかない藁だった。
「貴方が真実を知ってどういう結論を出したのか……今日はそれを聞きたいと思い、この場を用意して貰ったのです」
シーモアが私の手柄ですと言わんばかりの自信満々な笑みで会釈をしてくる。
「実は私もまだ真実に対する友の答えをお聞きしてはいないのです。その答え、是非ともお聞かせください」
吊し上げ前提の国会討論かよ、何言っても叩かれる流れじゃねーか。
ルールーは僕が既に真実を知っていた事を打ち明けて良いのかオロオロしてるし、パインは何も口を挟めず不安そうに僕を見ながら後方腕組み状態だ。
とりあえず、出まかせでもいいから殺されなさそうな事を何か言わなきゃいけない。
もういい、これで原作の『シン』を倒す作戦が、エボン教上層部に邪魔されてご破産になっても知らないもん!
だってこの状況、言わなきゃこっちが殺されるんだもん! 仕方ないんだよ!
誰がユウナレスカと限界突破シーモアのセットメニューを相手して勝てるってんだよ!
俺は悪くねぇっ! 俺は悪くねぇっ!!
「シンを永遠に倒す方法……。実は僕はそれを既に見つけています。これは先程と違って冗談でもなんでもありません」
「ほぅ……!」
「なんと……」
驚愕を露わにする二人の敵。
その髪色は互いに異なる青色であり、触覚染みた物まで飛び出しているヘアスタイルなので、まるで対比するかのようだ。
このような威圧的存在の注視を前にして、大見得を切らなければならないなんて……。
逃げたい。
だが、逃げれない。
大魔王から逃げれないのはドラクエだけでいいじゃないか……。
なんでFF世界でまで逃げれないんだよ。
スク◯アとエニッ◯スが合併したからか?
あーあ。
すまん、原作パーティのみんな……。今日でスピラの命運尽きるかも……。
デモ……オデ、シニタクナイ。
だから……言うしかないんだ……!
「シンはジェクトです」
慌てふためく脳内とは裏腹に、僕は非常に真摯な態度を保っていた。
まだだ、まだ死んでない。死んで無いなら可能性はある筈だ。
そんな極限状態の藁をも掴む生き汚なさが、万が一チャンスを掴めた後の事を想定して表層を取り繕う。
「ジェクト……先代の大召喚士のガードですね」
確認するユウナレスカに対して、僕は再び同じ言葉を返した。
「ええ、『シン』はジェクトだ」
「それがどうかしたのですか……? 究極召喚に選ばれた存在が『シン』を倒し、再び『シン』になったというだけの事ではありませんか……?」
疑問に思っているなら、もうちょっと可愛い仕草でもして目の保養になってくれよ。
ずっと無表情を保ちながら抑揚の薄い喋り方をされると、怖くて仕方ない。
「ジェクトの出身地をご存知ですか」
「ジェクト様の出身地……? ジェクト様って確か……」
思わず、と言った風に話に割り込んできたルールー。
これは彼女にも言ってない話だ。
というかジェクトの事なんて詳しく知っているのもおかしいし、言う必要性皆無だから、わざわざ詳しく説明していなかった。
「彼はブラスカ様の御息女にこう漏らしていたみたいですよ、1000年前のザナルカンドから来た……と」
「……!」
ユウナレスカが目を見開いて驚く。
ここまで澄まし顔だった彼女が、初めて表情を変えた瞬間だった。
ユウナからそんな話は聞いてないし、ジェクトも幼女にそんな事言ってるかは知らんけど……。
どっちも此処に居ないし、ぼっくんの命がかかってるんだから、捏造ぐらいしても良いよねぇ!?
「確かに、私が見た寺院に残されている記録によると、ブラスカのガードであるジェクトは元々『ザナルカンドから来た』と吹聴し牢に入れられていたという記載や、映像スフィアも残っておりましたね」
シーモアが僕の情報を捕捉してくれた。
コイツがそんな細かな所まで調べあげているとは……。
油断ならない男だが、今はその有能さを追い風にして僕は喋り続ける。
「夢の国……ザナルカンド。そう、『シン』が生まれた原因です。貴女なら詳しく知っているのでは?」
「ええ、我が父エボンが召喚した夢……まさか、ジェクトはそこから来たとでも言うのでしょうか……? しかし、だとしてもそれが『シン』を倒す方法と何の関係があると言うのでしょう」
「ジェクト殿には大切に思う一人息子が居たそうです。そして究極召喚を使わずに『シン』になった彼を止める事ができるとすれば、その息子だけでしょう」
「どういう事です?」
どういう事なのか、こっちが聞きてぇよ。
これ意味わかんねぇよ。どういう理論なんだよ。なんの確証があって導き出された可能性なんだよ。
でも成功するのだけは知ってんだよ!
「彼は『シン』になっている……そう、『シン』が身にまとう幻光虫の鎧。その中の核となっている場所に受け入れられる可能性があるのです。
これはおそらくですが、究極召喚として『シン』に成り代わっても……本人の強い意識があれば僅かに意識を保つ事が可能なのでは?
『シン』は幻光虫の塊です。思いに反応し呼応するのはあり得ない話じゃ無い。それは死人としてこの世に止まっているユウナレスカ様が一番実感している事だと思います」
「ですが……シーモアから話を聞いて、私に会うまでの僅かな時間でその答えを導き出したというのですか……? そのような短期間で考がえられた案が、果たして信頼できる方法と呼べるのでしょうか」
ユウナレスカ様のごもっともな意見。
そこになぜか補足と反論をする馬鹿な女達が居た。
「いいえ、容易く出した結論ではありません。デリング様は既にその策を旅立ちの時から想定していらっしゃいました。……申し訳ありませんシーモア老師。私達は貴方から伺ったエボンの秘密を既に知っていたのです」
「そうだね、デリングが言ったから話すけど。とっくに知ってた事なんだ。それを前提として考えられていた作戦さ」
ルールーくん。パインくん。
上司の指示を仰ぐ事なく独断で動こうとするのは感心しないなぁ……。
僕がカミングアウトしたからって、なんでもかんでも言って良い訳じゃないんだよ?
下手したら殺される。そんな危機感を覚えているのはもしかして……僕だけなのかな?
あ、僕だけみたいだね。
なんか既に全員がお互いを仲間だと思ってる、みたいな面して話してるわ。
僕が何処でその話を知ったのかというラスボス二人の質問に、ルールーが懇切丁寧に答える場が出来てるわ。
実家の関係で知った情報という出任せをまだしっかりと信じてるから、彼等に語り聞かせてくれてるわ。
エボン教にあるまじき建設的な質疑応答が飛び交う光景だわ。
「成功するかどうかは分かりません。しかし、今成功しなくてもこれが後に『シン』を本当に倒すことの出来る布石となる可能性は高い。究極召喚で『シン』を討ち、『シン』に成り代わる螺旋に一石を投じられるという訳です」
できるキャリアウーマンのルールーが、あらかたの質問に対応し終わって、要点をまとめて締めた。
ウキウキで解説してんじゃねぇよ。「私の仕えているデリング様は流石です」とか逐一余計な言葉を付け足すんじゃない。
性奴隷が飼い主に付けられた首輪を自慢すんな。聞かされている方が迷惑だろ!
それに対してシーモアも「やはりデリング殿は私の想像を軽々と超えていく逸材でした」とか人材マニアみたいな事を言って呼応し、興奮している。
変なラインで繋がって共鳴しないでくれないか。
「成功するかどうかわからない事に、貴方は命をかけて可能性を見出すという事ですか……」
とにかく場の雰囲気も和やかになってきているし、多くは望まないから命だけは助けてほしい。
もう今はそれしか頭になくて、とりあえず彼女からの質問には綺麗事を並べてやり過ごそうと思う。
それは、スピラに来てから僕についてしまった変な癖だった。
「まだ自分自身の命を賭ける事になるかは分かりませんけどね。ですが可能性がゼロじゃない以上、やっても探しても居ない状態で否定はさせません。
例え失敗しても、貴女が居る以上、再び究極召喚を使う状態に戻せば良いだけなので何も損をする事は無い。
青臭い理想と笑われるでしょうね……ですが、僕はこの青さを失くしたくは無い……。それに────命を賭すのは召喚士の得意分野でしょう?」
真剣な眼差しで彼女の目を見る。
結局のところ熱意が大事だと、僕は演説の経験で知っている。
頼む。死にたくない。殺さないで下さい。まだまだ可愛い女とエッチしまくりたいんです。
その願いは真剣な物だと自負していた。
想いが目の前の死神に届いてくれたのか分からないまま、彼女は瞳を閉じて小さく深呼吸をする。
それが僕の生死を決める
僕の命運を告げるために、長いまつ毛で飾り付けられた美しい瞼が開く。
「そうですか────。わかりました、私も貴方の歩む道の先に強い希望の可能性を感じました。どうかこの身を貴方の旅に連れて行ってはいただけないでしょうか……」
結局、持てる知識をフル活用したその場しのぎは、なんとか成功したらしい。
一体自分はどれだけ原作知識という物に助けられているのだろう?
女を抱くにも、社会的地位を維持するにも、生命維持すらも、すべてこの知識のお陰で成り立っているのだ。
ありがとう原作知識式社会保障制度。フォーエバー原作知識式生活保護制度。
そして──紐パン痴女幽霊のユウナレスカ様が仲間に加わった。
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