※この作品はR-18です。

水滸伝艶義   作:ドン・ドナシアン

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26  王進、呪完し調教師の殷天と会う

 身体が、強引に動かされた。

 意識が戻る。その最初に感じたのは、完全な闇──そして、鎖ががらがらと引きあがる音だった。

 王進(おうしん)は、すぐには状況をつかめなかった。だが、意識が鮮明になると同時に、すべてが脳裏に甦ってきた。

 

 自分は、高俅(こうきゅう)と、その異母兄高廉(こうれん)によって囚われた。あの兄弟に捕らえられたのだ。

 憤怒が、胸の奥から噴きあがってきた。

 己の身に起きた屈辱を思い出し、顔が熱を持つ。

 怒りと恥辱が混ざり合い、王進の全身を焼いていく。

 

 そのあいだも、鎖の音は止まらない。寝かされていた身体が、徐々に、だが無理やりに立たされていく。

 手首に装着された金属の枷。それに繋がれた鎖が、左右から同時に引かれていた。天井の方へと、それぞれがじわじわと上昇している。

 目隠しは、まだ外されていなかった。闇の中、視界は奪われたまま。見えない──だが、感じる。自分が、どう扱われているかを……。

 

 囚われ、女のように尻を貫かれた。そして、快楽を強いられた。

 幾度となく、醜態をさらさせられた。

 媚薬で心を壊され、己から懇願までしてしまった──どうか、犯してくれ、と。

 理性を崩されたのは、塗布された薬のせいでもある。だが、それだけではなかった。

 

 高廉が王進の身に刻んだ呪術。その作用が、王進の身体を変えたのだ。

 全身が、異常なまでに敏感になっていた。少し肌に触れられるだけで、快感が身体の芯を貫く。わずかな愛撫で、すぐに絶頂に達してしまうのだ。

 そんな身体に、仕立てられていた。

 悔しくて、歯がみした。

 性の悦びに屈し、嬌声をあげた自分を思い返すたび、腹の底が煮えくり返った。

 

 高俅の手によって肛門を貫かれたあと、王進はその部下たち──十数名の男たちに、次々と襲われた。

 尻を晒したまま、何度も何度も、奥まで貫かれた。

 何度も、射精した。意志とは無関係だった。

 なによりも苦しかったのは──それを悦びとして受けとめてしまった自分自身の、あまりに正直な反応だ。

 媚薬に加えて、呪術の効果もある。全身の神経が性感帯のように研ぎ澄まされ、触れられるだけで身をよじった。

 

 何度も、声をあげた。女のような声を──。

 誇りは、砕かれた。男としての尊厳も、武門の家に生まれた者としての矜持も。

 幾度となく、死を選ぼうとした。

 だが、それすら──許されなかった。

 

 だが──死ねなかった。

 死のうと心を決めた瞬間、身体から力が抜けた。まるで、全身の筋が緩むように、動けなくなるのだ。

 それもまた、高廉の施した呪術の作用だという。

 

 男たちに蹂躙された日々の果て、王進はこの別の部屋に運ばれてきた。拘束は解かれていなかったが、床に横たわることは許された。

 泥のように眠った。まるで、命を脱ぎ捨てたように、深い眠りだった。

 その間、何人かの女が来て、王進の身体を洗った──そんな気がする。

 だが、記憶は曖昧だった。疲労が限界を超えていた。

 あるいは、薬か、なにかを盛られていたのかもしれない。

 さもなければ、他人に身体を弄られたというのに、記憶が一切残っていないなどということは、王進にとって本来、あり得ないはずだった。

 

 ここがどこかは、いまだにわからなかった。

 だが、状況から見て、帝都の中か、あるいはその郊外。高俅、あるいは高廉の支配下にある屋敷であることは、まず間違いない。

 禁軍の近衛軍将軍としての任を帯びた高俅が、数日ごとに姿を見せていた。

 王進を辱めるために集められた部下たちは、どうやら入れ替わっている。気配が変わる。それが、何よりの証だ。

 

 ただし──王進は、ずっと目隠しをされている。視界は完全に閉ざされ、確信などない。すべては、経験と勘による推測にすぎなかった。

 幾日に及ぶ輪姦のあと、屋敷から兵の気配が薄れた。ごく一部を除いて、残っている者は少ないように感じた。

 とはいえ、拘束され、監禁されたままの王進にとって、それも確かなことではなかった。

 

 だが、もし、この場所が帝都の城門を出た先にある郊外であれば、脱出は帝都内部よりも幾分か容易だ。

 王進は、本来なら禁軍からの出奔を図る身である。

 おそらく──高俅は、王進にでたらめな罪状を着せ、手配犯として仕立て上げている。

 そうであれば、屋敷を出ることができたとしても、城門の先まで逃げ延びるのは、決して簡単なことではないのだ。

 

「くっ」

 

 両腕が、完全に引きあげられた。

 身体が浮いた。体重がすべて、両腕にかかった。

 その瞬間、鋭い痛みが王進の全身を貫いた。

 だが──そこにも、違和感があった。

 鍛え上げた身体だ。両腕を吊された程度で、ここまでの苦痛を感じるはずがない。

 

 だが、現実には違った。

 足先が床から離れただけで、両腕の付け根から肩、背中へと苦痛が走る。

 陵辱を受けていたあいだも、妙な感覚はあった。自分の身体が、少し小さくなっているように感じた。

 筋力が著しく落ちている。それは、明確に意識していた。

 はじめは、媚薬の作用だと考えていた。

 だが、こうして吊された今──王進は思い直した。

 もしかすると、それは、身体に刻まれた呪術のせいではないのか。

 

 高俅や高廉が口にしていた、「女体化」の呪術──。

 まさか、とは思った。だが、もしや本当に、そんなことが起きているのか。

 いや、そんなはずはない。

 王進は、心の底から否定した。

 女に変えられたなど、信じることも、まして受け入れることもできるものではない。

 だが──見えないからこそ、余計に不安が募る。

 胸に、わずかに重みを感じている気がする。

 

 まさか──。

 

「うわっ、あうっ」

 

 王進は、悲鳴をあげていた。

 両腕に続いて、今度は脚がせり上がった。

 足首にかけられていた枷が上昇していく。さらに、両脚が左右に大きく開かれ始めた。

 気づかなかったが、膝の上にも枷が装着されていた。それらもまた、鎖で吊り上げられている。

 六本の鎖。両手、両足、そして膝──。

 王進の身体は、あっという間に空中へと引きあげられた。腰を落とした格好で、大きく股を開かされた。

 目隠しで視界は封じられている。だが、それでも、自分がどれほど無様な姿を晒しているのかはわかった。

 

「ほう、いい格好だな。だが、数日見ないうちに随分と変わったな。本当にこれは、王進なのですか、兄上?」

 

 はっとした。

 正面の方向から聞こえた声──それは、高俅だった。

 高俅が、この場にいる。そう悟った。

 ならば、異母兄にして、宮廷道術師である高廉も──。

 

「ほほほ……。正真正銘の王進よ。ほぼ完全に淫紋が刻まれているから、すっかりと外見が変わっているけど間違いないわ。本人に訊いてごらんなさい」

 

 高廉の声だった。

 

「おい、お前、本当に王進なのだな?」

 

 高俅が口を開いた。

 

「くっ、殺せ……。もうこれだけ辱めれば十分でしょう」

 

 王進は、必死に舌を動かして言葉を発した。

 だが、その声は、甲高く耳に刺さった。まるで女のような声だった。

 しかも、出てきたのは、女の口調だった。

 はっとなる。

 やはり、なにかがおかしい──。

 

「声も違う。口調も、女じみてきたな」

 

「呪術の影響よ。刻んだ淫紋は、残る最後の仕上げを待つだけ。引導は、お前が与えてやるといいわ」

 

「感謝します、兄上」

 

 高俅と高廉が、笑い合っていた。

 ふたりは王進の正面、椅子に腰を下ろし、余裕の態で眺めているようだった。

 ふたりだけではない。部屋には他にも人の気配がある。

 給仕の者たちが動いていた。高俅と高廉に、酒か茶か、飲み物を注ぐ音が耳に届く。

 いまの王進の姿──そのすべてが、連中に見られている。

 そのことを思った瞬間、羞恥が胸を焼いた。気が狂いそうになるほどの屈辱だった。

 

 そのときだった。

 なにかが、股の下へと差し入れられる気配を感じた。

 

「うわあっ、熱いいいいっ」

 

 叫び声をあげた。

 なにが起きたのか、わからなかった。

 だが、次の瞬間、股間に凄まじい熱が走った。

 

 火だ──。

 吊されたままの股間に、床のほうから炎のような熱が近づけられたのだと、王進は直感した。

 目隠しのせいで見えはしない。だが、確信があった。あれは、火だ。間違いない。

 

「ひゃああっ、ひゃああっ、ひいいっ──。や、灼ける──。熱い──」

 

 王進は、手首を吊っている鎖を握った。

 必死に、身体を持ちあげようとする。

 だが、そんな動きなど意に介さぬように、火は股間を容赦なく灼いていく。焼きつけるような熱が、下腹を貫いていく。

 

「言葉使いに気をつけるんだね、奴隷。ご主人様と呼びな。さもないと、承知しないよ」

 

 背後から、声が飛んだ。

 女の声だった。

 その瞬間、王進は悟った。

 自分の真後ろに、誰かがいる──。

 

「ははは、それはよい。言葉使いは捨て置け。だが、殷天(いんてん)よ。肉体については、しっかりとこいつに受虐の癖を刻んでやれ。女にしてやっただけでは、私の恨みは飽き足らん。嬲られて、股を濡らし、悦びに狂う変態に仕立てる。それが私の報復だ」

 

「はい、閣下。でも──この女を受虐狂にするのに、さほど時間はかからないと思います。もともと、素質はあるようですよ」

 

 殷天と呼ばれた女が、応じた。

 その女が操っているらしい炎が、王進の股のすぐ下に据えられている。

 動かない。熱が、じりじりと肌を刺してくる。

 股が灼ける──。

 

「ああっ、熱いいっ──。た、助けて──。ああっ」

 

 王進は、両手を縛る鎖を掴み、全身を引き上げようとした。

 だが、火は容赦がなかった。股に絡みつくように、離れない。焦がすように、張りついていた。

 

「ははは、まるで女のような悲鳴ではないか。これが、本当にあの王進か」

 

 高俅が、爆笑していた。

 

「彼女は、もう女よ、高俅。性紋を刻み、あれだけ男の精を身体に流し込まれたのだもの。女体化の呪術は、すでに心身に染み込んでいるわ。術は、ほぼ完成。しかも──殷天の言う通り、王進には受虐の癖もあったようね。あの責めに、股を濡らしているのだから」

 

「人には誰しも、受虐の性質が備わっておりますのよ、高廉様。痛みを快楽へと転じるのです。特に、彼のように長年、自らの身体を限界まで追い込んできた者は、その傾向が他より強く出ますの」

 

「ほう、そんなものか、殷天?」

 

 高俅が口を挟んだ。

 

「ええ。厳しい武術の鍛錬は、肉体の苦痛だけでなく、精神の痛みも伴います。でも、それをただの苦痛のままにしてしまえば、人は耐えられません。だから、武術家は、無意識のうちに苦痛を快楽へ変える機能を鍛えているのです」

 

「面白いのう。つまり、武術家はみな、受けに悦ぶ性質を秘めているということか」

 

 高俅が、笑い声をあげた。

 

「武術家に限りません。ただ、顕著に表れるだけです。人は限度を超えた痛みを受けると、脳が苦痛をやわらげる麻薬のような物質を分泌しますの。それが快感、強い陶酔、そして痛みの鎮静をもたらすのです。だから、人は苦痛に耐えられる」

 

「ならば、王進を、受けに狂う変態に作り替えるのも、容易ということか?」

 

「はい。お任せ下さい」

 

 会話の最中も、火は王進の股間を灼き続けていた。

 火が燃え移っているわけではない。だが、その苦しみは、実際の炎となんら変わらぬ。

 

「ひいいっ、いやああっ、か、勘弁して──。勘弁してえ──」

 

 灼熱の苦痛に、王進は声を振り絞って叫び続けた。

 それは、地獄の炎に焼かれる声だった。

 

「もうよい。火を離せ。それよりも、目隠しを外してやれ、殷天。自分の哀れな姿を見て、どんな顔をするか見ものだ」

 

 高俅が、声をかけた。

 ようやく、火が離れた。

 その瞬間、王進の全身から力が抜けた。

 続いて、背後から目隠しが外された。

 

 目を開けようとしたが、光が強すぎた。

 数日ぶりの明るさに、すぐには耐えられなかった。

 

 だが、時間が経つにつれて、徐々に目が慣れてくる。

 ぼんやりと──視界が戻ってきた。

 

 まず、視界に入ったのは、少し離れた正面だった。

 柔らかな背もたれの椅子に並んで腰を下ろしていると高廉。ふたりとも、穏やかな表情を浮かべていた。

 

 それぞれの椅子の横には、小ぶりな卓が置かれていた。

 卓には、杯に注がれた酒、彩りよく盛られた果実、そして菓子がのっている皿が並んでいた。

 

 そのまわりでは、着飾った女たちが数名ずつ付き従っていた。

 ひとりは酒を注ぎ、ひとりは団扇で風を送っている。

 まるで宮中の饗宴のようだった。

 さらに、部屋の壁際には、十人ほどの近衛兵が無言で控えていた。

 姿勢を崩すことなく、静かに立っていた。

 

「挨拶をおし──。奴隷──」

 

 背後から、殷天と呼ばれた女の声が飛んだ。

 同時に、脚の長い燭台のようなものが、音もなく王進の股の下に差し出された。

 

 その上には、小さな油皿。皿の中では、火が静かに燃えていた。

 

 ──さっきも、これだった。

 あの灼熱が、再び股間を襲ってくる。

 

「あ、熱いいい──。ひぎいいいっ」

 

 王進は、必死に腰を動かした。炎から逃れようとするように、身をよじった。

 だが──次の瞬間、愕然とする。

 視界に、自分の胸が映った。

 そこには、女のような乳房があった。

 豊かに膨らんだ胸が、自分のものとして揺れていた。

 

「うわっ、な、なに、これ──。ほ、本当に女に……。ああっ、熱いいい──」

 

 思わず、叫びが漏れた。

 

「ははは、女になった自分に驚いているのか、それとも殷天の責めに泣いているのか、どっちかにせんか。忙しいのう」

 

 高俅が、嘲りの声をあげた。

 ようやく、殷天が燭台を引いた。

 火が下がり、股間から熱が遠のいた。

 王進は、灼熱から解放されたことで、かすかに息をついた。

 

「あたしは殷天よ。高廉様の部下で、命じられてお前の調教係になった女よ。覚えておきなさい。あたしの言葉には絶対に従うの。さもないと、もっと苦痛を味わうことになるわよ。さっきの火責めなんて、生ぬるい罰だと思いなさい。本当に、お前の女の部分を焼いてやるからね」

 

 声は、背後から響いた。

 殷天が、王進の視界に現れた。

 痩せた女だった。年は四十手前か。

 面差しには、情けの一片もなかった。酷薄という言葉がそのまま似合う顔だ。

 腰には、乗馬鞭と金属製の棒を下げていた。それだけで、この女の性質がわかる。

 

「いや、殷天。こいつは奴隷ではない。犬だ。雌犬として仕上げよ。被虐に酔い、悦びに狂う変態にな」

 

 高俅の声だった。

 

「心得ました」

 

 殷天は、頭を下げた。

 

「じょ、冗談じゃない──。な、なにが雌犬だ──。い、いや……雌犬……。わたし……お、俺の身体に、な、なにをした──」

 

 王進は、叫んだ。

 だが、気づいていた。

 輪姦のときもそうだった。気を抜くと、口調が女になる。

 まさか、本当に──女体化を……。

 背中に、冷たいものが流れ落ちる感覚があった。

 

「姿見を持ってこい。王進、自分のいまの姿を見よ。これが、私に逆らった報いだ。禁軍の武術師範として、己の腕を笠に着て高官たちに楯突いた男の末路が、これだ」

 

 高俅の命令で、王進の前に車輪付きの大きな鏡が運ばれてきた。

 全身が映る姿見だった。

 鏡に映ったその姿を見て──王進は目を見開いた。

 ある程度の予想はしていた。だが、現実として目の当たりにしたその姿は、信じがたいものだった。

 

 両手首、両足首、両膝──すべてに枷が嵌められている。

 六本の鎖に宙吊りにされ、大股を開かされた状態で、鏡の中にひとりの佳人がいた。

 その顔は、目を丸くして驚いている。

 王進が震えると、鏡の女も震える。首を動かせば、同じように動く。

 

 黒髪は肩を越え、艶のある、真っ直ぐに伸びた女の髪に変わっていた。

 肌は雪のように白く、腹から腰へと流れる艶めかしい曲線。

 割り裂かれた脚の先には、繊細な足首と、陶器のような脛があった。

 そこには、男らしさの欠片もない。

 

 ──鏡の中には、完璧な美女がいた。

 

 なによりも衝撃だったのは、開かれた股のあいだに、男の証がなかったことだ。

 そこには──間違いなく、女の性があった。

 うっすらと赤く染まり、体液に濡れている。

 

 王進は、言葉を失った。

 鏡の中の自分を見て、ただ愕然とするしかなかった。

 また。女の性器のすぐ上、下腹部には、手のひらほどの大きさの刺青のような模様が浮かんでいた。

 花をかたどったその紋様は、汗に濡れ、ぬらぬらと光っている。

 股間には陰毛がなかった。だからこそ、その下腹の模様が異様なほどに目立つ。

 この、淫靡さを漂わせる花模様──

 これが、「淫紋」なのか……。

 

 それだけではない。

 長くなった髪以外、肌には体毛が見当たらない。

 それもまた──呪術の影響なのか。

 

 王進は、ただ呆然として立ち尽くしていた。

 

「ははは、わかったか、王進。お前が私の連れてきた男たちに嬲られ、快楽に狂い、大量の精を身体に受け入れたおかげで、兄上の呪術はついに完全に結ばれたのだ。これからはせいぜい、色に狂った雌として生きていけ。しばらくは飼ってやるが、いずれ最下層の娼館に売り飛ばしてやる。そこで性病に罹って死ぬまで、淫にまみれて暮らすのだな」

 

 高俅が、手を叩いて笑った。

 

「病気で死ぬのは無理かもしれないわねえ。最後の呪印が結ばれて術が完成すれば、多少の病や怪我なら淫紋が少しずつ癒やしてくれるわ。自殺もできない。病気にもなれない。性欲さえ満たされていれば、飢えて死ぬこともできないの。だから、その最下層の娼館で、生き恥を晒して生きていくしかないのよ」

 

 高廉が、くすくすと優雅に笑った。

 おそらく、あの女の言うことは真実なのだろう。

 王進は、あまりの悔しさに歯を噛みしめた。

 憤怒で、目の奥が涙で滲んだ。

 

「泣いておるのか、王進。だが、まだ口惜しがるのは早いぞ。尻の穴では淫婦のように悦びに狂っていたお前だが、女の器官では、まだ生娘だ。私がその初物をいただこう」

 

 高俅が立ちあがった。

 腰の下帯に手をかけると、そばに控えていた女がすぐに寄って、下袴を静かに脱がせていく。

 

「うわっ、や、やめて──。な、なにをするのよ──。い、いえ……するのだ……。わ、わたし……お、俺は男だ──」

 

「なにが男だ。どこからどう見ても、女そのものだ。しかも、尻穴で散々に快楽を味わったのだろう。もう雌よ。そして、これが──最後の仕上げだ」

 

 高俅が、下半身を剥き出しにし、股間のそれを王進に近づけていく。

 空気が張りつめた。

 王進は、凍りついたように身動きが取れなかった。

 

「ふふふ、高さを調整いたします」

 

 背後で、殷天が鎖を操作した。

 吊された王進の身体が、わずかに沈む。

 股間の位置が変わり、高俅の目前に、まるで合わせられたように露わになる。

 

「前戯はないぞ。破瓜の痛み──そのすべてを、女として味わえ」

 

「んぎいいっ、あああっ」

 

 高俅が、王進の両腿を抱え込んだ。

 そのまま、圧を加えてくる。

 

「ああああっ、んぎいいっ」

 

 激痛が、下腹を突き上げた。

 裂かれるような痛みだった。王進は、呻き声を絞り出す。

 

「もっと苦しめ、王進。それが、女として破瓜されるということだ。そして──どうやら、お前の処女の証に届いたようだな。いよいよ、お前を本物の女に仕上げてやる」

 

 高俅が、嗤った。

 そして、動きを止めることなく、さらに深く迫ってくる。

 

「いやあっ、いたいい──。あああっ、許して──。許してくれえ──。いぎいいいっ」

 

 乾いた膣に無理矢理に高俅の男根をねじ込まれ、王進は宙吊りの身体を限界まで仰け反らせる。

 

「ほほほ、精を放つと同時に私の呪印は完全に結ばれるわ。多分、性淫の発作もすぐに襲うから、正気で犯されるのはこれが最後になるかもしれないわねえ」

 

 離れている高廉が笑うのが耳に入る。

 しかし、王進にはそれを気にする余裕はない。

 凄まじい激痛が股間を襲っている。

 股間から血の匂いもした。

 

「おう、ついに最後まで貫いたわ。ではもっと苦しめ」

 

 高俅が今度は抽送を開始した。

 股間の激痛が拡大する。

 

「はぎいいいっ、んぐううっ」

 

 王進は大きく呻いた。

 

「ほほほ、痛がってますけど、同時に感じてもいますわ、高俅閣下。しばらくお続けになれば、この雌犬の悲鳴に甘い声が混じり出すと思います」

 

 殷天が声をかける。

 腰を引いて逃げようとする王進の動きを封じるように、後ろからぐいぐいと王進の腰を押してくる。

 

「あああっ、あがああっ、あああっ」

 

 王進は高俅の荒々しく犯されしばらく悲鳴をあげ続けた。

 だが、やがて、痛みとは違う妖しい感覚もまた、大きくなっていく。

 それが次第に強くなり、下腹部の甘い疼きになって、さらに全身の酔いのように王進の中に拡がっていく。

 

「おう、少しばかり濡れてきたか? しかも、締めつけおるわ……。殷天、後ろから乳を揉んでやれ。もしかしらた、破瓜で感じておるのかもしれんぞ」

 

 高俅が腰を動かしながら言った。

 

「しっかりと感じておりますわ。苦痛を快感に変えておるのです、この雌は」

 

 殷天が後ろから王進の胸の双乳を愛撫しだす。

 

「ひあああっ、あああっ」

 

 身体を貫くような痺れが走った。

 気がつくと、王進の口から、快楽に似た声が漏れていた。




■殷天(いんてん)
 高廉に仕える女調教師。かつては軍律官の家系に生まれたが、冷酷さと従順さを買われて高廉の私兵団に転属された。命令には絶対服従、対象を壊すことにためらいはない。言葉に甘さはなく、責めに情もない。官人としての礼節より、調教の手際を誇りとする。
 ※原典:殷天錫。李逵に殴り殺される高廉の部下。
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