※この作品はR-18です。

多元世界ヒロインズ   作:ころろこ

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少年、秘密を明かす

「はぁ……」

 

 京之助は、今やらかそうとした自分の行動に顔を青くさせた。

幾ら叶馬と戦う約束があるといって、段取りもなく襲うと言うのは悪印象でしかない。

京之助の目標としては、『楽しくダンジョン攻略を楽しみつつ、学校の卒業』である。

原作主人公と敵対するメリットなどありもしなかった。

 

「エヴァ……ありがとう」

「落ち着いたのか?」

「頭に血が上っていたみたいだ」

 

 最悪の事態を回避させてくれたエヴァに頭を下げ、感謝した。

その際に他の皆はと見てみると、既に撤退済みである。

琴子辺りが叶馬達を見て即座に判断を下したのだろう。

念の為に置いておいた扉が役に立った。

 

「そちらのほうも、申し訳ございませんでした」

「あ……あぁ、いや……まぁ、こっちも割り込みみたいな感じだし?」

 

 エヴァに頭を下げた後に、振り向き直り叶馬達へと謝罪をする。

と言っても、殆どの人が混乱中であった。

怯えたり、何が起きたのか分からない人や及び腰な人など様々だ。

唯一京之助と正面で喋る事が出来たのは誠一だけであるが、彼も混乱している。

 

「……」

 

 そんな中、先ほどまで戦意を滾らせていた叶馬は魔法の効果で落ち着いていた。

あれ程までにあった熱い心は完全に鎮火されたのだ。

むしろ、最近では感じられなかったリラックス状態である。

 

「旦那様が……落ち着いてます!」

「心が落ち着かれて、ます」

「荒魂が和魂となられて、ます」

「叶馬さん……お具合はどうでしょうか?」

「……悪くない、清々しい気持ちだ」

 

 そんな叶馬を見て沙姫と双子の姉妹に静香は、混乱から立ち直り驚きを隠せないでいた。

荒魂と和魂、神道において神々には二つの側面を持つと考えられている。

それに習ってか雷神の職業(クラス)の叶馬は戦えば戦うほどに、荒魂の側面が強くなる傾向があった。

何時もであれば、性交などを通して祓い和魂に変化させるのだが、その必要性がない。

 

 ついでに言えば、京之助が荒れていたのも、これまで存分に戦えなかった鬱憤と激しい戦いで斉天大聖の激しい気性が表面化したからである。

 

「まじか」

「あれ……私も覚えられないかな?」

「どうだろうな。教えた事がないから分からん」

 

 時間が経ち、京之助と叶馬の落ち着き様に混乱が収まって行く。

そうなってくると、何時もの剣呑さがない叶馬へと視線が集まった。

何時もであれば人を殺しそうな雰囲気を纏っているのだが、今ばかりは普通の人のように見える。

それを見て麻衣は、これを覚えたら叶馬を少しは制御出来るのではと考えた。

見てる分には叶馬の奇行も面白いが、自分達が被害を受けるとなれば別である。

麻衣が期待を込めて、エヴァを見ると知らんと一言で返された。

別に意地悪でも何でもなく、エヴァの使う魔法とこのダンジョンの魔法が同じ系統なのか、別なのか調べていない為に分からないのだ。

 

「……謝罪という事で教えてやってもいいぞ?」

「まじで!?」

「やった!」

「ふんっ……今回は此方の落ち度でもあるからな」

 

 期待を込めて見てくる麻衣に対して、エヴァはそう提案した。

これで関係が悪くならないのであれば、御の字であり、エヴァの魔法とスキルの魔法の差の研究として使えると思ったのだ。

念の為に、提案する前に京之助とは視線を交わし合い通達済みである。

エヴァの提案に京之助は文句はありませんと頷いていた。

 

 そうなってくると、叶馬達との関係をここで完全に決めてしまおうかと京之助は考えた。

元々は、エヴァ達と幾度も話し合い、着かず離れずと決めていたのだがカリオストロの件でそれも考え直しとなった。

と言うのも、何かあれば『どこでもラブホ』内で逃げ過ごすと決めていたのだが、カリオストロが侵入したことにより、安全性が保障されなくなった。

力ある者や知識がある者であれば、中に侵入が可能と気付かされたのだ。

 

 それならば、最初から此方のスタンスを話した上で仲良くした方がメリットは多い。

何しろ、原作は未だに完結しておらず謎が多い上に、話の内容的に最終的には神々の戦いとなる可能性が高いのだ。

確実にやり過ごす為に、主人公に協力して強化やサポートをした方が安全性は確保されやすいと考えた。

まぁ、叶馬がラスボスになる可能性もあるので一概には決めつけられないのだが。

その時の為に、他の次元に逃げる方法をカリオストロ辺りにお願いして研究して貰おうと決めた。

 

「そろそろ時間だ。このまま居ると『天敵者(アグレッサー)』が出るぞ」

「……そうだなー。うん、エヴァ招待しようか、先に戻って事情の説明よろしく」

「そうか、分かった」

「招待?え……俺等どこに連れて行かれるの?」

「俺ん家」

 

 全てを説明する気はないが、ある程度仲良くでもしようかと考え、京之助は扉を開く。

 

 

 

 

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

「便利過ぎね?」

「なんて言うか……ラブホ?」

「……」

「……ほぅ」

「大きなベッドがっ……羨ましいです!」

「ほ、他の神様がお、居られ、ます」

「ま、マヨイガ、です」

 

 京之助が扉を開き『どこでもラブホ』内に誘うとそんな反応であった。

誠一は呆れ、麻衣は中を見てラブホだこれと言い切り、静香は今後の為に辺りを見て勉強をし、沙姫は単純に皆で寝られそうなベッドを羨ましがり、双子は神々の気配を感じ取って緊張した。

ちなみにエヴァが先に入り琴子達に通達して、皆がそれぞれ部屋に引き籠り中である。

 

「あー……椅子とかは台所にしか無いんだった」

「ベッドを椅子代わりにしていたからな」

 

 そんな叶馬達に対して、京之助とエヴァは椅子がない事に気付き悩む。

椅子がないから床に座ってというのも酷い話であり、他人をベッドに座らせるのも抵抗があり困る。

 

「ソファーの購入を考えておくか……取り敢えずクッション渡すから座ってくれ、一日経てば勝手に綺麗になるから床でも汚くはない筈」

「えぇ……お構いなく」

 

 人数分のクッションを渡し、京之助自身はベッドへと腰かけた。

取り敢えず、今後の事も考えてソファーなどの購入を検討する事にした。

流石に家具の類いは、学生街には売っていないだろうし、『匠工房(アデプトワーカーズ)』に依頼をすることにする。

 

「叶馬達なら知っているだろ。魂魄結晶(ソルデバイス)を落とさなければ外でもスキルは使用出来る。俺の場合は、このスキルのお陰で何処でも家に出来るからな。こっちのほうが便利なんだ」

「なるほどな……お前が寮に戻らない理由がよく分かった」

「確かに便利だよね~」

「ぬぅ……こういったスキルもありだったか」

「……職業の恩恵でしょうか、それとも叶馬さんと同じような?」

「ショップと出会って購入した」

 

 打ち明けると言っても、全てを話す訳ではない。

大して仲が良いわけでもなく、京之助が転生者で本物の神からチート能力を授かった話をしたところで反応に困るだろうといった判断でだ。

あれもこれも打ち明けるには時期が早すぎる。

 

「それじゃ……さっきの事だけど改めて悪かった」

「いや、結果的に何も被害受けてないしいいけどよ」

「そそ、叶馬くんも落ち着いたし、その魔法も教えてくれるんでしょ?こっちは得しかないしね」

「……出来れば私などにも教えていただけると嬉しいのですが」

 

 先程の事を改めて謝罪し、京之助は頭を下げた。

これにより、叶馬達もそれを受け入れて気にしないと言う。

彼らがいった通り、被害と言う被害は精神的なものだけであり、驚いた程度である。

その被害で、こうして叶馬の暴走を押さえることの出来る魔法を教えて貰えるなど得しかなかった。

 

「エヴァ、どうなん?」

「私の使う魔法はダンジョン由来でなく、外のものだ。魔力さえどうにかすれば、覚えることが出来るとは思う」

「えーと、あれって術士(マギ)職業(クラス)のスキルじゃないの?」

 

 京之助と同じようにベッドに座り込んだエヴァは、質問に対してそう答える。

そんな、エヴァ達に麻衣は疑問を投げかけた。

 

「エヴァは、本物の魔女だよ」

「ついでに言えば吸血鬼でもある」

「はっ……?」

「え゛」

「なんと」

 

 そういってエヴァは己の口を指で引っ張り、立派に尖っている牙を見せた。

これには、叶馬達全員の動きが止まる。

 

「はっ?え……ま?」

「ま……ちなみに天然物」

「つまりは、ダンジョンに関係のない本物の神秘でしょうか?」

「ダンジョンもその神秘の一つだがな」

 

 先程から連続して公開される情報量に誠一達は頭を抱えるしかなかった。

例外なのは、吸血鬼と聞いてワクワクしている叶馬と、事情をよく理解していない沙姫と、隅っこで震えっぱなしの双子の姉妹だ。

残りの比較的、常識人である三人だけが頭を悩ませた。

 

「ちょっと待て……あれ、今日ベンチで会った時、ロスト関係だと話してなかったか?」

「言ったな。別に嘘でもないぞ?エヴァに関しては特殊すぎてね。ロストマンに似たような状態になっているって感じだし」

「嘘は言ってないけど本当の事も言ってないか……」

「好感度が足りません」

「俺でも駄目なのだろうか、マイフレンド」

「叶馬よ、まだ話す時ではない。時期尚早よ」

「承知した」

 

 誠一から今日明かした情報への突っ込みが入るが、嘘は言っていないの一点張りで通す。

本来であれば、ここまで仲良くなる気はなかったのだ。

オリチャは、これがあるから怖いと呑気なことを京之助は思う。

納得していない表情の誠一に対し、叶馬は自分でなら好感度も足りていると名乗り出る。

これには、表情には出さなかったが京之助が困惑した。

いや、お前の好感度は誠一よりも下だからマイフレンドって何時なったしである。

流石に正面切っていうと傷つきそうなので、適当に流してみると、勝手に納得してくれた。

 

「あとはー……」

「先程の戦っていた相手について聞きたいのですが!」

 

 何か話すことはあったかなと、考え込んでいると沙姫が手を上げて質問をして来た。

叶馬パーティーにおける二人目の戦闘狂だからこその質問であった。

 

「あれはー……うん、俺のスキルで分身を作り出して稽古をしてたんだ」

「「稽古!!」」

「うわー……叶馬くんも反応しちゃった」

「分身……猿神様、武器が棍、まさか?」

 

 別に職業をばらした所で何だという話なので、素直に答えた。

少し前まで鬱憤を溜め叶馬の気持ちを理解したからこそ余計にだ。

そして話せば、静香がぼそぼそと自分の考えを喋り、答えに辿り着く。

原作でもレイドクエストにおいて、何の小説を元にしたものか当てていた。

そんな彼女の知識であれば、少しの情報でも答えに辿り着くだろう。

まぁ、斉天大聖は有名なので分かりやすい方である。

 

「そのまさか、俺の職業(クラス)斉天大聖(せいてんたいせい)……孫悟空だ」

「うげー……」

「やはり……ですか」

「孫悟空って西遊記のだっけ?」

「ドラゴンボールではなくか?」

「どちらにしろ強そうです!」

「「お、お鎮まりを!」」

「いや……別に怒ってないけど」

 

 静香の呟きにタイミングよく答えると、その反応は綺麗に別れた。

誠一と静香は、斉天大聖の知識があり、顔を青くさせる。

逆に麻衣や叶馬、沙姫は西遊記や漫画の方しか知識がなく反応が薄い。

双子は過剰な程に反応し、何処からか出した祓具(はらえのぐ)で、ばっさばさと拝まれる。

 

「いや……すげー表情してたぞ」

「まじ?」

「……ワイルドでかっこいいと思うぞ」

「なら、よし」

「こっちも叶馬くんみたいに尻にしかれてるのね」

 

 確かに笑ったが、そこまで言われるほどかとエヴァに聞くとそう返された。

エヴァが気に入ってるなら直す必要もないし、気にしなくていいかと京之助は思う事にする。

 

「そう言った訳で、初めての稽古でテンション上がっちゃった時に君らが来たって訳よ」

「なるほどな……でだ。何で俺等にこんなにも情報を明け透けに渡すわけ?」

 

 今ある現状で話す事を全て話し終えると、誠一が顔を青くしてそう聞いて来た。

先ほどのベンチで駄弁っている時は渋っていたのに、今になってこれだけの情報を一度に開示するのは怪しすぎる。

と言っても、それに気付いたのはつい先ほどであり、誠一は遅すぎた。

 

「いやー……謝罪を込めてって言うのと叶馬達とは是非とも仲良くしたいなって」

「うむ!」

「いや……まて、叶馬も頷くな」

「これだけ秘密を知られたら仲良くしなきゃいけないねー誠一くん!」

「うわーうわー……」

「コンゴトモヨロシク」

「嵌めやがったな!?」

 

 秘密を共有したから俺達ズッ友だよ!と京之助とエヴァは悪い顔で笑った。

 

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