【完結】転生者が権力とかでFF8とFF10のヒロインを食い散らかした挙句、最終的にスピラを救う話。 作:速射弾
飛空艇に揺られて……と言っても、空を飛んでいるとは思えない程に機内が揺れる事無く飛び続けている船の中。
流れて行く空の景色を見ながら、次の目的地に辿り着くまでの間、俺達は取り止めもない話をしていた。
「そういえばルールーはさぁ、自分が死んで『シン』になっても良いって覚悟だったんだよな? もし俺がスピラに来て無かったらやばかったんじゃないの?」
自分が何時か、それも多分かなり近い将来に消えるかもしれないなんて、当然だけどザナルカンドで過ごしていた頃は真面目に考えた事が無かった。
ちょっと答えづらい話題かもしれないけど、ルールーとこんな話を出来るようになったのは理由がある。
……死って未来を覚悟していた人はどんな事を考えているのか気になって……それについて色々話を聞いてみたからだ。
結局分かった事は、彼女は愛する人達の幸せを願っていたという、当たり前っちゃ当たり前の心境。
でもそれは、親しい家族同然とも呼べる仲の相手がこの世界に居ない俺にとって……正直、自分に合う答えにはならなかった。
恋人でも作ればそんな気持ちになれるのかなぁ……。なんて思う。
「ええ、だからこんな事言うのもなんだけど……
「ん〜……まあ、正直複雑な気分ッスね。現実味が無いってのが本心」
正直、まだ自分が消えるとか実感が湧かない。
いざその時になったらどう思うのかなとか、そんな想像すらも出来なかった。
「アンタが『シン』に関わりたく無いって言うなら──それでも良いわよ。予定通り『シン』が好きそうな物を使って大人しくしてから飛空艇で突撃してみるか、私が究極召喚になってどうにかするから」
「だとしたらその場合、最終的にルールーが『シン』になるって事だよな……。
あんまり日常会話でする内容の話じゃなかったかな。
でも少し気になる話題でもあったのだ。
親父の好きな物ってなんだよ……とか。
デリングが言うには、そこら辺をみんなで話し合って探るのは『シン』を上手く足止めする為に考えて損は無い事らしいから。
「そうね。それなら『シン』に私とデリング様としてる映像を流してくれれば──大人しくなってあげられるかも……。その時の為にスフィアでキチンと映像も撮ってあるのよ?」
「ま、マジっスか……。そんな物まで用意してるなんて、本当に本気なんだな……」
冗談で言ってみただけなのに……。
これって俺が覚悟足らないとか、そういうのとはまた違う気がする……。
デリングの取り巻く環境に影響されているせいか、この手の軽い猥談が行われる空気間は割と自然な事だった。
「それならルールーはユウナんの事も大好きだから、ユウナんが外ですれば良いかもよ」
話を聞いていたらしいリュックが、アホらしすぎる冗談を言いながら話に入ってくる。
ちょっと恥ずかしい話題だったけど、彼女は気にして無いみたいだ……そんなもんか。
意外と下ネタとか行けるんだ。
「でも、それって多分ルールーよりデリングとかの方が効きそうだけどな。あいつ、見るからにユウナの事大好きだし。
もしもデリングが『シン』になったらユウナを見せれば一発……って冗談は流石に不謹慎すぎるッスね……」
デリングはスピラだけじゃなく、ユウナを助ける為にずっと頑張って来たらしい。
彼女とか結婚とか考える遥か昔から、命を守る為に……。
それは素直に尊敬出来ると思ったけど、俺には真似出来ないし真似しようとも思わない。
何と言えば良いのかな。ちょっと徳というか
ユウナも似たような感じだ。
スピラのみんなを少しでも笑顔にしたい……その気持ちが理解出来ない訳じゃない。
けど、自分の命をかけてまでやろうなんて俺には思えないだろう。……って言っちゃ失礼かもしれないけど、実際そうだから困る。
むしろユウナが死ぬ事で悲しむ人の方が多いんじゃ無いかなって思うし……俺だってそのうちの一人だ。
俺が居なくなって悲しんでくれる人……この世界にどれだけ居るんだろ。
まだこのスピラの良い所も悪い所も全然知らないし、仲が良い人もオーラカのみんなと、ごく一部は例外だけど……この船に乗ってる奴らだけだ。
だから守りたいユウナの気持ちも、俺が消えて悲しんでくれる人がどれだけ居るのかも、正直全然実感が無い。
「おやおや、何か忘れているのではありませんか?」
「げ、シーモア……」
そのごく一部の、仲があんまり良くない例外がやってきた。
こいつは折角仲良くしようと思っても、一々俺を小馬鹿にしてくるからどうしようもないんだよな……。
俺と似たような命賭けた状況なのに、プライド高いっつーかなんつーか。
こうして見ると、死ぬ可能性を受け入れている人なんて、底抜けに良い奴か、頭のネジが外れた奴か……。
どちらにせよ、あんまり参考にならなそうな奴ばっかりだ。
「デリング殿はたしかにユウナ殿の事がお好きですが、此処にも深い絆に結ばれた“親友”が居るのをお忘れなく。
私が出向けばそれだけで『シン』となったデリング殿は大人しくなるでしょう」
「シーモアってデリングの事好きすぎると思ってたけどさ、まさか……デリングとシーモアは男もイケる口だったのかよ……」
俺達のくだらない会話、しっかりと聞いてたのか……。
横にデリングも居るし……。なんか恥ずいな。
「僕は女一筋です」
そう言って首を振ったデリングを揶揄うように、アーロンが話に入ってくる。
「ふっ……この男の性欲ならありえるな。狙われないように気をつけておけよ」
「マジっスか!? 考えたくもねー……」
大勢の婚約者の相手をちゃんとこなしているらしいデリングなら、あながちあり得なくも無さそうなのが怖かった。
そんな酷い話で盛り上がっていると、敬虔なデリング様信者のワッカが文句を言ってくる。
「おいおい、冗談でもあまり失礼な事を言うなよ……」
「アッハ、そういうワッカはデリングに狙われても満更じゃ無さそうだよな〜?」
半笑いで揶揄ったつもりだったが、ワッカは堂々と真面目な表情で腕を組みながら宣言した。
「
「うへぁ……やめてくれよワッカ。洒落になってないって」
面白いけど、そんな真顔で言われたら笑って良いのか困る。
「変な風に勘違いすんなよ……? 洒落じゃねぇ! 俺は同性愛者じゃねぇが、それぐらいデリング様を尊敬してるって事だ、嘘は言ってねぇ!」
「ふっ、貴方に手を出すぐらいなら、とっくにこの私がお誘いを受けている筈です。考えるだけ無駄という物、あまりそのような思いの丈を公言する物ではありませんよ。心の中にひっそりと秘めておきなさい」
何時もワッカにタジタジにされてるシーモアが、ここぞとばかりに反撃していた。
「シーモア老師がそう言うなら……って違うんですよっ! 俺はホモじゃないんだってぇ〜」
「アッハハ、ワッカはやたら俺に構ってくるな〜って思ってたけどそう言う事だったのかよ。こえ〜……」
ワッカってこういう時、揶揄うと面白れーんだよな。
「お前なぁ……デリング様もなんか言ってやって下さいよ!」
「君達……同性愛者を蔑むのは良くないよ、趣味趣向は人それぞれだ。どのような物であれ他者に危害を加えないなら、寛容になってあげるのが情けじゃないかな」
「うわ〜、真正面の正論が飛んできた……」
ワッカはそれを聞いて得意げになる。
「ほらな、デリング様の仰られる通りだ。他人の事をあーだのこーだのと、そういう偏見や良くない物という決めつけが差別意識を生むんだぞ。肝に銘じとけよ?」
「でも……ワッカに関しては元々僕も怪しいとは思ってたんだよね……」
「ええっ! そりゃ無いっすよぉ〜」
少し言いづらいという感じで、デリングは言う。
それを聞いて情けなく凹んだワッカの姿を見て、みんなが笑うのだった。
こういうムードメーカーとして、ワッカはとっても優秀だ。
正直その点はブリッツの才能があるから、まだ引退しなくて良いと思う。
「そういえばアーロンはどうなんだよ、結婚とかしてないよな? 彼女とか居んの?」
今までアーロンにあんまりこういう話題を振った事がなかったけど、話の流れで何気なく聞いてみた。
正直、このおっさんの女性関係なんて、今までは知りたいとも思わなかった。
でも、俺がこうして過ごして居られる時間が、後どれだけあるのか分からない。
だからそれまでの間、せめて関わってきた人の事ぐらいは知りたいな、なんて思ったんだ。
それで聞いてみたんだけど……。
「…………俺は童貞だ」
「ははっ、なんだよそれ……笑えねーっつうの!」
えっ……ま、マジかよ……。
もしかして聞いちゃダメな事だったか……? 余計な詮索しちゃったか?
「寺院に居る頃、そこの奴らみたいなのが幅を利かせていたお陰で、裏で性に纏わる接待や縁談が横行していてな……全て断って居たらこの様だ」
アーロンがデリングとシーモアをチラ見して語る。
やたらと政治に関わりたく無いって言ってたのはそういう事だったのか。
寺院って結構中身は真っ黒なのかも……とか思った。
まあ、シーモアみたいな奴がお偉いさんなら特に意外でもない。
その腹黒い奴は、たった今言われたアーロンの言葉に何やら言い訳をしていた。
「これは手厳しい……。ですがそれらが必ずしも悪という訳では無いのですよ? 当然接待役の方に補助金は出ますし、その接待や縁談のお陰でお付き合いを始められたり、子供が出来て婚姻し、次代を残すきっかけとなる事だってあるのです。言わば簡易的なお見合いのような物……。それがなければ今頃スピラの人口はもっと少なかったでしょうね」
「……だとしても、俺は好かん。それだけだ」
「意外と純朴でいらっしゃる。ですがその姿勢を貫いたせいで貴方は出世街道を外れたと、キノック殿からはお聞きしましたよ?」
「あいつ……余計な事をベラベラと……。ふん……そのおかげでブラスカのガードになれたのだ。童貞も悪くないさ……」
「なーんか、負け惜しみくさいっすね」
アーロンの弱点見つけたみたいで、少し嬉しい。
結構長い付き合いだけど、こういう一面あんまり見た事なかったよな……そういや。
「ファンの女を食いまくっていたお前に言われても、ヤリチンの戯言にしか聞こえんな」
「う゛……。いや、違うんだって。可愛いファンの娘が居たらちょっとサービスしたくなって、そしたら連絡先渡される事とかあるしさ……。遊びまくってた訳じゃねーッスよ。ちょっと一晩だけ相手して貰った事が何度かあるだけで、まだ責任とか取れる年齢じゃなかったし……ちゃんと避妊はしてたから……」
俺はアーロンに痛い所を突かれてボロが出る。
ザナルカンドに居た時の事、よーく知ってんだもんなぁ……。
でもこっちはプロのスポーツ選手だぞ?
周りのチームメイトの奴らに比べたら、全然おとなしい遊び方だったと思うんだけどなぁ……。
そんな俺を非難するようにワッカはアーロンを誉める。
「さっすがアーロンさんだ……。女にうつつをぬかしてないでガード一筋。俺もブリッツボールに対するストイックさはこうでありたいもんだぜ」
「万年最下位でモテないってだけでしょう? 相変わらず都合良く目を逸らすのだけは上手いんだから……」
「待ってくれよルー! 俺達だってファンの一人や二人摘み食い出来るチャンスはあったんだっ……。でもよぉ〜」
ブリッツボールのプロって強さと人気は必ずしも関係無かったりもするから、意外と弱小チームの奴が遊びまくってるって事もある。
実は弱小なのはそれが原因ってパターン。
でも遊んで無くて万年一回戦落ちってんなら、本当にオーラカって奇跡的に弱いチームだったんだな……。
そんなモテなかった訳じゃ無いと言い訳するワッカに対して、不思議そうにルールーは言う。
「ならその時、彼女でも作れば良かったじゃない。アンタもチャップもそろそろいい歳でしょ?」
「いや〜……それが今は言えない深〜い理由があるんだな〜……。そういやルーはデリング様の彼女って訳じゃねぇんだろ? なら俺の事とやかく言えねぇじゃねぇか」
「お生憎様、私は死ぬまでデリング様の情婦で良いと思ってるわ。彼の隣に居られればそれで良いもの……」
ここまで堂々とはっきりと言い切るのもルールーらしいというか。
やっぱデリングの事好きすぎるだろ。
「かーっ……俺がデリング様相手じゃ何も言えねぇって分かってるからズルいよなぁ……ハァ……」
そういえば何時もワッカと一緒に居るチャップの元気が無い。
それどころかワッカもさっきまでは騒がしかったのに、テンションが下がっていた。
「なーんか……ワッカ達、すっごく落ち込んでるッスね。失恋でもしたんスか?」
「ああ、俺じゃなくてチャップがな……」
「はは〜ん……だーからさっきからチャップ何も喋んないし、テンションが低いんだ。……ま、生きてればそのうち良い事あるって!」
やべ……もしかして俺は死ぬからってお前らは良いよな……みたいな嫌味に聞こえたりしたかな?
そういうつもりじゃなかったんだけどな……。
なんて考えながらも、なんとなくさっきワッカがルールーに言えなかった“訳”ってのが分かってきた。
「チャップさん元気無いの? ほら、元気出して。笑顔の練習」
何時の間にかデリングの隣にいるユウナの言う通り……元気が無い時は笑えば良い。
「ユウナちゃん……そうだな、分かってた事だもんな……。笑顔の練習すっか……ワッハッハッハ!ワッハッハッハ!」
「おおうっ……! そうだよな……俺も付き合うぜチャップ、ワッハッハッハ!ワッハッハッハ!」
馬鹿みたいに笑ってスッキリするのも、たまには悪くないかもしれない。
「……俺も付き合うッス! ワッハハッハ! ワッハハッハ!」
今はみんなに消えるとかで落ち込んでる姿を見せたく無い。
そんなの、俺が想像するブリッツのエースのする事じゃないから。
だから、笑顔の練習で吹き飛ばすんだ。
「じゃあそろそろ私達はデリング様と一緒に中に戻るから、しばらくの間、私達の部屋には入ってこないでね。行くわよユウナ、リュック、パイン」
「う、うん……それじゃあチャップさんもワッカさんも私達はこの辺で……」
「じゃーねー」
「それじゃ、私らは行くね」
なんかこう……こっちがシリアスしてんのに複雑な気分だ。
出ていった女性陣達の背を見送ってから、どうしても想像してしまう事について口にする。
「あれ、絶対そういう事だよな……? これから複数人でやんだよな?」
そんな俺の下世話な疑問はワッカ達に無視された。
「そんな事より、俺たちは笑顔の練習の続きだ! ワッハッハッハ!」
「あー……ワッカ、笑ってんのに泣いてるみたいだぞ」
「うるせぇ、これはあれだ!……目にゴミが入っただけだ!」
ワッカもほんとはルールーの事、好きだったんだな……。
「我が友が羨ましいのなら、ベベルに着いた後になりますが……私が情婦を斡旋して差し上げましょうか?」
「シーモア、お前そんな事して良いのかよ……」
「ええ、勿論、何の問題もありません。とはいえ──余計なお世話でしたら断ってください」
「シーモア老師……お言葉に甘えても良いっすか……?」
「お、俺もっ」
「んー、んじゃ俺もついでに」
ワッカとチャップが手を上げて立候補したから、俺もついでに乗っかる事にした。
死ぬ前に女の子とエッチすら出来ないとか……。何の為に生きてたか分かんねーもんな……。
エボンでエロい接待があるってのも
多分……死んでいく僧兵とか討伐隊の人達だって、俺と同じ気持ちになるんだろう。
そんな時、下手に未練を残すぐらいなら……って考えるのは当然だと思う。
お仕事でやってくれる女の子の斡旋も、きっとスピラに欠かせない大事な物の筈だ。
強要するとかそういう事じゃなければ、汚れ仕事っていう印象だけで接待を否定するのも違うのかもな……なんて思った。
「やれやれ、若者の乱れた性の話は聞くに耐えん」
「アーロンは乱れなさすぎだっつーの」
まぁ、アーロンは違うみたいだったけど……。
「キマリも必要ない。自分の女は、自分で見つけて力で屈服させる。それがロンゾのやり方だ」
…………え゛?
もしかして、キマリの種族って……無理矢理すんのが当たり前なのか……?
◆
それは、ベベルで保管されている親父のスフィアを見ている時の事だった。
あのクソ親父の遺したスフィアは予想外の多さで、それを全部見るには結構な時間が必要になっていた。
アーロンの思い出話も聞きつつ、その映像を見ていくのは結構大変で、何日もここに滞在する事に決まり、しばらくは各々自由にぶらつきながら過ごす事になったんだ。
『これが俺様の凄技だ! ブラスカもアーロンも見とけよ! おりゃぁ!!』
『おいっ! 大丈夫かジェクト!?』
映像スフィアの再生機のモニターに映し出されるクソ親父と、若い頃のアーロンの姿。それとユウナの父親だっていう召喚士のブラスカって人。
再生された親父の姿も声もザナルカンドで良くテレビ番組が特集してたから、そんなに懐かしいとかは思わなかった。
失踪した原因はどうだとか、過去の偉そうなインタビューだとかを繰り返しテレビ局が流すから、街中でも大型モニターなんかで放送されていて嫌でも目に入るし、その声もウンザリするほど耳に入ってきた。
あんな奴でも大人気の選手だったから、居なくなった後でもみんな注目してたんだ。
『へへっ……どんなもんだ! こんな雑魚モンスターの攻撃なんて俺様には全然効かねぇよ! 名付けて、ジェクト様ガードだ!』
『何が凄技だっ……ただ力任せに弾き返しただけではないか……! それにブラスカでは無い、ブラスカ“様”と呼べ!』
『堅物のオススメする堅っ苦しい呼び方は、面倒くせぇから辞めとくぜ』
『何だと……? 貴様には俺が直々に召喚士様に対する敬意を教えてやる……!』
『アーロンもジェクトも程々にしないか……』
言い争う二人を止めるユウナの親父さん。
俺の親父はなんでこんな言い方しか出来ないんだろう。
そういう他人の心を平気で傷付けて、挙句に何とも思ってなさそうな所も嫌いだった。
過去のアーロンがキレるのも当然だ。
『安心して下さいブラスカ様、殺しはしません。ただ少しお灸を据えてやるだけです』
『お、俺様とやろうってか? 丁度良いぜ、俺様も特別にジェクト様ガードの凄さを教えてやる、ファンにだって俺様の技は易々とは教えてやんねーんだぜ? 何ならこの凄技を好きに盗んだって構わねぇ。まぁ……わざわざ教えてやっても再現出来る奴が居ねぇから“凄技”なんだけどよ、ハハハ!』
売り言葉に買い言葉というのがこれほどはっきりと見られる機会も中々無い。
なんだか二人とも子供みたいだ。
しかし、その言い争いは子供の喧嘩でも二人は大人だった。
大の大人の男二人は、武器を抜いて大立ち回りをし始める。
身体が衰えたから引退するんじゃないかとか言われてた割に、親父は元気そうだった。
『うおおお!』
『おりゃあああ!』
大人気ないけどその身体は立派な大人だ。
二人が本気で暴れ出したら、誰も止められないだろうなと思わせる迫力がある。
それを見て焦ったユウナの親父は、心配しながら回復魔法を唱えている。
『二人共っ! 大丈夫かっ!』
『はぁ……はぁ……、な、中々……やるじゃねぇか、アーロン……その馬鹿でかい刀は重すぎるぜ……。はぁ……はぁ……ズルくねぇか?』
『何を言う……ハァハァ……使っている得物なら、誰がどう見ても、貴様の鉄板みたいな剣の方が……デカいでは無いか……! ハァハァ……』
息を切らしながら、地面に大の字で寝転がる二人。
そこで、このスフィアに記録されている映像は終わった。
「アーロンにもワッカとかルールーみたいに、召喚士に一途な時代があったんだな」
「……あの頃は、寺院の教えに従順……とまではいかないが、究極召喚の真実を知らずに過ごしていたからな……。とはいえ、今も召喚士に対する敬意が無い訳では無い。彼等の想いが本物だという事には変わりないのでな」
「へー、だからデリングやシーモアにあんまり口煩く言わないんだ」
「そうだな……。ブラスカと辿る道筋は違えど、それでも覚悟を持っている人間が召喚士だ。俺に何か言われずとも既に理解や覚悟はしているだろう」
根っこは昔と変わって無いって事なのか。
この頃の熱血アーロンが、今みたいな捻くれたおっさんになるまで色々あったんだろうな……。
「親父とは仲悪そうだったけどさ、それが、どうして約束守ってやろうとか思うようになった訳?」
「旅をする内に、あいつの良い所も悪い所も見えて来る。ジェクトの言う通りこの頃の俺は堅物だったが、それでも他人を認めない程強情という訳でもなかった」
「じゃあ、あのクソ親父を認めるきっかけってのがあったのか……」
どんな事だろう。想像がつかなかった。
俺にとって親父はスーパースターでも凄いブリッツの選手でもなく、嫌味な事を言ってくる嫌いな相手。
突然居なくなって、母親を悲しませて自殺させた碌でなしだ。
結局、それは勘違いでこっちの世界に来てしまっただけだって分かったけど……。
それでも、何処か
別に親父が実はどうだったなんて興味も無いと思ってたし、今更すぎて考える気にもならなかったけど、
スピラの為に死んだって聞いて、それが今の俺のヒントになればと思って色々残ってる映像を見てみた。
そしたら、案外記憶に残ってるより悪い奴じゃ無かった。
勘に触るところはあるし、乱暴者な所だってあるけど、
だからって悪い人間じゃなくて、少しぶっきらぼうで他人と接するのは下手くそなだけだったんだな、ってのもなんか分かって来る。
何なら、俺が大好きだった母親よりも、俺の事を気にかけてくれていた。
それからだ。
実際に親父がどんな奴だったのかを、詳しくアーロンに聞くようになったのは。
アーロンも俺みたいに最初は嫌っていたなら、そうじゃなくなったきっかけは正直とても興味がある。
「俺がジェクトを見直す様になった切欠か。どうだろうな……正直これといって明確な理由は無いのかもしれん。
一緒に旅をして、モンスターと戦って、飯を食べて、本当に些細で当たり前の事だったがそれが楽しかったのもあるだろう。
後は……ザナルカンドに帰る事を夢見ていたあいつが、それを諦めると決める所を見たから……かもな」
アーロンは居心地が悪そうに立ち上がって部屋を出ようとする。
俺はそれを少し呼び止めて気になる続きを催促した。
「親父は……何で帰るのを諦めたんだ?」
「諦めた理由は……幾ら旅をしても帰れる見込みが無く、情報も全くといって良いほど集まらなかったからだろう。だが、帰る事を辞めた瞬間は別にある。それは────自らが究極召喚になると決めた時だ」
そう言って、アーロンは俺を部屋に残して出て行く。
それは答えになっているようで、俺が気持ちの折り合いをつける為には後一歩足りなくて……。
結局は、何にも答えが出ないままだった。
◆
それは突然の事だった。
デリングが誘拐されたという話が舞い込んできたのだ。
少し目を離した隙を何者かに狙われた……らしい。
「まさか……アルベド族の仕業か?」
疑るワッカにリュックが反論する。
「それは無いって! アルベドのみんなには、オヤジからデリりんの事は誘拐するな〜って通達されてるもん」
「デリング様以外の召喚士は誘拐しても良いって事かよ!?」
「誘拐しないと死んじゃうでしょ〜! なぁ〜に? このリュックちゃんの言う事がまだ信じられないっての? まだ筋肉だけじゃなく頭までカタカタなの?」
アルベドは召喚士が死ぬ事に反対しているから誘拐してるんだっけ。
誰かを助けるために人攫いするなんて律儀な人たちだなって思った。
俺も消えるってアルベド族にバレたら誘拐されたりとかすんのかな……。
まぁ夢って話が本当なら、召喚士と違って何処に居ても消える事には変わりない訳だから、攫われたらしても関係ないんだろうけど。
「言い争いをしてても仕方ないでしょう。今は彼の無事を祈って────」
「何だよルー! お前は悔しく無いってのかよ!? そんなんじゃガードとし……て…………」
「あ……あはは。ルールーもこう言ってるし、争いは良くないよね。うんうん」
美人が凄むと怖い。
「……ルールーの顔、凄かったッスね」
「悔しく無い筈が無いだろう。ガードとして一番不甲斐無さ感じているのはルールーやもしれんな……」
「そうだよな……すまんルー。アーロンさんに言われてようやく気付いた」
ワッカはポカやらかす事が多いけど、こうして間違ったことは素直に謝ってくれるから気持ちの良い奴だ。
「しかし……ベベル宮や我々の警備をすり抜けてデリング殿を攫うとは……下手人が相当な手練れなのは間違いないでしょうね……」
シーモアの言う通りだった。
情けない事に、俺は全くデリングが誘拐されるなんて考えても居なかったんだ。
だってこの人数のガードに、エボン寺院の総本山だぞ? 普通はその情報だけで諦めるって。
「だよな。正直言ってさぁ〜、この人数の警護を出し抜くなんて無理だと思ってたな」
「みすみす友の失踪を許した私への当てつけか? しかし……今は返す言葉が無い故、甘んじてその批判を受け入れよう」
「違うって! お前の強さだけは信頼してるからそれを潜り抜けてきた相手が何者なのか、興味があったんだよ! おまけにユウナレスカまで出し抜くなんて普通じゃ無いだろ?……ってこれさっきお前が自分で言ってた事じゃねぇか!」
はぁ〜、ほんと何言っても皮肉みたいな言葉を返してくるシーモアとは剃りが合わね〜。
よくデリングはこんなのと親友やってられるよなぁ……。
「そういえば……ユウナレスカ様は……何処?」
「ユウナレスカ様は確か……本日はデリング殿の護衛として側に居た筈ですが……」
何時もデリングのスケジュールを管理しているシーモアが、ルールーのふとした疑問に答える。
「まさか……ユウナレスカ様まで!?」
「あの女がそう安易とやられるタマとは思えんが……」
アーロンや俺だけじゃない。
ここにいる全員が同じ疑問を感じていた。
ベベルに来るまで、何度か離陸して実力を確かめあった時に、ユウナレスカの凄さは理解していたからだ。
「あれは恐らく、我々の中でも最も力を保持する者と言っても過言では無いでしょう。それは究極召喚を持つ私ですらも安易と争おうとは思えない程だ……しかし、彼女に弱点があるとしたらどうでしょうか」
弱点なんて無いように思える。
しかし、リュックには心当たりがあったみたいだ。
「あ、わかった、弱点ってデリりんの事でしょ!」
「違います」
確かにユウナレスカはデリングの事が大好きなのは側から見ても良く分かった。
弱点というのは言えてる。だから人質に取られてそれで……なんて予想出来る事だけど、シーモアが言いたい事はそうじゃなかったらしい。
それに気づいたアーロンは話を進めた。
「ユウナレスカは死人だ……。その弱点といえば……」
「異界送り!」
「そうだ」
「流石はアーロンさん! でもよぉ、異界送りでユウナレスカ様を送ったなら……犯人は召喚士かエボンの僧とかって事になんのか?」
ユウナの答えに頷いたアーロンへと賞賛を贈るワッカ。
しかし褒められた当人は相変わらず渋面で、別の何かを危惧しているみたいだった。
「さてな、それは実際に確かめてみるまで分からん。まずは異界に行ってみるのが先決だ」
異界という言葉に反応したユウナが、顔を上げた。
「……そっか! 召された魂は異界に行けば会えるんだ! 会えなくてもユウナレスカ様の安否を確認できれば、デリングさんが無事かどうかもわかる筈……!」
「へーそんな場所があるのか」
この世界についてまだまだ詳しく知らない俺は、ただただ頷いて感心するしか無かった。
異界という場所は死んだ人間に会えるらしい。ただ……見えるのは死んだ人本人じゃなくて幻光虫の見せる幻影だという話だけど、死んで居ない人の事は見えないのだそうだ。
死んだ人の思い出に会えるなんて不思議な場所だなと思った。
俺が消えたら……ってこんな事ばっかり考えてる気がする。
でも俺は多分ただ死ぬ訳じゃなくて、元々夢だから、消えても異界で再会するとかも無理だったりするのかな……。
もしもそうだったら、まるで自分だけが仲間外れにされてるみたいで、あんまり良い気分じゃない。
そんな不安を吹き飛ばすように大声で言った。
「なら……決まりだな! 俺達はこれからその異界って場所に行く!」
「気は進まんが……仕方あるまい」
「ならば、この私の立場が役立つというわけですね」
「シーモア老師はグアドの族長ですものね」
「マジかよさっすがシーモア老師! 異界を管理してるグアド族の代表が居るなら、余計な手間すっ飛ばしてすぐに飛空艇で向かえるぜ!」
みんなが俺の言葉に賛成して、早速手がかりを探す為の行き先が決定して……最後にユウナが宣言した。
「私、デリングさんを取り戻します」
静かに、そして固く決意したその言葉は俺達に伝染していく。
ブリッツボールやってる時もこういう事は何度も経験した。
チームが一つにまとまる感覚っていうのかな……みんなの意識がゾーンに入って同じ方向を向く一体感。
好きな感覚だ。
この場所に居ていいんだ! って思えるから。
その時、デリング達の仲間になってから……ずっとこれまでの事。
どこか他人事みたいに思ってたんだなって自覚した。
ようやく実感が湧いたんだ。
俺、このパーティに参加して、初めてここに居て良いんだって心の底から思えた。
デリングは女にモテモテでいけ好かない奴だけど、悪い奴じゃない。
いけ好かないで言ったらシーモアの方がよっぽどだ。
でも、そんな
なら俺が何時までも部外者みたいな気分で真剣にならないなんて、ダサいよな。
だからって訳じゃないけど……絶対助けに行ってやるから、デリング……生きてろよ……!
◆
そんな風に燃え上がっていた俺達は結局、異界に行っても何の手がかりも掴めないままだった。
「まさかユウナレスカ様がまだ異界にいないとは思ってなかったよね〜。居ると思ったんだけどなぁ」
リュックの能天気な声にワッカが反応した。
「おい、言葉を慎めよ。それじゃユウナレスカ様は死んでた方が良いみたいに聞こえちまうじゃねぇか」
「あ、ごめんごめん、そんなつもりじゃなくってさ」
でもユウナレスカってもう死んでるんだろ?
死んだ人が生きて生活出来るって、俺から言わせてみれば本当に不思議だ。
俺も死人になって生きられたりするんじゃないかとか、少し羨ましくも思う。
「でも……もうこれで手がかりは無くなっちゃったね……」
「しかし、これではっきりした事が一つある。ユウナレスカがまだ生きているという事だ。それが手がかりと言えるのではないか」
気落ちするユウナにアーロンが慰めの言葉をかけた。こいつがこんな風に気を使うのも珍しかった。
何時もなら「慰めの言葉など聴かせても前には進まん」とかなんとか言うもんな。
やっぱユウナが悲しんでるとみんなも悲しいんだ。
「でもよぉアーロンさん。ユウナレスカ様が生きてるって分かったのはほっとしたけど、その情報をどう活かせばデリング様に繋がるんだ? あんまし想像できないけど一緒に誘拐されてたりするって事だろ?」
「少しは自分で考えろ」
「こういう時のアーロンは多分何も考えてないから、聞いても意味無いぞワッカ」
そんな話をしながら飛空艇に戻る為に、グアドサラムを歩いていた時の事だ。
「大ニュース! 大ニュース!」
そんな風に大声を上げながら俺たちの所に駆け寄ってくる女の人が居た。
「わたし、巡回僧を務めさせて頂いているシェリンダって言います! 普段はエボンの教えをより深く知ってもらうために活動している者です!」
「へー、んでシェリンダはなんか俺達に用事でもあるのか? 悪いけど今急いでて……」
否定する気は無いけど、エボンの教えとか考えてる場合じゃないんだよな……。
しかし、そんな俺の考えてる事を遮り、早口で彼女は捲し立てる。
「はいっ! 用事というのは、これです! 寺院からの大ニュース!」
シェリンダがチラシを押し付けてくる。
どうやら最近寺院から配られている物みたいだ。
彼女はそれをみんなに知らせる為に、駆けずり回っているらしい。
その内容は……。
「なんとあの有名な召喚士のデリングJr.様と、大召喚士ユウナレスカ様が、近々ご結婚なされるみたいなんです! すっごくおめでたい話ですよね!?
このスピラにとって珍しく明るいニュースなので……。もうわたし、聞いただけで舞い上がっちゃって! 結婚式は準備が終わり次第執り行う予定らしいですよ」
「はっ?……ユウナレスカとデリングが結婚式!? って……一体何処で?」
「結婚式と言ったらそれはもう聖ベベル宮しかないです! あの素敵な天空の式場で愛を誓い合うのは、女の人なら誰もが夢見る理想の挙式ですから……! 花嫁衣装のユウナレスカ様、素敵なんでしょうね……。その隣で優しく笑みを投げかけるデリング様もきっととっても素敵な筈です。あぁ、考えるだけでこの気持ちが抑えきれない……もっとみんなに伝えてあげなくっちゃ……。じゃあ、わたしは他の人にも教えてあげないといけないのでこれで!こんな素晴らしいニュースも全てはエボンの賜物です……それでは!」
元気一杯というか、酔っ払ってるみたいなテンションだったシェリンダは、他の人達に今の話を教える為に大量のチラシを抱えて走り去って行った。
正直言って、早口の彼女の言っていた内容をどれだけ聞き取れていたのか自信が無かったけど……とにかくデリングが結婚する事だけは理解できた。
「なーんか、誘拐されて焦ってたけど、心配して損したッス」
俺の感想に同調したみんなが呆れ顔で溜め息を吐く。
「どうやら、犯人の目星は付いたみたいだな……。全く人騒がせな……」
「はぁ……私が言うのも何だけど、あの方も随分とお熱よね……」
「だな。デリング様が無事でほんと良かったぜ……。居なくなったって聞かされた時は生きた心地がしなかったもんなぁ〜」
一気に肩の力が抜けた俺達に対して、一部の女性陣は真剣な表情をしていた。
「皆さん……!」
「ん? どーしたんだよ、ユウナ。あ、デリング見つかって良かったな!」
「良くない……」
「ん?」
「全然良くないよ……!」
そして……絞り出すようにして吐露していたユウナの感情が爆発した。
「デリングさんは私と一番に結婚するって言ってたのにっ、二人で一緒に色々考えて、ビサイドでやるのも良いよねって話したり……。
でも私の花嫁姿を色んな人に見て貰いたいから人の多い所でやって、ビサイドのみんなには旅行のご招待をしようって、デリングさんが言ってくれたり……。
お金かかっちゃうよ?ってきいたら、『お金はまた稼げば良い、少しだけ貧乏になっちゃ駄目かな?』って言ってくれたの嬉しかったな……。
美味しいお料理沢山出して、来てくれた人達が楽しめるようにしたいって盛り上がって……。
────それなのに強引に攫って結婚式しようとするなんて……ユウナレスカ様……酷いよっ!」
あはは……。
普段優しい人が怒ったら怖いよな。
俺、怒りを向けられる当事者じゃなくて良かったと心底思ったんだ。
ついさっきまで『いつまでも部外者気分なんてダサいよな』とか考えてた筈なんだけどなぁ……。
でもやっぱりそんな俺の緩み切った気分とは裏腹に、女性陣の熱量は上がっていた。
ついでにシーモアも……。
「その通りです。デリング殿の本妻はあくまでもユウナ殿でなければなりません。御二人が仲睦まじく結ばれてこそ。他は全ておまけでしょう」
「おまけ……ってそりゃシーモア老師、流石に言い過ぎじゃないっすかねぇ……」
嗜めるワッカの言葉を無視して、ユウナとシーモアが真剣な表情で向かい合う。
「シーモアさん、私の結婚式を取り戻すのに協力してくれますか?」
「ええ、勿論です。必ずやユウナレスカの抜け駆けを阻止しなければ。まず戦力の補強は必須。予定されている式まで暫く時間があります。おそらくは突発的に誘拐したので未だ式の準備が整っている訳では無いのでしょう……。それまで私の方からも寺院へと根回しを働きかけてみます。その間に出来る限り我々も力を蓄えておきましょう」
そっか、奪還ってなると乗り込んで力ずくになりそうだもんな。
丁度良いから俺も身体動かす準備しとくかな。
「あたしも協力するよ〜! 早速オヤジに飛空艇出してって言ってくる!」
「やっぱり私らユ・リ・パに立ちはだかって来るのはあの女だったね。何時かこうなるんじゃないか……って思ってたんだ。あの時の借りは返させてもらう。……シメるよあの女」
リュックもパインも炎メラメラ〜って感じだ。
俺はなんか結婚式に乗り込んで行くのって楽しそうで……正直ユウナには悪いけど、ワクワクしていた。
ワッカもチャップも複雑そうだったけど、そんなに深刻に考えてなさそうだ。
でも、そんな俺達を見てアーロンが言う。
「お前達、これが遊びだと思っているなら大間違いだ。敵はあのユウナレスカ……俺を殺した張本人でもある」
その表情は至って真剣だ。
本人が言った通り、そこには微塵も遊びの気配が無い。
「生半可なレベルアップでは到底歯が立たんだろう。此方を殺す気でかかってくると想定して、鍛える時間を無駄にするなよ」
俺達は油断の無いその言葉に背筋を伸ばそうとして……ふと、視界の片隅に例の結婚式のチラシが見える。
そこに書かれていた「私とダーリンの究極結婚式のお知らせ」という吹き出しに入った文字と、美しさ10割増しにデフォルメされたユウナレスカ。
そして、これまためちゃくちゃ美形に盛られて描かれたデリングが、それをお姫様抱っこしているイラストが目に入った。
馬鹿みたいな絵に、思わず気の抜けた吐息と笑いが漏れる。
これ見て真剣になれって方が無理だと思うのは……俺だけ?
感想とか評価とか貰えると喜んだりモチベが上がったりします。