※この作品はR-18です。

水滸伝艶義   作:ドン・ドナシアン

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6話   女体化の呪術(一)
23  王進、高俅の報復を怖れ逃亡する


「王進(おうしん)、大変よ」

 

 呉瑶麗(ごようれい)が、王進の一軒家に飛び込んできた。禁軍にあって、武術指導の教官として名を連ねる唯一の女だ。

 入隊してまだ三年。

 師範代格のままだが、腕は誰よりも立つ。学もあり、頭も切れる。いずれは師範になると誰もが思っていたが、賄賂が物を言う禁軍では、それも怪しい。王進と同じように、出世とは無縁かもしれない。

 

 上役に頭を下げることを潔しとしない王進と、妙に気が合った。そういう性分の女だった。

 性別は違っても、ふたりは武術家としての絆を持っていた。王進にとって、呉瑶麗は親友だった。見かけは線が細く童顔で、女のようだとからかわれてきた王進だったが、見下す者がいれば完膚なきまでに叩き潰してきた。結果、孤立した。

 

 そこへ呉瑶麗が新任でやってきた。

 彼女は孤独だった。武術大会で優勝し、その褒賞として禁軍入りを果たした。若く、美しく、強かった。だからこそ、男たちの標的にもなった。だが、彼女は容赦なく返り討ちにした。

 王進も黙って見てはいなかった。呉瑶麗の立場を守るために、必要な筋には顔を利かせた。そんな経緯があって、ふたりは稽古のあとの杯を交わす仲になった。

 

 その呉瑶麗が、血相を変えて飛び込んできたのだ。

 王進の家は軍の貸与する狭い家だったが、独り身には充分だ。

 

「おお、呉瑶麗か。十日ぶりだな。禁軍の稽古はどうだ。俺が休んでいた分、軟弱者どもが弛んでいやしないか。やっと病も癒えたし、明日から出仕するぞ。……しかし、お前は本当に女としての警戒心が足りんな。男の独り家に無造作にやってくるとはな」

 

 王進は笑った。呉瑶麗の剣名は禁軍でも知られている。下手に手を出そうとする男などいない。浮いた話もなく、噂もない。唯一、王進との関係だけが、世間の目を騒がせることもない。

 王進自身も、いまは女に興味がなかった。武術を教えること。それがすべてだった。禁軍は皇帝直属であるがゆえに最強であらねばならないという信念が、彼を支えていた。

 

「呑気なこと言ってる場合じゃないの。早く着替えて出仕して。新しい禁軍の大将が就任して、あなたを処断するって息巻いてるのよ」

 

 呉瑶麗の声が鋭く響いた。

 

「なんで、俺が処断されねばならんのだ」

 

「今日、その大将が来て、武術師範組の点呼を取ったのよ。あなたがいないと知って、怒鳴り散らしてるわ」

 

「新しい大将は、武術ができるのか? また素人が上に来たんじゃないだろうな」

 

 王進は不快を隠さなかった。禁軍では、武術知らずの将軍が上に立ち、口だけを出すことが常だった。師範組は組織上どこかの将軍の管轄に属す必要があり、現場の苦労など意にも介さぬ者が指導権を握ることが多かった。

 

「最後まで聞いてよ、王進。その大将は、あの高俅(こうきゅう)よ」

 

「高俅……まさか、あの──?」

 

「あの高俅閣下よ」

 

 王進は、その名を聞いた瞬間、目の前が暗くなった。

 三か月前のことが蘇る。

 王進が提案した将校への武術訓練。その場で不真面目な態度を見せた若い将校を徹底的に痛めつけた。訓練中だから階級は関係ない。

 だが、その将校──高俅は、夜陰に乗じて王進に闇討ちを仕掛けた。返り討ちにした。顔を腫らしたまま、帝都を追放されたはずだった。

 その男が、将軍になって戻ってきたというのか。

 

「信じられないけど、事実よ。お願い、出仕して釈明を」

 

「だが、どうして奴が将軍に……?」

 

「噂では、高廉(こうれん)様の異母弟なんですって。あの宮廷道師長の。その縁で、助命されて、将軍に取り立てられたらしいわ」

 

「高廉? あの……顔だけは綺麗な道術遣いか。兄弟? 似ても似つかんが……。いや、し、しかし、たとえ、そうだとしても、そんなこと許されるか──。あの軟弱のうえに卑怯者の高俅が禁軍の将軍だと──?」

 

「許されるのよ。それが、名門や高官というものなのよ。とにかく、出仕を──」

 

 呉瑶麗に促され、王進は無言で立ち上がった。手早く着替えを済ませ、軍営に向かった。

 

 武術師範組の詰所は、ざわついていた。何人もの師範代が、目を伏せ、気まずげに立っていた。

 誰もが言葉を飲み込んでいた。

 だが、ひとりが声をかけ、王進の背を押すようにした。いや、ほとんど引きずるように、大将府へ向かわせた。

 扉の奥、高俅の前に立たされた。

 

「王進。筆頭師範のくせに、俺の着任に出仕せんとは──いい度胸だな」

 

 高俅の声は冷たかった。両脇に高級将校が四人、黙って控えている。

 王進は一礼し、前に進んだ。

 

「と、とんでもありません。病を得ておりました。届け出も──」

 

「黙れ。顔色も良いではないか。呼べば来る程度の病。つまり、来なかったのは、俺を侮ったからだ。……違うか?」

 

「そ、それは──」

 

 王進は言葉を詰まらせた。だが、目の前の男を、見間違えることはない。着任の儀の正装に包まれていても、あの時殴りつけてやった鼻が、いまも曲がっていた。

 

「しかも、お前には賄賂の噂もあると聞く。金を渡さねば痛めつけ、渡せば手を抜くと。三箇月前、俺は清廉な将校だった。だから、お前に渡さなかった。そうしたら、返り討ちにあった──。違うか?」

 

 高俅が、口角を吊り上げた。

 

「馬鹿な。そんな事実はない。冗談にもほどが──」

 

「馬鹿、だと……?」

 

 高俅の顔が歪んだ。

 

「それが、将軍に向かって口にする言葉か。よくわかった。貴様の根性、見せてもらった。今日のところは、着任の儀ゆえ見逃してやる。だが、明日からは違う。噂の真偽を徹底的に調べる。もしも事実なら──この俺が、手ずからその首、刎ねてやる」

 

 王進は、無言で部屋を出された。

 

 詰所に戻ると、師範たちが一様に沈んだ面持ちで待っていた。

 呉瑶麗もその中にいた。だが、王進は一言も発さず、そのまま体調不良を理由に、家へ戻った。

 

 


 

 

 翌朝、まだ暁の霧が街道に漂っていた。

 王進は帝都の外門を越え、静かに歩き出した。軍服ではなく、旅装だった。

 昨日のことが頭から離れなかった。

 まさか、高俅が戻ってくるとは。しかも、将軍になって。

 あれは脅しではない。明確な敵意と、報復の宣言だった。

 

 王進は悟った。証拠など、どうとでも作られる。

 彼には家族もない。守る者もない。

 濡れ衣を着せられるよりは、自分から逃げ出す方がいい──。

 

 行き先は北。戦乱に備える国境軍なら、腕一つで食っていける。名を伏せて生き直すには、悪くない土地だった。

 家に戻るとすぐに支度をした。衣服と金、簡単な糧食を詰め、棒を一本握って、夜明け前に出た。

 

 ──だが、霧が濃すぎた。

 

 王進は進むうちに、異変に気づいた。

 見覚えのある樹が、また現れた。その根元には、さっき自分が置いたはずの三つの石が。

 王進は戦慄した。

 

「どういうことだ──?」

 

 叫んだ刹那、世界が、闇に呑まれた──。

 

 


 

 

 白い光が差していた。

 

「目が覚めたか?」

 

 耳に、誰かの声が届いた。笑い混じりの、よく知った声だ。

 王進は、ゆっくりと瞼を開けた。

 

 見下ろしている男がいた。

 高俅(こうきゅう)──いや、もはや「高俅閣下」と呼ばねばならぬ立場の男。

 

「こ、高俅殿……なぜ、ここに──」

 

 声が上ずった。

 王進は、自身が台の上に拘束されていることに気がついた。

 手足に革紐の感触がある。動けなかった。

 

 仰向けのまま、四肢だけでなく、関節という関節までが固定されていた。

 しかも──裸だった。

 

 目の前の高俅は、にやけた顔で王進を眺めている。

 王進は、咄嗟に身をよじろうとした。だが、革紐は容赦なく、王進の身体を縛っていた。

 

「ははは、昔から女のような見た目だと思っておったが、どうやら男というのは本当であったようだな。しっかりと、立派なものをぶら下げておるではないか」

 

 ここがどこなのかさっぱりわからないが、どうやらあの不可思議な霧に包まれて意識を失ったあと、この高俅に捕らえられて監禁されてしまったようだ。

 

「やめろ、高俅。何をするつもりだ」

 

 王進の声は怒りと混乱に揺れていた。

 高俅はその叫びに腹を抱えて笑った。

 

「よい悲鳴だ。かつて叩きのめされた礼だ。忘れぬほどの恥を与えてやる。お前が武術師範だと? では、その誇りを根こそぎ奪ってやろう」

 

 笑い声が空間に響く。

 どこかの屋敷だろうか。だが、窓もなく、出入り口も見えない。

 王進の視界にあるのは、高俅ただひとりだった。

 それはともかく、王進が寝かされている台の横にいた高俅がいきなり、王進の股間に手を伸ばして、男根をわしづかみにしてきた。

 

「うわっ、な、なにをするか──」

 

 いきなり股間を手で握られ、しかも、びっくりすることに高俅が激しくしごき始めたのだ。

 しかも、手に潤滑油のようなものを塗っているらしく、ぬるぬるとした油剤を利用して、かなり激しく刺激を加えてくる。

 さらに、男根全体に塗り込むように擦り回してくる。亀頭もしつこいくらいに指で遊ばれた。

 悔しいがその刺激で呆気なく王進の股間は硬く勃起してしまう。

 憤怒と屈辱が全身を席巻する。

 

「や、やめんか──。や、やめろおお──」

 

 王進は絶叫して暴れようとした。

 だが、全身を拘束している革帯が王進が抵抗することを許さない。

 高俅がその王進の狂乱に接して、腹を抱えるように笑いだす。

 

「よい悲鳴ではないか。もっと抵抗せんか。お前に木剣で叩かれた傷はまだ疼くが、その礼に、忘れられんほどの恥辱を与えてやろう。武術師範ほどの腕を持つお前がこの私によって、女にされるのはさぞや面白かろう。兄上が戻ってくるまでにしばらくかかるから、それまでは私が可愛がってやろうぞ」

 

 やっと高俅が王進の男根から手を離す。

 だが、感触がおかしい。

 

 高俅が手を離したというのに、いまだに刺激が男根に続いているのだ。

 そして、熱い──。

 いや、これは熱さとは違う──。

 次いで、猛烈な痒みが股間に襲いかかってきた。

 

「ぐあああっ、な、なにを塗った──。か、痒い──。んがああっ」

 

 王進は吠えるような悲鳴をあげた。

 凄まじいほどの痒みが怒張に襲いかかっている。

 痒い──。

 死ぬほどに痒い──。

 王進は恥も外聞もなく喚きながら暴れる。だが、やはり革帯はびくともしない。

 狂うほどの痒みが続く。

 

「ははは、さすがは兄上の調合する媚薬だ。凄まじい効き目のようだ。だが、お前は女として犯すのだからな。私の相手をするのはやはりこっちだな」

 

 高俅が大笑いしながら、王進の乗っている台の横でなにかの操作をした。

 すると、王進を拘束したまま台が半回転をして、王進を立たせるように台が床と垂直に近くなった。

 それだけでなく、さらに上半身の部分だけが折れ曲がり、王進は台に拘束されたまま尻を天井方向にあげて、身体を折り曲げて屈曲したような体勢に無理矢理にされた。さらに下半身部分の台が左右に割れ、両脚が大きく開く。

 腰の部分は尻たぶに離れた台がそれぞれに乗っている感じであり、尻の部分にはなにもなくなったみたいだ。

 そして、高俅が板に拘束されたまま尻を突き出した格好になって王進の背後に回った。

 王進は背中にどっと冷たいものを感じた。

 高俅がいまからなにをしようとしているのか見当がついたのだ。

 

「や、やめないか──。ふざけるな──。俺は男だぞ──」

 

「わかっているわ。そんな立派なものをみっともなく勃起させおって。だが、股間に塗ったやった兄上の油剤を尻穴に塗り込められれば、そんなことは言っておられるようになるぞ。お前が私に尻を犯してくれと泣き叫ぶのが愉しみだ」

 

 高俅の片手が王進の尻たぶをふたつに割るように片方を拡げた。

 そして、反対の手が王進の臀部の微妙な部分を指でまさぐってくる。

 やはり、油剤を塗っていて、その潤滑を利用して、指を肛門の奥に入れ込んでくる。

 

「わっ、よせ──。よさないか、この変態──。ああっ」

 

 王進は悲鳴に似た声でわめき散らす。

 男の手で尻穴を弄ばれるのは、血が沸騰するような屈辱だ。だが、同時に名状のできない鋭い快感がなぜか込みあがってくる。

 王進は自分の身体の反応が信じられなくて、必死に唯一自由である顔を左右に振る。

 

「ははは、兄上の調合する油剤は、ただの掻痒剤でも、ただの媚薬でもないぞ。男のお前に女の快感を与えてくれる道術薬よ。男でありながら、女の快感を味わえるのだ。感謝してよいぞ」

 

 高俅の指がついに肛門の中に入りこんできた。

 尻穴の奥に油剤を塗り込められているのがわかる。

 高俅の喋っていることがどういう意味なのかはわからない。

 だが、たちまちに全身を溶かすような快感が身体を包み、全身が震えてくる。

 王進が戸惑い、狂乱した。

 

「おう、すごいのう。さすがに兄上の道術薬よ。男の尻とは思えん柔らかさになったわ。まるで女の性器のようだ。気持ちいいようじゃなあ。こんなに元気にしおって」

 

 高俅が王進の尻穴に指による抽送を続けながら、尻の下から伸ばした手で直立している王進の男根を再び掴む。

 そして、ゆっくりとまたもや擦りだしてくる。

 

「んああっ、ああっ、や、やめいっ、やめんか──。やめてくれ──」

 

 王進がよがりながら悲鳴をあげる。

 痒みと疼きに狂っていた男根を擦って刺激を加えられるのは、天にも昇るほどに気持ちいい。

 しかし、これほどに自分が快感に酔うほどに狂うというのが信じられない。

 我慢しようとしても、耐えられず開く口からは、まるで女のような喘ぎ声が漏れ出てくる。

 王進は困惑するしかなかった。

 

「気持ちよいであろう。これが女の快感よ。男でいられるのはもう少しの時間しかない。せいぜい、この男の射精の快感を覚えておくといいぞ。二度と味わえない快感であろうからな」

 

 高俅が一度手を離し、王進の後ろで布ずれの音をさせ始めた。

 だが、ちょっとでも刺激が中断すると、たちまちに発狂するほどの痒みと疼きが股間に襲いかかる。

 しかも、今度はお尻の奥にもだ。

 王進は全身を突っ張らせて、呻き声をあげるしかない。

 

「ははは、そんなにこの媚薬は効くのか。面白いのう。このまま放置して苛めるのもいいが、兄上が戻る前に、とりあえずお前を女にしてやらんとな。いつぞやの仕返しに、前と後ろからの同時責めにしてやろう。覚悟はいいか、王進?」

 

 高俅がせせら笑い、その怒張の先端が王進の肛門に当たるのがわかった。

 それだけでなく、またもや屹立した王進の男根を片手で握りしめる。

 

「うああっ、ああっ、やめてくれっ。た、頼む──。ああっ」

 

「だんだんと女のような悲鳴になってきたのう。それが兄上の呪術薬よ。快楽を極めれば極めるほど、心まで女そのものになっていく。それが嫌なら、必死に耐えることだ」

 

 高俅が王進の男根を前後に刺激する。

 さらに手を睾丸にも伸ばしていやらしく揉んでもきた。

 あっという間に込みあがる射精感に、王進は懸命に歯を喰いしばって耐える。

 まさか、男の高俅に悪戯をされて、呆気なく射精をするような醜態だけは避けたい。

 

「ううっ、くくっ、ぁああっ、ああっ」

 

「それで我慢しているつもりか。それでも男か。私を木刀で追い詰めたときの威勢のいい態度はどうした? お前のような身分低き虫けらが、禁軍の武術師範の地位にいるのが間違いだ。だから、こんな生き恥をさらすことになる。悔しかったら、舌でもなんでも噛みちぎって、自害でもして見せろ。もっとも兄上の呪術はすでに効いておる。死にたくても死ねんし、狂いたくても狂えん。せんぜい、生き地獄を味わい続けるといい」

 

 高俅が王進の尻穴に怒張を埋め始めてくる。

 しかも、大した抵抗もなく、王進の尻穴はそれを受け入れていく。

 これは油剤の潤滑油の効果だけではないだろう。

 自分の身体のなにかがおかしい。

 王進は激しく狂乱した。

 

「ははは、わかるか、王進──。もう半分以上、私の男根はお前の尻の中に入っておるぞ。そらっ、そらっ」

 

「うああっ、ああ、や、やめてくれ──。頼む──。ああ、やめてくれえ──」

 

 王進は昂ぶった声をあげてがくがくと身体を痙攣させた。

 

「痛くはないであろう? これは兄上の呪術薬よ。尻を犯されて快楽しか味わえんお前は、すでに淫紋の呪縛の奴隷だ。どうだ──。男の俺に尻を犯されて、快楽によがるのは悔しいか? 呻いてばかりでなくて、なんとか言わんか」

 

 高俅が王進の肛門を貫いた男根で抽送を始める。

 同時に前に伸ばした手で王進の男根を激しく擦る。

 

「んぐううっ、くううっ」

 

 王進は必死に歯を喰いしばって射精感を我慢する。

 

「おうおう、可愛いのう。やはり、男にしておくのは勿体ない。もともと女のような顔をしておったのだ。女の声でよがっているのがお似合いだぞ、王進。まるで本物の女を犯しているようだ」

 

「ああ、やめてくれ、あああっ」

 

 王進は全身を突っ張らせた。

 高俅の手がいよいよ荒々しくなり、快感が腰骨を突き破るように一気に襲いかかったのだ。

 それだけでなく、犯されているお尻の穴も気持ちよすぎる。

 

 そして、ついに限界に襲われた。

 しかし、こんな男に尻を犯され、男根をいたぶられて射精をするような生き恥をさらすなど、考えられない恐怖だであり、屈辱だった。

 

 それよりも、ここで命を断とう──。

 王進は決心し、舌を歯で挟む。

 

「ああっ、はれ? ええっ、ああっ」

 

 ところが、王進が自死を覚悟した瞬間に、突然に全身が弛緩し身体が動かなくなった。

 当然に舌を噛み千切ることもできなかった。

 すぐに改めて舌を噛もうとしたが、やはり、その瞬間身体が動かなくなる。

 

 王進は愕然とした。

 さっきの高俅の言葉を思い出したのだ。

 もしかして、本当に自死を封じられている?

 

「なんだ、信じておらなかったのか。いまのお前には自ら死ぬことはできん。死にたければ、私に頼むことだ。せいぜい、お前を苛め殺しそうな嗜虐好きに、お前を売り渡してやる」

 

 高俅が王進の尻を犯しながら大笑いする。

 そして、王進の男根を擦りづける。

 

「うああっ、ああああっ」

 

 王進はついに崩壊してしまった。

 むせ返るような呻きとともに、王進が高俅に掴まれていた男根から激しく射精をしてしまった。

 精液が二度、三度と高俅の手を汚しながら、壁近くまで飛んでいく。

 

「威勢がいいのう。ほらっ」

 

 また、高俅が王進のお尻の中に合わせるように射精したのもわかった。

 どくどくと白濁液が自分の肛門の中に注がれるのがわかり、たまらず王進は慟哭してしまった。

 

「ついに泣きおったか。だが、こんなものじゃ、終わらないぞ。本当の恥辱はこれからよ。今度はお前から求めるのだ。どうか、この高俅様に犯してくれとな」

 

 王進の肛門から怒張を抜いた高俅が驚いたことに、王進の肛門と男根にまたもや、あの得体のしれない油剤を塗り始めた。

 すると、股間がかっと熱くなり、射精したばかりの王進の肉塊がすぐに勃起を取り戻す。

 愕然とした。

 途轍もない痒みも、またもや襲いかかってきた。

 

「ああ、か、痒い──。な、なにをするのだ──。痒いいい──。あがあああっ」

 

 王進は絶叫した。

 

「二十回だ。二十回の射精が終われば、痒みをとめる中和剤を塗ってやろう。それとも気絶するかだな。心配せんでも兄上の媚薬を塗れば勃起が収まることもなかろう。兄上が来るのは多分、明日以降だ。それまでは、たっぷりと遊んでやる。残り少ない時間の男の姿のお前とな」

 

 高俅が嘲笑の声を出して、部屋の隅にあった椅子に腰掛けた。

 だが、堪らないのは、この狂うような痒みと疼きの発生する油剤を塗られた王進だ。

 王進は板に拘束されている全身を揺すって脂汗をあたりに撒き散らす。

 

「あがああっ、痒いいい──。た、助けてくれ──。痒いいいっ──。ああああっ」

 

 王進は泣き狂う。

 

「ならば、犯してくれと口にすることだ。禁軍の武術師判断のお前が女のように犯してくれと口にするのにどのくらいかかるであろうかのう。愉しみよ」

 

 高俅がせせら笑った。




■ 呉瑶麗(ごようれい)
 禁軍の武術師範代。美貌と腕を兼ね備えた女剣士で、帝都の武術大会で優勝し、異例の抜擢を受けて入営した。王進とは気の合う稽古仲間であり、密やかな友情がある。孤児であることを隠さず、男社会の禁軍内でも毅然として身を立てている。
※原典:呉用。「智多星」の異名を持ち、晁蓋・宋江の両頭領に仕えた梁山泊の軍師。梁山泊序列第3位。梁山泊入山までのエピソードは、林沖のエピソードを使用している。

■ 王進(おうしん)
 禁軍の筆頭武術師範。小柄ながら質実剛健の男で、権力に媚びることを嫌う偏屈者。その武技は当代随一と謳われながらも、出世の道には背を向けてきた。新任の高俅が上官として赴任してくると、過去の因縁を悟って出奔するが……。
※原典:王進。八十万禁軍教頭。史進に兵法を伝えた名指導者。梁山泊序列外。
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