「脚を閉じるなと言っただろうっ。今度は顔を殴るぞ」
河清の指が再び股間に伸びる。
「うう……」
指が葉芍の陰唇を左右に引っ張るようにくつろげる。
「どうせ、お前らみたいな貧乏人には、金を弁償することなんてできねえだろう。お前の仲間の
河清が葉芍の股間の中心部に人差し指を差し込んだ。
「そ、そんな……」
葉芍は喘いだ。
借金を払えないというのは罪だ。
正規の手続きで奴隷になるのに、もっとも多い場合がそれだ。
ほかに税を払えなくても、同じように家族の誰かを奴隷にして税を払うことにもなる。
河清の家は、城郭でも指折りの分限者だ。
必要な書類を役人に作らせるための賂など、いくらでも払える。
それくらいの力がある。
いやだ……。
奴隷になんかなりたくない……。
「動くと、また腹を殴るからな……」
河清が言った。
そして、河清の指が葉芍の膣の中を揉みあげるようにゆっくりと抽送し始めた。
さらに、別の男の指が横から伸びて、肉芽をこねだす。
「……もちろん、奴隷にして売っ払う前に、味見をさせてもらうけどな。おい、準備しろ」
河清が言った。
それが合図であるかのように、葉芍の性器を愛撫していた手が一斉に引く。
葉芍は崩れ落ちそうになるのに耐えて、その場に脚を開いたまま立っていた。
「後ろを見ろ、葉芍」
河清が笑いながら、葉芍に顎をしゃくった。
見た。
男たちが一本の縄を部屋の壁と壁に渡している。
ぴんと張られた縄は、葉芍の腰の括れの部分の高さくらいあった。
しかも、一定の間隔ごとに、大きな縄瘤が作ってある。
「その縄に跨って、いいというまで往復しろ。それで、すっかりとできあがったら、みんなで犯してやるぜ」
河清が大きな声で笑った。
さすがに、葉芍は鼻白んだ。
「お前は、奴隷にして売り飛ばす予定だから、あの小僧のように殺しはしねえが、女を酷い目に遭わせる方法はいくらもあるんだ。さっさと縄を股に挟んで歩け」
河清に怒鳴られて、葉芍はすすり泣きながら、壁と壁に渡された縄に近づいていった。
しかし、縄が高すぎて、跨ぐことができない。
縄の前でまごまごしていると、男のひとりが笑いながら、いったん壁の金具から縄を緩めて葉芍に縄を跨がせた。
そして、もう一度、縄をぴんと真横に張る。
「ああっ」
葉芍は思わず悲鳴をあげた。
荒縄が思い切り股間に食い込んだのだ。
縄は爪先立ちの葉芍の股間を強く抉る。
「さあ、歩け、盗っとめ」
横に立った河清の取り巻きのひとりが、ぴしゃりと葉芍の尻を叩く。
「ひっ」
しかし、縄がしっかりと股間を抉っている。
とてもじゃないが歩けない。
「おい、蝋燭を持って来い。その女すりの尻を焼いてやれ。そうすりゃあ、歩き出すだろう」
椅子に座り直している河清がせせら笑った。
廃屋の中には、照明となる燭台があったが、ひとりがそこから火のついた蝋燭を運んできて、葉芍の双臀に近づける。
「ひいっ、あ、熱いっ」
あまりの熱さに、葉芍は悲鳴をあげてのけぞった。
爪先立ちの脛の筋肉がさらにこわばり、葉芍は一層爪先立ちになる。
「さっさと歩け。ぐずぐずしてると尻の肉を本当に焼くぞ」
「ひいっ。あ、歩く……。歩きます」
お尻を這うろうそくの炎の熱さに耐えかねて、葉芍の足は無意識のうちに前に出た。
後手に拘束された上体を前屈みにして、炎にあぶられるたびに腰を引きながら、少しずつ進み始める。
ざらざらとした荒縄が葉芍の女の最奥へ食い込む。
すぐに、縄に陰毛が絡んで針を刺されるような痛みが走った。
一方で荒い縄の表面に敏感な股間がこすれて、奇妙な疼きも沸き起こってくる。
そのおぞましさに、葉芍は全身をふるわせて泣いた。
「ほれ、女すり、もう少しでこぶだぜ」
背後から蝋燭の炎でけしかける男が笑った。
「あはあっ」
次の瞬間、葉芍は顔をのけぞらして泣いた。
股間を思い切り縄瘤が抉ったのだ。
自分の体の重みの全てが食い込んでる結び目にかかっているような錯覚に陥る。
葉芍の狂態に、河清たちが手を叩いて大笑いした。
そうやって、部屋の端まで炎に追いたてられながら、やっとのこと壁の近くまで進んだ。
「今度は逆だ。後ろに向かって歩け」
蝋燭の炎が、今度は胸の前の乳首に近づけられる。
葉芍は悲鳴をあげて、今度は縄を跨いだまま、反対方向に後ずさっていった。
反対側の壁に到着する頃には、すっかりと息も絶え絶えになっていた。
いまや苦痛よりも、股間を縄瘤で刺激される快美感が強かった。
そして、もう一度、反対の端まで進まされた。
「後ろだ」
また、蝋燭で胸を煽られる。
後ろに退がっていくときには、縄瘤のひとつひとつに、葉芍の愛液の汁がべっとりとついているのがはっきりとわかった。
「おい、もう、いいだろう。十分にこなれたようだ。縄からおろせ」
河清が椅子から立ちあがった。
縄が緩められて、股間から抜かれた。
葉芍はもう立っていられずに、その場にしゃがみ込んだ。
「もう一度、横になれ、葉芍」
葉芍の前にやってきた河清が言った。
すでに、河清の下半身は裸だ。
河清の怒張が葉芍の前にそそり勃っている。
葉芍は観念して横になった。
河清が葉芍の腰を抱えて、葉芍の蜜の滲んでいる股間に怒張を突き挿してきた。
「こりゃあ、なかなかの道具だぜ。奴隷に売り飛ばす前に、半月ほど、どこかに監禁して愉しむのもいいな」
河清が葉芍の秘肉を愉しむように腰を振り続ける。
「ああっ、はっ、はああっ」
襲いかかる苦痛と快感の混ぜこぜの感覚に、息を喘いでいた葉芍だったが、やがて、苦痛を快感が大きく上回りだした。
犯されて感じている……。
それは葉芍にとって信じられない衝撃だった。
だが、河清の大きな亀頭の先端が葉芍の狭い膣を掻き回すたびに、甘くて大きな痺れが葉芍の全身を弛緩させていく。
「ああっ、いやあっ、いやよ……」
葉芍は泣き声をあげた。
犯されることよりも、それで女の悦びを得ようとしていることに、葉芍は戦慄した。
途方もない屈辱だ。
なんとしても達したりはすまいと思った。
暴力で犯されてなにもできない葉芍のせめてもの抵抗だ。
「声が変わってきたぞ。感じてやがるのかよ、変態め」
河清がせせら笑いながら、腰を動かし続ける。
葉芍は歯を食い縛った。
絶対にいかない……。
それだけを考え続けた。
「そ、そんな……ああっ、あっ、あっ、ああっ」
しかし、全身が熱くなる。
もう、我慢できない……。
「おおっ、しっかりと締めつけやがるぜ」
河清の腰がぶるりと震えた。
膣の奥で熱い精が迸るのがわかった。
葉芍はほっとした。
とにかく、いかなくて済んだのだ。
河清が怒張を抜く。
「今度は犬みたいに、後ろから犯してやるぜ。うつ伏せになって膝を立てて、尻を高くあげるんだ」
別の男が髪を掴んで、葉芍の上体を引き起こした。
「い、いや……。も、もう、いや……」
葉芍は懇願するように首を振った。
こんな恥辱的な性交には耐えられない……。
「ひぎいっ」
顔に衝撃が走った。
力一杯、頬を張られたのだ。
「おい、まだ抵抗すんのかい。構わねえから、言うことをききたくなるように、陰毛でもむしってやれ」
下半身を丸出しにしたままの河清が椅子に腰かけて言った。
河清の言葉で、両側からふたりの男が、再び葉芍の二の腕を掴んで抱き起こした。
股間に別の男の手が伸びる。
「ひぎいいいっ」
股間が火で焼かれたような激痛が走った。
葉芍の陰毛を引き抜いた男がこれ見よがしに、葉芍の目の前で陰毛をちらつかせてから捨てる。
「俺も抜いてやるぜ」
別の男も葉芍の股間に手を伸ばす。
「や、やめてっ。言うことききますから──」
葉芍は夢中で髪を振り乱した。
「尻あげの姿勢をとるんだな?」
葉芍はわずかに首を縦に振った。
「離してやれ」
河清の声で両腕が解かれる。
葉芍は崩れ落ちた。
「早くしな」
横腹を軽く蹴られる。
葉芍は上体を倒して、顔を床につけて、尻だけを上にあげた。
惨めだった。
いつの間にか、激しい嗚咽が漏れ出ていた。
尻たぶが押し割られ、新しい怒張が股間に押し当てられる。
後背位から男根がねじ込まれた。
律動が始まる。
男は背後から葉芍の身体を愉しむように、男根を貫く角度を変化させながら葉芍の膣を突き続けた。
さらに左右から別々の手が葉芍の胸を揉み始める。
左右の胸の揉み方が違うところが葉芍の凌辱感を煽る。
しばらくしてからその男はやっと達してくれた。
すぐに別の男が押し入ってきた。
三人……。
四人……。
五人……。
葉芍は犯され続けた。
途中からなにも考えることができなくなった。
絶頂することはなかったが、甘い感覚の拡がりは確実に葉芍の身体を襲っていた。
膣の中を擦られて、じんとなる疼きは、どんどん葉芍から自制心を奪う。
息は荒くなり、口からは喘ぎ声が迸る。
絶対に達しない……。
葉芍はそれだけを思い続けた。
快感に負けそうになったら、惨めな姿で死んでいた張明を思い出した。
そうすると、ちょっとだけ理性を取り戻すことができた。
ふた廻り目が始まると、股だけでなく口にも性器が突っ込まれた。
ちょっとでも、逡巡の態度を見せると、容赦なく平手や蹴りが飛んできた。
「誰だ?」
不意に、河清が大声を発した。
その声に全員が反応する。
とりあえず、女陰と口中にあった男たちの性器が引き抜かれる。
葉芍は朦朧とした視線を建物の出入り口の方向に向けた。
戸口に誰かが立っている。
ひとりの男だ。
■
役人?
三十そこそこの男だった。
肩には、役人の紋様が染め抜かれた上衣。
光の具合で色が曖昧だったが、やがて、赤だとわかった。
──赤。それは
警尉とは、城の治安を預かる者。
調査、取締り、処刑の執行まで、幅広く管轄している。
葉芍のような女すりにとって、もっとも恐ろしい存在だった。
震えが背筋を這い上がるのを、止めることができなかった。
「なにをしておる、お前たちは」
怒声が、空気を裂いた。
その一声で、葉芍の肺が凍る。
河清たちの顔も、引きつった。誰もが、次の言葉を待った。
「おや……これは、もしかして、河家の河清殿ですか? これは失礼しました。私は、警尉役人の
声の調子が和らいだ。
河清の顔に、ほっとした色が浮かぶ。
「木っ端役人か……。お前のような下級役人には関係ない。どこかに行っていろ」
河清は鼻で笑ったような口調だった。
だが、葉芍の頭の中には「宋江」の名が響いていた。
──知っている。
盗賊の端くれに過ぎぬ葉芍ですら、その名は何度も耳にした。
清廉で義を重んじ、裏表なく人を助ける男。
銭がなくても、頼ってくる者には施すと噂された。
表の世界だけでなく、裏の者たちにも一目置かれている。
顔を見るのは、初めてだった。
背丈は並、体格も中肉中背──。
だが、不思議な緊張感が全身にみなぎっている。
その男の眼光は、刃より鋭かった。
「いやいや、そうはいきませんな……。犯罪の調べで歩き回っていたところ、なにやら女の悲鳴のようなものが聞こえましたのでな……。それでやってきたのですが、これは尋常ではない様子。本当になにをしておられるのです? この状況は私としても、納得のいく説明を求めないわけにはならないようですね」
宋江の声は穏やかだったが、その眼が、冷えた刃物のように光った。
河清の身体に、かすかなたじろぎが走ったのを、葉芍は見た。
「こ、こいつは盗人だ。俺の金入れを盗んだのだ」
河清は強い口調で言い放った。
内心の動揺を、言葉で封じようとする。
「だからなんなのですか? 若い女ひとりに、男が群がって、下半身を丸出しにしていた。なにをしていたかを訊いているのですよ。たとえ罪人であっても、それは我々役人が扱うこと。私刑は罪です。残念ながら、私は河清殿を捕らえなければなりません」
宋江の声が、さらに低くなった。
その一言が、場の空気を変えた。
「なっ、なにを言っておるか? 俺を捕まえるというのか? この女は罪人だぞ」
「それとこれとは、関係ないと申しましたぞ、河清殿」
その目が、河清の顔を貫いた。
肩が一度、わずかに落ちた。
たじろぎが、形になって現れた。
「し、しかしだなあ、宋江……」
「とりあえず、服を着たらいかがですかな、河清殿」
その一言で、河清たちは動いた。
葉芍の周囲から離れ、ばつの悪そうに、服を拾い始めた。
葉芍も、そっと身体を起こしたが、背中にはまだ手錠がかかっている。
裸のまま、ただ震えていた。
宋江がゆっくりと廃屋の中に足を踏み入れた。
床に転がっていた短剣を、軽く拾い上げる。
それは、葉芍の下着を切ったまま放置されていた河清の刃だった。
「わずかですが、刃に新しい血の痕がありますな……。すぐそばで浮浪少年の惨い死体があったのですが、丁度こんな刃物で性器を切断したような痕がありました。傷口とこの刃物を照合してみますかなあ。ところで、この刃物は河清殿のものですか?」
宋江が、ごく自然に、刃をひと振り見せながら訊いた。
河清の顔から血の気が引いた。
「そ、宋江……。い、いや、それは……」
「いやいや、これは困りましたな。万が一、これが河清殿のものであれば、もしかしたら、すぐそばの惨殺死体の動かぬ証拠かも知れませんなあ……。もっとも、私の部下はまだ、外を調べておりますので、これを見つけましたのは私ひとり……。黙っていれば、ほかに知られることもないのでしょうが……」
沈黙が、廃屋の空気を支配した。
その物言いが、なにを意味するか──葉芍にもすぐにわかった。
金を出せという、役人の常套句だ。
「待ってくれ、宋江……。い、いや、宋江殿……」
河清が懐から金入れを取り出した。
当然、それは葉芍が昨日すり取ったものとは別だ。
「これで……」
銀両が数枚、手に乗る。
それを差し出す。
だが、宋江の手は動かなかった。
「金惜しみをして、行動を誤らないことですな。殺人は死罪ですぞ。命に代価はつけられますまい」
そして、ゆっくりと、金入れのほうに手を伸ばした。
「わかった……」
河清は観念したように、銀両を戻し、袋ごと宋江に差し出す。
宋江はそれを無造作に受け取った。
「この刃物は私が預かっておきましょう。殺人の大事な証拠ですからな。ご心配なさらずとも、河清殿が大人しくしておられれば、これは表に出ることはありません。とにかく、しばらくは目立つような行動は慎んだ方がよろしいでしょうな……。ところで、この娘にかけてある手枷の鍵はどこですか?」
「金入れの中だ」
「なるほど……。ならば、もう行った方がいいでしょう」
そう言いながら、宋江は金入れから小さな鍵を取り出す。
河清たちは、まるで逃げ出すように廃屋から姿を消した。
場に残ったのは、宋江と葉芍だけだった。
──とりあえず、助かったのだろうか。
河清に再び弄ばれることは、なくなった。
けれど、だからといって、自由になれたわけではない。
宋江は役人。葉芍は女すり。
捕らえられて、裁かれる。
それは避けられぬ道だった。
──奴隷か。あるいは、流刑。
どちらにしても、明るい未来はなかった。
宋江が、そっと葉芍の横にしゃがんだ。
ちらりと視線が、裸身に落ちた。
葉芍の全身に、これまで経験したことのない羞恥が走る。
背の手枷が外された。
葉芍は、反射的に両手で胸と股を隠した。
それだけで、胸の奥がざわめいた。
「お前は葉芍だな」
名前を呼ばれ、葉芍は思わず息を呑んだ。
なぜこの役人様が、自分の名を──?
次の瞬間、宋江が河清から取り上げた金入れを、葉芍の前にそっと置いた。
そして、深々と頭を下げた。
■
運城の下級役人として世を忍んでいた男。
穏やかな物腰の奥に、鋼の意志と冷徹な眼を隠している。
罪人にも、権勢にも、媚びることなく、秩序の名の下に裁きを下す。
だが、その正義は、ただ清廉という言葉では収まらぬ──裏にも手を伸ばす、侠の冷酷さを持つ。
※原典:宋江。梁山泊序列第一位、「呼保義」「及時雨」。元は小役人ながら、義をもって人を導き、晁蓋の死後に梁山泊頭領として豪傑たちを統べる。最期は朝廷により毒殺