幼馴染のツノを触りたい 作:ツノ角
スーパーで買ってきたカレーの具材を片手に玄関を開けて家へと入ると、リビングの扉の奥から誰かの話し声……いや、これはテレビの音かな? が聞こえてくる。
靴を脱いでそちらへと向かい扉を開けばソファに座ったリャンがテレビを見ていた。
「おかえりー」
「……ただいま」
こちらを一瞥したリャンの軽い挨拶に対して、まるで夫婦みたいだなと恥ずかしいことを考えてしまい一瞬遅れてから返事をする。
昼飯を食べている時のように顔が熱くなるのを感じながら台所へ向かい買ってきた材料を袋から出していく。
「なに作るのー?」
「カレー」
材料を置いていく音が聞こえたのか近づいてきたリャンからの質問に端的に返しながら、チラッと彼女の方を確認する。
別に普段絡めることがないからなるべくこの機会にオフの彼女を視界に収めとこうとかそう言うわけじゃないけどなんとなく見とこうと思っただけで、あれ?
「ズボン替えた? さっきもその色だったっけ?」
なんとなく違うような気がして投げかけた質問に対して固まった様子のリャンは、ほんのりと頬を染めながら口を開く。
「……あー、ちょっとね。昼ごはんの時に汚れてたみたいで着替えてきた」
「ふーん」
照れくさそうに笑うリャンの顔が可愛すぎて着替えた理由を半分くらい聞き流しそうだった。
けど、そっかそっか。
こんなに可愛いリャンでもご飯の時に洋服汚したりするんだな。なんか美少女のギャップみたいで可愛いな。
「なにー?」
「あ、いや、なんでも?」
見過ぎていたのかジト目で見つめ返されてしまい、しどろもどろに誤魔化しつつカレーの具材の方へと意識を向ける。
今のうちから作り始めたら晩飯の時間に慌てることなく食べることもできるだろうし、サクッと作っちゃおうか。
具材を手に取り早速始めようかとしたところ、リャンが更に近づいてきて隣へと並んでくる。
「今から作り始めるなら私も手伝おうか?」
至近距離のリャンがそんなことを言ってきて見つめてくる。
え、なに? なんでこんな近づいてきたの? 提案するだけなのにこんな近づく必要ある?
内心の動揺を悟られないように平静を装いながら返事をする。
「ん、あ、いや? 俺が一人で作っちゃうからリャンはテレビ見てていいぞ?」
普通に動揺してるのバレバレだね。
声震えてるじゃないですか俺。恥ずかしいんだけど。
頼む。リャンはもうテレビ見ててくれ。近くに居られるとツノを触りたい欲求を我慢するのも大変なんだよ!
「え〜? 野菜洗って皮剥いたりとかできるよ?」
笑った顔可愛すぎるでしょ。
学校でも仲良い友達と喋ってる時の笑ってる顔を見て他の男子が盛り上がってるのを見たことがある。
その時は何やってんだっていう思いがあったけど、確かにこの顔を見たら盛り上がるわ。
イタズラっぽそうな笑顔とかツノ付き美少女がやっていい顔じゃない。男狙い撃ち兵器すぎる。
これには俺も男子の一人として完敗です。
「じゃあ、お願いするわ」
「はーい」
明るい声で返事をしたリャンが野菜を手に取り水道で洗っていく。
その様子を横目にまな板と包丁を手に取り肉を切っていく。
まるで夫婦みたいだなと帰ってきた時と同じことを考えて顔が熱くなるのを感じながら料理を開始した。
◆
「ふぅ、これであとは食べるだけだな」
「お疲れ〜」
なんとか何事もなく料理が完成して一息ついた俺とリャンだけど、まだ晩飯にするにしては早いし他のみんなも帰ってきてない。
普段なら一人でやることもないから部屋に行くんだけど、今日は滅多にないリャンが来ていて仲を深めるチャンスでもある。
ここで好感度を稼げればいつかツノを触らせてもらうこともできるはずだ。
「ふぃ〜、久しぶりに料理した〜」
顔を手で仰ぎながら椅子に座ったリャンは、そのまま流したままだったテレビを見始める。
内容は特に気を引くものもないニュース番組で、獣人族やエルフ族の血を引く人たちがコメンテーターをやっているのが映っている。
横目でリャンの様子を見れば彼女も特に興味がないのかつまらなそうに眺めていた。
「……部屋でゲームでもする?」
今世紀一番の勇気を絞り出して発した言葉は、語尾がなんか変に上がっていたような気もするものだった。
絶対に変なイントネーションだったろうにそれを聞いたリャンは、バカにするように笑うでもなく一瞬キョトンとした後、嬉しそうに笑って。
「うん!」
と、頷いてくれた。
「じゃ、2階行こう。昔とそんなに変わってないから変わり映えないと思うけど」
「エーソウナノ?」
なんかカタコトのような気もするリャンの声に首を傾げならもテレビを消してリビングを出る。
そのまま階段を上がって子供の頃から変わらないネームプレートのかけられている部屋の前に立つと扉を開く。
当然飛び込んでくる部屋の中の景色は、リャンのインターホンに対応するために出た時のまま。乱雑に置かれたベッドの上の毛布にテーブルの上の雑誌やゲーム類。足の踏み場に困ることはないものの隅に置かれた漫画の束。
普通に考えて女の子を入れる部屋じゃなかった。
「あー、ごめん。ちょっと片付けるわ」
「別にいいよ〜。私とルイの仲じゃん!」
言うないなや部屋に入りベッドの上へと腰を下ろした彼女は、隣をポンポンと軽く叩いて誘ってくる。
本当に気にしてなさそうな様子のリャンに、勝手に成長と共に距離を空けてた自分が恥ずかしくなりつつも誘われるがまま隣へと座った。
「で、何するの?」
首を傾げるリャンに対して机の上に置いてあるゲームソフトを手に取り答える。
「俺とリャンが対等に出来るって言ったらコレに決まってるだろ?」
そう言って見せるのは子供の頃に妹も含めた三人でよく遊んだ対戦ゲーム。そのリメイクが出たのを最近買って封も開けずに置いていたのだ。
あの頃を思い出すからとずっと開けないままだったろうから、この機会にと遊んでみることにする。
俺の提案を受けてゲームソフトを受け取ったリャンは、その名前を読み上げて昔の記憶が蘇ったのか瞳を輝かせ始める。
「えー! リメイク出たんだー! やろやろ!」
そう言った向けてくる笑顔のなんと可愛いことか。
思わず目を逸らしながらソフトを受け取り、中のディスクをテレビ下のゲーム機へと差し込みにいく。
そのまま繋がれていたコントローラーの一つをリャンへと渡すと、彼女はそれを見つめながらある提案をしてきた。
「……ねえ、どうせなら罰ゲームつけようよ」
「罰ゲーム?」
思わず聞き返した俺に対してニヤリと笑ったリャンが内容を口にする。
「そ。負けた方は勝った方の言うことを聞くって罰ゲーム」
綺麗な赤い瞳が細められるのを見て思わず唾を飲み込んでしまう。
それはつまり罰ゲームを言い訳にしてツノを触ってもいいってこと、か?
いやいや、そこまで有効なわけないだろ。できてもジュース奢りとかそのレベル……。
「勿論、エロいのあり」
「はぁ!?」
リャンの口から告げられた内容に思わず立ち上がり彼女を見つめてしまう。
その顔は薄ら赤くなっているものの負ける気は一切ないと言わんばかりのやる気を宿している。
……なるほど。これは絶対に負けないという覚悟の現れ。
自分が勝てばそんなことは決して行われないという自信と、かつてはこのゲームで俺たち兄妹をボコボコにしていたという栄光あってこそ。
なら、この勝負男として乗らないわけにはいかない。
彼女がここまでの覚悟を見せてくれたんだ。
「よーし、分かった。俺も手加減なしで行く」
そう返すとリャンの体がぶるりと震えたような気がしたもののきっと武者震いだろう。
しばらく疎遠に近い関係になっている間も子どもの頃のような男勝りな性格は、そこまで変わっていなかったってわけだ。
なら、その覚悟を利用して俺は命令させてもらう。
―――ツノを触らせて欲しい、と!
誤字報告ありがとうございます。