多元世界ヒロインズ 作:ころろこ
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「さてと、最初は誰が来るか……誰が来てもきっついけど」
「マスター君、こっちの準備はOKだよ」
「あいよ……『ふっ』」
時間になると京之助達は、自動的に廊下に立たされていた。
辺りは暗く、月の光程度しか灯りらしい灯りはないようだ。
そんな中、ダ・ヴィンチが自分の背負っているカバンから幾つかの機械を取り出す。
それは、直径十センチ程度の丸形の胴体にプロペラがくっ付いたもの、自動型のドローンであった。
それを複数ほど飛ばすのを見届けると、京之助は髪の毛を二本引き抜いて口に入れて、噛んでGPを注ぎ込み口から吹き出す。
口から吹き出された髪の毛は、瞬く間に姿を変えて二人の京之助となった。
「そんじゃ偵察よろしく」
『ふっ……倒してしまっても構わんのだろ?』
「フラグ立てんの辞めてくれない?」
『縁起でも無い事言うなよ』
「それも縁起悪いこと起きるフラグ何だけど!?」
「君達、仲がいいね」
そう言いながら笑って、京之助の分身体もそれぞれ左右に分かれて去って行く。
「それじゃ、私達も行動しようか」
「あいよ」
二人とドローンが去った後に、京之助達は入れなくなった辛組以外の教室に入ると中にある椅子や机でバリケードを幾つか作って行く。
そして、一番奥の机の山にダ・ヴィンチが隠れると機械で出来たゴーグルを目に装着した。
これはドローンの視界を共有したり、ドローンを直接操作出来る物である。
京之助もまた頻繁に記憶の結合を行い、何処がどうなっているのかを確認していく。
相談して決めていた事であるが、取り敢えずは情報収集を優先する事にしていた。
相手が誰か分からない事には、作戦を取る事も出来ないのだ。
「うんうん、即席だったけど視界良好だし問題なさそうだね」
「こっちも、普通に能力が使えてるし行けそうだ……と見つけた。相手は……ベルトの子!」
互いに探っていれば、相手の姿を見る事が出来た。
最初に見つけたのは、京之助の方である。
京之助達が居るのは一階であり、相手は三階の反対側にいた。
『どうするよ。本体』
見つけたのは、たまたまであった。
一階を丁寧に見て回っていると、ふと三階の窓に少しだけ影のようなものが写ったのだ。
それを元に探ってみればそれがいた。
その小柄な少女の影は、両足四本のベルトを巻き、胴体にはコルセットをベルトで固定とどれだけベルトが好きなのかと言う具合のファッションである。
『……』
「……」
本体との記憶の結合により、これから行われる作戦が伝わる。
それに従い近づくも、静かに移動したつもりであったが、相手は既に此方を把握しているらしく、視線はずっと分身のいる方向を向いたままであった。
こうなっては、奇襲も無意味かと悟り、ゆっくりと階段脇から姿を現して分身の京之助は、如意棒を構えるとじりじりと近寄って行く。
姿を現しても、相手は特に構えず自然体のままであり、ここで京之助は眉をひそめ足を止める。
『……しっ!!』
「!!」
全くもって動きにない敵に一瞬だけ躊躇するも、己自身は分身であり、捨て駒のようなものだと再認識し突撃した。
今現在、一番の仕事は相手の力量や正体を暴くことである。
無論、この一撃で倒れてくれれば一番いいのだが、そう上手く行かないのが世の中であった。
『ちっ!』
「……」
残りの距離など関係ないとばかりに、京之助は渾身の力を足に込めて床を踏み抜いた。
職業とレベルの補正のバフにより、人の出しては行けない速度での如意棒の突きが相手に炸裂する。
『そう言えば、殺し屋だったけ……アサシン、暗殺者、殺し屋、なるほどね』
しかし、そんな攻撃も相手に防がれて終わってしまった。
本来であれば、人どころか大抵の大型獣ですら即死の一撃であったが、相手にとっては他愛もない攻撃だったのだろう。
その証拠に上手く衝撃を逃した上で
それでも攻撃は無駄でなかった、何しろ防ぎ方で相手が誰であるか予測が着いたのだ。
『体を『
「私を知っていましたか……それとその特定の仕方は変態ですか?」
『特徴的な服装なんだからしょうがないだろ。あと知ってるとも……ファンだったよ』
「それは……光栄とでも言うべきでしょうか、いえ……変態のファンは遠慮したいですね」
京之助の脳内に一人の人物が姿を現し、相手の正体を言い当てる。
『
彼女の出てくる作品は『ToLOVEる』というラブコメディだ。
一作目は、主人公の命を狙う殺し屋として登場しており、サブヒロインに落ち着いた。
しかし、人気があり、次の『ToLOVEるーダークネスー』ではメインヒロインに昇格と言うエヴァと似たような経歴を持つ。
能力は自分を形成する『ナノマシン』を使った『
更に言えば、ラブコメディに登場する人物にしては、強さが異常であり、音速を越えた速度での近接戦闘を始め、単独で惑星を一つ破壊するという力を持っている。
『そうと分かれば悪いけど、一旦退かせて貰うわ』
「させると思いますか?」
『あっぶね!』
「むっ……今のを避けますか」
記憶の結合は敵を見つけてからされており、既に本体がダ・ヴィンチと共に作戦を組み立ててその為の行動を開始している。
そのおりに分身にも新たな役目が指示され、直ぐに行動に移すべく後ろに跳躍しつつ後退を始める。
それを金色の闇が逃すまいと、長い髪の毛を複数の掌にして捕まえようと伸ばした。
複数の髪の腕を搔い潜り、あるいは如意棒で器用に弾き落とす。
既に相手も本気の様で常人には姿を捕らえる事が出来ない程であった。
『くっ』
「しぶといですね」
速度は一緒であるも、手数の多さで少しずつ怪我を負っていく。
怪我を負う度に分身は、己の視界の上にある
既に半分もなく、このまま行くと指示された時間稼ぎも危ういのだ。
「時間稼ぎでしょうか?」
『っ!そうだよ……だから少しは手加減してほしいね』
「二階?一階?空き教室でしょうか」
数分ほどの時間が経つと、金色の闇自身がそんな質問を投げかけて来た。
完全に相手に手の内が読まれているが、こればかりはしょうがない事である。
此方は二人組と分かっている上に、その一人が戦闘が始まっても応援にやって来ないのだ。
自分を倒すべく、何処か別の場所で罠を作っているのであろうと察しがつくものだ。
それでも奇襲を警戒してか、金色の闇は新たな教室の前を通る度にちらちらと視線を送っている。
「まぁ、あなたを倒してしまえばそれで終わりなので、どっちでもいいですが」
一つだけ運がいいとすれば、目の前の分身を本体と勘違いしている事である。
どうも相手に伝わる情報には、京之助達のスキルや能力の情報はないらしい。
流石にそれも伝わっていれば苦戦必須であっただろう。
『っ!』
「逃がしません!」
そんなこんなで傷だらけになりながらも、五分が経過した頃に記憶の結合が行われた。
それにより作戦の内容と準備が整った事を知り、分身は行動を時間稼ぎから誘導へと変える。
なるべく不自然で無い様に、もう限界だと思わせながらも隙を付いて踵を返し、階段を降りようと走った。
ここで分身は少しばかりの焦りで一つのミスをする。
まずは、豊葦原学園は設備は新しいが校舎自体は古い木造であること。
まずは、そんな校舎で音速よりも速いはやさで動く事が出来る脚力を使用していること。
まずは、その力をもって遠慮なしに階段上から力を込めて飛ぼうとしたことである。
『あっ』
「え?」
この三つの出来事が重なった結果、分身は見事に
バキッと嫌な音と共に力を込めた足先に浮遊感を覚えた後に、前のめりに階段へと落ちる。
そして、その後ろにピッタリと着いていた金色の闇も、これには驚き咄嗟に反応できず一緒に巻き込まれた。
流石の殺し屋でも、このミスは予想外だったのだ。
二人は、そのまま団子状になり、ごろごろと階段を転がって踊場へと落ちる。
「っ……こんなミスを」
『もがっ』
「須王京之助は何処へ……え?」
『むぐっ』
流石に階段を転がり落ちた程度では、京之助の分身も金色の闇もダメージは負わない。
急な回転で視界が定まらずくらくらとする頭を抑えながらも、金色の闇は奇襲に備えた。
「な、何をしていますかっ!」
『むぐぐ』
「ハレンチです!えっちぃのは嫌いです!退きなさい!」
さて、一緒に転がった相手はどこだと座り込んだ体勢のまま辺りを見渡せば、何やら自分の座ってる箇所が柔らかいことに気付く。
それに気付いて、下に……視線をやればそこに自分のスカートの裾から黒い髪の毛が見えた。
どうやら、分身の顔を金色の闇がお尻で潰している様な形の『ラッキースケベ』状態である事が伺える。
これに慌てたのは、金色の闇である。
盛大に慌てたせいで、どうにかこうにか退く様に要求するも、自分が立ち上がると言う選択肢が頭の中から抜け落ちた。
「んっ……!」
『ぷはっ!死ぬかと思ったっ!』
結局、あーだこーだと騒ぎ立てていれば、分身が金色の闇の腰を手で掴み持ち上げてどうにかなった。
その瞬間、鼻などが金色の闇のあそこを擦れてびくっと体を震わせるも、分身からすればそれに反応する所ではない。
何しろ、辺りは暗く、金色の闇自身はシャドウサーヴァントなので真っ黒であり、分身からすれば階段から落ちたら視界は真っ暗で息が出来なくて苦しいと言う状態であったのだ。
命の危険を感じるも、嬉しさはない。
「っ!……惨殺と殴殺どちらが好みですか」
『待って……息苦しさだけで恐怖しか感じなかったのですが!』
「問答無用!」
『変化!』
持ち上げてみれば、そこには表情こそ見えないが怒っているのは確実であろう金色の闇が居り、弁明しようも元々敵同士であるが為に遠慮なく攻撃を開始された。
そんな彼女を見て、分身は即座に『
「待ちなさい!ハレンチネズミ!」
『ちゅー!』
逃げ出したネズミに化けた分身を追って走るまでは良かった。
問題は、冷静さを欠いてしまったのと戦いの最中であり、誘導されていると言う可能性を忘れてしまったことである。
「しまっ!……にゅるにゅるっ!?」
金色の闇が二階へと降り立った瞬間、足を付けた床が変化したのだ。
ただの木造の床からにゅるにゅるとした十本の触手が飛び出して、金色の闇を拘束する。
これには、先ほどまでの怒りをおさめて逃げ出す為に『
しかし、残念ながらそれは叶う事がなかった。
と言うのも金色の闇の弱点として『にゅるにゅる』とした物全般が苦手であり、にゅるにゅるとした触手など弱点以外の何物でもない。
そんな触手に捕まった彼女は、動揺や嫌悪感などで『
「ごめんね!でも、私も生き残る事に必死なんで!」
「っ!」
そんな金色の闇の前に現れたのは、ダ・ヴィンチである。
ダ・ヴィンチは自分の背負っている鞄から、二つの機械で出来た腕を取り出して、それを動けない金色の闇に向かって解き放つ。
「レオナルドツインパンチ改!!」
「ハレンチねずみ、絶対に許しませんので!」
「何やったし……分身」
『……後で分かるよ』
二つの機械の手がロケットパンチの要領で飛んで来て、金色の闇を貫く。
体を貫かれた金色の闇は、最後にそれだけ言うと体が溶け出して消えていった。
「あー……なるほどね。うん」
「ダ・ヴィンチちゃん!大勝利!」
金色の闇が消えたのを確認した後に、階段下で床と触手に化けていた本体の京之助が、姿を戻したうえで記憶の結合をし、何があったのかを確認して微妙な表情をする。
そんな横で、何も知らないダ・ヴィンチは暢気に初勝利のVサインをした。