多元世界ヒロインズ 作:ころろこ
特にコメントありがたいです。
仁王立ちしている叶馬を前に京之助は、どうしてこうも会うのだろうかと思うも、直ぐにその思いを訂正した。
どうしてもこうも、自分自身が叶馬の行きそうな場所へと赴いているのだと気づいたからだ。
ダンジョン内部の参階層は論外にしても、今回は『
原作でも早々に来ている描写もあり、こうして会う可能性が高いのは分かっていた筈だ。
つまりは、今の状況はそれを忘れていた京之助自身が作り出したものであった。
「……」
「……」
そう思えば、この出会いは必然かと不思議な事でもないかと思った。
「……会いたかったと言ったが、何か用?」
「
「あー……」
何やら獰猛な笑みを浮かべているので、それとなく察してはいた。
しかし、こうも真正面から堂々と言われるのは何とも怖いものである。
京之助の脳内で仕が死に変換されてしまうほどに、叶馬の纏う空気がヤバいものであった。
現に叶馬の連れていた双子の姉妹は隅っこで縮まり『猿神様です。猿神様が現れました』と呟き、静香は何やら興奮しながらも、固まって動かないポニーテールの女子を安全圏へと脱出させる。
麻衣は既に誠一の後ろに隠れ、どうにかしろと後ろから押し込み、誠一は足を踏ん張って前には行かないと頑張っていた。
カウンターでのんびりとしていた上級生は、今や顔を引っ込めぶるぶると怯えている。
「んー……どこですんのよ?」
「!……道場を借りようと思う」
そんな空気の中、京之助は落ち着き払ってる自分に驚きながらも、前向きに答えられた。
頭の中でどうするかと悩んだ結果、戦えるなら戦ってみようかと思ったのだ。
勝つ負けるではなく、純粋に叶馬と言う人間がどの位強いのかと興味が湧いている。
更に言えばモンスターとの戦闘を多く重ねた自分が、何処まで動けるのか試してみたくなったのだ。
前の『戦いたくはない』と言った時から、少しばかり成長したらしいと京之助は心の中で苦笑する。
「いや、そこじゃ駄目だろ」
「む……」
「本気のぶつかり合いをしたいんだろ?」
「あぁ、そうだ。全力でぶつかりたい」
「どう考えても大怪我か死人が出るぞ。やるにしても死んでも平気なダンジョンとかでないと」
「……ならば」
「あと回復剤か、『
と言うものの、叶馬との仕合はどう考えても壮絶なものになりそうであり、相応の準備をしなければエヴァに怒られそうであった。
その事を告げると叶馬は、考えてなかったという顔つきになり、チラっと双子の姉妹の方へと視線を向ける。
それが意味するのは一つだけだ。
双子の姉妹の何方かが、『
「それ……むっ」
「……」
叶馬は、視線を戻して口を開きかけるも、直ぐに閉じる。
と言うのも京之助の後ろに居た誠一が腕を大きく上げて罰印を作っていたからだ。
『
存在を知られれば、問題事しか呼ばず知られる訳にはいかない。
誠一が必死に体を張って止めるのも頷ける話だった……バレバレでなければだが。
「……そういう訳で、暫くは無理だろう」
「そうか……残念だ」
話を拗らせる気もなく、京之助としては関係を悪くする気もないので知らぬ存じぬを貫いた。
元より、『
結局、すぐに戦う事が出来ない事を伝えれば叶馬は残念だと肩を落として元気をなくしてしまった。
「あ、叶馬くんだ。やっほー」
「蜜柑先輩!」
しかし、それも少しの間であった。
入口の方から、エプロンを付けたちっこい女子生徒がトコトコとやって来て叶馬に挨拶をしたのだ。
それだけで先ほどの落ち込みは何だったのかと言うほどに上機嫌となる。
「お言葉に甘えて推参しました」
「あはは、相変わらず固いね。フランク、フランク」
両手をビシっと横に付けて九十度のお辞儀を叶馬は決める。
そんな彼に蜜柑先輩と呼ばれた女子生徒は、両手の指を一本立て両頬に当ててニコニコと笑った。
「それで、この子達が叶馬くんのお友達?」
「はい!……はっ!?」
「……何?」
蜜柑は、叶馬に挨拶すると改めて周りを見渡して、そう言った。
対して叶馬が嬉しそうに頷き、途中でとある事を思い出して京之助を見る。
それは、京之助の連れていたパートナーらしき少女エヴァの事であった。
エヴァは小さく可愛らしい少女である。
つまり、京之助の好みはあのような少女の可能性が高い。
蜜柑先輩は小さくで可愛い……という事は……
「♪~(´ε`;)」
「……何だ行き成り。口笛吹けてねーし、隠せてもねーよ!?」
「ちょっ、どうして私を隠すの!?」
「NO……ココニハダレモイナイ。OK?」
「いや……取らねーよ」
突如、叶馬は蜜柑先輩の前に立って、隠し始める。
どうも京之助に取られるのではと言う結論に達したようだ。
流石にここまで露骨であると京之助も、叶馬がどんな事を考えてこういった行動に出たのかを察し、興味がないと否定する。
そうすれば、今度は先輩がプリチーでないと?と怒った。
何と面倒臭い事かと、京之助は痛む頭を押さえる。
「あー……悪いけど、用事あるから」
「むっ……そうか、先輩のプリチーさを普及させたかったのだが」
「隠したいのか自慢したいのか、どっちなんだよ」
叶馬と一緒に居ると京之助はツッコミ担当にならざるを得ないらしく、会話自体がコントの様になってしまう。
正直に言えば、こう言う遣り取りは嫌いではなく相性自体はいいんだよなと思った。
しかし、そんな会話をしていると幾ら時間があっても足りない。
今日の用事を済ますべく、カウンターで此方をそっと覗いていたもう一人の先輩へと体を向けた。
「鑑定と調整お願いします」
「うわわ……でっかい!しかも……重いね、これ」
ここに来る間、ずっと持っていた一対のガントレットをカウンターの上に差し出す。
このガントレットは昨日の『
重さは片方に付き五十kgとかなりの重量級物となっているが、如意棒で鍛えられた京之助からしたら紙の様な軽さであり、物足りなさがあった。
それでも今使用している物よりかは重く、使用感がだいぶ改善されそうである。
物を差し出せば、カウンターが重さで軋み声をあげるも、耐えられない重さと言う訳でもない為、すぐに収まる。
カウンターで覗き見していた先輩は、恐る恐るもガントレットを見始め仕事を開始した。
「わわっ……凛子ちゃんこれ大物じゃない?」
「んー……多分マジックアイテムかな。ボスドロップ?いや、でもこの時期に一年生が?」
「どの位掛かりそうですか?」
「二日あれば大丈夫かな」
「それではお願いします」
「あいあいー、あっ……そうだ。うちの子を助けてくれたんだってね?ありがとねー、お礼に少し負けておくから」
用事も終わり、帰るかとなった時にカウンターから覗いていた女子生徒の凛子が、ちょいちょいと手招きをした。
何か用かと思い、京之助が近づくと耳元でひそひそと先ほどの助けた女の子のお礼を言われる。
その時、視線が蜜柑にチラチラと向けられていたので彼女に聞かれたくないと言った所らしい。
と言っても件の蜜柑は、叶馬と話しつつカウンターに置かれたガントレットに夢中で、此方を気にしてはいなかった。
「……それじゃ、お願いしますね」
「うん、本当にありがとうね」
頭の中で『大丈夫なんですか?狙われてるみたいですけど』と思うも、口にはしなかった。
それを一番自覚しているのは彼女達であり、それなら手を貸すのかと言われれば京之助はこの先を知っているのでNOと答えねばならず無責任となるからだ。
京之助は助けはするが、救いはしない。
救うのは叶馬の役目であり、手助け位は機会があればしようかと思う程度である。
それまでの間、彼女達は苦難が続くだろうが、救われる予定があるだけ他よりもマシであった。
………
……
…
「……」
「うわーうわー……」
「くっ、このっ!はっはっは、ザマーミロ!」
「はぁ……」
「あぁ、お帰り俺」
『
帰還して見れば、ホシノは変わらず何もせずボーとしており、琴子は備え付けのエロ下着を見て楽しそうに興奮し、エヴァはゲームのボスを倒してご機嫌である。
彼女達と比べるとこっちは何と平和な事かと、京之助は安堵のため息を付く。
やはり、ダンジョンは好きだが、この学園は好きになれそうになかった。