多元世界ヒロインズ 作:ころろこ
特にコメントありがたいです。
「さて、身外身の活用方法が分かった事で、今回の事をまとめようと思うのですが……大丈夫でしょうか?」
「……おひいさま、心が辛いです」
一時間が経ち、身外身の効果もなくなり、記憶が結合される。
今回は六十人もの記憶が順々に流れて来るために、京之助は強制的に寝込んでしまった。
一瞬で目の前が真っ暗となり、起きた時には、記憶達による感情が押し寄せる。
正直言えば、かなり辛く、何もやる気が起きないほどであった。
「そこら辺は今後の課題ですね。辛い記憶や感情は省くようにし、必要な記憶だけを残せるように訓練しましょう」
「……はい」
京之助は、琴子に返事をすると根性で起き上がる。
軽度な鬱のような状態であっても、琴子の話は重要であり、聞かないと言う選択肢はなかった。
「……」
「おひいさま?」
「ごほん……いえ、何でも」
「うん?」
ベッドから起き上がり、琴子に視線を合わせ言葉を待つも一向に話がされない。
その事に不思議に思い声を掛ければ、琴子は何もなかったかのように会話の続きがされる。
それを少しばかり不思議に思うも、今の京之助には気にしてられない。
出来れば直ぐにでもベッドに寝そべりたいのだ。
「まず……身外身の経験値獲得及び、ドロップ品の確保ですが、思った以上の効果がありました」
「俺のレベルまで上がるのは予想外だった。GR職だからレベル上がりにくいんだけどね」
「そうですね。今後も活用が出来そうです。ドロップ品の回収率も良く、今後も使用していきたいのですが……」
「何か問題が?」
そこまで言うと琴子は、どうしましょうかと苦笑してしまう。
「そうですね。ドロップ品の中に幾つか取引したらまずい物がありまして」
「ふーん……レアドロップ的な?あれ……でもそれなら別に活用してもいいような?」
「えぇ……レアドロップなのですが、レア過ぎて」
「レア過ぎて?」
そう言うと、琴子はまず一つ目がと言いながらも京之助の防具であるガントレットを指差した。
そのガントレットは、京之助が『
ガントレットと言うが形はリボルバーの弾倉部分を腕輪にしたような形であり、変わった物であった。
一応マジックアイテムで、使用方法も分かっており、簡単に使用出来る。
腕を前に出して手を握ると、ロケットパンチとして飛んで行くのだ。
おまけに追尾式であり、ある程度であれば操作も可能で勝手に戻ってきさえする、優れ物であった。
「
「えぇ……神話に登場する
「ところ?」
「それは漫画に登場する武具でした」
「……えーと?」
「ちなみに漫画版の封神演義に登場する
そう言って、琴子は本棚に置いてあった一冊の漫画本を取り出して京之助に見せた。
勿論、本棚にある漫画は全て読み込んであり、その本にも見覚えがある。
「あー……山を吹き飛ばす奴だっけ」
「です。それ以外にも幾つか漫画やゲーム内に登場する物がちらほらと」
「……」
「……」
そう言って、これもあれもと琴子は調べた限りに物を指し示していく。
確かにそう言われて見てみれば、京之助の記憶にある物が幾つか存在していた。
モンスターをハンターするゲームに登場する大剣や、エルデのリング的なゲームに登場する婚約剣など、在ってはいけない物が多数ある。
「やばいね?」
「やばいです。そもそも、物語に出てくる物なので性能がおかしな物ばかりですし、遠慮がありません」
「俺のチート能力の余波かな?」
「かも知れませんね。ヒロインのカード化と言うことは、多元世界を引き寄せていることと同意と捉えることも出来ますので……多分」
琴子の言葉に京之助の脳が追いつき、汗がだらだらと流れ出す。
それもその筈だ。
漫画やゲームに登場する物は、その世界に合わせた性能をしている。
それが、現実に近いこの世界に放出されるというのは、非常にまずかった。
特に封神演義に出てくる宝貝などは、間違いなく世に出してはいけないシリーズの筆頭だ。
国土全土に及ぶ力を持ち雷を操る
「更に言えば、処理方法を確立しないと狩りもままならなく」
「部屋が埋まるね」
「えぇ……放置してダンジョンが回収してくれればいいのですが、それを別の所に生み出したり、放置したのを誰かが拾うと大惨事です。なので武具をどうにか出来る
「あー……」
順調に行くと思えば、壁にぶち当たってしまった。
ここまで来ると期待できるのはヒロインのカードのみであり、先ほど拾ったカードを二人は確認する事にした。
問題が起きたのは、そんな時であったーー
「先ほど拾ったカードは、どのような人ですか?」
「この人は」
とらえたぞ
「はっ?」
………
……
…
とある世界に剣豪の女性が居た。
背は低く、紫色の長い髪の毛は風が走れば綺麗に揺蕩い、おっとりとした顔と豊満な胸が彼女の母性を表す。
しかし、そんな姿も彼女の一面に過ぎず。
彼女に触れれば最後、腰を彩る刀で、一刀のもとに斬り捨てられてお仕舞いだ。
彼女はただただひたすらに、目標に向かって修行に明け暮れる。
幾度も刀を振るえど、一向に辿り着かない領域、振り向いてくれない目標。
苛立ちと焦りに挟まれ精神が疲弊しようとも、それでも彼女は諦めない。
もしも、彼女に縁があれば、また違っただろう。
しかし、この世界線ではそれがなかった。
それ故に、ただ一人で道を歩み続けるほかなかった。
それが間違った道でもだ。
何時ものように行く先も分からぬまま修行を重ねている時に、一枚の
それを不思議に思い手に取れば、こことは違う世界の情景が目に浮かぶ。
一人の少年と数人の彼女が、ダンジョンに挑む光景だ。
ちょっとばっかし、いや……かなりエロいけども楽しそうでもある。
特に目を引いたのは、ただ一人の少年であった。
情に厚く少し泣き虫で、敵対するなら容赦はない、そして守る者のためならば力を付けることも厭わない。
何と母性をくすぐる子であろうか、こんな子と一緒に修行出来ればまた違った道を歩めたのだろうかと思った。
ー ー
そんな彼女の心を見抜いてか、
彼女は首を横に振って答えた。
確かに、そちらに行けば目標に辿り着くかも知れない。
しかし、目標とする人物がいない世界で、どう判断すればいいのかと思ってのことだ。
目標とする人物がいなければ意味がない。
そう伝えたら、意外にもすんなりと諦めた。
カードはそのまま彼女のポケットの中にするりと入ると大人しくなる。
着いてくるのねと思っても、邪魔をしなければ彼女にとって問題はなかった。
どうせ一人旅なのだ、少しばかり変わった旅のお供が居てもいいだろう。
奇妙な二人旅は、暫くの間、続く事となった。
一人と一枚が別れたのは出会って一年経ってからである。
特に自己主張もしないので、彼女はすっかり忘れていた頃にとある少女に出会った事で思い出したのだ。
その少女と友人と言う訳ではない、気が合ったわけではない、ただ道は違えど強者の匂いを感じ取り声を掛けた程度であった。
完全に停滞してしまっていた為に、少しでも何かしらの切っ掛けが欲しかった。
結論から言えば、互いの行く道が違い過ぎて意味のない交流であった。
しかし、少女は真理を追究する者であり、一年前にやって来たカードを思い出して相談してみる事にする。
カードを拾った経緯と知りうる情報を少女に話してみれば、彼女は譲ってくれと言ってきた。
それに対して剣豪の彼女は、貸すだけならと告げる。
渡そうとした時に、後ろ髪引かれる自分に気付いたからだ。
結局は二年を制限として、剣豪の彼女は修行の旅に出る。
その修行で何も得る事が出来なければカードを使用すると決めたのだ。
その間は、カードを少女に研究の為に貸し与える事にした。
もちろん、研究者である少女が、カードを研究する為だけに留まる筈もなく、早速とばかりに使用してみた。
しかし、カードの所有者が変わっても、少女がカードを使用する事は出来なかった。
触っても叩いても何の反応もしない。
あくまで招待されたのは剣豪の彼女であり、この少女でないと言い張っているようだ。
その事に少女は怒ったが、流石に物に当たるような事はしなかった。
何時もの猫被った声でなく、少し低めの声でカードに宣言するだけに留める。
『ぜってーオレ様が完全無敵のヒロイン様だってこと認めさせてやる!!』と。
別に少女にとってエロい事も、少年の事も、恋愛の事も、全てが等しくどうでもいい。
しかし、話を聞けば創作に出てくるヒロイン達が集まる、珍しい場所との話ではないか。
そんな話を聞いて少女はとある野望を胸に秘めた。
ヒロインとは物語でもっとも愛される女性であり、美少女が大半である。
そんなヒロインが集まる場所で、その中心である少年が真理を追究するこの少女に夢中になったのであれば、こう言えるのではないのだろうかーー
『このオレ様が、
原動力などそれぐらいであるが、少女は本気であった。
しかし、そんなに世の中は甘くはない。
このカードを作りし人物は、少なくとも多元世界を自由に観察し干渉出来る存在なのだ。
そんな人物が作ったカードがあっさりと解明出来る訳もなく、何の進展も得られずに一年が経過する。
普通であれば、焦りや不安、どうしようもないのだと諦めが浮かぶものだが、少女は違った。
少なくとも天才を自負する少女が、一向に解けない謎が目の前にあるのだ。
楽しくてしょうがなかった。
あーすれば、こーすればと夢中になって謎を解き明かしていく。
更に半年ともなれば諦めるかと思うも、未だに熱は冷めない。
そんな諦めない努力が実ったのは、約束まで残り三か月を切った頃であった。
ほんの少しだけだが、確かに微かに謎の一部が解けたのを感じる。
残り三か月で何が出来ると言うのだと思うかも知れないが、この少女には十分な時間であった。
解けた一部分から次々に謎を解き明かしていき、残り一か月となれば真理をも掴み取る。
『ナルメアに伝言を頼む。オレ様は先に行くってな』
謎を解いた後の行動は速かった。
身支度を整えて、カードの所持者である剣豪の女性ーー『ナルメア』へ伝言用のゴーレムとカードを置いておく。
そして、使い魔である『
『あとは、アンカーを打ち込むだけなんだが』
ゲートを注意深く眺めて、慎重に冷静に
『来たかっ……とらえたぞ!!』
その瞬間は、直ぐにやって来た。
次元から次元を渡り歩く必要がある以上、迷子にならないように道しるべが必要である。
少女がその道しるべとして選んだのが、
その魂は太陽の様に燃え、辺りを手当たり次第に照らし続けており、それに少女は己の魂と繋ぐ楔を打ち込んだ。
………
……
…
「はっ?」
「えーと……」
他の世界でそんな事が起きてるとは知らず。
行き成り聞こえた声に、京之助の胸から伸びる謎の鎖。
カードを手に持っただけなのに、このような出来事が起こり混乱に陥るのも無理はないだろう。
「えぇー……」
「さてと……エヴァンジェリンさん呼んできますね」
暫く唖然と見守っていると、鎖の先にある小さな次元の歪みのようなものが、バリバリと裂けて大きくなっていく。
それを見て、京之助はもう寝たいんだけど、駄目かな?と思い。
琴子は自分ではどうしようもない事を悟り、最高戦力を呼びに席を立った。
決して見捨てたわけではないとだけ言っておく。
「……」
「ぷはっ……次元を渡るなんて初体験だが、意外と何とかなるもんだ」
取り敢えず、京之助に出来る事はなく、魔法などの現象に詳しいエヴァを持っていれば、次元の歪みの様なものから一人の少女が姿を現した。
身長は低く、エヴァと同じぐらいであり、髪は蜂蜜の様な黄金色、髪型はロングヘアであるがふんわりとしており柔らかそうである。
エヴァが美人系の美少女であれば、こっちは可愛い系の美少女だ。
そんな少女は、京之助と目が合うと横にしたピースマークを目に当ててポーズを取る。
「きらーん☆美少女錬金術師 カ リ オ ス ト ロ 登っ場☆」
「……」
「カリオストロに初めてあった感想は?主人公さん☆」
「え……怖い」
これが『