多元世界ヒロインズ 作:ころろこ
特にコメントありがたいです。
「おいっ……怖いって何だ。怖いって!」
「いや……だって……出てくる方法がラスボスか上位者のそれじゃん!」
「しょうがないだろう!次元を渡るだけで精一杯だったんだ!」
「そっちの苦労なんて知らんよ!?」
素直に思った感想を言えば、それに怒ったカリオストロが京之助に掴みかかった。
先ほどの決めポーズの時の猫被りをあっさりと破棄し、シャツの襟を掴んで前後に揺らされる。
「てか、本当にカリオストロ?錬金術の開祖の」
「そうだ。オレ様が……世界でいっちばーん可愛いカリオストロだぞ☆」
「何でいるの?」
「会いに来たに決まってるでしょ☆」
先ほどの名乗りが本当であるかどうか、京之助がもう一度確認する。
そうすれば、カリオストロは少しばかり意地の悪い表情をした後に、一瞬で猫被りの表情へと変化させた。
おまけにくるっと回り、決めポーズを決める事も忘れない徹底ぶりだ。
「ますます怖いんだけど」
「あ゛ぁ゛?」
「猫被りが怖いとかじゃなくて……ここに来た理由が分からなすぎて怖い」
「……だから会いに来たって」
「自分は上、それ以外は平等に下なのが俺の知るカリオストロだ。そんな人が俺に会いに来ただけとは思えない……他に目的があるんだろ?」
「くくく……はっ!そこまで知られてるのか……なるほどな。オレ様もまたナルメア同様に作品内で出番があるキャラクターな訳か」
京之助の言葉を聞いて、カリオストロは怒る事を止めて冷静に答えをはじき出す。
先ほどの言葉で自分が創作の一部である事を察したのだろう。
それを見て京之助は、やはり怖いと思った。
頭の良い上に腕っぷしも強いとか
錬金術の開祖カリオストロ、ソーシャルゲーム『グランブルーファンタジー』内に登場する錬金術師だ。
主人公達の時代よりも遥か昔の人で、封印されていたのを主人公達が解いた事に興味を持ち付いて来た人物である。
そんな
自分の体がどうにもならない事を悟り、自分の理想とする少女の体を作り、それに魂を移し替えると言う神懸かり的な事をし生き延びる。
更には、原作の世界で大きな影響を与えた星の民と呼ばれる脅威を一人で跳ね除けた。
まさに『
元男であり、理想を詰め込んだ自分が
「まぁ……一目惚れとか、そんなロマンチックなもんじゃねーのは確かだ」
「ですよねー。敵ではないよね?」
「だったらどうする?」
「……」
「……」
念のために聞いてみれば、カリオストロの目は強い炎のように揺らめき、京之助を見返した。
その目を見て、京之助もまた無言で見返す。
「止めろ。馬鹿ども、ここを壊す気か……」
「エヴァ?」
「あぁ?誰が馬鹿だって?」
そうやって睨み合っていると、上の階から静止の声が掛かった。
京之助とカリオストロは、同時に目を離すと上へと視線を向ける。
そこには、手すりに座って此方を見下ろしているエヴァが居た。
先程までゲームに夢中になっていた人物とは思えないほどに、エヴァが強者感を出してるのを見て京之助の気が抜けた。
そんなエヴァは、一目だけカリオストロを見ると下へと飛び降りる。
「……悪かったな。ゲームに夢中で!」
「な、なぜそれを」
軽やかにベッドに着地すると、ベッドに座り込んでいた京之助を後ろから抱きしめた。
いや……少しばかり怒ったエヴァが京之助の首に腕を回し抱き着いたように見せて絞めてくる。
エヴァが怒っている事に気付いた京之助は、どうしてバレたのかと不思議に思う。
口には一切出していない筈なのだ。
「それと……悪いが、
「なるほどな……オレ様の目的は知られてる訳か」
「ふん、既に勝負は決まっている。時間の無駄だ」
「……話について行けない」
その事を考えていると、何やら、エヴァはいつの間にかカリオストロの目的を知っており、話が通じ合っている。
そんな彼女達のついて行けないのは京之助ただ一人であった。
話の内容的には、自分の取り合いなのだとは分かっている。
しかし、なんでそれをエヴァが知っているのだろうかと、何故そんな話になっているのか不思議だ。
「……あぁ、そう言うことね」
何が起きてるのか分からずに視線を彷徨わせると、頭の上に何かが落ちてきて当たった。
それに気づき上を見ると上の階に琴子がいて、手を振っているのが見えた。
そんな琴子を見て京之助は、謎が全て解けた。
彼女の横には、
そして、京之助に向かって琴子は隣にいる少女を指差して口パクで『
妖怪『
相手の心を読む能力を持つ妖怪である。
琴子はエヴァと合流したのちに、
何故、そんな妖怪を知っているのかと言えば京之助は一度会っているからである。
便利な妖怪には、どのようなのが居るのか、エヴァと一緒に見せて貰っていたのだ。
なお、その時の姿は大きな猿の姿であったのだが、イメチェンだろうかと、妖怪だし人の形態も持っているのかも知れないと思う事にした。
「それで……エヴァ、カリオストロの目的って?」
「お前の一番になる為だな」
「せいか~い☆」
「……はぁ?」
首を絞める力が弱まったので、京之助は素直にエヴァに目的を聞いてみた。
どうやって目的を知ったのかの次は、どうしてそんな目的を持ったのかである。
すると一番予想外の答えが返って来て戸惑う。
「カリオストロが?」
「正確には……No1ヒロインを目指してるだ」
「あぁ……うん、納得した」
「そこまで知られてるとなると逆に気持ち悪いな」
少しばかりカリオストロが自分に惚れたのかと思い、ドキっとしたが、エヴァの言葉を聞いて一瞬で冷めて理解した。
カリオストロは世界で一番自分が可愛いと自称している。
可愛くなるための研究が第一であり、努力も欠かさない。
そんな彼女が、創作のヒロインが集まる場所など知れば、自分が一番であると証明する為に乗り込むに決まっている。
「……それで次元越えたの?」
「まーな。ここに来るまで二年もかかっちまった」
「……」
二年もかかったと言うカリオストロに、京之助は天才だしねと納得し、エヴァは顔には出さないが警戒度を上げた。
「……つまりは敵ではないという事でOK?」
「取り合いはするが、戦う気はない」
「無駄だと思うがな」
「やってみないと分からないと思うんだけどな~☆」
エヴァとカリオストロは、ばちばちと音が聞こえそうな位に睨み合う。
そんな二人を見て、京之助はエヴァがここまで張り合うのも珍しいと思った。
琴子やホシノに対しては普通に受け入れたのに対して、カリオストロにはあたりが強いと思ったが、当たり前かと思いなおす。
簡単に言えば、カリオストロは侵略者なのだ。
エヴァが警戒して牽制するのも普通の事である、しかしーー
「来ちゃったものはしょうがないし、協力してくれるならいいんじゃないかな?」
「ちっ……」
「流石、主人公さん!話が分かる~☆」
結局は、仲間に引き入れるしかないのだ。
何しろ相手は次元を越えて乗り込んでくるほどの実力者。
それを放置して敵にした方が怖かった。
「まぁ……頑張って惚れさせてみろよ」
「くくく……嫌いじゃないぜ、そういう自信」
「はぁ……」
それはそれとして、これ程までに掻き回してくれたのだ。
これぐらいの意趣返しをしても罰は当たらないだろうと、京之助はカリオストロに舌を出して挑発した。
そんな京之助を見て、カリオストロは楽しそうに笑い、エヴァは呆れた。