※この作品はR-18です。

多元世界ヒロインズ   作:ころろこ

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少年、分身し世話を焼く

「……エヴァも最初荒れてたよね」

「……忘れたな」

 

 恨み言を口から呪詛のように出し続ける琴子と全てに興味がないホシノの二人。

召喚に成功したのも束の間、次の問題にぶち当たった。

 

「さてと……取り敢えず、どうしよう?」

「どうにかしろ。流石に私も面倒は見られんぞ」

「琴子の方はまだいいけど……重症具合はホシノの方だな」

「あれは、心がやられてる。何を体験した世界から来たのやら」

「……一応、予想は付くかな」

 

 彼女の通うアビドス高等学校は、地域の砂漠化により人が減少して生徒が居なくなり、多くの借金を背負う事になる。

それをどうにかして学校を救おうと言うのが学校に残った彼女ーーホシノと仲間達のストーリーだ。

このストーリーだと、主人公の先生とホシノ達でどうにかこうにか滅亡を回避出来たのだが、これには明確なBADENDの描写もあったりする。

多くは語らないが、他の時間軸の話があり、そちらだと失敗に終わっていると話がされる。

その結果、仲間達は転校やら失踪など酷い末路辿る事となった。

 

「そこら辺の時間軸だと思う」

「何故大人達でなく生徒がとか、ツッコミ所が多いがある程度は分かった」

「まぁ、そう言う設定の世界だしね。碌な大人達がいなかったし」

「……そこまでは酷くはないかな~」

 

 目が死んでるホシノに対して何があったのかを考察し、エヴァに説明していると、本人が口を開く。

相変わらず目に光はないが、口調的に悲観さはなかった。

 

「聞いても?」

「皆は生きてるよ。学校も無事~」

「それなら……何でこんな無気力に?」

「……先生がヒナちゃんを選んだ」

「あー……」

「デートもしていい雰囲気だったけど……最後はヒナちゃんだった~。学校も街もおじさんが居なくても問題なくなったし、シロコちゃん達も立派に育って、おじさん……やる事なくなっちゃった」

「ちなみにどっちが先?やる事がなくなった方が前?後?」

「前」

 

 それを聞いて京之助はなるほどと納得した。

学校の方は慕っていたユメ先輩から引き継いだ悲願であり、借金の返済に街の復興とやる事が多く、突っ走れた。

しかし、それが突如解消。

後輩達も面倒を見る必要性がないほどに成長し、次の目標を見つける前に自由と言う名に放り棄てられた。

そんな心の中がぽっかりと開いた所に、親友と先生の好きな二人がくっ付くと言う衝撃を受け、ユメ先輩と言う軸と恋心のロストにより、未練が無くなって無気力状態にと言う事らしい。

簡単に言えば生きる目的を失ってしまっている。

 

「……」

「……」

 

 今の話を聞いてエヴァが、何かを言おうとするもすぐに口を閉じた。

思ったよりも大事でないな、とでも言おうとしたのだろう。

しかし、それを言わなかったのは自分にも経験がある事を思い出したからだ。

 

 ナギにより登校地獄を受けて、待っている間にナギが亡くなった事を知った。

それにより、一時的とはいえ、生きる目的を失っている。

どうしたらいいか分からず、どうにも出来なくて、どうでもよくなった経験だ。

経過こそ正反対であるが、辿り着いた先は一緒だった。

 

「……時間が解決するのを待つしかないだろうな」

「そうだな。でも一人にさせとくのはな~」

「と言ってもお前には学校があるだろう。私達が見てるか?」

「んー……」

 

 生きる気力がないホシノを一人にはして置けない。

それを察してか、エヴァが共感故か先ほどの言動とは反対に世話をしようかと申し出る。

しかし、自分が召喚したのにその相手をエヴァ達に任せると言うのも、京之助はどうなのだろうと思った。

 

「あぁ……そうだ。これならいけるかも」

「何を思いついた?」

「まぁ……スキルの持続力次第だけど……呪詛を吐いている所申し訳ないけど、早速知恵を貸して貰える?」

「ぐっ……あの時、攻めていればーー」

 

 とある事を思い付いた京之助は琴子に話しかけた。

彼女はまだ呪詛を吐き続けており、怖い表情をしている。

しかし、声を掛ければ先ほどの表情は何だったのだと言うほどにすました顔となった。

あまりにも早い変わり身に、京之助とエヴァも引くほどである。

 

「む……何でしょう?ダンジョン探索のお手伝いでしょうか?」

「『身外身(しんがいしん)』の使い方って判ったりしない?」

身外身(しんがいしん)……斉天大聖(せいてんたいせい)の仙術でしょうか……それでしたら分身したい数の体毛を口の中で噛み、気を流し込み噴き出せば出来る筈です」

「気……?」

「そうですね。今回の場合は職業(クラス)によって得た能力(スキル)ですし気に代わる何かがある筈です。魔法などを使うとSPが消費されるように」

「あ……GPか」

 

 琴子に相談したのは斉天大聖(せいてんたいせい)の仙術スキルであった。

今まで使い方も分からず、イメージを明確的にしながらやったりと試行錯誤していたのだが、琴子は詳しいやり方を教えてくれる。

 

「そう……噛みしめて、頭の中で力を髪の毛に流し込むようにイメージをして下さい」

「……」

 

 言われた通りにしてみると、ステータス画面のGPが見る見るうちに消費されていく。

どうやら好きなだけ流し込む事が出来るようだ。

取り敢えず、全てを流し込んだ方が持続力が伸びそうなのでGPを全てを消費する。

 

「流し込み終わりましたら、自分の姿を強くイメージした後に髪の毛を外に噴いて下さい」

「……」

 

 琴子の言葉に従い、口の中にある髪の毛を軽く外に飛ばす。

すると、その髪の毛が見る見るうちに人の形をしていった。

 

「「おぉっ」」

「成功したようですね」

「ほう……」

 

 まさに瓜二つの京之助が出来上がり、互いに顔を見合わせて驚く。

横で見ていたエヴァもこれに関心していた。

 

「それじゃ、俺よろしく」

「任された」

「なるほど、身外身(しんがいしん)に任せるのか」

「どの位持つか不明だから、お試しだけど」

 

 それだけ説明するともう一人の京之助は、ホシノの傍に寄り一緒にゆったりとし始める。

どれほど無気力なのか不明な上、あまり干渉し過ぎても良くなさそうだ。

なるべく傍に居て、立ち上がれるまで待つしかない。

 

「それで、これからについての相談だけど……協力してくれるって事でいいんだよな?」

「そうですね。召喚に応じた身ですので、協力は惜しみません。しかし……」

「しかし?」

「流石に出会ってすぐに合体と言うのは……」

「ですよねー」

 

 琴子は興味はあるんですけどねーと言った、少し困ったような表情だ。

確かに出会ってそれほど経ってないのに行き成りは、京之助とて準備が出来ていない。

 

「なら、暫くはここで?」

「そうなります。いずれは捧げるつもりではありますが、今ではありません」

「ちなみに職業(クラス)としてはどうなった?」

「今の職業(クラス)は『一眼一足』ですね。神になる前の準備段階の様で、スキル的に文官に『召喚士(サモナー)』を足したような形でしょうか?」

 

 やはりと言うべきか、琴子の職業もまたユニーク系であった。

ここまで来ると全てのヒロインが自分にあった職業を持っていると判断してもいいだろう。

 

召喚士(サモナー)はどんな職業?」

「そうですね……私の場合は、SPを消費して一時的に妖を召喚。その子達の能力によって様々な恩恵を与えると言った形ですね」

「効く限りだと有効性が高いなー」

「召喚出来るのは知識にある妖のみのようです。格式が高いのも召喚は出来ません」

 

 何とも琴子とあったスキルである。

知識の中にあるという事はほぼ、全ての妖を召喚できると言ってるも同じだ。

何せ妖の知恵の神なのだ。

これ以上に彼女に噛み合うスキルもないだろう。

 

「とは言え、ダンジョン内部に入らないなら宝の持ち腐れだ。私達が欲しいのが案内人であり、その案内も出来ないとーー」

「それなら問題はありません」

「ほぅ?」

 

 少し不機嫌そうなエヴァに対して、琴子は涼し気な表情である。

相性がいいのか悪いのか、この段階では予測も出来ず、京之助は少しばかり居心地の悪さを感じた。

 

「此方の子に案内をさせますのでーー」

 

 そう言って、琴子は一体のとある妖怪を召喚した。

 

 

 

 

 

 

 

………

 

……

 

 

 

 

 

 

 

「便利だねー」

「便利だな」

 

 相も変わらず(さん)階層既知外(きちがい)領域内を京之助とエヴァの二人は歩く。

何時もと違うのは、その歩き方は迷いなく、一直線に次の階層へと進んでいる事だ。

と言うのも二人の目の前に一体の妖が居るからである。

女性の白い影が一つの提灯を持ち、ゆらゆらと道案内してくれているからだ。

この妖怪の名は『送り提灯(おくりちょうちん)』、戦闘能力こそないが道案内が得意という事で案内してもらっていた。

 

「こう言った事が妖の数だけ出来るのは万能過ぎるな」

「そうだよね。ほぼ全てを使えると言っても過言じゃない」

 

 妖達は一芸に特化した者が多く、効果も高い事が多い。

更に言えば、琴子自身は『どこでもラブホ』内に居てもいいらしい。

その代わり公平による経験値などは入らず、レベルを上げるには同行必須である。

それでも十分にチート級のスキルであり、流石のエヴァもこれには舌を巻くばかりであった。

 

「あった。次の階層のゲートだ」

「はぁ……ここまで楽だと文官が必須と言うのも頷けるな」

 

 今までの苦労は何だったのだろうと言わんばかりに、次の階層はすぐに見つかる。

これが案内人が居ると居ないとの差であった。

 

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