【完結】転生者が権力とかでFF8とFF10のヒロインを食い散らかした挙句、最終的にスピラを救う話。 作:速射弾
僕は結婚させられる事になった。
相手はユウナ……ではなく、ユウナレスカその人である。
彼女はあの一夜の経験から思いの外、僕の事を好んでくれていた事は身に染みて知っていた。
しかし、ベベル宮で行われる予定だった僕とユウナと結婚は、知らぬ間に延期されている。
そして、僕は────。
誘拐されて、ハネムーン会場に立たされている僕は、うっとりするように此方へと微笑みかけてくる花嫁を見る。
マイカの祝詞が挙げられて、誓いの口付けをするよう言い渡された。
あぁ……、最初に結婚するのはユウナが良かった……。
僕は散々ユウナレスカをロマンチストな馬鹿女だと心の内で蔑んできたが、己も中々にロマンスに夢を見る愚か者だったらしい。
でも……こういうのは理屈じゃ無い。
大好きなんだ……ユウナの事が。
あの時、僕の事をヨシヨシしてくれてママになってあげると、言ってくれたユウナの事が……。
だから我が身可愛さに邪魔な奴等の命令に逆らえず、複数の女性と結婚しなければならなくなった今を、本当に申し訳ないと思っている。
あの娘は僕には勿体無いぐらい良い娘だ。
可愛くて、明るくて、ちょっとエッチで、気が利いて、男を立ててくれて、気立ても良い。
今の傀儡に成り果てた僕には、そんな素晴らしいお嫁さんにしてあげられる事など……エッチな事意外に何も無い。
だから、せめて結婚式だけでも一番最初にプレゼントして、一生の一度の素敵な思い出を作ってあげたかった。
それも今から奪われるのだ。
この誓いの口付けと共に……。
そんな諦めが頂点に達していた時、空からスロープを伝ってこの結婚式場に飛び移ってきた人達が居た。
「その結婚式、ちょっと待った!」
そう言ったのは、何やらワクワクした表情のティーダ。
「ユウナレスカ……ようやく本性を表したな……」
巨大な刀を構えたアーロン。
「ユウナは結婚式を最初に挙げたいと言った。ならば今こそキマリがその願いを叶える時だ」
周囲を威嚇するように槍を振り回したキマリ。
「いや、俺は反対したんすよ?」
「でもみんな言う事聞いてくれなくてですね……」
エボンに敵対する意思がある訳じゃ無いと言うワッカとチャップ。
「ごめんなさいユウナレスカ様、今回ばかりは目を瞑る事は出来ません。だって────大切な妹分たっての願いですもの」
これ見よがしに乳を寄せたルールー。
「結婚式にあたし等を呼んでくれ無いなんて水臭いな〜」
その明るい言葉に似合わない、殺る気満々のリュック。
「これじゃデリングの方がお姫様か花嫁って感じだな」
まるで囚われの姫を救出する王子様のようなパイン。
「少々お痛が過ぎるようだ……。我が友にとって一番が誰なのかは既に決まっているというのに……」
何故そんなに僕と彼女との仲を特別応援してくれているのか、いまいち分からないシーモア。
そして────。
「デリングさん。助けに来ました」
僕が今、最も会いたくて、最も会いたく無かった愛しい彼女……ユウナ。
この大空に高く聳え立つベベルの結婚式場で、清廉な空気に包まれながら、僕達はみんな集まった……。集まってしまった。
それを見てユウナレスカは、先程までうっとりとさせていた表情を無に返して、平坦な声色で告げる。
「丁度良い所に来ましたね。観客が居た方が私達の契りも盛り上がるという物……。反逆者になりたく無いのならば、そこで大人しく見ておきなさい」
「では、誓いの口付けを……」
ドン引きしながらも、神父役としての職務を全うしようとするマイカ総老師の宣告と共に、僕はグッと顎を掴まれて新婦に誓いの口付けをさせられた。
ユウナが息を呑むのが分かる。
カランカランと彼女の持っていた錫杖が床に落ちる音が響き渡ったかと思えば、それを掻き消すように祝福の鐘が鳴った。
過去、己が妄想し考えていたような強引極まりない結婚式が、そっくりそのまま自分に向かって牙を剥く。
抵抗できないまま、貪られるようにキスを交わした僕の瞳からは……一筋の涙が滴れた。
申し訳なく思いながらユウナの方を見る。
ごめんなさい。
本当はこんなつもりじゃ無かった。
こんな情けない姿見せたく無かった。
言い訳なんて出来ない。
全部僕がこの女幽霊に手を出してしまった挙句、コントロール出来て居ない事が招いた失態だ。
思わず悔しさで拳を握って耐える。
そして、ようやく長い長い口付けが終わった。
「では、もう貴女達はそろそろ客席に着きなさい。折角の晴れ舞台で、ただの招待客が主役の邪魔をするものではありませんよ?」
「なんで……こんな酷いことするんですか? 貴女だけの夫じゃないのに……」
ユウナ……。
「そうですね。確かに私だけの夫ではありません。ですが、それは彼が優しいから仕方なく行っている事です。本当に最も愛しているのはこの私……」
「……違います。デリングさんが本当に一番愛してるのは私です!」
僕はユウナのその言葉を聞いて泣きそうだった。
彼女にこの想いが伝わってくれていたという事実が、ただひたすらに嬉しい。
だが、その言葉は……ユウナレスカの逆鱗に触れた。
何故なら、
「ならば、貴女が二番目だと認めるまで……私が何度でも心を折って叩き潰しましょう」
殺気を感じ取った僕は、身を挺してユウナを庇う。
こんな所でユウナが寺院の反逆者になろうとしているのだ。
原作が滅茶苦茶になってしまった今、そんな事が起きたらもう僕は彼女と一緒に居られなくなってしまうだろう。
嫌だ。ユウナたんと離れたくない!
「待ってくれユウナレスカ! これは全て僕が仕掛けた事なんだ!」
なんとかしてこの馬鹿女を騙せ騙せ騙せ!
「君が一番に結婚式をしたいと考えているのは知っていた! それでも僕がユウナと一番最初に結婚式をすると言ったのは……」
言ったのは……?
言ったのはユウナタンが好きだから……。
それ以外の答えが思い浮かばない。
言ったのはなんだ。
言ったのは。
ユウナと一番最初に結婚式をすると言ったのは何故か……。
俺ぇ!なんか出せよぉおおおおお!!
「僕がユウナレスカの一番になりたかったからだ!」
土壇場でフル回転させて導き出した答えは、着地点すら想定せずに便器の外へ
フンコロガシである自分にすら、どう転がして行くのかまだ分かっていない。
しかしこの形にするのは困難な軟便をこねくり回して、どうにか形を整え、彼女を納得させなければ先は無い。
「そもそも本来なら結婚相手に優劣を付けたく無い! 僕は妻になってくれるみんなをそれぞれ一番愛したいとおもtrうぃるからっ」
クソっ……! 心にも無い事言ったせいで噛んだ!
「でも、僕にだって欲はあるっ! それは愛する妻達から一番好きだと思われていたいって事だ」
馬鹿女は綺麗事に弱いと相場が決まってるはずだ。
とにかく実態のないエモさを出して、それっぽい理論で丸め込む!
「だから……ごめん! ユウナレスカがまだゼイオン様を一番愛してるのが我慢できなくて……! 僕を一番好きだと思ってくれていると信じきれなくて……君を嫉妬させたかったんだ!」
元夫と比べて一番になりたいというのは、今の彼女の言動にも通づる共感を呼ぶ一手ではないだろうか?
我ながら、中々良い所に着地出来そうな所まで持っていけたのではないか。
ユウナレスカの目を真剣に見ろ。
今まで演説で培って来たテクで信じこませて、その矛を降ろさせろ……!
もう自分にはこれ以上出来る事が無い。
あとは天に祈るのみ……。
はぁはぁ……どうだ……? 判定は?
「……ですが、私は他の女を押し退けてでも貴方の一番になりたい……」
失敗!
回転寿司屋のガチャ演出のようなアンサーは、成功を引く事が出来ずに終わった……。
最高難易度のマジックポットの要求を満たせなかった僕は、彼女の腕に掴まれて囚われる。
おどろおどろしい気配が湧き上がり、ユウナレスカの下から無数の蛇だかタコの脚だかわからない触手が出た。
一本一本の太さが人の胴体程もある、この世の物とは思えない程に闇を体現した色の蛇。
彼女の髪の先に繋がって地中から伸びて行くそれは、そのままの勢いで彼女の身体を宙に持ち上げた。
すなわち、僕は抱えられたまま空中で一緒にこの女と遊泳する羽目になる。
「ああっデリング様っ!」
「行くぞ! やらなきゃ!」
釣られて上がるルールーの悲鳴に反応して、ティーダが急かす。
「くっそぉ……! ユウナレスカ様と本当に戦うってのかよ! 冗談キツいぜ……。万が一間違えて殺したりなんかしちまったら、俺は俺を許せねぇよ……!」
ワッカの慟哭と共に、その戦いは始まった。
◆
結婚式場を壊さないようにと、注意しながら繊細に戦うユウナレスカ。
恐らく本気を出せばこの会場ごと壊して、この場の人間を容易く殺し尽くす事が出来るのだろう。
しかし……この夢見がちな阿婆擦れは結婚式は絶対にベベルの式場が良いと、マイカ総老師に注文を付けていた。
拉致されて四六時中一緒にいた僕は、その事を知っている。
ベベルの式場でなければならない、重大なその理由とは────。
ここが一番素敵で、景観が美しくて、女の憧れを感じさせて、式場選びのカタログを見た時、一番乙女心にキュンと来たから……。
という色に狂った馬鹿女特有の無駄なこだわりだ。
「ユウナレスカ……。絶対、彼女達を殺したりしないでくれ」
お姫様抱っこで抱えられている僕は、勇気を振り絞って言う。
「君が彼女達から僕を守り抜いたその時は……潔く君と一番最初に結婚すると誓うよ。でも殺したりするのは無しだ。手足を落とすとかそういう怖いのも……。
そんな事をする君の姿は見たくないし、きっと僕はその時……ユウナレスカを愛せている自信が無い」
怖かった。
あの日アルティミシアに相対した時と同じぐらい。
いや、見た目が化物じみた今のユウナレスカの方が、はっきりと命の危機だという事実を伝えて来る。
でも……今の自分に出来る事はこれぐらいだ。
生半可な暴力や魔法では彼女に太刀打ち出来ないと肌で感じとれるし、彼女の実力は仲間にした時から幾度と無く旅の道中で見て来たから。
口先だけでなんとかするしか無いのだ。
そして、それがどうにもならなかったから、せめてもの抵抗で乞い願うしかない。
しかし……そんな僕の心配は杞憂だった。
「私の方がデリングさんの事大好きだもん!」
「貴女のような小娘より私の方が彼を愛しています!」
「でもっ! ユウナレスカ様はゼイオン様を愛している分、絶対に私の方が好きです!」
「ぐっ……お、女の子が好きになる人は一人じゃ無くて良いのですよ!? 愛はどれだけの数に分けても減らないの!」
「女の子……って、ユウナレスカ様はそんなお歳では無い筈ですっ」
「あああ、貴女っ! 女は何時になっても女の子で居て良いって、彼も言ってくれたのよぉおおおおお! ギャオオオン!!!」
お互いに手加減しながら行われた戦いは、数の暴力が勝利した。
なんと言っても、ユウナの戦闘中コマンド『話す』の効果が効きすぎたのだ。
物理的な戦闘面ではユウナレスカの圧勝で手も足も出なくなった我等がユウナパーティだったが、その戦法を口喧嘩に変更した途端に、形勢は一気に逆転する。
だが、真の敗因は……ユウナレスカが警備員の配備を渋ったせいだった。
私の晴れ舞台に険呑な武器など持って来させるな。
私より強い者はそうそう居ないから、見栄えの悪い警備兵は式に必要無い。
立たせるのは無骨な僧兵や機械兵器よりも、素敵な楽器を持ったお洒落な見た目の音楽隊が良い。
女の子ゎ。。。何歳になっても。。。可愛ぃって言われたいんだョ?
というこれまた、女心に寄り添った馬鹿丸出しな考えの采配によって、ユウナレスカが自ら墓穴を掘ったのだ。
お陰で手数が足りず、口撃で怯んだ隙に他の者達からの物理的ダメージの通過を許して、ボコボコにリンチされていた。
せっかくおめかしして着ていたウェディングドレスも、ボロボロになってしまっている。
しかしまぁ……オーバーデスという全体確定即死必殺技を使わずにいてくれたのは、彼女が僕の気持ちに寄り添ってくれたのだと思うが……。
「みんな……そこまでにしてあげてくれないか」
ボコられて横たわったユウナレスカを庇う。
というか、これ以上やると寺院から反逆者扱いされかねないので、彼等やユウナを庇っている訳だが。
本当は別に成仏してもらって構わないけど、権力でもその身を守られているというのは本当に厄介なBBAだ。
まるで父親であるエボン=ジュみたいなしつこい油汚れである。
それにしても……原作主人公達は思いの外、暴力に対して抵抗がないようだった。
これもまたカルチャーギャップなのか、言動はまともそうに見えるのに、ただのチンピラ染みた事も平気でやれるというか……。
そういえば原作でも敵対したシーモアをその場の流れで殺しちゃってたりするし、そういう素養はあるのかもしれない。
改めて、原作パーティが武闘派集団の輩である事を再認識する。
助けて貰ったにも関わらず、その相手の力を怖がるアホ臭いヒロインみたいな思考になりながらも、彼等を諭す。
「ユウナレスカも触角がシュンとしている。これは彼女が反省している証拠だ。そろそろ良いだろう」
「貴方……♡」
貴方……(ハート)じゃない。
せっかく庇ってやったのに、
そしてまずこんな女幽霊に構っている暇があるならば、僕を助けにきてくれた彼女に言わなければならない言葉があるのだ。
「ユウナ、助けてくれてありがとう……」
圧倒的に歳下の女の子が、今はとても頼りになるオーラに輝いて見える。
これが信仰の光という物だろうか。
その輝きに焼かれながら、再び彼女に心を鷲掴みにされた僕は続けた。
何を続けたかって? 言い訳だ。
「さっきはお嫁さん達に優劣を付けたくないとさっきは言ったけど……本当はどうしてもユウナの事が一番好きだ。
だけど……僕達は今、差別に立ち向かっている。それはきっとこういう日常で発生する優劣からも現れてしまう物だと思う。
僕自身、シーモアから差別をどうにかしようと言われて、まだ何をどうしたら良いか……分からないんだ。
だから、まず初めに……せめて自分からそれを体現していこうと思った。
他の許嫁も平等に一番好きだと思える程、愛してあげたいと……でも、無理だった。
だって僕はユウナが一番好きだから。
君一人を取る事も出来ない癖に、情けない事言ってごめん。どうか……許してください」
とにかくさっき戦闘前、ユウナレスカを止めるために口から出任せで言った言葉を、自身でフォローしなければならなかった。
ユウナと結婚するのを出汁にしたみたいな事言った気がするから、それで幻滅されたくない。
その一心だ。
本当は差別とかどうでもいい。みんな平等なんてクソ喰らえ。
でも「君一人を取る事も出来無い癖にごめん」という言葉は本心からの謝罪だ。
全部シーモアがメンヘラなのが悪いのに、それを跳ね除けられないヘタレ野郎でごめん。
僕はユウナに許してさえ貰えれば、それだけでいい。
そんな謝罪とも懺悔とも呼べる行為。
彼女が幻滅する事が無いと知っていてこのような事をしている己の小狡い性格に、初めて吐き気がした。
きっと他の誰に対してでも、今後こんな風に思える事は無いのだ。
そんなベラベラと並べ立てたダサい言い訳を聞いたユウナは、僕の目を見つめて言った。
「……悲しいね。そんな事言われたら……私なんて、まだ何も出来てないままだよ。
そろそろ私の事、もっと信じて欲しいな。夫婦になるって……きっと一緒に考えて生きて行く事だよ。
シーモアさんが言ってる差別がどうとか、私だってまだ完全に理解できてるとは思わない。
だからね、これからみんなで一緒に考えていこう? 私もあなたと同じように、出来るだけやってみようと思うから……。そのお手伝い──させて?」
聖母だった。
「これからは私以外の
ただ、良くも悪くも聖母すぎた……。
許してもらえるだけでよかったのだが、我が嫁はどうやら差別撤廃に俄然乗り気らしい。
自己犠牲の精神で己だけが一番じゃなくて良いと、僕にとっては少しズレた事を
違う、そうじゃない。
一応許して貰えた手前、そんな言葉を言えるはずも無くて……。
僕はただ愛する人を抱きしめて、喜びか悲しみかわからない涙を流す事しか出来なかった。
◆
俺達はユウナレスカをとっちめて、デリングとユウナの感動的な抱擁を見ていた。
チャラチャラ女に手を出してるってイメージだったけど、デリングはデリングなりに色々大変な事があるんだなって、二人の話を聞いてて思う。
「ま、一件落着って事で良かったじゃん。二人もこうして助け合うって決めたんだしさ、ユウナレスカもそろそろ我儘言ってたらダメなんじゃないの?」
俺はユウナ達に負けて倒れてるユウナレスカの隣にしゃがみ込んで言った。
こんな事、夢の存在である自分に言われても余計なお節介だろうし、響かないかも知れない。
それでも彼女は何か思う所があるみたいで、納得してるのかしていないのかわからないまま……黙って二人の抱擁を見ていた。
一方で、黙って見ていられ無かったのがシーモアだ。
「やはり。デリング殿とユウナ殿は素晴らしい……。皆さん! 二人の愛と、これから先紡がれて行く夫婦の未来の始まりを見ましたか?
全てを赦すこの御二方は、まさに今この騒動を起こしたユウナレスカ様すらも許そうとなされておられます……!
そして、二人で一緒に全ての婚約者を平等に愛する為に努力しようと、ご決心なされた!
安心してくださいユウナレスカ様。一人が一番になれずとも、みんなで一番を目指す事は出来る。
まずはその始まりとして、全員が一番最初に結婚式を挙げれば問題ないでしょう!
こんな事もあろうかと、全ての部族の花嫁達を集めて裏に用意してあります。さぁ、皆さん! お色直しをして式をやり直しましょうか」
なんか1人ですっげぇ盛り上がってた……。
あと、全ての部族の婚約者を用意してたってマジかよ。
偶然にしても出来過ぎて無いか?
「シーモア……お前いくらなんでも手際が良すぎだろ……」
「はて? デリング殿からやる予定の結婚式のプランは前々からお聴きしていたので……。たまたま決戦前にこうなる可能性を予想して準備しておいただけですよ」
今、初めてこいつの事、いけ好かないっていう感情よりもヤバいって意識が上回った。
もしかして……全部この男が裏で計画してた事なんじゃ……。
そんな疑念が尽きない。
ユウナレスカは真犯人じゃなくて、裏で良いように焚き付けられただけなんじゃ無いか──とか……。
何にせよ、真実はわからないままだったけど。
結局、シーモアの願っている理想的な流れになってるわけだから、こんな奴でも老師っていう偉い立場居られるぐらい優秀なんだという事だけは分かった……。
そして……少し休暇時間を取ってから、本格的な式が始まった。
ひっきりなしに運ばれてくる料理に舌鼓を打ちながら、披露宴の様子を見る。
粛々とした空気で愛を誓い合う場面は既に過ぎ去って、新郎新婦達の知り合いが語る思い出話の時間が二次会開場で行われていた。
大勢の招待客が賑わう大きな会場の中で、俺達も席に座って駄弁りながらそれを見ていた。
「ユウナレスカがこのような騒ぎを起こす所まで、貴様の企みの上だと俺は睨んでいるのだがな」
アーロンが何かの鳥の肉を焼いた料理を食べながらシーモアに言う。
確かあの料理はペルペル族の郷土料理だって言ってたっけ。俺も後で食べてみよっと。
「それは流石に濡れ衣ですよ。私は何も。ただ、あの女ならやりかねないと想定はしていましたが……」
「実行するのはユウナレスカ……か。それも何処まで本当なのか……」
アーロンの言う通り、シーモアは何処まで考えていたのか底の知れない男だったけど、そんな過ぎた事は今考えても美味い飯が冷めるだけだ。
俺はもうとっくに考え無い事にした。
「仕事が早えーよなほんと、鼻につく野郎だけど。お、この魚うっめぇ!」
「鼻につくは一言余計でしょう。ふむ、確かに悪くない味だ……。ティーダ殿でも食べ物の善し悪しぐらいは分かるのですね、意外でした」
一言余計なのはどっちだよ……。
「デリング様が攫われた時、シーモア老師は結婚式の準備で忙しくて居なかったんっすね。おかしいと思ったんっすよ。シーモア老師がこんな簡単に出し抜かれるはず無いって……。うおっこの海老でっけぇ……!」
「おまけにビサイド村のみんなも呼んでるなんて、驚きすぎてヤバいっすよ! 流石デリング様、凄いサプライズっすねぇ……この蟹とか見た事無いけど、幾らぐらいかかってんだこれ?」
ワッカとチャップも嬉しそうに豪華な飯を食っていた。
出されたデカい蟹の鋏を動かして遊んでいる。
「式の費用は寺院の方から出ているのでご心配無く、これもまた種族間交流の一環ですので」
「エボンの民から集めた寄付金を使うにしては、少し個人的な催し物すぎる気はするがな……」
「確かに、デリング様のおめでたい日とはいえ、こんなに豪勢にしちゃっていーのかなぁ……。いや、俺は尊敬する御方がここまで寺院に評価して貰えてるのは、嬉しいっすけどね?」
「ワッカもアーロンも、そんな事心配してる暇があるならもっと楽しんだ方が良いッスよ。あ、ほら次のスピーチはビサイド村の人だって」
色んな部族が踊ったり新郎新婦に関するエピソードを話すその場を、祭りか何かのような明るい雰囲気が包み込んでいる。
それにしても、この規模の結婚式って一日で終わるのか?
なんて思いながら、余興を見る。
出てきたおっさんは何やら緊張した感じで、マイクを手渡されていた。
「ん? あ〜……あの人はビサイド村で初めてデリング様と仲良くなったって言って回ってる、変なおっさんだ。
村の警備を勝手に担当してると思い込んだりしてるから、村ん中では結構変人扱いされてたんだ。悪い人じゃねぇんだけどな……。
デリング様のおかげで村人達との距離が縮んですっげぇ喜んでたから、話は多分それについてだろ」
「へー、てかデリングってビサイド出身だったんだ」
ルールーがビサイド出身なのは聞いた事あるけど、デリングもそうだったのか?
「いんや、あの御方はたまたまビサイドに流れ着いた……らしいぜ。『シン』に襲われてな」
「じゃあそこは俺と似てんだな。それにしても、デリングまで襲ってるなんて……何してんだよ……クソ親父」
そういや、全部終わって大団円みたいな雰囲気になってるけど、まだ『シン』どうにかしなくちゃダメなんだよな……。
「まあ折角のおめでたい話の席だし、『シン』の話は辞めとこうぜ」
「だな。それよりもこれ何て料理だ? 俺ぁ初めて見るぜ」
そんな少し暗くなった気持ちを察してくれたのか、チャップとワッカは話題を変えようとしてくれた。
「ふむ、これは確か……我が友が出してくれとお願いしていた料理ですね。彼の実家の味……だったらしいですよ? 卵黄と酢を掛け合わせて作ったタレが特徴的ですね……。確か作る際にエスナで防菌処理が必要だった事から白魔のソースと呼ばれていたとか」
「ソース?どう言う意味っすか?」
「さて、そこまでは……察するにタレや何かに付ける調味料と言った意味合いかと」
「聴き馴染みの無い言葉だが、料理自体は悪くない味だな。酒には合いそうだ」
アーロンが酒飲みらしい感想で締め括る。
まあ、飯なんて美味ければ俺は何でも良いんだけどな。
それでも、色んな土地の食い物ってそれぞれ全然違うから面白い。
このデリングの故郷の料理だってビサイドでは見た事無かった奴だ。
「ふーんなるほどなぁ……。んじゃこの飯もビサイド出身って訳じゃ無いんだな」
「ええ、そうらしいですね。ですがその故郷も既に『シン』によって滅ぼされて居るだろうと彼は仰られていました」
シーモアの何気ない補足情報に箸が止まる。
「まーた『シン』か……。それにあいつ、故郷失ってんのかよ……。そう考えると良くここまで頑張ってみんなの為にやってるよな、シーモアが尊敬してる理由も少し分かる気がする」
自己犠牲……とはちょっと違うのかな。
デリングは進んで人の為にやりたいって感じだし。
まぁユウナと同じタイプの人間で、お似合いのカップルだと思うよ。
「ようやく理解してきたようですね、我が友の素晴らしさを」
「だからってお前らみたいに崇めようとは思わねーけどな」
シーモアの何時ものやつをスルーしてデリング達の方を見ると、ユウナは嬉しいと言った表情を隠しもせずにニコニコと満面の笑みだった。
それは花嫁として100点の可愛らしさだ。
一方でそのユウナの反対側に陣取っているユウナレスカは、少し気落ちした雰囲気でデリングの手をいつも通りに握っていた。
その表情から察するに、多分ユウナレスカはもっと静かな感じでやりたかったんだろうな。
でももう彼女は、女同士の戦いって奴に負けた事で、あまり我儘を言わなくなる気がする。
そんな諦めを感じ取ったのは俺の勝手な想像かも知れない。
デリングの結婚相手も色々いる。
キマリと同じ種族や、凄く背の低い種族。
明らかにカエルか何かを人の形にしたような種族まで、花嫁衣装で座っていた。
「こう、言っちゃなんだけどさ。凄いな」
「ああ、デリング様は凄いお方だ」
頷くチャップに言い返す。
「そうじゃなくて……いや、そう言う話なのか……? 色んな部族と結婚するってもっと軽々しく考えてたけど、思ってたよりも大変そうというか……」
「確かにな、これはあの性欲の強いデリングにしか出来んだろう」
アーロンも感心するようにして、俺が目を向けていたカエルみたいな部族の花嫁を見ていた。
「我が友が素晴らしい逸材というのはそこにあるのです。彼は見た目に惑わされる事無く、分け隔て無く、種族の壁を越えて他者を愛する事が出来る。これを知った時、私は頭にサンダガが落ちたかと思う程、衝撃的でした。
ただの性欲だけではありません。他者への無償の愛が逸脱しているのです」
「まぁ、それが召喚士という人種とも言えるがな……。どいつこもいつも人が良い」
「デリングに関しては特殊すぎて……人が良いだけってのも、違う気がするけどな」
俺はそう言って笑った。
こうしてみんなで飯食って、好きな事好きなだけ話して、全員が笑顔で……楽しかった。
コイツらとの思い出、失いたく無い。壊したく無いって────そう思った。
少しだけ、覚悟が決まったような気がした。
FF10の話すコマンドで戦闘中に会話が聞けるシステム好きでした。
感想とか評価とかもらえると喜んだりモチベが上がったりします。