※この作品はR-18です。

多元世界ヒロインズ   作:ころろこ

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少年、己の職業を知る

「あぁ?」

 

 土曜日となり、ダンジョンが解放された初週も終わりが近づいていた。

それぞれがダンジョンダイブに挑み、ある者は何かを得られ、ある者は何も得られずに終わる。

何かを得られた者は、ダンジョンに対して冷静に考えて生き残る事を優先し、得られない者は楽観的な思考で自分は特別だと思った運頼み。

最初の差は小さいと侮ってはいけない、五月に入る頃にはダンジョン攻略勢とエンジョイ勢に分かれる事になるのだ。

 

 ダンジョン攻略勢は上位勢であり力ある者、生活の全てに余裕が出来る。

逆にエンジョイ勢はどん底であり力もなく、生活に余裕などない。

では京之助はどうだろうと言うと、当たり前にぶっちぎりで上位勢である。

ダンジョンダイブ解禁から一日たりとも休まずにダンジョンで鍛えぬいていた。

カードこそ出ないが、武器防具の類はドロップが多く、購買部で売り払うと金銭的余裕が出来る。

と言っても、明日の休日に『ショッピングに行くぞ』とエヴァに言われており、その余裕もなくなりそうだ。

 

慮外(りょがい)物がアッ!』

「……」

 

 頼んだ料理をお盆に乗せて、明日はどうしようかと悩んで席を探していると、何かが壊れる音と怒号が聞こえる。

何だと視線を向ければそこには叶馬が後ろにあったテーブルを木っ端みじんに吹き飛ばしているのが見えた。

それを立ち止まり、見ていると再度叶馬が拳を振り上げ、テーブルに何の恨みがあるのかと言う具合だ。

更には一人の女子が叶馬の前で土下座を始め、カオスな空間が出来上がる。

 

『傍目から見ると酷いな』

『女子に憑りついて猿が、好き勝手やってその調子で叶馬の逆鱗に触れたって描写なんだけど』

『絡んできた相手にブちぎれて土下座を強要したようにしか見えんな』

 

 食堂内のすべての視線を集めている叶馬達を遠目に眺めつつ、エヴァと会話をする。

今日のエヴァは何時ものようにカード化と言うわけではなく、()()()()()()()()()

流石にダンジョン内と部屋の中だけでは精神に悪いとなり、どうしようかと頭を悩ませた結果、エヴァが漫画に描いてあった方法を魔法で再現したのだ。

京之助は『エヴァえもん』と心の中でほんのりと呼ぶことにした。

 

「ん?」

「……」

 

 取り敢えず、叶馬達から視線を外して席を取らなければと急ぐ。

今日頼んだ料理はラーメンなので延びる前に食さないといけない。

と言うことで歩きだそうとすると、目の前には三人の男子が道を塞いでいた。

三人共に一年生であり、ニヤニヤと京之助を見ている。

 

「……」

 

 あぁ、通りたいのかと思い道を開けるも進む気配がない。

試しに三人の横を通ろうとすると、三人が塞ぐように動いた。

 

『珍しいな。俺に喧嘩吹っ掛けるなんて』

『ふむ……順調に行った組なんだろうな。おまけに()()()は武器を携帯していないから気が大きくなってって所だろう』

『面倒。早くラーメン食ってダンジョン行きたいんだけどな。ここで食いだしたら呆れてどっか行かないかな?』

『止めとけ、それをやると尚更舐められて絡まれやすくなるぞ』

 

 喧嘩を売られるも京之助は買う気が一切なかった。

そんな事よりも早くダンジョンでレベルを上げたい一心である。

 

『遠慮はいらん。殺気とか放って何とかしろ』

『殺気とか出したことないんだが?』

『ふむ……なら、こいつらは私を殺しに来た奴等だとーー』

「あ゛ぁ!?」

 

 ここでちょっとしたすれ違いが起きた。

エヴァとしては軽く蹴散らせればと思ったのだが、それ以上の過剰な反応が起きてしまう。

この間の問答もあり、この手の話に京之助が過敏に反応してしまうようになっていたのだ。

そのせいもあり、全力の本気の殺気を放ってしまう。

 

「!?!?!?」

「え……がふっ」

「……」

「な……にが」

 

 その結果、目の前の三人だけでなく食堂に居た全員に殺気が刺さる。

ダンジョンで鍛えられていた二年生はその場で固まり失禁、それ以上の学年の生徒は即座に逃げ出した。

不幸にも殺気のさの字も受けた事がない一年生と碌に鍛えていないエンジョイ勢及び生産職は餌食となる。

どろっとした重たく冷たい空気が流れ込み、それが一人一人に纏わりついて、命を刈り取ろうと心臓へと手を伸ばす。

突如出現した命の危機に人の持つ本能が即座に意識を遮断し守る、その結果多くの者がその場で倒れ込む事態となった。

特に悲惨だったのはちょっかいを掛けた三人の生徒である。

目は白目を向き、口からは泡を吹きだし、その場で崩れ落ちるかのように座り込んだ体はビクビクと痙攣、恥ずかしげもなく失禁した。

更に言えば、三人の意識は覚醒した状態であり、意識を手放すのを京之助の放つ殺気が許さない。

念入りに徹底的に精神を殺すと言わんばかりである。

 

『あー……そこら辺にしとけ、流石にそれ以上はまずい』

『……はぁ、外で食うか』

 

 自分の失言によって起こってしまった大惨事にエヴァはやってしまったと言う気持ちと、ここまで怒ってくれる京之助に嬉しいやら何やらで微妙な気持ちとなった。

逆に冷静になった京之助は、食堂内の悲惨な光景にやべー怒られるかもと気落ちするのであった。

 

「……やっぱりお前ら同じだわ」

「うんうん、トラブル起こす所とかそっくり」

「ごめんなさい、援護できそうにないです」

「むぅ……あそこまで酷くは」

 

 そんなカオスな状況を作り出しておきながらも、何事もなかったかのように外に出ていく京之助を見て、誠一達は青い顔でそう告げた。

 

 

 

 

 

 

………

 

……

 

 

 

 

 

 

「……いや、何だ。初歩って」

 

名称:須王京之助

階位:1

種族:『上位世界者(てんせいしゃ)

職業:GR『斉天大聖(孫悟空)-初歩-』

能力:『多元世界ヒロインズ(あなたを犯したい)』『どこでもラブホ』『觔斗雲(きんとうん)』『身外身(しんがいしん)』『地煞七十二変化(ちさつしちじゅうにへんげ)

 

スキルポイント:1

能力の強化

Level:2『多元世界ヒロインズ《あなたを犯したい》』

→Level3女性主人公(ヒロイン化)追加、自分と仲間のステータス補正10%→15%

Level:1『どこでもラブホ』

→Level2部屋の増築、施設の追加

 

 結局、外でラーメンを食っていると学園側の治安部隊がやって来て、京之助は連行された。

連行された一室で無実であると、先に仕掛けたの三人であり、そっちがいけないと力説。

その結果、京之助は注意だけですんだ。

食堂の清掃などの費用は喧嘩を吹っ掛けた三人組に負担させると裁断を受ける。

この際に先ほどよりはだいぶましな殺気が漏れて治安部隊が顔を真っ青にするも、今回の無実を勝ち取った件は無関係と思われる。

 

 そんな調子で時間を食ってしまい、時間も時間なので今日はダンジョンをお休みとなった。

どうせ学園内に居るならワンチャンス転職出来ないかと『聖堂(カテドラル)』にやって来た結果がこれである。

一応職業が見習いから変化し初歩へ、名前も読めるようになり、能力も手に入っていた。

 

斉天大聖(せいてんたいせい)、孫悟空か」

「まぁ……人の身に職業(クラス)を降ろすだけだから、能力も本人とまで行かず、弱体化しているだろうがな」

「ドラゴンボールの方じゃなくて西遊記のほうだよな。俺は西遊記のあらすじしか知らないけど、どんなんだっけ?」

 

 斉天大聖(せいてんたいせい)、言わずとも知れる『西遊記』の主人公の孫悟空である。

觔斗雲(きんとうん)に乗り、如意金箍棒(にょいきんこぼう)を武器として振り回し、己の毛を使い分身までこなす猿神様である。

そんな有名な孫悟空であるが、来歴までは一般人も知らない人が多い、何しろ一般的に有名化したのがドラマ版の西遊記であるからだ。

京之助もそのうちの一人であったと言うかドラマ版すら見た事がない。

西遊記のあらすじを知っている程度の知識であり、どれだけ凄い職業(クラス)を引いたか理解が追い付いてなかった。

 

「大雑把に言うと猿の王が仙人になり、地獄で閻魔大王を脅し不老になって、天界とやりあい不死となった挙句に宇宙の果てまで行って遊んで帰ってくるという逸話を持っている」

「地獄と天界の両方に喧嘩売ってる時点でおかしいな。てか宇宙の果てって何?」

「最終的には釈迦如来との勝負に負けて岩に封印されてから西遊記の話へと繋がる」

「西遊記前がヤバすぎる」

「元ネタとなったハヌマーンも凄いがな。私としては斉天大聖(せいてんたいせい)の方が好みだ。地獄の裁判長を脅し、天界の神々に喧嘩を売る……クックック、悪の魔法使いのお供にふさわしいではないか」

「まぁ……エヴァが喜んでるならいいや」

 

 元ネタのハヌマーンと言う神様も気になるが、なってしまったものはしょうがない。

京之助はこれで少しは強くなったかと喜ぶことにした。

 

「『觔斗雲(きんとうん)』は知ってるけど、エヴァは他のスキルの詳細分かる?何となく分かるけど流石に詳細まで覚えてないや」

「『身外身(しんがいしん)』と『地煞七十二変化(ちさつしちじゅうにへんげ)』か、身外身(しんがいしん)は毛で分身体を作り出す仙術だ。地煞七十二変化(ちさつしちじゅうにへんげ)は変化の術と覚えておけばいい」

「使い方とか分かる?」

「分かると思うか?」

「そうだわな」

 

 流石のエヴァも仙術の修行は行っていなかった。

魔法などを教えられるが妖怪変化や仙術、神通力の類は縁がない。

 

「となると……『岩永琴子』に期待かな」

「そうか、妖達の知恵の神。斉天大聖(せいてんたいせい)についても知っているかも知れんか」

「狸が変化の術とか使うし、仙術とまでは行かないけど知識としてはあるかも知れない。となるとやっぱり、今回は『どこでもラブホ』の強化だな」

 

 そこまでの話の流れで、強化先を決めるとエヴァも頷いて肯定した。

 

「おぉ……」

「ほー……」

 

 ステータス画面を開き、そのまま『どこでもラブホ』のレベルを上げた。

その瞬間、『どこでもラブホ』内が震えだし、ガコンガコンと京之助達が居たベッド以外の配置がどんどんと変化をしていく。

暫くの間、その様子を眺めていると新たな姿となった部屋が姿を現した。

 

「二階が追加されてる」

「壁際も広がり、部屋が四つほど出来たな」

 

 京之助は動きが終わると早速とばかりにベッドから出て内装などを確認しに行く。

エヴァもまた、気になるのか少しばかり楽しそうに緩んだ表情で付いて行った。

 

「下の四つは、『錬金部屋』『工作室』『洗濯所』『台所』か。何気に洗濯所と台所がありがたい」

「今まではお風呂の所で手洗いだったからな」

 

 錬金部屋と工作室は現在使用できる人が居ない為、日常的に使用が可能な二つの部屋の方がありがたかった。

 

「上は個人部屋みたいだな」

「部屋の数は五部屋か……私と京之助と岩永で三つは埋まるな」

「あぁ……俺は別にいいかな。下のベッドで十分だ」

「それならば、今の段階で三人の余裕か」

「転職自体が大変になって行くから……だいぶきついな」

「まぁ……カード自体拾えてないけど」

「0.02%がな」

「気長にやっていくか……」

 

 結局の所、それしかなく戦力が揃うまで時間がかかりそうであった。

 

「召喚は何時にしようか?」

「来週でいいだろう。明日はデートだ。邪魔をされたくはない」

 

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