――あなたは天道家の長女よ。それにふさわしい存在になって、みんなのお手本になりなさい。自分のことよりも弟や妹のことをお世話して、面倒を見て、優先するのよ。お姉ちゃんなんだから。
寡黙な父に代わって、母はそんな教育をわたし、天道 明日香に施した。お姉ちゃんだから、お姉ちゃんでしょ、という言葉はよくあるものだろう。男の子だったらお兄ちゃんだから、お兄ちゃんでしょって。だから、わたしが受けた教育もそれらと同じものだった。
全て真に受けて。全て言われた通りにしたつもりだ。実際、失敗はしていなかったと思う。
家族のこと、妹も弟のことも大好きだった。
けど、家族って、いつまでも一緒にいるものじゃなくって。
そう思わされた瞬間は、案外早かった。
妹は早くに彼氏が出来て。弟は、スポーツが強い学校へ行って、学生寮に住むようになって。
気がついたら、お姉ちゃんなんて必要じゃなくなっていた。
残ったもの? あんまりなかった。親でもないから、恩返しみたいなのもない。ある意味、損する感じ。後悔はしていないし、腹が立っているわけじゃない。ちょっと理不尽だったかなって、それだけ。
ずっと誰かのためになにかをする生活だったから、わたしはそういう本質を持つ人間に育った。
こればっかりは、癖になっているの。
バイトをしたり、生徒会をやったり、ボランティアとか、色々なことをした。でも、どれもしっくりこなかった。大学四年生になるまで、そんな状態が続いた。
ただ、恋愛には興味があった。
というより……正直に言うと、エッチなことに興味があった。
性欲は強い方で。好きな人に、たくさんいやらしいことされたいって、そんな妄想をしていた。
だけど誰でもいいわけじゃなくて……。
出会いがなかったわけじゃないけど。しっくり合う人とは巡り合えなかった。
そんな時に、合コンの話を友人から持ち出されて。
もうすぐ卒業だし。ちょっと、冒険してみようって。そう思った。
☆
おっくんを好きになって、わたしの欲求も、本質的なものも満たしてくれる人で……。
だけど、すっごく困った人なのも、わかっている。
特に、女癖が悪い……。
すぐ、女の子に手を出しちゃう。
わたしという彼女がいても「まぁいいか~」と思って、ホテルへ行く。
携帯とか見ているから、証拠だって押さえているもん……。
でも、本気の浮気ってわけじゃないから、我慢している。
本当は、すごく嫌だけど。
許せないわけじゃない。
それくらいは大目に見てあげようかなって、思えちゃうし……。
おっくんは普段ああいう風だけど、ちゃんとすれば本当はすごく真面目なんだっていうことも知っている。
けど、最近、ちょっと許せないことがあった。
気になっていることがある……。
一人だけ。
おっくんが、きっと、好きになっている人がいる。
☆
「お前、しつこい。重いよ、そういうの」
喧嘩する時は、よくそんなことを言われていた。
うざいだとか。めんどくさいだとか。
今思えば、なんで彼氏なんか作っていたのか。とっても疑問になるわ。
私――乾 亜美子は、32歳。世間的にはまだまだ結婚適齢期だそう。結婚しないのって、イイ人いないのって、両親に聞かれるけど。もう正直、そういうのに興味はない。
男を好きになると、周りが見えなくなる。
いや、見えなくなるタイプ「だった」。
今は違う。そもそも人を好きになんてならない。
すっかり冷めてしまったのだ。
だって、尽くせば尽くすほど男は「重い」「めんどくさい」「しつこい」とぶつぶつ文句ばかり言う。
束縛なんて、甘えているだけなのに、突っぱねられる。
最初はそれでもいいって思ったけど、今振り返ると、恋愛していた時期はとても幸せと呼べるものではなかった。むしろ時間の無駄だと、思えるほどだ。いつもいつも喧嘩ばかりしていた。
結婚なんてもってのほか……。
そんな時だった。アイツが、職場へやってきたのは。3年前。アルバイトとして入ってきた吉岡 治は、当初若さ(まあ私の一つ下だから言うほど若くないけど、この会社ではっていうアレである)に期待されてアレやコレと仕事を振られていた。しかも高学歴、前職が有名な大企業の正社員(正確に言えば、日雇いが前職であるが、やはりこちらが注目されていた。まあ、世の中そういうものだ)でそれなりに長く勤めていたともなれば、能力が高いものと見積もられるのは当然の成り行きであった。
しかし蓋を開けると平々凡々……いやむしろ、欠勤が多いなどの勤務態度の悪さから、評価がどんどん下がっていったのは言うまでもない。
彼は戦力というより、一人のアルバイトとして扱われた。まぁ、妥当でしょう。
しかも性格はダメ男。将来の設計なんて全く考えてなさそうなタイプだ。
だけど、私が彼とセフレになったのは、出会って一か月程度のことである。
☆
なにかきっかけがあったわけじゃない。
職場で会話して。連絡先を交換して。そうしたらデートするようになって、流れでセックスまでして。そこから戻れなくなった。そんな感じ。
セックスフレンドを作ったのは、初めてであった。
だけど肩ひじ張る必要のない、気軽な関係は案外良いものだ。治くんも多くは求めず、空気に流されるがままだから、余計に気張らなくていい。恋愛にも女にも、彼はなにも望みなんてないのだ。でも、セックスはすごい。それだけは、あいつのすごいところだ。正直、前の彼氏よりも気持ち良い。激しくて、情熱的で、普段のぼーっとしたダメっぷりからは想像できないくらい、立派なチンポもある。肌と肌がフィットするように、あいつとは相性も良かった。
ある日、ちょっと変わったシチュエーションでしてみないかと誘われた。なにかと聞くと、カラオケ店の個室でセックスしたいとのことだ。バレたら色々とヤバいし、いい歳して、なにをしようとしているんだと思ったけど、相手はセフレだ。こういう冒険も良いかなって、思った。それに、そういうイケないことに、興味がないわけじゃない……。
金曜日。仕事帰りに、治くんと二人でカラオケ店へ行った。ビルのテナント4階と5階にある、駅前にあるタイプの店だ。予約なしだったがすぐに入室出来た。5階の個室で、四角く廊下が伸びて、真ん中と囲うように部屋がそれぞれ並んでいる。私達の個室はエレベーターで上がって、真っ直ぐに行ったすぐのところにあった。そのポジション的に帰り、行き共に色んな人が何回も近くを通るだろう。ドキドキした。
仕事帰りだから、私はスーツ姿のまま。まあでも金曜日だし、飲み会の帰りぐらいにしか思われないだろう。実際、他の部屋から漏れてくる歌声は酔いの回った若者や中年のものに溢れていた。
二人で部屋に入り、電気を消す。モニターからはカラオケの運営会社が制作した番組がリピートで流されている。ソファが正面と、廊下側の二つに置かれていた。模様があるものの、ドアはガラス製で少し廊下から中が見える。完全にではないが、見えづらい位置にある廊下側のソファに、私達は一緒に座った。
「本当に、いいのかな?」
「いいわよ、べつに。カメラは個室にないみたいだし。ただ、廊下にはあるみたいね」
「あはは、まあ、バレはしないよ。そこは平気だから」
「ふーん。もしかして、他の女でもう実証済み?」
「ち、違うよ、やだなー」
治くんが誤魔化すように私を押し倒し、互いにディープキスを交わす。ソファの上に横になり、愛撫し合う。セックスが始まる。日常から非日常になるこの瞬間は、結構、癖になる。
「んむぅ、んちゅ、くちゅう♡ っ、はぁ、んうっ♡」
甘く痺れるような快感。キスだけで、全身が溶けていくようだ。唇と唇を重ね、互いの舌と舌をねっちょりと絡ませ合う。
治くんは私の着る上着と、シャツのボタンをとり、黒いブラジャーを上へたくし上げた。乳首がブラジャーに引っ掛かっていたが、やがてプルンっ、プルンっ♡ と、勢いよくおっぱいが揺れながら剥き出しにさせられる。扉からは廊下の光が差し込んでいる。今更ながら、カラオケ店の個室でおっぱいを出しているという状況に、頬が熱くなった。
治くんがおっぱいを揉みながら、乳首を舐める。もにゅ、もにゅ♡ と手の形におっぱいを歪ませられながら、興奮で硬くなった乳首をちゅうちゅうと吸われる。
「はぁ、んあっ♡」
口から甘い息が漏れる。もう、体の芯が熱い。私の体が、彼のモノを求めている……。
治くんがスカートの中へ手を突っ込み、パンツ強引にづらして指でマンコを撫でた。ビクビク♡ と思わず、腰を浮かせてしまった。
「亜美子さん、もうびじょ濡れだね」
「そう、よ♡ てか、これ、ドキドキするわね♡」
「ね。しかも、こんなエロい爆乳美女がいやらしいことしているなんてね」
「やだ、もう♡ アンタのせいじゃない♡」
治くんを押し倒し、勃起したペニスを取り出す。相変わらず大きくて元気なそれを、舌でペロペロと舐めてやる。
そしてペニスを頬釣りしながら、問いかけた。
「もうこんなにして♡ どうしてほしい?♡」
「お、おっぱいでパイズリしてほしい」
「これ?♡」
ペニスに近づけながら、おっぱいを両手でムニュ♡ と持ち上げる。だけど、挟んであげない。わざとすっとぼけて、焦らしてやった。
「亜美子さん……! それなら、僕がパイズリを教えますよ」
「え? あっ♡」
ソファの背もたれに押しつけられ、治くんが私の爆乳の谷間へ向けて、勃起したペニスを突き刺す。硬いチンポがおっぱいを歪ませて、ムチムチ♡ と形を変えた。「ああっ、おっぱい、柔らかい……!」治くんが夢中いなりながら、そのまま腰を振る。肌がおっぱいに当たるたびに、たぽんっ♡ たぽんっ♡ と大きく音を立つ上、しっかりとペニスで奥まで押しつけて来るものだから、押し込まれた時、おっぱいがむぎゅううううっ♡ と横へ大きく形をへこませた。本当、エッチなやつなんだから……♡
私は治くんが気持ち良くなるよう、両手でおっぱいを抑える。
「んっ、あっ♡ もう、必死に腰振って♡」
たぱんっ♡ たぱんっ♡ 下から右腕を入れ、おっぱいの膨らみかき集めるように持ち上げる。上からは左手でむぎゅっ♡ とするも、大きいから上手く抑えきれない。「治くん、横抑えて♡」治くんが両手を伸ばし、おっぱいを横から抑える。こうして上下左右共に腕で抑えながら、腰振りパイズリが出来る。
「うっ、ああっ」
「んうっ、んっ♡ おチンポ、あついっ♡」
腕から膨らみがむにゅうう♡ とはみ出る。そして腰振りをされるたびに、それがプニプニと、スライムみたいにいやらしく変形する。治くんのチンポがビクビクしていた。そろそろイクのかな……♡ ふふふ♡
「亜美子さん、もうっ」
「いいわよ♡ このまま、おっぱい中出しで♡」
「はっ、あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
パチュン♡ 最後の一振りと共に、爆乳の谷間へ向け射精。ビクン、ビクン♡ と暴れるように動くチンポから、いやらしい精液が、白く谷間を汚した。ペニスを引き抜かれる。瞬間、べっとり♡ と、おっぱいの谷間にはザーメンブリッジが出来上がっていた。116センチMカップなのに、あまりにもたくさん出すから、溢れてしまいそうだ。
「いっぱい出したわね……♡」
精液を掬い、じゅるりと飲み干す。治くんのチンポはまだギンギンだ。
「ふふふ、上に乗ってあげる♡」
パンツを降ろし、治くんの上へと騎乗位で跨る。チンポを掴んで入口へと当て、上げた腰を降ろした。
ズボボボッ♡
深く、深く、硬いのが貫くように中へ入ってくる。
「あっ、んんんんっ♡」
ズチュ♡ ズチュ♡ 濡れた体液が擦れる音と、肌と肌がぶつかり合う、しっとりと濡れた音が個室に淫靡として響く。
「あ゛あ゛っ♡ あっ、ああんっ♡」
我慢出来なくて、つい、喘ぎ声を漏らしてしまう。私はセフレチンポを貪るように、発情したメスの如く腰を振る。治くんは揺れるおっぱいを下から持ち上げるように、ぎゅっと押し込んで揉んだ。手はおっぱいの中へと吸い込まれるように入っていき、爆乳をへこませている。普段は大きく膨らんでいる胸が、彼の手によって、あらぬ形へ変えられていることに、興奮させられた。
「ここ、いいっ♡ お゛お゛っ、お゛お゛お゛っ♡」
「亜美子さん、バレちゃうよ」
廊下では複数の足音が聞こえている。時折、話声も聞こえた。カップルとか、男女のグループとか、様々だ。
「ふふっ、このスリルがいいんじゃない♡ アンタもそうでしょ♡ あっ、あっ♡ ダメよ、動いちゃ♡」
「奥、ゴリゴリしてあげる」
「ん゛あ゛♡ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ♡」
下から奥を突かれ、マンコがきゅん♡ キュン♡ と勝手に引き締まった。気持ち良すぎて、おかしくなりそうだ。体をぎゅっとして、治くんとディープキスを交わす。治くんはキスしながら、腰を振って、下から突き上げ、スカートの中へ手を入れて、お尻を撫で回した。
「場所変えようか」
「ん?♡ えっ、きゃっ♡ もう、ばか♡」
固いテーブルの上へ横にされ、治くんに正常位の恰好で挿入される。ずぷっ♡ という感触と共に一つとなり、腰を大きく早く振られた。テーブルがガタ♡ ガタ♡ と音を立て揺れる。位置が代わり、扉から中が見えてしまいそうだ。
治くんは腰を振りながら、私の乳首を舐め、そして吸った。ちゅぱ♡ くちゅう♡ と強く吸いながら引っ張るから、おっぱいが淫靡に伸びた。
「あ゛あ゛ん゛♡ もうっ、ミルク、まだ出ないわよ♡」
ズチュ♡ グチュ♡ ガタ♡ パン♡ キュン♡
激しいセックスは絶頂へ向けて、さらに情熱を増していく。治くんは豪快な腰使いで動きながら、大きな声を出した。
「亜美子さん、もう、イキそう!」
「いいわよ、このままっ」
「い、いいの?」
「いいわよっ、中で♡ たくさん注いでぇ♡」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!」
「ン゛っ、あっ、いぃ、イクゥぅぅぅぅぅぅ♡」
どぴゅうううう♡ どぴゅ、ドピュ♡ どぴゅうううう♡
激しい射精を、中で感じた。お腹の中はあっという間に治くんの精子でいっぱいになり、熱くなった。
「はぁ、はあ♡ すっご……♡」
私はすっかり、治くんとの関係にハマっていった。
☆
「アンタ、携帯止まるって、学生じゃないんだから……」
「あ、あはは……まあ、そういうわけで、今月ピンチで。ごめんね」
「はぁ。仕方ない、奢ってあげるわよ」
「え、マジで!? やったぁ!」
治くんはしょっちゅう、お金が足りない状態に陥る。まぁ、あの働き方では仕方ないだろう。しかも喫煙者。パチンコも好きなのだとか。おバカさん。でも、彼女が出来てからは、携帯が止まったりすることは無くなった。それでも金欠になっていたけど。
治くんはよく愛想笑いを浮かべる。というか、ヘラヘラしている。人生も社会も舐めている感じだ。
だけど一方で、なにかあった人なんだろうなって、なんとなくわかっていた。
もちろん、良い大学良い会社の出がイコールでその人間のステータスというわけではない。だけど、指標になるのは事実。あの経歴は、ある時突然糸が切れたように、レースを外れたようなものだ。
どうしてそうなったんだろうって、気にはなっていた。
そうしたら。意外にも、治くんから話してくれた。ある日突然、セックスが終わった後に。そうして、治くんは照れたように笑った。
「いやぁ、ごめん。暗い話だよねー」
「別に、いいわよ。私はアンタのセフレなんだから、気楽になさい」
心を開いてくれたみたいで、嬉しさがあった。だけど、恥ずかしさもある。治くんの頭に腕を回し、おっぱいでぎゅうううっ♡ と抱きしめた。そしてその頭をそっと撫でてやる。
かつての私は、彼氏に対して束縛が強かった。どちらかというと、メンヘラ女の類だった。実際、そう言われていたし。そして恋愛に疲れ、失望し、メンヘラな私はどこかへ消えてなくなってしまった。
だけど、完全に無くなったわけじゃないのかもしれない。
私は治くんの、母親や姉代わりになろうとしているのかも。だからつい甘やかすし、かわいがってしまう。
かつての感情が、庇護欲のようなものに変わっていったのかもしれない。
そうして、治くんと一緒にいるたびに、身も心も満たされていく……。
だけど、良いことばかりではない。
あいつは彼女が一度倒れてから、変わった。会社へ毎日来るようになって、当日欠勤や遅刻が無くなった。勤務態度が改善されたのだ。
一か月くらいだったけど。彼の変化と、会社の機微はタイミングが重なった。彼は、会社で募集している新規準社員の候補に選ばれ、話が直接行った。驚いたことに、彼はその話を引き受ける方向で進めているらしい。
ずきりと、胸が痛んだ。
……そんなに、彼女が大事なんだ。
そう思ってしまって。つい、苦しくなった。そんな自分に驚きもしたし、戸惑い、だけど、まぁそうよねと納得する心もあった。
これだけ居心地が良くて、好きじゃないわけがない。
でも、アイツには彼女がいて……。
私はセフレ。それも、自分で望んで選んだ関係だ。
恋愛に失望した、なんて言ったけれど。正直、あれは見栄だ。私は失敗したんだ。恋愛に期待して、彼氏に理想を押しつけ、恋する自分に酔っていた。そういう一面もあった。だけど失敗を認めたくなくて。だから、治くんとの関係もセフレでキープしようとした。私はそういう女だ。
だけど。だからこそ……後悔はしたくない。
私にだって、譲れない思いがある。
だからあの日。私は治くんのアパートへ向かった。彼の彼女とは面識がないけど、きっと会うことになるだろう。
それでも、一歩も譲るつもりなんてない。ただのセフレでも。治くんを好きだっていう気持ちは、同じなのだから。
「ふふふ。困らせてやる」
わがままでもいい。エゴかもしれない。
それでも、アイツは人を好きになることを、教えてくれた人。
想いだけは嘘じゃないって、伝えたい。なによりも、自分自身が後悔しないように。
まあでも、セフレだから軽い感じでいこうかしら。
決心を胸に。私は、部屋のチャイムを鳴らした。