多元世界ヒロインズ 作:ころろこ
コメントは全て読ませて貰っています。
取り敢えず、ヒロインは出すだけ出した後に絆を深めるパートに入ります。
私は幸せだった。
短い人生であったけど、十分なほどに思い出を残し、何よりも望まれた仕事を全うできた。
ギリギリだったけどね?
『ダ・ヴィンチちゃん!』
体には一切力が入らず、頭も最低限の仕事しか出来ない。
何せ、倒れ行く体を指一本動かす事も、そうしようという気力さえないのだ。
ただただ柔らかい雪の上に背中から落ちていく体を感じながらも、どこか他人事のように思える。
倒れながらも見た景色は、私が誕生した場所と取り戻した景色の数々、それとーー駆け寄って来てくれた二人の大好きな人達。
その二人は、私を引き止める為に必死に手を伸ばしたけど、それは間に合わない。
何せ、既に限界を越えてしまったのだ。
これ以上引き延ばしは出来そうにないと言うのが、自分でよく分かる。
「あ……はは、悲しまないでくれ、駆け抜けて、完走を果たしたんだ。これは前人未踏であり……か、輝ける轍を残したんだ。
倒れた後に見えた景色は、澄んだ青い空と、大好きな二人の微笑んだ表情。
最後に目に映る景色としては最高なのだと思う。
目を瞑れば、何処までも落ちていくような感覚を覚え、真っ暗な闇の中に沈んでいく。
なるほど……これが死ぬという感覚なのかと、最後の最後まで知的好奇心が満たされる。
これから先、私が起き上がる事はないのだろう。
普通のサーヴァントとは違い、私自身は前の私に作られた飽くまでその創造物に過ぎないのだから……呼ばれることがあったとしてもそれは、前の私になるのだろう。
だから、この私の物語はこれでお終いという訳だ。
悲しいとは思わない。 ーー本当に?
寂しいとは思わない。 ーー本当に?
楽しかったと言える。 ーー本当に?
満足であると言える。 ーー本当に?
誰だろう?
今から終わろうと意識が薄れていく中で、それを引き止める誰かが居る。
しかし、そんな事を言われても、どうしようもないじゃないかとしかいえない。
既に現実での私は寿命が尽き亡くなっているのだ。
何度も尋ねられて、少しばかり不機嫌になってしまう。
ここからの逆転など出来やしないし、思いつきもしない。
それなのにせっつかれるというのは、些か不愉快である。
もしも、もしも……ここから先があるとするのなら、それを提示して欲しいものだ。
カード?
そう頬を膨らませて、既に体の感覚もないから分からないが、そんな気持ちで怒ると、一枚のカードが差し出された。
感覚もないのに、それが一枚のカードだと認識できたのには驚く。
この話しかけてくる人物は、どうもかなり上位な存在らしい。
そんな存在が私に何の用だろうかと身構えると、何やら身ぶり手ぶり、わたわたと慌てだす感覚を認識できる。
どうも、此方の疑心暗鬼に対して誠実であると言いたいらしい。
今まで会って来た上位存在の誰よりも普通であり、人間らしさを感じられて呆気にとられた。
本当に?
どうせ、このまま消える存在なので話を聞いてみると、私を必要としてくれる誰かが居るらしい。
それが本当であるのならばーー私はまだ存在していてもいいのだろうか?
また、思い出を作り ーー作るべきだろう
また、胸を張れる成果を ーー期待している人が居る
また、未知なる知識を求め ーー同士がいる
また、人生を謳歌してもいいのだろうか? ーー歩むべきだ
そうか、そうなんだーー
そうであるのならば、もう少しだけ頑張ってみよう、求めてみよう
………
……
…
「……いや、どこだよ。ここ」
気付けば、京之助はとある建物の入口に居た。
そこは綺麗に整えられた場所で、何かの施設らしくカウンターが見える。
後ろを振り向くと重厚な扉があるが、それを開こうとしても開かなかった。
「最後に覚えているのは……エヴァと寝た所だな」
取り敢えず危険性はないので、自分の記憶を探るとそこで途切れていた。
特にレイドクエストやダンジョンに潜った覚えもなく、普通に眠りについただけである。
「ということは……夢か」
物凄く現実味のある夢であるが、そうであるならば楽しもうと歩き出す。
はっはっはと乾いた笑いで、薄々気付いていたがそうしようと思った。
「……うん、やべーなこれ」
ふらふらと歩いてみてみると、中に置かれた美術品の数々を見てそんな感想が出て来た。
例えば、入口から入ると行き成り目の前にドカンと置かれた『エクスカリバー』やら『アロンダイト』『ガラディーン』が置かれているのだ。
しかも、雰囲気や威圧感で本物に近いと伝わってくるやばさである。
これには、京之助は遠目に見るだけに収めた。
何やら看板に『是非とも手にお取りください』と書かれているが、触る気はない。
「……」
そんな最初から飛ばす美術館の入口から離れて、奥へ奥へと進むと数々の品を見る事が出来た。
中には、此方を引っ張るような存在もあり、あやうく触れそうになるほどである。
それをどうにか断ち切って、奥へ奥へと逃げ込んだ。
それからも、様々な物を見て回るも琴線に触れるような物はなかなかなかった。
「おっ……階段だ」
暫く見て回ると、何やら地下に続く階段を見つけて覗いてみる。
それは深く深く、まるで深淵の様な闇が広がる場所であり、普通であれば入る事も躊躇する様な場所だ。
しかし、それを見た京之助は『ここだ』と直感が働いて降りていく。
「なるほどね」
階段を暫く降りれば、そこもまた数々の美術品が展示されていた。
しかし、ここにある殆どの物がもはや日の目を見る事がない作品であることを京之助は知る。
英雄になりえなかった、何かが致命的に欠けている物達の数々がここには眠っているのだ。
そんな中を歩き回っていると、一つの美術品に辿り着く。
それは粘土で馬を模した物であり、明らかに未完成品であった。
「……よろしく」
先ほどまで触る事すら躊躇していた京之助であったが、この作品だけは別であった。
何故自分がここに居るのか、何故ここに呼ばれたのか、何故この作品であるのか、全て理解できる。
手に触れれば、どこからか馬の鳴き声が聞こえたような気がした。
「あぁ……うん、触るだけじゃ駄目なのね。え……まじで詠唱しなきゃだめ?」
しかし、触っていてもそれだけで、それ以上の事が起きず不思議に思っていると、京之助の脳内にとある呪文が浮かんでくる。
それはとても有名な詠唱であるが、いざ詠唱をする立場となると恥ずかしさが勝る。
「言っとくけど……アレンジとか出来ないからな」
それだけを伝えると、京之助は改めて脳内に浮かんだ呪文を詠唱してみた。
素に銀と鉄 礎に石と契約の大公
降り立つ風には壁を 四方の門は閉じ 王冠より出で 王国に至る三叉路は循環せよ
繰り返すつどに五度
ただ 満たされる刻を破却する
ーーーーーー
汝の身は我が下に 我が命運は汝の剣に
カードの寄るべに従い この意 この理に従うならば応えよ
誓いを此処に
我は常世総ての善と成る者
我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天
抑止の輪より来たれ 天秤の守りてよ
「くっ……!」
脳内に浮かんだ詠唱をしてみれば、魔法陣が目の前に現れて膨大な魔力が溢れ出す。
それが粘土で馬を模した物を覆い、次第に姿を変えていく。
暫く待てば、そこには一人の少女が立っていた。
「問おうーー君が私のマスター君かい?」
「何て聞き慣れた言葉だろうか……あと、そうなるっぽい」
「何とも情けない回答だね」
「しょうがないだろ。こっちも何故ここに居るのか、ここが何処なのかも分からないのだから……でも、君を必要としているのだけは本当、まじで助けてほしい」
「ふふふ……そうか、そうか。本当に私を求めている人が居たんだ」
「うん?」
「こっちの話さ。さて、これから……どうしようか?マスター君」
「さてね。取り敢えずは、ここから出ないと……それじゃよろしくね。ダ・ヴィンチちゃん」
「おっと……私の事は既に知っているのか、そうか当たり前か……うん、よろしくね。
そう言って、京之助の手を