多元世界ヒロインズ 作:ころろこ
特にコメントありがたいです。
後半部分を大幅に変更した物になります。
「くそゲー!!!」
「叫ぶな、分かってる事だろうに」
「むぅ……ここに来て難易度が上がりますか」
いつもの『どこでもラブホ』内で、京之助は思いの丈を吐き出す。
と言うのも、あの後、仲間が殺された事により難易度が上昇したのだ。
男達の油断がなくなり、警戒心も高くなった。
ちょっとやそっとの奇襲では通じなくなってきたのだ。
「グレネードで吹き飛んだ時は驚いたな」
「それな。エヴァが吹き飛んで血の気が引いたわ」
「まぁ……それにより、私達の仕様が判明したので良い結果と言えましょう」
次の話題は、エヴァが吹き飛んで一乙した時の話である。
敵を四人ほどにした途端に相手がグレネードを使いだしたのだ。
最初見た時に京之助とエヴァの反応が遅れてしまう。
それもしょうがない話である、何せそんな物を二人は見た事も使った事もないのだ。
グレネードであると気付いた時は、エヴァが爆発に巻き込まれて吹き飛んだ後である。
「私達が死ぬと魂魄結晶ではなく、カードに戻るようだ。デメリットとしては次の召喚までの時間制限ぐらいか」
「魂魄結晶と同じく回収されないと
エヴァが吹き飛び、急いで向かうとカードに戻った彼女を発見。
京之助は直ぐに『どこでもラブホ』に戻り、真っ青な顔でエヴァが復活するまで棒立ちとなる。
エヴァが無事に復活を果たした際には、脇目も振らずに大泣きしてエヴァに抱き着き。
結局、その後も休憩時間にして丸一日が経過するまで、使い物にならなくなった。
「……愛されてますね。羨ましいほどに」
「ハッ、当たり前だ」
「……」
その事の話となり、琴子は涼し気な表情をしつつも声が震えており、エヴァは何を言ってるんだと胸を張る。
京之助と言えば、実際に愛しているし大事なのだが、気恥ずかしく無言を貫いた。
「ごほん……カードのロストの可能性もありますし、他のデメリットもあるかも知れません。取り敢えず、このまま方針は『いのちをだいじに』で行きましょう」
「賛成」
「まぁ……こんなふざけたクエストでなければ、私達は不死身なんだがな」
「それで今後の攻略なのですか。正面からの撃ち合いだと勝ち目はありませんね」
「難易度がおかしいです。おひいさま」
「そこです。このレイドは特殊過ぎて鬼畜難易度になっているかのように思えますが、そもそも前提が間違ってるのかも知れません」
「うん?」
「このレイドは『
「「あー……」」
『
単純な力押しなどで解決する他のレイドクエストと比べて、攻略するのはボスではなく、その世界観だと言われてる程だ。
ギミックさえ解ければ、格上の相手でも勝つ可能性が生まれる。
「忘れてた」
「最初に装備を渡されていたのが罠ですね。まさに撃ち合いで倒せと言わんばかりでしたから」
「ちっ……つまりは、そのギミックをどうにか起動すればいいだけで、私達が戦う必要性はなかったって事か」
「そこまでは判りません。ギミックを解除するのに戦闘が必須かも知れませんし、敵を何人か倒してからでないと起動しないとか条件もありそうです」
「
琴子の言葉に京之助とエヴァは、ベッドに寝そべり、もう疲れましたと動きたくありませんと意思表示をした。
「取り敢えず、敵を倒しながら街の中を走り回りましょう。何かしらのギミックが無いか探すのです」
「と言っても街の中は広いぞ?」
「たぶん……分かりやすい物となっているはずです。敵に追いかけられながらなので、本棚の中の一冊とかでなく、記念碑とか人とか、一目見て分かるような」
「……探すかー」
京之助は座り込むと頭を掻いてそう言った。
流石にこのまま諦めて餓死するなんてごめんである。
そんな三人を見てホシノは、目を瞑り静かに考え出した。
………
……
…
「あぁ、成る程……この物語だったのか」
そのギミックはとある建物の中庭に存在していた。
そして、京之助は一目見た瞬間にこの物語のタイトルを思い出す。
「知ってる物語か?」
「うん、前世で良く読んでいた。流石に何十年と経ってたから思い出せなかったけど……確かに
中庭に置いてあったのは一台のモトラド(※二輪車。 空を飛ばないものだけを指す)であった。
『あれ、もう帰ってきたの?』
「バイクが喋る世界観なのか……」
『やだなー、バイクみたいに空は飛ばないってば』
「……どんな世界観なんだ」
中庭のモトラドは、大変お喋りだった。
悠長に喋り、何処か楽しげに聞こえる声で二人を歓迎する。
しかし、その時に京之助は聞き捨てならない言葉を耳にした。
「……帰ってきたとは?」
『ここに来て襲撃者に襲われたから、安全を確保するために出掛けたでしょ?』
「君は、エルメスでいいんだよな?」
『そうだよ。忘れちゃったの?××』
話を続ければ続くほど、京之助は嫌な予感に襲われた。
このモトラドは、『キノの旅』に登場する主人公の相棒役である。
そんな彼が、初めて会う京之助達に対して、親しく話しかけて来ているのだ。
「……もしかして、俺達がキノ役?」
『あっ、気付いた。うん、君達はキノを演じなければならない』
京之助は一度空を眺めた後に、下を向いて大きくため息を付くと確認を取った。
返ってきた答えは、京之助の思う通りであり、ふざけんなと思った。
今思えば、武器も服装も主人公であるキノの装備であり、役目を果たせと言わんばかりであった。
「……何巻の話だっけ?」
『五巻の英雄達の国だね。一応荷台にある荷物の中に原作があるよ』
「エルメス、原作通りに動いたらどうなる?」
『補正が入るね。目的はあくまで七人の討伐だから、原作通りでなくてもいいけど、大変かも』
「補正はどの程度?」
『んー……パースエイダーの扱いがある程度慣れた人なら八割ぐらいで再現出来る程度?』
次々に質問を繰り返してみると、敵の攻略情報を色々と教えてくれた。
どうやら、ギミック扱いであるエルメスはお助けキャラのようだ。
『あっ……敵が来たかも、戻った方がいいよ?』
「どうする?物資はまだあるから戦えるが」
「いや、戻ろう。原作の描写がどうなってるかを確認して、再度作戦を立て直す」
暫くの間、話をしていると残りの敵が近くまで来ていた。
それに気付き、京之助達は今回を諦めることにする。
しかし、今回で大きな情報が入り、一歩前進したことに変わりはなく、京之助達の足取りは少しだけ軽くなった。
………
……
…
「なるほど、本当に物語通りに進めなければいけない訳ですか」
「一応そうすれば楽だよって感じだけどね」
あの後、部屋に戻ると先ほどあったことを琴子に伝える。
それと同時に本棚に収納してあった原作を引っ張り出して、どの様な戦いを繰り広げたかも確認した。
物語をなぞることでクリアが可能と言われて見てみるも、描写通りで行けば、京之助達では真似など出来そうにないものであった。
「公園を渡る時とか、グレネードを空中で落とすとか無理」
「そうですね。幾つか参考にしつつ独自のものを組み入れてチャートを作るのが宜しいかと」
紙に何をどうするか、オリジナルのチャートを描いていく。
こうしてみると、既に半分は攻略が可能であり、行けるのではと言う気持ちになってくる。
「最初のカードに戻す奇襲はそのままでもいいけど、スナイパーライフルが必要になるんだよな」
「いっそのこと運任せでリボルバーに変えるべきか?」
「それが良いかも。スナイパーライフル主体で戦ってるし、必要ないのはリボルバーのカノンだけだ。外したら再スタートで」
「そこも大事ですが、最後の仲間の死体を使ったトラップは絶対にいれた方がいいと思います。三人を確定で倒せるのは大きいので」
三人であーだこーだと作戦会議は続く中で、もう一人の京之助は静かに見守っていた。
どうせ口を出したところで、本体と同じことしか言えない上に、能力禁止により手助けも出来ない。
それが何とも歯がゆい事であるが、どうしようもなかった。
「はぁ……」
「……」
そんな彼をホシノの目がずっと捉えていた。
じっと見つめ、視線が合っても逸らさず見続ける。
「えーと……どうかした?」
何時もとは違うホシノの様子に、彼は苦しい顔を隠すように、にへらっと笑い、何時ものように頭を撫でて問題はないと暗に伝える。
しかし、そんな彼の胸の内をホルスの目が見逃すわけもない。
「おじさんが出ようか?」
「……いや、まだ大じょ」
分身体の彼の太ももに頭を乗せ見上げていたホシノは、腕を伸ばして頭を掴むと、先ほどの彼のように、にへらっと笑う。
「銃の扱いが上手い人が必要なんでしょ~?今おじさんが出なかったら何時出るのさ」
「いや、でもさ……何時ものように動けないし、銃弾が当たれば痛いですまないよ?」
「うへ~確かに怖いけどさー、そこは皆一緒だからね~。幸い死んでもカードに戻るだけだし、やってみる価値はあると思うんだ~」
「本当にいいの?」
「おじさん信用ないかな?」
なおも渋る彼にホシノの目が揺れる。
「いや、
そんな目を彼の揺らぎない目が、しっかりと見据えた。
「じゃぁ、怪我をしないように頑張らないとね」
「うん」
「それと一人だと流石に厳しいから相棒役お願いね~」
「分かってる」
目と目を合わせて二人の中で約束が結ばれる。
そして、彼は元からいなかったかの様に消えていった。
彼が消えた事で太ももの上に置いていた、ホシノの頭はベッドへと落下する。
「……!」
「どうした?」
「どうかしました?」
ホシノは彼が完全に消えた事を確認し、体を起こして京之助本体へと目を向けた。
するとそこには、分身が消えたことにより、記憶の結合が起きて驚く京之助の姿が目に入る。
そんな彼に、ホシノはにへらっと笑いかけた。