それからというもの、月に一度、黒見さんとホテルで会うようになった。最初は戸惑いと罪悪感に苛まれていたが、回数を重ねるうちに、身体が彼女を求めるようになっていた。
今まで抑え込んでいた性欲が、こんなにも強いものだったのかと驚くほどだ。黒見さんの巧みな愛撫や、愛人という関係性の背徳感が、僕を興奮させているのかもしれない。
ホテルの部屋を出るたび、壱華の笑顔が胸を刺す。それでも、黒見さんの妖艶な微笑みと柔らかな肌の感触が、僕の理性を絡め取る。彼女との時間が、僕の心に新たな楔を打ち込んでいくようだった。
新商品の発売に伴い、僕は後輩社員の五木早芽さんと出張に行くことになった。五木さんは色白で、長い金髪を後ろで一つにまとめ、清楚なオフィスカジュアルの装いだ。白いシャツのボタンをきちんと留めているが、豊かな胸元がその存在感を隠しきれていない。
僕たちはアポイントを取り、複数の会社を回って商品の説明や試供品の配布を行った。忙しい一日を終え、五木さんが元気よく言った。
「これで今日の仕事は終わりです! お疲れさまでした!」
「お疲れさま、五木さん。助かったよ」
駅に向かおうとすると、五木さんが少し照れくさそうに声をかけてきた。
「司馬さん、もしよければ……一緒に食事でもどうですか? ちょっと相談したいことがあって」
「え、あ、うん。いいよ」
少し戸惑いつつも了承すると、彼女はパッと顔を輝かせた。
「良かった! じゃあ、行きましょう!」
近くの居酒屋に入り、料理とドリンクを注文した。店内は賑やかな笑い声と焼き物の香りで満たされている。五木さんはビールを一気に飲み干し、満足げに息をついた。
「ふぅ、営業って疲れますね!」
彼女の笑顔は、仕事の疲れを忘れさせるほど明るい。
「そうだね。でも、五木さんの元気があれば、だいぶ楽になるよ」
僕が感謝を込めて言うと、彼女は少し頬を染めて笑った。
「そんなことないですよ! 司馬さんこそ、取引先でバンバン宣伝してて、めっちゃかっこよかったです!」
「いや、たまたま得意分野だっただけだよ」
料理をつまみながら、仕事の話題で会話が弾んだ。串焼きや揚げ物の香りが漂う中、ビールの泡がグラスに弾ける。やがて、五木さんがふと真剣な表情で切り出した。
「そういえば、司馬さんって女性経験豊富なんですか?」
突然の質問に、僕は思わずむせそうになった。
「え、いや、そんなことないよ。全然」
慌てて否定すると、彼女は興味深そうに身を乗り出した。
「でも、ご結婚されてるんですよね? 奥さんとはどうやって知り合ったんですか?」
「うん、普通にお見合いだよ。親戚の紹介でね。それまでは、女性経験なんてほとんどなかった」
黒見さんとの関係が頭をよぎるが、口には出さない。あれは愛人としての特別な状況で、壱華への愛とは別だと自分に言い聞かせる。
「へぇ、意外! 司馬さん、モテそうなのに」
五木さんはくすっと笑い、ビールをもう一口飲んだ。
「いや、全然。女性のことなんてさっぱり分からないし、壱華のことも最初はよく知らなかったんだ」
「ふふ、でも司馬さん、めっちゃ優しいですよね。私、何度も助けてもらってるし」
「は、はあ……まあ、仕事だからね」
「そういうとこ、素敵なんですよ。普通、先輩ってだけでそんなに親切にしてくれないじゃないですか」
五木さんの笑顔は無邪気で、どこか無防備だ。僕はその言葉に困惑しながら、グラスを手に持て余した。
「私、昔から男運が悪くて……何人にも騙されたり、お金を取られたり、ひどいときは暴力を振るわれたり……」
彼女の声が急に小さくなり、グラスを見つめる目が曇る。
「それは……大変だったね」
予想外の告白に、僕は驚きながらも言葉を慎重に選んだ。
「だから、男性ってあんまりいいイメージなかったんです。でも、司馬さんは優しいから、なんか安心できるなって」
彼女は少し照れくさそうに笑い、グラスを傾けた。その笑顔の裏に、過去の傷が隠れているように見えた。
壱華の顔が頭をよぎる。彼女との約束、黒見さんとの関係、そして今、目の前にいる五木さんの無垢な笑顔。胸の奥で、罪悪感と新たな感情が交錯する。この国では、愛人を持つことが子作りのためと奨励されている。だが、僕の心は、壱華への愛と社会の価値観の間で揺れ続けていた。
五木さんと居酒屋で他愛もない話を交わし、店を出た。夜の街は涼しく、街灯が柔らかな光を投げかけている。
「駅まで送りますよ」
「ありがとうございます、司馬さん!」
五木さんは明るく答えたが、どこか落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
駅に向かう車中で、彼女がふと口を開いた。
「司馬さん……私を愛人にしてください」
「え、は……?」
突然の言葉に、僕はハンドルを握る手が震えた。彼女の真剣な眼差しが、冗談ではないことを物語っている。
「本気、ですか?」
戸惑いながら尋ねると、彼女は静かに、だが力強く頷いた。
「はい、本気です。……私、男性不信で。もう、男性と付き合ったり、結婚したりするのは怖いんです。それなら、愛人として司馬さんのそばにいる方が、幸せになれる気がするんです」
彼女の声は震え、過去の傷が透けて見えた。居酒屋での明るい笑顔とは裏腹に、彼女の瞳には深い孤独が宿っている。
「お、お願いします! 司馬さんなら、赤ちゃんを産むのだって……」
五木さんは頭を下げ、言葉を詰まらせた。あまりの突然さに、僕は言葉を見つけられない。
「ま、まず落ち着いてください。こういうことは、妻に相談しないと……。返事はそれからでいいですか?」
なだめるように言うと、彼女は少し残念そうに目を伏せた。
「はい……分かりました」
駅に着き、五木さんが車を降りる。彼女の後ろ姿を見送りながら、胸に重いものが広がった。黒見さんとの関係もまだ整理しきれていないのに、また新たな波が押し寄せている。
家に帰ると、壱華が柔らかな笑顔で出迎えてくれた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
疲れた声で答えると、壱華が心配そうに近づいてきた。
「どうしたの? 何かあった?」
彼女の手が額に触れる。ひんやりとした感触が、疲れた心を癒す。
「ちょっと、仕事でいろいろあって……」
苦笑いを浮かべ、風呂に向かった。
風呂から上がると、壱華がベッドルームで待っていた。
「疲れたでしょ? マッサージしてあげる」
彼女の優しい微笑みに、心が軽くなる。
ベッドに横になると、壱華の手が腰から脚にかけて丁寧に揉みほぐしてくれる。柔らかな指先が、じんわりと疲れを溶かしていく。思わず声が漏れそうになる心地よさだ。
「仰向けになって」
壱華が耳元で囁く。言われるままに身体を返すと、彼女がそっと跨ってきた。
ズボンを下ろし、彼女の唇が僕の自身に触れる。柔らかな感触と熱い吐息が、身体を震わせる。
「ん……はぁ……」
壱華は丁寧に、愛おしそうに奉仕してくれる。舌が滑らかに動き、亀頭や裏筋を刺激するたび、快感が全身を駆け巡る。
「んふ……ちゅっ……」
彼女の巧みな舌使いに、あっという間に限界が近づく。だが、壱華はそこで口を離し、妖艶な笑みを浮かべた。
「まだダメよ」
彼女は僕の股間に跨り、秘部を自身に擦りつけてくる。熱く濡れた感触が、頭をぼうっとさせる。
「んん……気持ちいい?」
腰を動かしながら囁く彼女の声に、僕はただ頷くしかなかった。
ゆっくりと腰を下ろし、彼女の膣内が僕を包み込む。狭く熱い感触に、ヒダが絡みつくような刺激が走る。射精しそうな快感に、身体が震える。
「動くね」
壱華はゆっくりと腰を動かし始めた。最初は優しく、徐々にリズムが速まる。彼女の甘い喘ぎ声が部屋に響き、興奮をさらに煽る。
「あんっ……あっ……」
僕は手を伸ばし、彼女の豊かな胸を掴んだ。柔らかく弾力のある感触に、膣内の締まりが強くなる。乳首を軽くつまむと、彼女の反応が一変した。
「あっ! そこ、ダメっ……!」
「僕も、もう出そう……!」
「中に出して! いっぱい、ちょうだい……!」
壱華の声に促され、僕は子宮口に自身を押し当て、熱い欲望を解放した。
「あぁっ!」
彼女は絶頂を迎え、身体を大きく震わせて倒れ込んだ。膣内が激しく収縮し、精液を搾り取るような感覚が続いた。引き抜くと、白濁の液体が流れ出し、シーツを濡らす。
「はぁ……はぁ……」
壱華は余韻に浸りながら、僕の隣に横たわった。僕は彼女の柔らかな肌をそっと撫でた。
「今日、疲れてたよね。何かあったの?」
彼女の心配そうな声に、僕は今日の出来事を話し始めた。五木さんの告白、彼女の愛人になりたいという願い。黒見さんとの関係も含め、すべてを打ち明けた。
壱華は黙って聞き、時折眉をひそめた。話し終えると、彼女は小さく息をつき、囁くように言った。
「また……愛人、ですか?」
その声には、不安と悲しみが滲んでいた。黒見さんとの約束、そして今、新たな提案。僕の心は、壱華への愛と社会の価値観の間で、ますます揺れ動いていた。
「お願いできないかな? もちろん、壱華が嫌なら断ってくれていいんだけど……」
僕は五木さんの提案を伝えながら、壱華の顔をそっと窺った。彼女の瞳には、複雑な感情が揺れている。
「嫌に決まってるよ……でも、その五木さんって人、ちょっと気になる」
壱華の声は小さく、悲しげに響いた。
「え?」
思わず聞き返すと、彼女は静かに話し始めた。
「私の母は、父を早くに亡くしてね。それから何人かの男性と付き合ったけど、すぐに捨てられた。お金を取られたり、暴力を振るわれたり……。なんとか父が残したお金で大学まで行けたけど、当時は本当に辛かった。だから、五木さんの気持ち、すごく分かるの。傷ついた女性の気持ちが……。だから、彼女と会って話したい」
壱華の瞳には、過去の痛みと五木さんへの同情が混じっていた。僕は彼女の優しさに胸を打たれ、頷いた。
「うん、壱華がそう言うなら、五木さんと約束してみるよ」