葉芍は、先ほどと同じように、床に正座していた。服は脱ぎ、横に畳んで整えてある。
身に纏うものはなにもない。
布一枚さえも──。
宋江の胸に、じわりと熱が走った。興奮だった。
葉芍は、宋江の姿を見とめると、緊張した面持ちのまま、床に座ったまま両手を揃えて差し出してきた。
「違う。背を向けて、腕を後ろで横に合わせなさい」
そう命じた。
「は、はい」
葉芍は指示どおりに動いた。
宋江は、重ねた手首に縄を巻き、その縄尻を前へ回す。若い乳房の上下に締めつけるように、強く絞めた。
葉芍は、なんの抵抗も示さなかった。
それどころか、緊張と昂ぶりが抑えきれないのか、吐息が甘く漏れる。
その声ひとつで、宋江は全身の血が沸き立つような衝動を覚えた。
熱に浮かされるように、頭がぼうっとなる。
「もう、どうしようもないな。俺の気が済むまで抱かせてもらう。泣こうが喚こうが、許すつもりはない」
「ど、どうか、ご存分に……。ら、乱暴に扱って結構です。ど、どんなことでも……」
声は震えていた。
それが縄に縛られた恐怖なのか、それとも宋江と同じように興奮しているのか、宋江にはわからなかった。
だが、もはや後戻りする気などなかった。
宋江は、葉芍に縄を掛け終えると、床に置いていた二つの瓶を手にした。
まず赤い蓋のついた瓶を開け、油薬を指ですくう。
「葉芍、俺がどうしようもない鬼畜だということを、これから教えてやる。この薬は、身体を敏感にする薬だ。まずは、これだ」
「は、はい……」
葉芍が頷いた。
宋江は、縛られた葉芍の身体を床に寝かせた。
油薬をたっぷり指につけ、葉芍の太腿の間に滑らせていく。
葉芍は抵抗せず、股をわずかに開き、宋江の動きを受け入れるように身体から力を抜いていた。
指で陰毛をかき分け、襞を押し広げながら、秘部に薬を塗り込めていく。
「あ、ああ……はあっ……はあっ……」
葉芍の息が熱を帯びる。
その反応よりも、宋江を打ちのめしたのは、葉芍の股間がすでに熱く、たっぷりと濡れていたことだった。
宋江に縛られ、抱かれることに、葉芍はなんの嫌悪も持っていない──。
その事実に、宋江は目眩にも似た感動を覚えた。
宋江は、油の粘りを指に足しながら、葉芍の股間に執拗に塗り込んでいった。
これは、知り合いの道士に高い金を出して調合させたものだ。
女を愉しむ薬だと説明したとき、道士は笑っていた。
『案外、宋江殿も好き者ですなあ』と。
だが、実際には使うあてはなかった。
想像の中で愉しむためだけに手に入れたのだ。
それを、いま──。
本当に、女の身体に塗っている。
その現実が、宋江の胸を締めつけるほどの恍惚を呼び起こした。
「あ、熱い──。ああ……こんなの……、こ、怖い……はああっ……」
葉芍の声が高くなる。
反応は、明らかに激しくなっていた。
だが、怯えた表情ではない。
むしろ、さらに薬を塗ってほしいとせがむように、切なげな声を漏らし、縛られた上体をくねらせる。
「す、好きにしてください……。お、お願いです、宋江様……。ほ、本当に好きなようにしてください。は、葉芍の身体を好きなように……、あああっ──」
葉芍は、縛られたまま、股間を突き出していた。
悲鳴に近い声をあげる。
宋江の興奮も、すでに極みにあった。
この少女の身も心も、自分のものにする。そう決めた。
もう、ためらいなどない。
この葉芍となら、なにかが始められる──そんな気さえしていた。
もっと、徹底的に嬲りたい。
さらに深く、苛め抜きたい。
「お尻の穴にも塗るぞ、葉芍」
それは承諾を求めた言葉ではなかった。
言葉を言い終える前に、もう宋江の指は油薬をまとって、葉芍の菊門に押し入っていた。
「す、好きなように……くうううっ、も、もうだめです……」
葉芍は、太腿をくねらせながら呻いた。
そして、宋江の指が後ろにねじ込まれたとき、顔を引きつらせ、激しく身を震わせる。
「はうっ」
その大きな反応に、宋江は心を打たれた。
油の滑りを利用して、さらに指を執拗に抽送する。
「ああっ、はううう」
葉芍の身体が弓なりになった。
次の瞬間、痙攣するように震え始める。
どうやら、すでに快感の頂に達したようだった。
「ここは、葉芍の感じるところのようだな……。だが、始まってもいないぞ。いくらなんでも早すぎるだろう」
宋江は、からかうように言った。
「も、申し訳ありません……。我慢できなくて……」
涙を浮かべ、息を乱しながら葉芍が応える。
その顔が、あまりにも可愛らしかった。
抱きしめたくなるほどに。
宋江は、葉芍の身体を起こし、唇を重ねた。
葉芍は素直に口を開け、宋江の舌を迎え入れる。
しばらく、唾液を交換するように舌を絡め合った。
口を離すと、葉芍の顔は、すっかり呆けていた。
宋江は、一度、葉芍の身体から手を放し、そっと床に横たえた。
自分の衣を脱ぎ捨てる。
股間には、信じがたいほどに硬くそそり立つ怒張があった。
その怒張に、宋江はもう一つの瓶を手に取って、媚薬を塗る。
男の持続力を高める薬だ。
「こっちの瓶に入っている媚薬は、男の持続力を増やす薬剤だ、葉芍。お前の身体を存分に嬲り尽くさないと、もったいないからな」
葉芍は、床に仰向けのまま、ぼんやりと宋江の裸身を見上げていた。
言葉に反応して、ごくりと唾を飲む。
その顔には、照れとも緊張ともつかぬ表情が浮かんでいた。
「きょ、今日だけでも構いません……。あたしを宋江様の女に……。で、でも、できましたら、どうか末永く置いてください……」
言葉の終わりは、小さく震えていた。
宋江は、葉芍の腿を両手で持ち上げ、怒張を股間に押しあてる。
「ふううう、そ、宋江様──」
葉芍の身体がびくりと震えた。
その瞬間、宋江は言った。
「俺のことは、旦那様と呼ぶがいい」
「旦那様──」
葉芍が感極まった声をあげた。
宋江は、興奮した肉棒を葉芍の秘裂の入口にあてがった。
葉芍の身体がびくんと震えた。
宋江はその反応を見ながら、ゆっくりと押し入っていく。
「あ、あああっ……う、ううっ……」
葉芍は耐えるように声を漏らした。
痛みと快楽が入り混じった表情を見せながら、牙を噛んで耐えている。
宋江はぐっと奥まで押し込んだ。
そして、深く、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「う、うっ……あ、ああ……っ……」
葉芍は押し殺すように声を漏らす。
だが、やがてその声が少しずつ変化していく。
最初は痛みだったそれが、やがて熱を帯び、甘く、蕩けるような音へと変わっていく。
「くっ……きついな……。だが、気持ちいいか……?」
「あ、あたし……っ……気持ちいい……です……っ……あ、ああ……っ……」
宋江は、葉芍の反応を確かめながら、さらに腰を深く打ちつける。
葉芍の脚が自然と腰に絡みつき、縛られた腕が背中で震える。
「もう……もう、いく……っ……」
葉芍はそう叫び、全身を硬直させると、激しく震えながら果てた。
──股間は、怖ろしいほどに熱い。
塗布された薬剤の効きが、あまりにも鋭い。
そして、宋江の怒張は、媚薬によって持続力を増していた。
容易には果てない。
その長さが、葉芍にとっては拷問だった。
敏感になった肉体で、終わりなき責めを受ける。
だが、それは、宋江の精を受け取るための試練でもあった。
──この苦しみは、恋しい人のためのものだ。
苦痛のはずが、喜びだった。
息が続かないほどの熱に、葉芍の身体は焼かれていた。
腕が縛られていることなど、もはや意識になかった。
何度、絶頂に達したのか。
気を失った回数さえ、わからない。
ひたすらに揺れ、喘ぎ、果てていく──。
それが、宋江との交わりだった。
──最初は、夕方だった。
陽は落ちていなかった。
けれど、いまは真っ暗だ。
灯りがともっている。
その闇の中で、宋江と葉芍は交わった。
「そろそろ、いくぞ」
宋江の声がした。
そのとき、葉芍は、十度目の絶頂に達したばかりだった。
──そして、初めての失神。
終わりではなかった。始まりだった。
目を覚ましたとき、寝台の上だった。
腕は、まだ縛られている。
──周囲には、干し肉や果物、飲み物があった。
気を失っている間に、宋江が整えたのだろう。
寝台から下ろされ、床の上に座らされる。
宋江は椅子に腰かけ、卓に並んだ食べ物を口にする。
葉芍には、水が口移しで与えられた。
喉が渇いていた。
水が、こんなに甘いと思ったのは初めてだった。
続いて、咀嚼された果物が口移しで差し出された。
──気持ち悪いとは思わなかった。
宋江の口に一度入ったもの。
それが自分に与えられるというだけで、幸福だった。
自分は、もう宋江のものになりかけている──。
葉芍は、自覚していた。
あの性交が始まる前、ただ一晩でいいと思っていた。
宋江の女になりたかった。
顧みられない人生。
生まれてきた意味さえ、持てなかった。
──でも、宋江は、自分たちのことを、知っていてくれた。
それが、魂を揺さぶった。
──たった一晩でいい。
それが、いまは違っていた。
宋江なしで生きる未来など、考えられない。
どんな立場でもいい。
宋江のそばで、生きたい。
──それが叶わぬなら、宋江の手で殺されたい。
──この気持ちは、なんなのか。
葉芍は、戸惑っていた。
だが、再び性交が始まったとき、そんな疑問はすべて消えた。
また、あの薬が塗られた。
局部に──。
思考は、津波にさらわれたように吹き飛んだ。
快感だけが残った。
最初は、正上位。
つづいて、後背位。
そして、騎上位へと変化していく。
体位が変わるたびに、宋江の動きも変わった。
絶え間ない律動。
気を失えば、頬を叩かれて起こされる。
「……次は、座っている俺の上に乗ってもらおう。これなら、お前の身体すべてを感じられる……」
宋江が、寝台の上で胡坐をかいて待っていた。
葉芍は、怒張を挿入されたまま、その上に乗せられる。
両脚を大きく開いて宋江に跨がり、背中の縄を掴まれた。
もう一方の手で、宋江が葉芍の臀部を撫でる。
「ふわわあっ……」
一瞬で昇りそうになった。
だが、かろうじて耐える。
宋江は、胡坐のまま上下に動いた。
葉芍の身体が跳ね、突きあげられるたび、子宮が打たれ、肉が削がれるような感覚が走る。
「そ、そこは──」
悲鳴をあげる。
そのとき、宋江の指が、菊の座に滑り込んだ。
今度は、指を入れられたまま、腰を動かされた。
「だ、旦那様───葉芍は、ま、また───あああっ」
仰け反って喘いだ。
「いくらでもいけ。俺の女になるということは、性の地獄を味わい続けることだ。もう、お前は俺のものだ。とことん、極みを見せてもらうぞ、葉芍」
──俺の女。
その言葉が、葉芍の中で何度も響いた。
気がつくと、いままでとは桁違いの高みへと昇っていた。
しかも、長い。
全身が震え、涙が頬を伝う。
泣きながらの絶頂──。
「し、幸せです……。嘘でも、そう言ってもらえて……。葉芍は幸せです……。生まれてきて、よかったと思いました……」
宋江の頬に、自分の頬をすり寄せながら、そう言った。
「大袈裟だな」
宋江が苦笑する。
「ほ、本当です……。いっそ、このまま死にたい──」
叫んだ言葉の先は、激しい喘ぎ声にかき消された。
上下運動が再び始まっていた。
──浮きあがるような感覚。
次の瞬間、名を呼ばれる。
「葉芍──」
耳元に、力強い呼び声が届く。
「も、申し訳ありません、旦那様……」
“旦那様”──。
その響きの甘さに、葉芍は身をふるわせた。
自分から唇を重ねた。
宋江は、その身体を全力で抱き締めた。
まるで骨が軋むような強さだった。
「愛している、葉芍──」
口を離した宋江が、叫んだ。
「あ、あたしも……愛……愛しています──」
葉芍の声が上ずった。
そのまま、昇天した。
「こんな素晴らしい家まで世話をしてくれるとは、ありがとうございましたなあ……。お礼申しあげます、宋江さん」
「なんの……。こんなものでは礼は示し足りないが、まあ、せめてもの気持ちだと思ってくれ、王婆──。今回のことでは世話になった」
宋江が応えた。
王婆の家だった。
──とはいえ、独り身の王婆が長く暮らしていた粗末な長屋ではない。空き家となっていた小ぶりな一軒家を、王婆のために新たに借り受けたのだ。
家具も一通り揃え、着物も箪笥に詰めておいた。炊事や洗濯を任せる下女もひとり世話してある。費用のすべては宋江の負担だった。
王婆が葉芍を無理やり宋江の家へと連れてきて、半月が経つ。
やっと準備が整った家を、今日引き渡しに来たというわけだ。
「まあ、ただの仲人婆に、これほどのことをしてくれるところをみると、宋江さんもお幸せなのじゃな」
王婆がからかうように笑った。
「毎日が、充実している……。王婆には感謝しても、し足りぬ気持ちだ。これからも、葉芍のことを見てやってくれ。あれも、俺の勤務中はひとりで過ごすことになる。城郭には知り合いもいないし、寂しい思いをさせたくない」
充実している──。
そのひとことで、宋江の心のうちのすべてが表されていた。
心底から満たされている。
葉芍は、宋江にとって理想の女だった。
嗜虐に満ちた性交を、恥じらいながらも嬉しげに受け入れてくれる。
どんな命令にも従順で、逆らわない。
なによりも、宋江の歪んだ性癖そのものを愛し、受け止めてくれる。
しかも芯が強く、日々の生活にも、その誠実さが滲み出ている。
宋江が望んでいたすべてを、持ち合わせた女だった。
「……それにしても立派な家じゃ。おまけに下女まで世話してくれるとはのう……。そういえば、下女といえば、宋江さんの家には下女がおらんのう。そのつもりで連れていった葉芍は、下女というよりは、宋江さんの女房のような立場になったしのう……」
「女房のような立場ではない。女房だ」
宋江がきっぱりと言った。
王婆が、ふっと微笑んだ。
──三日前のことだ。
形式は取り繕ったが、葉芍はすでに宋江の妻となっている。
「だったら、なおさらじゃ。立派なお役人さんの女房ということであれば、下女のひとりやふたりは必要じゃろう。よければ、それもわしが世話してやるがのう」
「いや、よいのだ。それも葉芍と話し合った。自分ひとりでやる方が気が楽なのだそうだ。他人に世話をさせるなど、一度もやったことがないと。下女といえど、言いつけて身の回りを任せるというのは、かえって息苦しいのだそうだ」
「まあ、そういうことなら、無理には進めんがのう」
王婆が頷く。
宋江は、茶をすするふりをしながら、葉芍の姿を思い浮かべていた。
下女を置かない理由には、もうひとつある。
葉芍は、いま、宋江の手によって調教の真っ最中だ。
調教は、夜だけにとどまらず、宋江が不在している日中などに及ぶ場合もある。
そのために、下女とはいえ、他人がそばにいては、それがやり難いのだ。
現にいまも、家に置いてきた背面の肛門には、振動する道術の淫具をしっかりと咥えこませてきた。
宋江には道術の力はないが、そういう者にも使えるように調整されたものだ。
尻穴で宋江のものを受け入れるための調教は、葉芍が家にやってきてからすぐに始め、小さなものから始めてだんだんと大きくし、五日ほど前から、苦痛なしに宋江の物を受け入れることができるようになった。
このところやっているのは、その肛姦の快感を増幅する調教だ。
葉芍はもともと尻の性感が高かった。
それを身体のどこよりも感じる部分にしてしまおうと思って、この数日は四六時中尻に快感を与え続けている。
いまも、人間の身体に包まれると無限の振動をするという淫具を尻穴に挿入して、それが外せないようにしっかりと貞操帯をさせている。
そして、その貞操帯の鍵は、いま宋江が持っている。
葉芍は、いま頃は尻穴の刺激でのたうち回っていることだろう。
そんなことばかりやっているのだ。
下女など置けるわけがない……。
いまごろ、どんな顔をしているのだろう……。
そして、宋江が戻ったら、どんな顔をして哀願をするのだろう。
いまから愉しみだ……。
「なにか幸せそうな顔をしていましたな、宋江さん」
王婆が宋江に声をかけてきた。
「なあに、葉芍のことを考えていたのだ」
「おうおう、これはのろけますなあ……。あの宋江さんが変われば変わるものじゃ──。まあ、葉芍も大切にされているようじゃし、よかったわい」
「もちろん、大切にしている」
宋江は言った。
葉芍の貞操帯を外す鍵はここにある。
これがなければ、葉芍は尻を刺激し続ける道術紋の刻んである傀儡の淫具を抜くことができない。
今夜戻ったら、それを外す見返りに、どんなことを要求してやろう。
あれこれと想像をしながら、いつしか自分がにやにやと微笑んでしまっていることに、宋江は気がついた。