きらきらせっくす! 作:きらきら
イカのようなフォルムのMSがブーストを吹かせて空中で加速する。
急旋回とバレルロール、変則軌道などを駆使して自由自在に空を駆け、可変MSハンブラビが通り過ぎた跡にビームの雨が降り注ぐ。
「オラオラァ! どうした強化人間、その程度かぁ!?」
「くっ、なんで当たらないの……ッ」
ここはムラサメ研究所の地下に造られた特殊な演習場。そこで二機のモビルスーツを使った模擬戦が行われていた。
ハンブラビを操縦するのは一年戦争で撃墜スコア100超えを叩き出したエースパイロット、ケンシ・タネヅ大尉。
その相手をしているのは、ムラサメ研究所所属の強化人間ドゥー・ムラサメが駆るサイコガンダム。
一年戦争の終戦後。エースパイロットとして名を馳せていたタネヅ大尉はその腕前を買われて紆余曲折の末、ムラサメ研究所でMS戦の教導を行うことになった。
そして現在、彼はハンブラビを自分の手足のように操縦し、サイコガンダムを圧倒していた。
「なめてんのかァ!? 教本通りじゃ掠りもしねぇぞ!」
一年戦争の撃墜王であり実戦経験豊富なタネヅ大尉からすれば、教本通りの動きしかできず拙い操縦を繰り返す新人パイロットなど相手にならない。
拡散ビーム? Iフィールド? 浮遊する装甲板による質量攻撃? 確かにサイコガンダムが脅威的な技術の塊であることは認めよう。
しかし、それらを操るパイロットが実戦経験者ですらない新兵未満ならば、次にどんな行動を取るのか先読みし対処することなど造作もない。
「俺様のデカマラぶち込んでやるぜぇ!」
MA形態に変形したハンブラビがブーストを吹かせてサイコガンダムに肉薄する。
浮遊する装甲板とビームの雨を潜り抜け、ついにサイコガンダムの背後を取ると、至近距離でMS形態に変形したハンブラビはビームサーベルを引き抜きサイコガンダムの胴部に押し当てる。
文句なしの撃墜判定。
模擬戦用にビームの出力を下げて威力を抑えているが、これが実戦ならばコックピットを貫いてパイロットは消し炭になっていた。
ドゥーは悔しそうな顔をするが、ぐうの音も出ない完全な敗北である。
その後、何度も模擬戦を繰り返すが、その度にドゥーは撃墜判定をくらい続けた。結果は13-0。タネヅ大尉の圧勝だった。
「よーし、時間だ。これで訓練は終わりとする」
「……っ!」
演習を終えて二人はMS格納庫に戻った。
ハンブラビのコックピットから降りてきたタネヅ大尉は、同じくサイコガンダムから降りてきて、息を切らせながらも悔しそうに下唇を噛むドゥーを見て鼻で笑う。
「総評するからよく聞けやガキ! マシなのは反応速度だけで他は落第点だ。しかも模擬戦だからって後半は相打ち狙いで雑な動きしやがって。演習の環境に甘えてんのか!? 被弾したら死ぬつもりで、実戦を想定して動けや!」
「……分かってる」
「へえ、なにが分かってるって?」
生意気な口を利くドゥーに向かってタネヅ大尉が距離を詰め、おもむろにドゥーが着ているパイロットスーツの前面にあるジッパーをつまんでそのまま下ろす。
隙間から華奢な肌が露出し、ほんのり甘い汗の匂いがするそこに腕を突っ込んでドゥーの慎ましい胸を手のひらに収めた。
「んぇ……!?」
「Aカップってとこかぁ? まあ貧相な体つきだし期待はしてなかったが」
驚きのあまり目を見開き硬直するドゥーを気にする素振りもなく、汗のせいで手のひらに吸い付くように張り付く小さな胸を揉みしだきながらタネヅ大尉が好色そうな表情を浮かべる。
「ツラだけは良いから、ぎりぎり部下として認めてやってもいいぜ。ま、俺様の下半身を満足させられたらの話だけどな」
「なに、するの……! 意味が分からない……!」
むにむにと胸を弄ばれたドゥーがタネヅ大尉の腕を掴んで引き剝がそうと力を籠めるが、筋力と体格が違うためビクともしない。体を捩って嫌がりながらドゥーは不快そうにタネヅ大尉を睨みつける。
「ああん? なにって部下との交流と体調管理だけど、文句あんの? てか、俺に模擬戦でボロクソに負けた分際でその反抗的な目つきは何?」
「んっ……模擬戦の結果と、こんなことに……っあ……なんの関係が、あるの……!」
正論である。MSを使った模擬戦で勝ったからといってセクハラが罷り通るわけがない。未開の蛮族かお前は。
しかし、この糞野郎はそれで引き下がるような人間ではない。にやりと笑うと頭がおかしい理論を展開し始めた。
「お前の敗因は体の使い方にある。だからこそ、まるでなってねえこの貧弱な体の動かし方を、慈悲深くて心優しいこのタネヅ様が直々に指導してやろうってんだよ。今回の模擬戦でお前が無様を晒した理由を知りたくねえの? それとも、強くなりたくねえの?」
「それは……」
その言葉を聞いてドゥーが黙り込む。
男の言葉に一理あるかもと思ったからだ。模擬戦で圧倒されて手も足も出なかったのは事実であり、性格は兎も角その実力に関しては疑う余地がない。
更に業腹なことに、実力差がありすぎて何をどうすれば勝てるようになるのか、経験を積んだ未来の彼女ならばともかく、今の段階だと敗因を分析して言語化することすら困難だ。
冷静に考えればMS戦に体の使いなんて1ミリも関係ない詐欺師の戯言だと分かるが、曲がりなりにも大戦で名を馳せたエースパイロットの言葉であり、たった今ドゥーが圧倒的な差を見せつけられて敗北を喫した相手だ。
そんな相手から体の使い方が悪いと言われれば、それを否定する材料がない。
「これが実戦ならとっくに2桁回くたばってる死体の分際で指導は不要ですってか? ああ?」
「っ……!」
ドゥーが唯一言える事は、今回の模擬戦の勝敗はパイロットの性能の差によるものだという事だ。
さもありなん、機体性能ではサイコガンダムがハンブラビよりも遥かに上なのだから。
だからこそ、自身を心臓と定義するドゥーは、使えない心臓のせいで
それらを認めたドゥーは抵抗をやめて、悔しさを噛み締めてしぶしぶ口を開く。
「……分かった、教えて」
「お願いしますだろ馬鹿女!」
バシン、とタネヅ大尉の平手打ちがドゥーの頬に炸裂した。殴られたドゥーはよろめき、殴られた所に手を当てて呆然とする。
それを確認したタネヅ大尉がにやりと笑い、ドゥーの下腹部に手を伸ばそうとした。
そして慌ててやってきたムラサメ研究所の職員たちによって、タネヅ大尉は取り押さえられた。
なんやこのくそ野郎は……