※この作品はR-18です。

【完結】転生者が権力とかでFF8とFF10のヒロインを食い散らかした挙句、最終的にスピラを救う話。   作:速射弾

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FF10編 20話 原作開始の姿か……これが?

 

ルカのブリッツボール大会も終わり、撤収の時間になった頃。

僕に会いたいという召喚士が居るとの事で、彼等との顔合わせをする。

 

扉を開けて入って来た御一行は、召喚士にしては珍しく6人という大所帯。

それもその筈、彼らはFF10の原作主人公パーティなのだから。

 

「デリングさん! 久しぶりですね!」

 

まず代表として元気よく挨拶したのはユウナちゃん。僕の愛しの婚約者だ。

トテトテと(はかま)を揺らしながら駆け寄って来る姿は、前にも増して魅力的。

長い間離れ離れだった為、こうして会って抱き締める事が出来て感無量だ。

 

元々僕の方から彼らの所に訪ねる予定だったのだが、先手を取られてしまったらしい。

(はや)る気持ちを抑えきれずに、大会が終わって直ぐ連絡して来たんだろうな……と想像すると微笑ましくてニマニマしてしまう。

 

そんなに早く会いたいなら、大会が終わる前に連絡してくれれば良かったのに……きっと、気を回して忙しく無い時を選んでくれたのだ。

彼女の気遣いを想うと愛しい気持ちが溢れて……もう離れたく無い。

しかし、何時までも抱きしめている訳にも行かないだろう。名残惜しいが、抱擁は一旦置いておこうか……。

 

「デリング様! 貴方のお陰で優勝出来ました! ありがとうございました!」

 

まだ試合で大きな結果を出せた感激が止まらないのか、目を潤わせているワッカ&チャップ。

 

「優勝出来たのは俺とチームのお陰だっつーの」

 

ワッカ達兄弟につっこみを入れている原作主人公ティーダ。

優勝出来た事が嬉しいのか、彼も機嫌が良さそうだった。

 

「…………」

「…………」

 

無言でその場に佇むキマリとアーロン。

キマリのことは知っているので言うに及ばず、アーロンは召喚士ブラスカの元ガードのおっさんである。

35歳独身であり、ティーダの親代わりの死人だ。

 

彼のグラサンの向こう側からユウナレスカを睨む視線は、恐ろしい程に険呑。

何時でも刀を抜けるように警戒しているが、肝心の睨みつけられている女幽霊は完全無視で僕の横に佇んで居た。

故にその鋭すぎる視線と深い皺の刻まれた怖い顔は、僕の方にも向けられる事となる……。

 

完全にヤクザだ。

僕にとって前世を思い出すので、よりリアルに感じられて下手なモンスターとかよりも怖いかもしれない。

 

やるなら僕抜きで勝手にやってくれ……。

僕はアーロンがユウナレスカに殺されようが、この悪霊がアーロンに復讐されて殺されようがどちらでも構わない。

 

しかしアーロンもここで先に手を出したら、原作パーティがゲームオーバーデス確定な事は彼も理解しているだろう。

仮に僕達に勝利したとしても、叛逆者扱いは必至だ。

分が悪い状況だと悟っているのか、睨むだけで下手な動きを見せる事もなく、彼は何も言わないままだった。

 

 

 

僕はピリつくおっさんを無視して、長かったユウナとの抱擁を解除し自己紹介をする。

それに続いて愉快な仲間達も挨拶した。

 

「どうも、既に知人だったり、開会式で僕の事を知っている方もいらっしゃるみたいですが、改めまして、ビンザー・デリングJr.と言います。召喚士なんて物をやらさせて頂いてます」

 

「私はその友であるシーモア=グアドと申します。若輩者ながらエボンの老師という地位を預からせて頂いております」

「私はデリングの妻である、ユウナレスカです」

「私はデリング様のガードのルールーよ。そしてユウナの幼馴染でもあります。彼女のガードになる方々なら、これから関わる事も多い筈だから────よろしくお願いするわ」

「私はパイン。右に同じ」

 

僕の簡易的な紹介に続いて、なかなか色濃いメンバー達の紹介が行われる。

なんか所々おかしな紹介文があった気がするが、ティーダ達のリアクションもへーって感じで各々の紹介が済んだ。

やはりユウナレスカが居る事にユウナやワッカは驚きを隠せないみたいで、感心しっぱなしだった。

 

「妻ってどういう事だ? ……いつの間にデリング様はユウナレスカ様と結婚してたのか? そもそも……ゼイオン様との永遠の愛を誓い合ってた筈だよな……?」

「あれ? でもデリング様ってユウナと……。そういやルーとも付き合ってたんじゃ?」

 

ブリッツ兄弟が余計な所に引っかかりやがった。

スポーツにリソースを振り分けすぎて頭の足りない彼等は、まるでウノーとサノーのように二人一組で足らぬ頭を補おうとしているらしい。

 

僕が幽霊BBAの妄言に突っ込みを入れたり否定をしなかったのは、変に刺激すると良くない事になりそうだからである。

それをこの二人は平気で踏み躙っていた。

 

(あまりデリカシーの無い言葉を吐くなよ、旅が始まったばかりなのに殺されたいのか?)

 

君達は今、始まりの村で魔王と遭遇しているような状態なのだ。あんまり彼女を刺激しないで欲しい。

そんな僕からの無言のお願いは当然、ユウナレスカの本性を知っているアーロン以外に伝わる筈も無く、彼らは能天気に地雷原の上をタップダンスしていた。

 

 

「私は彼のガードよ。まだお付き合いしている訳じゃないわ。勝手にお慕いしてるだけ。正式にデリング様とお付き合いしているのはユウナの方」

 

ルールーの解説によって、可愛い本命嫁がこのまま殺されないか冷や汗ものだったが、ユウナレスカは平然と話に加わって居た。

 

「我が夫とはまだ正式に契りを結んだ訳ではありません、彼は今、一言では言い表す事の出来ない非常に特殊な政治的立場にあるのです」

 

「ええ、ですから今後デリング殿は複数人の妻を娶る事になるでしょう」

 

「へ? そ、そうなんですか?デリングさん!? ……召喚士になって、これであの約束、果たせると思ったんですけど……」

 

ああ……シーモアの追加説明にユウナタソが悲しそうな顔をしてる……。

ごめんよ……。でも逆らえないんや……。逆らったら危険が危ないんや……。

 

「あの約束……とは?」

「ユウナが召喚士になれた暁には結婚する、って奴ですね多分」

 

ユウナレスカの質問にパインが答えているが、僕としては勘弁してもらいたい情報提供だった。

この女幽霊は本当に僕にほの字っぽいから、恋愛関係の話を聞かせるのは危険な気がするのだ。

 

「結婚!? 恋人だとは聞いてたけど……ユウナ、この人と結婚すんのか!? うはぁ〜、何歳差だ……?」

「えーっとデリングさんが今年で31だから……14歳差……かな?」

「マジか……。これっておめでとう……って言ったら良いのかな?」

「あ、ありがとう……えへへ」

 

ユウナとティーダが同年代同士で仲良さそうに会話をしているが、なんかティーダからは祝福されてない感じがする……。

まあ、僕の周りには今もユウナレスカがくっ付き直して来たりしてるし、女遊びが好きな悪徳権力者だとでも思われてそうだ……。

でも、僕とってもこの状況は、それどころじゃなかった。

 

(とりあえず重婚の事、ユウナに謝らなきゃ……)

 

だって俺、ユウナに言っちゃったぞ、早く結婚しようって! 結婚式何時にするって!

結婚した後の事も!いっぱい! おっぱい!

あいつの気持ち良い所、何度も刺激してさぁ……!

なのに、ユウナ……。あいつ、喘いでた……。

 

 

「ユウナ……報告するのが送れてごめん。僕は他にも妻が出来てしまう事になったけど……それでも一番最初の結婚式はユウナとするから許して欲しい……」

 

僕は愛しの新妻にめっちゃ最低な事を言わなきゃいけない羽目になっていた。

それもこれもシーモアのせいだ。

差別問題とかどうでもいいから、僕の基本的人権と結婚の自由を返してくれ。

 

 

「一番最初……ですか……」

 

ヒエッ……。

聞こえて来た女幽霊の微かな呟き。

心なしか、そのユウナレスカ様の声のトーンが低い。

地雷原をタップダンスしていた馬鹿な若者達ではなく、堅実に一歩一歩注意しつつ生きていた常識人の僕が、最初に地雷を踏んでしまったらしい。

 

(世の中理不尽すぎだろクソが!)

 

おまけにユウナもまだ不満そうである。

どうにも夫婦関係に暗雲立ち込めそうになっていた、その時……。

元凶の触角ヘンテコリン男から、救いの手が差し伸べられた。

 

「ユウナ殿には申し訳ない事をしました。これは私が推し進めている事業のせいでもあるのです。どうかお許し下さい。────ですが、その理由を聞いたらきっと……貴女ならば納得してくださるでしょう」

 

「説明してくださいシーモアさん。デリングさんが他の人とも結婚する理由ってなんなんですか?」

 

ぷんぷんという可愛らしい効果音ついてそうなユウナの健気な怒り。

申し訳ないような、僕をそれだけ好いてくれてて嬉しいような気持ちになりなりながら彼女の手を握る。

シーモアはそんな僕達を微笑ましそうに見ながら説明した。

 

「世界平和です」

 

「へ?」

 

相変わらずこの男は怪しい新興宗教みたいな事を言う。それを聞いてポカンとした表情をしているのはユウナだけでは無かった……。

嘘みてぇな言い回し使うんじゃねぇよ、世界平和なんて今時詐欺師でも言わねぇ言葉だわ。

僕の重婚の言い訳が安っぽく聞こえるとユウナが訝しむからやめてくれ。

 

「ユウナ殿は『シン』を倒した後の事をお考えになった事はございますか?」

 

「『シン』を倒せば……ナギ節が来て、みんなが少しだけ平和に暮らせる時間が来て……。えっと、それで……」

 

「身を削って民に幸せな時間を与えようというその心意気、実に御立派です。ですが、貴女の婚約者であらせられるデリング殿の描く理想図は、その一歩も二歩も先を歩んでおられます。今から皆様方にもそれを解説して差し上げましょう」

 

僕の描く理想図じゃなくて、お前の描く理想図の間違いだろ……。

 

「デリング様の目指す目標が『シン』討伐以外に何かあるなら、そりゃあ正直気になるよな」

「ブリッツボールの大会で絶対優勝する……とかかな?」

「アッハハ、そりゃお前の話だろチャップ」

 

ブリッツボール三人組の中身の無い掛け合いは無視してシーモアは続けた。

 

「デリング殿はこの世から差別の根絶を願っております。故に『シン』を倒すのはそのオマケであり通過点。倒した後の世界の為に、今の我々には種族の壁を越えて人類の団結をする為の“象徴”が必要です」

 

全然ちげーよ……何も反論しないと思って勝手な事言うな。

お前は知らないだろうけど、僕の願いはユウナと幸せに結婚する事だ。

 

第二の夢は権力者になって女の子をレイプする事だし。

理想を語るならば、ただ世界で一番偉くなって、僕以外の人権を廃止して、全部平等に自分の玩具にして、死ぬまでその楽園を維持する事だから、差別の根絶とは全然違う。

 

あ、でも……ちょっとだけ女の子が悲しむだけで、僕の思い描く理想の世界は、結果的に差別の無い世界平和と言っても相違無いかも……。

よく考えたら女の子が悲しむってのもちょっと違うか……。

僕のオチンポ様を突っ込まれるんだから、むしろ喜ぶよな。

じゃあそれが完全無欠の世界平和じゃん。それでいいじゃん。

 

 

僕がユウナの手をニギニギしながら、もう永遠に叶う事の無いであろう夢に想いを馳せている時も、彼等の話は続く。

 

「種族を超えた象徴……。それが……デリングさんって事ですか?」

 

「はい。彼以上の適任は存在しません。人々が差別を止めるという意識に促す為に、それを象徴する“何か”は絶対に必要不可欠です。

当然、その“何か”が異種族との絆を目に見えて表せるならば、より一層効果的である事に疑いはありません。

勿論ユウナ殿もこの取り組みに賛同してくれるのならば、更にスピラから種族の間に存在する蟠りは薄れる事でしょう」

 

そこに異世界から来たスポーツ青年ティーダ君が、特に何も考えず口を挟んで来た。

 

「『シン』を倒すのが通過点って……そんな簡単にやっつけれるなら、みんな苦労して無いんじゃねーの? 気が早いっつーか……力入れる順番が違う気がするっていうかさ、先の事考えるのは『シン』を倒してからで良くないか?」

 

スポーツ馬鹿とは思えない正論だった。本質を見極められる良い目をしている、流石は原作主人公だ。

思えば現時点の彼にとって差別の話は本当にどうでも良い話題だろうな。そんな事より球蹴りでもしといた方が楽しいだろう。

 

「『シン』を倒すのが先決……もっともなご意見だ。勿論、我々は既にそれを成すに足る戦力を保有して居ます。

ですが……今は退治への万全を期して、信頼できる戦力を出来るだけ増やして置きたいという準備期間でもあるのです。

そこで、ユウナ殿御一行には是非御力をお貸しいただければと思いまして……。

デリング殿と愛し合う貴女以上に、信頼に足る者はおりませんから」

 

お前さっきから一人で一方的に決めつけて喋りすぎなんだよ。

だから友達少ないんだろコミュ障がよぉ……。

 

「そうだな……お前(ティーダ)の言う通りだ。耳触りが良すぎても、裏に何があるか分からん。それに……召喚士は政治の道具では無い」

 

そこにアーロンおじさんが黙っていられず、ティーダの肩をポンポンと叩きながら口を挟んでくる。

そうだそうだ、もっと言ってくれ……。俺たちは政治の道具じゃ無い、人間だ。

 

「おや、アーロン殿。召喚士が政治に関わるのは反対ですか?」

 

「俺は(まつりごと)は好かん。あまり良い思い出が無いのでな……」

 

元僧兵だった彼が言うその言葉には説得力がある。

思う所が強いのか、そのままアーロンの言葉は続いた。

 

「退治の為だけではあるまい。『シン』の為に万全を期して蓄えた戦力は『シン』討伐後にも寺院の為に存分に有効利用するという算段だろう。……気に入らんな」

 

「戦力のその後の事は、そちらの彼が言うように『シン』を倒してから考えるのがよろしいかと」

 

不敵に笑うシーモア老師殿は、皮肉を込めてティーダの言葉を引用して言い返した。

本当に協力して貰いたいと思っているのか、甚だ疑問な態度である。

 

「ふん……若い者から揚げ足を取る事だけには長けているらしいな」

 

揚げ足取りだけなら良かったんだけどね。こいつ口だけじゃなくて普通に行動力あるし他の所も有能だから手に負えない。

 

「そういう貴方こそ、私のような若輩者から揚げ足取りをするのがお好きな様子……。しかし、()えて言わせて貰いますが、無責任ではありませんか?

アーロン殿は政治にあまり関わりたく無いと仰られましたが、それは若い者達を率いていく年長者としての責任の放棄でしか無い……。伝説のガードともあろうお方が、何故そんなに未来に対して無責任なのです? それは貴方が死人だから──でしょうか?」

 

「…………」

 

グアド族は異界の気配に敏感だ。

種族特性として幻光虫を操る能力に長けており、それがアーロンの現状を看破した。

相手の気持ちや立場を蔑ろにして、ズケズケと踏み込みすぎたシーモアの言葉に場が静まり返る。

 

あーあ、シーモアがコミュ障すぎてヤクザのおっさんとの言い争いに発展したけど、僕しーらないっと。

あいつらの事は気にしないで良いから、こっちはこっちでイチャイチャしようねユウナちゃん。

 

バッドコミュニケーションもここまで来ると笑えてくるよ。

差別を解消したいとか言う前に、他人の心を少しは理解して会話した方がいいんじゃないかな。

まあこの男は理解した上で逆撫でしている可能性が高いから、救いようが無いが……。

 

 

しかしそんな男のネチネチした嫌がらせで、死人である事を暴露されたアーロンを庇おうと、ワッカやティーダが身を乗り出してくる。

 

「あ、アーロンさんが死んでるって、そんな訳……。見ろ! 今もこうしてピンピンしてるじゃねぇか!」

「おい、アーロン。舐められたままで良いのかよ。なんとか言い返せって」

 

「……俺が死人なのは事実だ。そして……俺からも言わせて貰おう。何故死人が表舞台に立っている? それはエボンの教えに反する筈だが?」

 

ついに刀に手をかけるアーロン。

その質問は先程まで火花を散らしながら会話していたシーモアではなく、ユウナレスカの方に向いていた。

当然だろう。

何せ……過去にアーロンを殺して死人に追い込んだのは、この女幽霊その人なのだから……。

 

 

が、しかし……殺意を向けられている女は、彼に興味が無いという風に、感情の起伏が感じられない声で諭す。

 

「寺院の教えは少し前に見直されました。今は許可を得る事で死人の存在を認めるようになったのですよ? ご存じありませんでしたか?」

 

「え、アーロンさん知らなかったんっすか!? ちょっと前にユウナレスカ様が死人になってもスピラを守って下さってたのが分かって、教えを見直そうって話で持ちきりになってたじゃ無いっすか!」

 

「…………生憎、俺はその時期は色々と忙しくてな。教えの事を気にする余裕も無かった」

 

あ、おっさんが意気揚々と古い知識をソースに話をして、時代遅れな事がバレちゃう恥ずかしいやつだ。

悲しい場面を見てしまった……。

ワッカが悪気なく追い討ちをかけているのが惨い。

 

擁護させてもらうならば、その時、彼は多分夢のザナルカンドでティーダの面倒を見てたから、知らなかったのは仕方がない……。

そんな居た堪れない現場を、先程まで敵だったシーモアがフォローする。

 

「ワッカ殿の言う通り、今では死人の存在も認可されるようになったので、アーロン殿も己の状況に後ろめたく思う必要も隠す必要も有りません。ご安心下さい」

 

「俺が死人な事が認められるか等どうでも良い。寺院の都合の良い様に教えを変えるのが信用ならんと言っている」

 

「ふふっこれは手厳しい。アーロン殿はなかなか強情ですね」

 

「アーロン頑固だもんなぁ。でも死んだって言ってもそうは見えないぐらいピンピンしてるし、こうして認めて貰えてるなら問題なくないか?」

 

ティーダ君、僕はアーロンさんも良い事言ってると思うけどね。

口に出して老師殿に抵抗出来ない僕からしたら、目の前でこんな啖呵切れるなんて凄いと思うよほんと……。

 

 

「俺が頑固なのはこの際関係無い、結局のところ何処へ向かうのか決めるのはユウナだ。ガードである俺たちはそれに付き従うのが仕事だ」

 

そう言ってサングラスのおじさんはユウナに行く先を任せて、不機嫌そうに会話から降りた。

 

「私!? で、ですよね……。その、今はまだ良く分かりませんが、凄く良い事をしようとしてるみたいだし、シーモアさん達のお話もこのスピラの為になると思ったので……。私はデリングさん達に協力したいなと思いました。みんなも、良いかな?」

 

他人の為になるからって、夫を怪しげな反対運動に捧げる事を推奨するという同意書にサインしないでほしい。

ユウナちゃんの純粋無垢な所を利用するシーモア許すまじ……。

 

「俺達兄弟は勿論デリング様に協力する事には大賛成だ!」

「ああ、なんつったって元々デリング様のガード志望だったしな」

 

即答する二人の一般ビサイド民は依然として僕の事を慕っているらしい。

君らが同性愛者じゃない事を願うよ。

 

「キマリはユウナの行く道なら何処へでも着いて行く。それだけだ」

 

やはりキマリが一番マシだ。

ここまで出しゃばる事なく、無言を貫いて背景と化していた事も素晴らしい。

ユウナを守ってくれそうなキマリは通す。お前はもうフリーパスだ。

今日は特別に幾らでも通って良いぞ。

 

 

 

全員がついて行っても良いと言う中で、一人だけ難色を示す青年がいた。

 

「俺は……正直旅に付いて来たのもブリッツボールの大会に出る為で、ガードになったのもたまたま会ったアーロンに巻き込まれて無理矢理って感じだから、まだ色々と分かんないんだよな。別に反対って訳じゃないんだけどさぁ〜……」

 

そう言うと、ジロジロと上から下まで僕の事を訝しげな目線で見てくるティーダ。

ダブルユウナに手を組まれ、ルールーとパインを控えさせて中心に位置するこの状態は、まさにハーレムの一言だろう。

そんな姿にイラッと来てしまったのか、彼は素直に僕との同行を決めかねるみたいだった。

 

「正直、ユウナと結婚するってのにチャラチャラ女侍らせやがって、いけ好かねー……てのが本音」

 

「おいおい、このお方は俺の尊敬するデリング様だぞ、優勝者インタビューで散々俺が素晴らしい所について語り尽くしてただろうが……聞いてなかったのかよ」

「デリング様は素晴らしいお方だぜ? そりゃ女の二、三人はついて来て当然だろ。お前も信じて見ないか? “デリング様”を」

 

ブリッツボール兄弟がティーダを嗜めた。

いや、対して深い絡みも無いのに、僕を狂信しすぎてる君達の方がおかしいと思うけど……。

 

 

「でも、ユウナはどうなんだよ。女の子達に囲まれていけ好かない感じだけど……それは良いのかよ」

 

そんなティーダの僕に対するフワッとした敵視に反応した奴が居た。

我が親友(笑)のシーモア=グアド老師である……。

またお前か。

 

和やかに場を見守っていた筈の彼は、急に表情を険しくしながら、ティーダの前に立ってその高い背丈で彼を見下ろしながらガンを飛ばした。

 

「いけ好かないというのは此方の台詞だ。ジェクトの息子……。貴様は夢、所詮幻の存在が私の友を愚弄するとは……身の程を弁えた方がいい」

 

「なんだよそれ、俺が幻の存在……? どういう意味だよ。なんかのスラングか? 俺、馬鹿にされてる? 」

 

「ほう……自覚していないのならば教えてやろう。お前は1000年前のザナルカンドから来たとインタビューで言って居たらしいが……それは本当か?」

 

「本当だよ、どうせ信じて貰えないだろうけどな」

 

「そのザナルカンドとは恐らく召喚された幻想の都市。言わばお前は祈り子が見ている夢の存在だ」

 

「……はぁ? いきなり何言ってんだコイツ……てかなんで俺がアイツの息子だって知ってんだよ」

 

なんか……シーモアがティーダに全部バラして、入念に原作を粉微塵にしていた……。

嘘……だろ……。

 

「ジェクト殿はお前のために映像スフィアを幾つも残していた。その中にあった名前に該当するザナルカンドから来た小僧……。これで繋がりが解らぬ程、私は愚鈍ではない。いちいち聞かなければ理解すら出来ない貴様とは、脳味噌の出来が違うのだ」

 

「なんだとぉ〜!」

 

「お前のような頭の足りない小僧は、田舎の弱小チームで球蹴りでもしていた方が身の丈に合っているだろう」

 

「言われなくてもそうするよーっだ!」

 

 

既に犬猿の仲といった風な彼らを尻目にワッカが反応を示す。

 

「あれ? もしかして俺達のチーム、シーモア老師にdisられたか?」

「ティーダ、お前もしかして優勝したのに、オーラカをまだ田舎の弱小チームだと思ってるのか?」

 

ブリッツボール兄弟が馬鹿な頭を必死に働かせて、再び違和感に気付きそうになったその時、シーモアも何かに気づきかけていた。

 

「いや、しかし……なるほど……デリング殿の作戦に当てはめれば……。『シン』になっているジェクトの息子ならば、夢の存在だとしても連れ歩く価値はある……か。……喜べ小僧、貴様の弱小チーム残留は取り消しだ。特別に私達の旅に連れて行ってやろう」

 

「誰もそんなこと頼んでないって……。急に掌返してどうしたんだよコイツ……」

 

「待て」

 

その言葉を聞いたアーロンが前に出てくる。

もうこの場は何が何だかめちゃくちゃで、全てを理解している者以外は完全に蚊帳の外だった。

 

「なんだよアーロン」

「終わるまで黙っていてやろうと思ったが、まさかこんな所で余計な話を聞かされる羽目になるとはな……」

 

アーロンは苦々しい顔をしながらシーモアをチラ見した後、大きな溜め息を吐き、渋々といった風に語り出した。

 

「『シン』はジェクトだ……。ジェクトはお前(ティーダ)に止めて欲しがっている。それはユウナでもデリング“様”でも無い、無論シーモア老師殿でも……他の誰でも無い、お前にな」

 

あげつらうように僕を様付けで呼んだアーロンは、ユウナについていくとは言ってもまだ僕らの事を真に認めている訳じゃ無いらしい。

 

「はぁ? さっきっから『シン』は親父だって言うけど全然意味わかんねー。それに俺はあんなクソ親父の事なんてしらねーっつうの!」

 

「許せ、大会を邪魔するのもどうかと思った。言わずに居た理由はそれだけだ、詳しい話は後でする」

 

原作主人公にとって、アーロンは肝心な事を言ってくれない存在のようだ。

口数が多いのか少ないのかわからんおっさん……こいつもまたコミュ症か……。

 

「うが〜……わけわかんねぇ〜」

 

原作主人公は情報量の多さに処理が追いつかず、頭を抱えて項垂れている。

 

ティーダ君、キミもコミュ症に付き纏われてるのかい?

奇遇だね、僕もコミュ症に付き纏われているんだ。

良ければ僕の青ゴキブリポケモンと、君のヤクザポケモンを通信交換しないか?

 

 

結局……混沌としていた場は、ユウナに付いていって僕等の仲間になるという形に落ち着いたらしい。

こうして、当初想定していた予想図など微塵も無くなった原作パーティとの合流が行われたのである。

 

 

 

「なんかよくわかんねーけど、ユウナレスカ様とシーモア老師とデリング様が仲間になってくれんだろ? こんなチャンス滅多に無いぜ……なぁチャップ!」

「ああ、ワッカの言う通りだ! この人達が居たら百人力だぜ……!」

 

因みにここまで、僕は全くと言って良いほど口出ししていない。

だってもう彼ら男連中が何しようが、殆ど興味無いから。

とりあえずユウナと早くケコーンしたい。それだけだった。

 

おかげさまでシーモアお得意の暴露を阻止出来ず、オデの原作知識活用プランはもうぼろぼろだ。

これでどうやって『シン』を倒せば────。

 

…………ん〜? むしろ倒せない方が難しいか……?

 

ティーダが居て、改心(?)したシーモアが付いてきて、ユウナレスカが仲間になって。

おまけに寺院からの全面的な支援もある。

 

これもう誰でも『シン』を倒せるだろ……永遠のナギ節到来確定だこんなもん……。

 

 





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