「では、脱ぎますね、陛下」
場所は内宮の一室。皇帝の私室とも言うべき空間で、すぐ隣には寝台がある。すでに人払いは済んでいる。
徽宗にとって護衛など無用だった。
戦場に幾度も身を置き、鍛えられたその腕力と胆力は、容易に敵を屠る。高廉が万にひとつ反逆の刃を向けたところで、この細い喉は片手でへし折れる。
ただし──高廉には武術の心得はないが、道術の才がある。
もっとも、道術といっても、人を殺す術ではなく、宝具を作る技であり、幻を見せる程度に過ぎない。ゆえに、ふたりきりになっても差し障りはなかった。
高廉は静かに帯を解いた。
柔らかな袍着を脱ぎ、椅子の背にかける。
その下には幾重にも重ねた内衣がある。
高廉はそれも脱いでいく。
徽宗は目を細めた。
内衣の下に現れたのは、女のそれ──胸巻きだった。
細く巻かれた布の奥には、明らかにふくらみがある。
大きくはないが、乳房としか思えぬかたち。男の身体には見えなかった。
高廉の性は女──噂は事実か。
だが、下衣の股間には男の象徴を思わせる膨らみがある。
片方が真で、片方が偽か──徽宗の視線は、鋭くなった。
「私の裸に、興味をお持ちですか?」
高廉が唇を弓のようにしならせた。
妖艶な色気が、まるで香のように漂う。
徽宗は内心のざわめきを否応なく意識した。
女でも、男でもいい。
この高廉──抱いてみたい。
そう思った。
それもあって、徽宗はこの部屋を選んだ。
隣の寝室とは扉でつながっている。両室とも、すでに人払い済み。
「高廉。こっちへ来い。余の傍で脱げ」
徽宗が手を伸ばし、高廉の腕を取った。
「こ、これは……? 裸を見るだけのお約束では……?」
高廉が苦笑しつつも、逆らわず傍に寄る。
「ならば、こうしよう。お前の弟。復帰の暁には一介の将校では、収まりが悪かろう。余の一声で、近衛軍付の大将にもしてやれる」
徽宗は唇の端を吊り上げた。
この"男"の急所は、弟──先ほど見えた。
高廉の瞳が揺れた。見開かれた眼に、動揺が走る。
「その御恩に、何を差し出せば……?」
「明朝まで、ここで過ごせ。それで弟は大将だ」
徽宗が手を放すと、高廉は静かに胸巻きの紐を解いた。
白い布の奥から、慎ましくも柔らかなふくらみが現れる。
──女だ。
透けるような肌、滑らかな胸元。
徽宗は、思わず息を呑んだ。
「お、お前は……女であったか」
「さあ──」
高廉は、腰布に手をかけた。
男も女も、この布の造りは同じ。
薄く、軽い布で股間を包み、腰の横で結ぶだけのものだ。
その結び目をほどけば、一枚の布として形を失う。
高廉は、何のためらいもなくそれを解いた。
布を外し、袍衣と一緒に椅子の背にかける。
徽宗の身体が、僅かに浮く。
視線の先にあったものに、無意識に反応した。
少年のものを思わせる器官がそこにあった。
ただし、毛は一本もない。
睾丸もない。
線の細い身体に、男らしさの影はない。
むしろ、完成された女の輪郭があった。
目を奪われる。
この世の理をはみ出したような美しさ。
だが、その股間には、まるで異物のように肉棒が添えられていた。
「私の正体でございます、陛下……。男でもなく、女でもなく……それが私でございます」
高廉は、卓に腰をかけた。
静かに片脚を引き上げ、自身のそれを手で上に避ける。
その仕草すら、ひとつの儀のようだった。
視線が、奥へと導かれる。
そこには、もう一方の性が、確かにあった。
「は、半陰陽者か……」
徽宗の口から、思わず洩れた。
そう呼ばれる者たちがこの世に存在することは知っていた。
だが、現実として目の前に現れたのは、これが初めてだった。
「そ、それは両方とも機能するのか……?」
声が掠れる。
理性と欲望のあいだで、徽宗の中の何かが熱を帯びていた。
「それは、ご自分でお試しください……」
高廉が、すっと動いた。
無音で、徽宗の膝に跨る。
柔らかな太腿が触れる。
両腕が、徽宗の首に回される。
目の前に、熱を孕んだ顔があった。
唇が、近づく。
そのまま、ゆっくりと触れ合った。
舌が入り込む。
徽宗は即座に応じた。
唾液が交わり、舌が絡み、息が混ざる。
──甘い。
その味が、舌の奥に残った。
「お前の唾液には味があるな……。なにか果実でも食ったか?」
口を離し、徽宗が訊ねた。
高廉は、かすかに視線を落とした。
「……道力の影響かもしれません。私が欲情すると、私の唾液には媚薬のような効果が混じるのです。しかも、それは私自身にも作用してしまうようなのです」
徽宗は目を落とした。
高廉の股間にあるものが、見事に屹立していた。
「女としての道具は反応しているか?」
徽宗の指が、静かに高廉の下へ滑り込んだ。
「はああ……」
甘く濡れた声が、耳にかかる。
指先に、確かな熱と湿り気。
女の性が、しっかりと反応していた。
高廉が甘い声をあげて、徽宗にしだれかかってくる。
その女陰の部分はしっとりと濡れていて、しっかりと愛蜜が滲んでいた。
「へ、陛下……」
高廉の声が、かすかに震えた。
身体を預けながら、片手を徽宗の股間へと這わせる。
「た、逞しいです、陛下……。それで突いてください……。そ、それと、どうか高俅のことは……」
甘えるような囁きが、徽宗の耳を打った。
言葉の端に揺れる“情”と“欲”が、徽宗の本能に火を点ける。
「まずは、口で舐めよ」
短く命じた。
高廉は無言のまま、徽宗の膝からおりる。
静かに膝をつき、袍の裾に手を掛ける。
徽宗は腰を浮かせ、それを手伝う。
一物が剝き出しになる
しっかりと勃起して天井を向いていた。
高廉の小さな口が徽宗の股間を含む。
温かい高廉の口の肉で包まれた怒張の先端が、舌で刺激され始める。
「おっ、こ、これは……。ううっ……」
呻きに近い声が、徽宗の喉から漏れた。
唇が、舌が、あまりに巧妙に攻めてくる。
すでに快楽の奔流が、背筋を駆け上がっていた。
「す、素晴らしいのう……」
徽宗は、高廉の頭を両手で抱え込んだ。
そのまま、ぐっと押し込む。
高廉の顔が揺れる──いや、揺らす。
興奮すると、こうやって嗜虐的に扱うのが徽宗の趣味だ。この高廉は徽宗が我を忘れたくなるほどの快感をもたらしてくれる。
込みあがった嗜虐的な欲望のまま、徽宗の男根を口で奉仕している高廉の顔を乱暴に動かす。まるで高廉の口を使って自慰をするような行動だ。
「ん、んぐっ……んんぐっ、んぐっ」
高廉が狼狽えて、苦しげな呻き声をあげだす。
その苦悶の態度がさらに徽宗の欲望を刺激した。
「ほら、もっと奥まで入れよ。余を愉しませよ。その代わりに、そなたの弟ともども、余が自ら眼を掛けてやる」
そう言いながらも、徽宗の手は容赦がない。
高廉の美貌を“器”と化すことに、昂ぶりがあった。
「手を使うな。口だけで余の精を出すのだ」
さらに高廉の顔で自分の怒張をしごく。
高廉の美しい顔をこうやって、「もの」のように扱うのは実に嗜虐心が昂ぶる。
すると、苦しそうだった高廉の呻き声がだんだんと性感が解けるような声に変わっていく。
高廉もまた、性的な興奮をしているのだとわかる。
この高廉はいい──。
今回の一度で終わるのは惜しい。
徽宗は思った。
そして、いよいよ射精の昂ぶりがやってきた。
「飲め──。一滴残らず飲め。弟殿のことは約束する」
徽宗は本能のまま欲望の粘汁を弾けさせた。
限界まで高廉の喉深くに怒張を突っ込み、精を迸らせる。
「んんんっ」
高廉がえずきながら、興奮の声を出す。
徽宗は、大きな快感とともに高廉の喉奥に二射、三射と精を連射していった。
「ああ、なかなかの舌だ。思わず興奮したぞ」
徽宗はようやく高廉の頭を解放した。
高廉は美貌の口端から、わずかに滴るものを指で拭い、跪いたまま徽宗を見上げていた。
その目には、かすかな恨みの色があった。
だが、口元はほころんでいる。
不快ではない。むしろ、戯れの延長のようにも見えた。
「はあ、はあ……。ず、随分とご無体な……」
「余の性分でな。だが、約束は守ろう」
徽宗が立ち上がる。
高廉の手を取り、隣室へ導いた。
そこには、寝台があった。
ふたりは、その上に身を移す。
「余をもっと愉しませよ。尻を向けよ」
徽宗の声に、高廉はひらりと笑った。
「仰せのままに」
やや戯けた口調だったが、動きは慎重だった。
四つん這いになり、脚をやや開いて構える。
その姿勢が、見せることを恐れぬものだった。
先ほどまでの口づけと奉仕の熱が、まだ尾を引いていた。
高廉の女の器は、熟れていた。
わずかな動きにすら、蜜が滴る。
一方の徽宗も、さきほどの放出をものともせず、なお猛りを失っていなかった。
高廉の唾液に混じっていたという媚薬効果のせいか。
あるいは──この妖艶な肉体に、心が強く反応しているのか。
理由は、どうでもよかった。
ただ、昂ぶりが止まらない。
「いくぞ」
短く告げて、徽宗は高廉の尻に手をかけた。
肉が開かれる。
女としてのそこへ、猛りが深く挿し込まれる。
「ああ、へ、陛下、す、素晴らしい──。もっと、もっとお突きになって──」
高廉の声が裏返る。
言葉の端々に、震えと快楽が滲む。
徽宗は片手を伸ばし、高廉の股間へと手を差し込んだ。
男の器が、熱を持って屹立していた。
その根を握ると、わずかに痙攣する。
女を抱きながら、男を弄ぶ。
異様な快楽の構図が、徽宗の中で欲を焼いた。
「ああ、そんな、ご無体な──。ああ、陛下、そんなことは……」
高廉の声が、泣き声に近くなる。
だが、それは苦しみではない。
悦びに呑まれる声だった。
「女としてのそなたも、男としてのそなたも、全て余のものだ──。余のものだ──」
徽宗の口から、力強い言葉が漏れた。
律動が、強く、深くなる。
肉がぶつかる音が、室内を満たした。
やがて、絶頂の波が近づいてきた。
脳天から爪先まで、昂ぶりが駆け抜ける。
徽宗は、己の身体が燃え上がるような感覚に包まれた。
「ああ、陛下──。陛下、いってしまいます──。陛下、ああ、どうか、弟の高俅のことは──」
「ああ、任せよ。全ての余に任せよ──」
言葉と律動が重なる。
欲と快楽が、炎のように絡みつく。
「いきます──、はああっ、あああっ」
高廉が、がくがくと震えた。
背を大きく反らし、指先が寝台を掴んだ。
全身を弓なりに反らせたまま、激しい呼気を吐き出す。
「ああ、出るうう──」
高廉の前側にある器も、徽宗の手の中で脈打つ。
それが放つ熱と震えが、手のひらに染み込む。
女として、男として。
両方の性が、同時に果てた。
その瞬間、徽宗の口からも、低いうめきが洩れる。
「おお、余もいくっ」
深く、そして確かに、徽宗は己のすべてを注ぎ込んだ。
高廉の中へ──。
女の器に、欲望のすべてを刻みつけた。
息が重なる。
心音が、二人のあいだで響き合う。
室内の空気が沈黙を取り戻したとき、すべてが終わっていた。
だが、ふたりの身体にはまだ余熱が残っている。
吐息ひとつ、微かな仕草が、それを物語っていた。
高廉の身体が、徽宗の下でぴくりと震えた。
指先、背筋、脚の芯まで、余韻が残っていた。
まだ荒い呼吸を繰り返しながら、高廉は動こうとしなかった。
徽宗もまた、動かずにいた。
静けさが、空間に降りてきた。
満たされた。
そう思った。
単なる肉の悦楽ではない。
異形の美──この得体の知れぬ存在を、余が抱いたという事実が、徽宗の精神を深く満たしていた。
高廉が、そっと寝台に崩れる。
その横顔は、どこか無垢な色も含んでいた。
それを見て、徽宗はわずかに笑った。
「余を満たしたそなたには、約束どおりの褒美を与えよう。弟の件、心配いらぬ」
返事はなかった。
だが、静かに伏せた高廉の睫毛が、微かに震えていた。
月はもう高く、内宮の奥に眠りの影が伸びていた──。